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'11/4/14

中韓印「レベル7」に苦慮

 日本政府が福島第1原発事故の深刻度を国際評価尺度で最悪の「レベル7」に引き上げたことに対し、中韓やインドが原発推進の国策と国民の健康との間で対応に苦慮している。隣国の中韓は食の安全を確保するため、福島県と周辺地域の一部食品などの輸入を禁じているが、さらに厳しい措置に踏み出せば、国内で反原発機運が高まる可能性もあり、板挟みの状況だ。

 ▽「反原発」を警戒

 「怖くて日本の食べ物は買えない。放射性物質で韓国の野菜や魚まで汚染されたらどうすればいいの」。ソウルの主婦(41)は13日、レベル7への引き上げについて深刻な表情で語った。

 大気中や雨から放射性のヨウ素やセシウム検出が続き、12日には南部の済州島チェジュド慶尚南道キョンサンナムドの野菜からも初めて見つかった韓国。福島第1原発事故後、小売店は日本の農水産物の取り扱いをほぼ中止した。

 ただ、韓国は原発21基を稼働させており、アジアでは日本と並ぶ「原発大国」。事故処理が長引き、国民の反原発ムードが拡大することを警戒する李明博イ・ミョンバク政権は「事故で韓国に飛来した放射性物質の影響は無視できる程度で安全」と繰り返し訴えている。

 ▽政府内に温度差

 高成長を維持するため、原発の増設を計画する中国も事情は同じ。インターネット上では、日本政府が事故後1カ月を経てレベル7に引き上げたことに対し「日本人は原発の被害を隠蔽いんぺいしているのか」と批判的な書き込みが急増したが、政府の対応は抑制的だ。

 環境保護省当局者は放射性物質の流出量などから、中国への影響は1986年に起きた旧ソ連のチェルノブイリ原発事故に比べ100分の1程度との見解を発表。「わが国の環境への影響は少ない」として、冷静な対応を呼び掛けた。

 インドでは5日、保健省が日本からの食品輸入を3カ月間停止するよう勧告したが、すべての関係省庁による7日の協議で停止措置を取らないことを決定。福島原発事故をめぐる政府内の対応に「温度差」があることを示した。

 事故を受け、原発の安全性に100%の保証がない現実を目の当たりにしながらも、約12億の国民の電力需要を賄い、成長を持続させるためには、過剰な反応を抑制しようとする国家意思がうかがえる。

 ただ、日本の事故処理や情報提供の在り方には手厳しい。韓国では放射性物質を含む汚染水の海中放出を機に日本の対応への怒りが拡大。政府は世論に押される形で憂慮を表明し、いら立ちを強めた。

 中国の温家宝おん・かほう首相も12日、菅直人首相との電話会談で海洋汚染に触れ「中国政府と中国国民は懸念を抱いている」と苦言を呈し、迅速で正確な情報提供を求めた。(ソウル、北京、ニューデリー共同)



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