入試ネット投稿:4大学が被害 偽計業務妨害で捜査本格化

2011年2月28日 21時30分 更新:2月28日 23時40分

記者説明会で、これまでの経緯や今後の対応を説明する田中愛治理事(右)、橋本周司常任理事(中央)、島田陽一理事の3人=東京都新宿区の早稲田大で2011年2月28日午後7時44分、遠藤拓撮影
記者説明会で、これまでの経緯や今後の対応を説明する田中愛治理事(右)、橋本周司常任理事(中央)、島田陽一理事の3人=東京都新宿区の早稲田大で2011年2月28日午後7時44分、遠藤拓撮影

 京都大などの入試問題が試験時間中にインターネットの質問掲示板「ヤフー知恵袋」に投稿された事件で、京都府警は28日、偽計業務妨害の疑いがあるとみて捜査を始めた。警視庁も早稲田大や立教大から同容疑での相談を受け、捜査を開始した。

 この日、被害届の提出について相談に訪れた京大と同志社大の関係者に、府警は既に捜査を始めているため、告訴や被害届の提出は必ずしも必要ないと説明。捜査1課に加え、生活安全部のハイテク犯罪対策室も動員して捜査を本格化させる。

 府警によると、掲示板を運営するヤフー側に残された接続記録などネット上に残された痕跡を解析し、発信元とみられる携帯電話の契約者情報から投稿者を割り出す。同時に、投稿に寄せられた回答と答案用紙を照合する作業を並行して進めるとみられる。

 投稿のあった文学部と経済学部の合格発表が終わっている同志社大は既に、答案のチェックなど内部調査を始めた。

 偽計業務妨害は親告罪ではなく、警察は独自判断で捜査を始めることが可能。両大学は今後も府警と緊密に連携するとしており、告訴の可能性も排除していない。京大の淡路敏之副学長は「受験生の利益を考え、警察との協議の中で被害の内容を固めていく」と話した。京大広報課には「けしからん」と投稿者を非難する声や「しっかり試験を監督したのか」と大学側の責任を問う声など十数件が寄せられたという。

 早大も同日、警視庁戸塚署に被害届提出を前提に相談していることを明らかにした。

 早大副総長で、学事統括の橋本周司(しゅうじ)常任理事は「深い憤りを感じる」と述べ、教務部門を総括する田中愛治理事が、同日設置した調査委員会で、該当する英語試験の全答案9935人分を点検することや他大学との連携、再発防止策の検討を進めることを説明した。また、法務担当の島田陽一理事は、複数の大学を舞台にしたウェブ上での「犯行」から「組織的、継続的に行われた可能性もある」と述べ、偽計業務妨害罪にあたるとの認識を示した。しかし、試験のやり直しはしないという。

 文学部入試の英語で投稿があった立教大も、警視庁池袋署に相談していることを明らかにした。さらに、ヤフージャパンに投稿者に関する情報の開示を要請、学内に調査委員会も設置した。白石典義・統括副総長は「入試問題は最高機密で、外部に漏れることはない。合格者が不正にかかわっていた場合は合格を取り消す」と述べた。文学部の合格発表は21日に1回目が終わっており、3月5日と18日にも予定されている。【広瀬登、林哲平、遠藤拓、福永方人】

 ★業務妨害罪 刑法に規定され、偽計業務妨害(233条)と威力業務妨害(234条)の2種類がある。偽計とは策略を講じて相手をだますという意味で、例えば営業中の銭湯の入り口に「本日休業」の張り紙を勝手に張って営業を妨害すると、偽計業務妨害になる。業務妨害罪は「危険犯」と言われ、業務が妨害される「恐れ」が生じるだけでも成立するとされる。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金。

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