2011年2月28日 20時42分 更新:3月1日 0時1分
【カイロ大前仁】北アフリカ・リビアの騒乱は、反政府勢力が地中海沿岸部の大部分を制圧し、最高指導者・カダフィ大佐が「最後の拠点」とする首都トリポリへの包囲網を縮めている。反政府勢力は基幹産業である石油関連施設を次々と掌握し、ライフライン(生活に必須のインフラ設備)も握りつつある。大佐支持派は形勢逆転を狙って反撃を準備、大混乱が起きる可能性もある。
人口が集中する沿岸部で28日現在、政府が確実に押さえている都市はトリポリのみ。その首都でも、郊外タジューラ地区では28日、住民約400人が反政府デモを展開し、治安当局との神経戦が続いている。カダフィ大佐の出身地であるシルトでも、反政府勢力の支配地域が広がっているという。
リビア第2の都市ベンガジで15日に始まった反政府デモは一両日のうちに他の4都市に広がった。治安部隊が武力で排除したことが反感を呼び、ベンガジやトブルクは20日までに反政府勢力が占拠。東部一帯はもともと反カダフィ感情が強く、次々と「陥落」した。
抗議の波は西部にも広がり、反政府勢力は24日までにズワラの実権を握った。ミスラタやアズザウィーヤは政府軍から度重なる反撃を受けながらも、反政府勢力が支配を固めている。多くの都市で軍や警察の一部が住民側につき、政府軍と対峙(たいじ)する武力を与えた。
一方、リビア南部は砂漠地帯で人口が少なく、「戦況」へ与える影響は小さい。ただし、カダフィ大佐の出身部族カダファは南部が拠点で、臨時政府の発足を宣言したアブドルジャリル前法相は「カダフィ後」の国内融和を考慮して、同部族の取り込みを始めた。
リビアは通常、世界総生産2%の原油を生産するが、先週から原油輸出が全面的に止まっていた。反政府勢力は南部の主要油田、マルサエルブレガやアズザウィーヤなどの積み出し港を支配下に置いたことから、トブルクの船舶会社社長は27日に同港で輸出が再開、正常化が始まったと強調する。
追い詰められるカダフィ大佐は27日、セルビアのテレビ局との電話会見で改めて徹底抗戦を訴えた。だが、エジプトの軍事問題専門家、ハッサン・アルメダニー氏は、「(大佐は)逃走する」との見方を示す。一時はベネズエラへの亡命情報も流れたが、国連安保理が大佐と側近の「人道に対する罪」を国際刑事裁判所(ICC)に付託したことから、受け入れ先が見つからない可能性が大きい。
カダフィ支持派が「最後の反撃」に出る恐れも浮上している。ロイター通信によると、アズザウィーヤの反政府勢力は28日、カダフィ支持派の軍や民兵約2000人が町を包囲し、「間もなく攻撃を仕掛けてくるだろう」と語った。大規模な攻撃を受けた場合、多くの犠牲者が出る懸念が強まっている。中東の衛星テレビ・アルアラビーヤによると、ミスラタでは政府軍のヘリコプターが地元ラジオ局を攻撃したが、反政府勢力がこれを撃墜した。