2011年2月24日 20時23分
法相の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」は24日、最高検が前日公表した特捜事件での取り調べ過程の一部の録音・録画(可視化)試行指針を巡り意見交換した。委員からは、全面可視化を求める立場から指針を批判する意見が出た一方、現行の裁判員裁判対象事件における一部可視化より前進したとして評価する声もあった。「可視化はいらないという委員は一人もいない」(委員の一人)とされ、次回以降の議論で可視化導入に向けた提言策定に入る。
指針について、委員でジャーナリストの江川紹子氏は「検察官のコントロール下で録画されると(供述を強要されているのに、任意で供述しているように見えるなど)裁判官に逆の心証を与える」と指摘。後藤昭・一橋大大学院法学研究科教授も、録画範囲を検察官に委ねることに疑問を呈したうえで、参考人が無理やり供述させられる可能性もあることを念頭に「容疑者だけでなく参考人も対象にしないと、問題(供述の強要)と対策(取り調べの可視化)が合致しない」と批判した。
一方、龍岡資晃・元福岡高裁長官は「(現行の可視化より)一歩も二歩も進んでいる。取り調べの最終段階だけでなく、初めの部分の記録があると裁判官は判断しやすい」などと評価した。作家の吉永みち子氏は「信頼が失われている組織がこの指針で信頼を得られるかというと、ちょっと疑問が残る。例えば知的障害を持った容疑者の取り調べでは、弁護人の付き添いなども併せて検討されるべきだ」と提案した。
指針では東京、大阪、名古屋各地検の特捜部が容疑者を逮捕する事件を対象に3月18日から取り調べ過程の一部の録音・録画を試行する。否認事件や国税局などからの告発事件も対象とし、供述調書の任意性・信用性の立証に役立てるとしている。【石川淳一】