|
きょうの社説 2011年4月14日
◎復興構想会議 復旧の速度上げる具体策を
国難ともいうべき東日本大震災の復旧・復興策が遅々として進まない。震度6クラスの
余震が続き、被害の全容がいまだに把握できない異常な状況下にあるとはいえ、既に震災から1カ月が過ぎている。菅直人首相は会見で、野党に協力を要請し、6月をめどに「復興構想会議」で青写真を示す構想を語ったが、今、最優先すべきは被災者の生活再建に向け、復旧の速度を上げるための具体策である。ようやく避難所に生活物資が届くようになり、燃料不足も解消されてきた。仮設住宅の 建設、ライフラインの復旧も始まった。だが、被災者は依然、苦しい生活を強いられ、生活の質は劣悪である。避難所生活を続ける約15万人の人々に温かい食事と清潔なベッドが行き渡り、被災地から、がれきが消えるのはいつになるのか。先がまったく見通せない被災者の心に、希望の灯をともすのは政治家の責任である。菅首相はまず復旧に向けての工程表を示し、実現の見通しを自分の言葉で語るべきだ。 被災者対策は、救援活動から生活再建へと軸足を移す時期であり、これまで以上にきめ 細かな対応が必要になってくる。寄せられた多くの義援金も早めに被災者に届ける知恵が必要だ。 震災発生後、20近い「○○会議」が設置されたが、ほとんど機能していない。それで いて、肝心要の復旧・復興のための立法作業や補正予算編成は遅れている。国民の目を意識し、パフォーマンスには熱心だが、重要事項が後手に回っている印象がぬぐえない。蓮舫氏を節電啓発担当相に、辻元清美氏を災害ボランティア担当首相補佐官に登用した人事などその典型例だろう。 有識者や被災地の知事らが参加して復興ビジョンを練る復興構想会議について、菅首相 は復興策を個別に議論する検討部会の設置を指示したが、具体的に何をどう検討するかはこれからだ。わざわざ会見を開いて復興構想について語るなら、青写真づくりの段階から復興構想会議に委ねるのではなく、せめて首相自ら復興へ向けての基本方針を示してほしかった。政治家が大枠の方向性を示さずして、何が「政治主導」か。
◎少年からの臓器提供 移植を定着させる一歩に
昨年7月施行の改正臓器移植法に基づき、脳死と判定された15歳未満の少年から初め
て臓器提供があり、5病院で待機患者に移植手術が行われた。このうち心臓は10代後半の男性に移植され、これまで海外に頼るしかなかった子どもの心臓移植に一歩をしるした。日本臓器移植ネットワークによると、脳死判定を受けた10代前半の少年は臓器提供の 意思表示カードなどは持っていなかったが、家族が「命をつなぐことができる人たちのために、彼の身体を役立てることが彼の願いに沿う」と考え、承諾したという。突然の事故で悲しみに打ちひしがれ、さらに脳死を受け入れて臓器提供に踏み切るのは極めて重い決断である。 移植ネットが詳しい情報を公開しなかったことに対し、臓器提供に至る情報開示や透明 化を求める声が出ているが、家族がどこまで本人の意思を把握していたかを確かめるのは容易でない。家族の心情に踏み込めば、せっかくの提供意思が傷つけられ、自らを責めたり、後悔して苦悩を深める結果にもなりかねない。 脳死臓器移植は、ドナー(提供者)あっての医療である。社会全体で、臓器提供の尊い 意思を支えていく必要がある。救命治療や判定手続きなどの妥当性を確認するのは当然としても、そこには家族への一定の配慮が欠かせず、詳細な検証は時間を置いてからでも可能である。 北陸でも金大附属病院や金沢医科大、富山県立中央病院などで臓器摘出が実施されてき たが、法改正に伴い、本人意思が不明でも家族が承諾すれば提供が可能になったことで、これからさらに増えることが予想される。移植コーディネーターの育成や家族を継続的にケアする仕組みも欠かせない。 大人に比べて脳の回復力が強い子どもの場合、脳死判定は厳格な基準が定められ、判定 から臓器摘出に至るドナー管理が現場に大きな負担を強いるため、受け入れ態勢に不安を漏らす施設もある。子どもからの臓器提供を増やすには、その前提となる救命治療の基盤も整えていく必要がある。
|