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[27019] 無能営業 淫☆キュベーター(まどか☆マギカ QB魔改造・独自解釈)
Name: ファイヤーヘッド◆99432fa5 ID:054727e8
Date: 2011/04/08 20:24
 幾度も、繰り返してきた。
 かつて交わした、たった一人の友達との約束を守る為。
 彼女を絶望の迷路から救い出す為に。

 心は擦り切れ。
 他者を信じる事が出来なくなり。
 唯一つの大切な物以外の全てを切り捨てた。

 何百という魔女と戦った。
 何千という使い魔を葬った。
 そして、数えるのを諦める程に絶望を見てきた。

 それでも彼女は歩みを止めない。
 それでも暁美ほむらは繰り返す。
 何度でも繰り返す。

 あの日失った、あの未来を取り戻す、その時まで。





 魔女の結界の中。
 暁美ほむらは使い魔に囲まれていた。
 使い魔の姿。それはまるで出来の悪い絵画のような姿だ。
 描いた絵が、紙から離れて動いているかのような、酷く薄っぺらく滑稽な使い魔。
 それを統治するのは芸術家の魔女イザベル。
 どうでもいいその他大勢の雑魚魔女に過ぎないが、ほむらにとっては忘れられない魔女でもある。

「百二回目ね」

 ほむらは感情を感じさせない声で呟く。
 これでこの魔女とエンカウントするのは百二回目。全ての魔女を己の手で始末すると決めた時から、この魔女は優先的に始末するようにしている。
 魔女イザベル。その性質は虚栄。
 自らを選ばれた人間と信じて疑わないエゴイストであり、誰かに自分の作品を見せたくて仕方のない虚栄心の塊。
 その為、見境なしに人間に関わろうとする危険極まりない奴だ。
 何かの間違いでまどかや、その親しい人間を結界内に引きずりこむ可能性を孕む魔女であり、それ故、ほむらはイザベルを優先抹殺対象と定めている。

「滑稽な芸術……」

 腕を組み、ほむらは突き放したような、軽蔑したような声で告げる。
 その声に反応するように魔女と使い魔の動きが停止する。
 その間にもほむらは頭の中でこの魔女に有効な、何度も繰り返すことで実践してきた“最も効率的な攻略法”を描いていく。

「右にあるのはゴッホ作“アルルの女・ジヌー夫人”。そちらのはピカソの“ドラ・マールの肖像”ね。
どれもこれも貴方のオリジナルじゃない、ただの盗作。
……無様ね」

 あからさまな侮蔑、批評。
 それを聞いたイザベルは突然叫び出し、使い魔達も狂ったように暴れ出す。
 苦しんでいる。
 見るからに苦しんでいる。
 これがイザベルの弱点。
 己の芸術を誇示したくてたまらない彼女であるが、実の所彼女に芸術の才はない。
 だから他から持ってきた盗作ばかりを展示し、それを己の作品と偽って他者に見せるのだ。
 だが、その事を鋭く指摘された時に彼女の虚栄心は崩れ去り、脆さを露呈する。

 一部の例外も存在するが、魔女には弱点が存在する。
 例えばそれはチーズだったり、例えばそれはアルコールだったり。
 それは“生前の願い”に密接に関係するものだ。
 この魔女、イザベルを例に挙げるならば彼女は生前、どこかの学校の美術部に所属していた少女だったのだが、悲しいかな才能というものに恵まれなかった。
 そんな彼女が“魔法少女”になる際に願った事が“思ったとおりの芸術を作り出せる才能が欲しい”だった。
 その力で彼女は瞬く間に周囲の評価を得、作品を出展したりもした。
 だが思ったとおりの芸術を作り出す事が出来ても、己のオリジナルの芸術を考える能力はない。
 結局彼女が作り出した“芸術”はどこかで見た様なものばかりとなってしまい、ある日それを著名な批評家によって指摘されてしまった。
 無論その後は踏んだり蹴ったりだ。
 周囲の侮蔑の視線を浴びるようになってしまい、それに耐え切れずに彼女の心は砕け魔女と化したのだ。

 “決して得られない本当の望み”

 ほむらはこれまでの経験で、五割以上の魔女がそれを弱点としていることを知った。
 チーズを求める魔女は絶対に自力ではチーズが手に入らない。だからチーズを与えれば隙が生まれる。
 評価を求める虚栄の魔女は絶対に評価を得る事が出来ない。だからそこを指摘してやれば苦しみ悶える。
 幾度にも渡る繰り返しを経て、もはやこの周辺に現れる魔女でほむらが熟知していない者など存在しない。

「消えなさい」

 瞬間、ほむらの周囲の全てが停止した。
 使い魔も、狂ったように悶えていた魔女も、全てがほむらを残して静止し、彼女だけがこの『世界』の中を動く。
 これがほむらの力。
 願いと引き換えに得た“時間操作”能力だ。
 彼女は世界の時を己の望むだけ停止させる事が出来る。
 止めていられる時間は特に決まっていないが、あまり長い時間停止させていると“ソウルジェム”が濁ってしまう為、基本的には数秒程度としている。
 大体十秒以内ならばソウルジェムもほとんど濁らないが、三十、四十秒も止めてしまうと少し危険だ。
 そしてこの魔女との戦いで止める時間は精々五秒程度と決めている。
 それで充分だからだ。

 腕に装着している盾から銃を取り出し、その照準を魔女へと向ける。
 “イングラムM10サブマシンガン”。
 全長269mm。重量2、84kg。装弾数32発。有効射程25mの軍用機関銃だ。
 コンパクト、かつ頑丈な為量産し易く弾丸の発射サイクルも早い。
 だが反動が大きく命中精度が低いという欠点も持つ銃だ。
 とても女子の細腕で扱いきれるものではない。
 だがほむらはそれを慣れた動作で……それも片手で……構えると、一切の躊躇なく引き金を引いた。
 “ぱららららららっ!”と。
 タイプライターのような音が響き、十数発の銃弾が魔女目掛けて吐き出される。
 これで戦闘終了。
 後は時間停止を解除すれば、魔女は何が起こったのかわからぬままに撃ちぬかれるだけだ。
 避けられる恐れなどあるわけがない。
 今の錯乱した魔女に対応など出来るわけがないからだ。

「“時は動き出す”」

 くるり、とターン。
 そのほむらの後ろで魔女の絶叫が響き、結界が揺らいでいく。
 確認するまでもなく全弾命中だ。
 魔女の結界が消滅し、主を失った魔女の卵……“グリーフシード”が飛んで来る。
 それを背を向けたままキャッチし、盾に収納した。



 彼女、暁美ほむらはこの時間軸の人間ではない。
 己の能力を用いて何度も同じ時間を繰り返している時の迷子だ。
 元々は弱気な少女だったのだが、最早その面影は見えず、己の心を頑丈な鎧で覆い隠してしまっている。
 “もう誰にも頼らない”。
 “誰に理解されずとも構わない”。
 そう心に決めたのは確か四週目の時だったか。今となっては随分遠い過去のようにさえ思えてしまう。

 長い、本当に長いこの時の旅を経て随分多くの事に気付かされてきた。
 魔女の弱点、魔女の性質。その内に孕んだ願いと絶望。
 ソウルジェムと肉体の関連性。
 かつて憧れた先輩の心の弱さ。二度とは戻らない日常の尊さ。
 魔法少女と魔女の関係。
 そして。
 そして、奴……インキュベーターの事。

 インキュベーター。全ての元凶。
 それは白い毛並みと赤いつぶらな瞳を持つ、兎と猫を合わせたような愛らしいマスコットだ。
 だがその外見は相手を油断させる為のものに過ぎず、その本性はこの世にあるどんな邪悪よりもドス黒い。
 奇跡という名の餌を対価に少女達を絶望へと突き落とし、その際に発生する絶望のエネルギーを回収するおぞましい侵略者。
 奴等には罪悪感も何もない。根本的に人間とは違う思考を持つ生物だ。
 嘘こそ付かないが、“限りなく嘘に近い事実”を平然と口にし、わざと相手が曲解するように仕向ける。
 そして言うのだ、悪びれもせずに。“願ったのは君達だろう?”と。

 このインキュベーターについても、いくつかわかってきた事がある。
 一つ、殺しても無意味だという事。
 奴等は殺してもいくらでも代わりがいる。
 殺せばすぐに次のインキュベーターが現れて、同じ事を繰り返すのだ。
 この性質の悪ささえなければどうにかなったものを、と思わずにはいられない。

 二つ、記憶を共有している事。
 前のインキュベータの行った事、交わした会話。その全ての記憶を次に来たインキュベーターも持っている。
 その様はまるでいくつもの身体を持つ一つの生命体のようだ。
 だが、違うという事に最近になってほむらは気が付いた。

 三つ……“奴等は同一に見えて、その実別個の存在であること”。
 記憶を共有し、その目的も全く同じ。これのせいで一見すると同じ意思で動いているように思える。
 だが、事実はそうではない。
 奴等は記憶を共有し、目的も同じとする、“限りなく同一に近い別生命”なのだ。
 例えばインキュベーターAがいたとして、そのインキュベーターは会話の際に「だけど」「けれど」という言葉を多用していたとする。
 そして、そのAを殺した際にすぐにBが現れるわけだが、このBは「しかし」「だが」という、Aが全く使わなかった言い回しを多用することがある。
 ほとんど違いがない為、よく注視しなければ気付かない、本当にわずかな違い。
 幾度も繰り返したほむらだからこそ気付いた違和感。
 これに気が付いた時、ほむらは無意味にインキュベーターを虐殺してその言動を全てメモに書き連ねた。
 そして確信した。
 奴等にはわずかながら差が存在する、と。

 とはいえ、これは本当にわずかな差だ。
 やる事の大元は全く変わらないし、えげつなさにも変化なし。
 ほんのわずかだけ使用する形容詞が変わったりするだけの、些細な違い。
 そう、それだけの事。

 その、はずだったのだが……。





『きゅっぷぃ、きゅっぷぃ! 淫きゅっぷぃ!!
ハァハァ、貧乳少女に冷たい眼で銃口を突きつけられる、この背徳感!
あ、新しい世界が見えてきたよ! 実にきゅっぷぃだ!!』
「…………」

 ほむらは戸惑っていた。
 インキュベーターを見かけたのでいつものようにサーチアンドデストロイをした。そこまでは別によかった。
 だがその後に現れたインキュベーターが何かおかしい。
 それはもう、どこがおかしいのかというと全部おかしい。
 何これ?
 こんなの今までいなかったのに。

『僕は理解したよ、暁美ほむら! これが“萌え”という感情エネルギーなんだね!
僕の中で今、新しいエネルギーが産まれているのが実感できるよ!
萌えはエントロピーを凌駕するんだ、きゅっぷぃ!!』

 何かよくわからない言葉を話している。宇宙語だろうか?
 とりあえず銃口を突きつけたまま、ほむらはこいつとコンタクトを試みることにした。

「……貴方、本当にキュゥべえ?」
『その通り、愛らしくて皆に大人気のマスコット、キュゥべえさ。
お風呂の同伴に添い寝、着替えの手伝いに触手プレイと何でも出来るよ!』

 とりあえず生理的嫌悪感を覚えた為殴っておいた。
 なんかスカッとしたので今度は踏みつけてみた。

『きゅ、きゅっぷいいいい! や、やめてえ!
新しい世界が! 新しい世界の扉が開いてしまうううう!
きゅっぷいきゅっぷい!』

 やはり今までと違う。というか違いすぎる。
 このインキュベーターはどう見ても感情というものを備えているようにしか見えない。
 何故こんな奴がいるのかはわからないが、もしかしたらこれは希望に成り得るのかもしれない。
 そう思い、ほむらはインキュベーターの耳を鷲掴みにして持ち上げた。

「…………」

 じっ、と観察する。
 身体をクネクネさせ、息は荒い。
 口からは涎が垂れ、なんだかもう、捨ててしまいたい衝動に駆られる。
 だがそれはダメだ。
 せっかく手に入れた新たなる情報、“感情を持つインキュベーター”。
 これがどういう存在なのか熟知するまで殺すわけにはいかない。



 とりあえず、まずは観察から始めよう。
 そう決断し、ほむらはこの奇妙なインキュベーターを持ち帰ることにした。



























皆様どうもお久しぶりです。
初めての方は初めまして。
最近全く何も書いてない為、リハビリ代わりに最近話題のまどか☆マギカでSSを書いてみることにしました。
とりあえずコンセプトとしてはQBの内面魔改造再構成といったところでしょうか。
このSSは「もしもQBが営業に興味を示さなければ」を想定して書いております。
後、ハッピーエンドに向かいやすくする為に少しだけほむらのステータスも上昇させていますが、まあ彼女は元々強いのでそこまで派手な変化ではありません。

とりあえず前作「マッスル×マッスル」ではややふざけすぎた為、今回はシリアス5、ギャグ5くらいで行こうかと思っていますが、手違いで比率を間違えるかもしれません。
それでは、気が向いたらお付き合い下さいませ。



[27019] 第二話
Name: ファイヤーヘッド◆99432fa5 ID:054727e8
Date: 2011/04/10 19:59
 それは、いつもと変わらぬ、いつも通りの営業のはずだった。

 彼……インキュベーターは宇宙生物である。
 この地球とは異なる、遥か遠い異星からやってきた存在。
 その目的は大きく分けて三つ。
 一つ、思春期の少女に契約を持ちかけ、魔法少女になってもらう事。
 二つ、彼女達が魔女となるように誘導すること。
 三つ、魔女になった際の絶望の感情エネルギーを回収すること。
 これらは、宇宙の為に必要な事だ。
 “感情”という彼等にはない未知のエネルギーを使う事で宇宙のエントロピーを伸ばす事が出来る。
 要約してしまうならば、宇宙の為に思春期の少女を殺すのが彼等の仕事だ。

 彼等インキュベーターは各地に散らばり、それぞれ担当地区を決めて行動している。
 インキュベーターは高い運動能力を持たない。
 だがそれでは全国に星の数程いる少女達を効率よく魔法少女にしていく事は出来ないし、素質を持つ少女を探すのだって一苦労だ。
 だからこその人海戦術というわけである。

 彼もまた、己の担当地区の中で素質のある少女を探す一匹のインキュベーターだった。
 無害なマスコットを装い少女達に契約を持ちかけ、魔女を狩らせて、彼女達が魔女になればエネルギーを回収しまた別の少女に狩らせる。
 そんなサイクルに疑問すら抱かず、その日もまた一人の素質ある少女に契約を持ちかけた。

 彼女は、周囲から避けられている少女だった。
 というのも、彼女の趣味が原因だ。
 漫画やアニメ、アダルトゲーム。そういったものに手を伸ばし“萌え”というよくわからないものを追求する、いわゆる“オタク”であった。
 一定の限られたコミュニティに属し、現実から目を背け己の世界に閉じこもる。
 現代日本において別段珍しくもない存在であり、インキュベーターもそれに思う所はなかった。
 むしろそういう自己に埋没するタイプは他よりも早くソウルジェムを濁らせて魔女になってくれる為有難くすらある。
 インキュベーターは早速彼女に契約を持ちかけ、彼女は案の定二つ返事でOKを出した。
 実に容易いものだ。大抵の少女はこの奇跡という餌に簡単に食いついてくれる。
 ここまでは別に珍しくもなんともない事だった。
 問題は、この後。彼女の願った願い事にこそあった。

『皆がもっと私に理解を示してくれるようにしてほしい! そうだ、私の持つ萌えへの熱い気持ちを理解できるようになればいいんだ!』

 それが彼女の願いだった。
 まあ、たまにこういう願いはある。
 例えば別の区域では『皆が親父の話を真剣に聞くようになって欲しい』と願った少女もいた。
 つまり前例はあるわけだ。
 だからインキュベーターはその願いを叶えてやり、彼女を魔法少女とし、しばらくの間彼女の家に滞在した。
 新人魔法少女は死に易い。
 それは経験不足だったり、初めての戦いで足が竦んだりと要因は様々だ。
 だがそれはインキュベーターとしては望む所ではない。
 何せ魔女になられる前に死なれてはエネルギーが回収出来ないからだ。
 その為最初のうちは彼等がサポートし、戦いの中でアドバイスを送る。
 そうして彼女達が一人でも戦えるようになったと判断した時にまた新しい少女を探して行動を開始するのだ。

 だが、その彼女との同居生活がインキュベーターを変えた。
 彼女の願いによって生まれた能力。それは“萌えへの熱い気持ちを理解させる”というものだ。
 その彼女とインキュベーターは一ヶ月近く共に暮らし、毎日のように“萌え”について聞かされた。
 それはもう、耳にタコが出来るくらいに聞かされた。
 馬鹿の一念岩をも通す。オタクの執念インキュベーターをも通す。
 何ということだろう。
 彼女が毎日奮う熱弁は遂にインキュベーターにすら届き、彼の中に“萌え”の確かな定義を作り出してしまったのだ。
 
 その後彼女の元を離れた彼は、既に他のインキュベーターとは大きく異なる存在と化していた。
 暇さえあれば他人に見えないのをいい事に少女達のスカートの中を覗き込み、ネットカフェに忍び込んではエロサイトを閲覧し、ある時は銭湯や温泉の女湯にも忍び込み……。
 もはやそれはインキュベーターではなかった。言うならば“淫”キュベーターとでも呼ぶべき変態モンスター。

 女の子可愛い、きゅっぷぃ。
 貧乳可愛いきゅっぷぃ。巨乳触りたいきゅっぷぃ。
 パンツは白に限るきゅっぷぃ。でも黒も捨てがたいきゅっぷぃ。
 種族の違いが何のその、萌えの前では無力ですきゅっぷぃ。
 きゅっぷぃきゅっぷぃきゅっぷぷぃ。

 それがほむらが出会った、感情を持つインキュベーターの正体であった。



*



 それは、荒廃した町のようであり、世界の終末を思わせる不吉な空間であった。
 空は暗くよどみ、一条の日の光さえ差さない。
 建ち並ぶビル郡は崩れ、あるいは傾き、あちこちからは巨大な木がいくつも生えている。
 人の気配は一つとしてしない。
 まるでゴースト・タウンだ。
 彼女、鹿目まどかはその世界を見て思う。
 なんて寂しくて、なんて救いのない世界なんだろう、と。

 その中で唯一人だけ動く人間がいた。
 背中辺りで左右に分かれた、特徴的な髪型をした黒髪の少女だ。
 その紫の瞳はナイフのように鋭く、ただ立っているだけだというのにその姿には凛々しさが感じられる。
 まどかの通う学校の服と少し似ている、セーラー服のようにも見える服を着ており、その手には銃を握っている。
 彼女は空を睨みつけると、跳躍。
 向かう先にあるのは、巨大な歯車だ。
 大きさにして凡そ三十メートルはあるだろうか。
 青と白の逆さにしたスカートのようなものに覆われており、常に休むことなく歯車は回り続ける。
 下へ視線を移してみれば、青と白のドレスを着た女性が見え、ここでようやくこの歯車が上下逆になった女性だと気が付いた。
 頭にはヴェールを被り、髪はない。
 そう、それは足の代わりに歯車がある、逆さまの女性だったのだ。
 その後ろには虹色に輝く華のような魔法陣があり、これまた常に回転し続けている。
 それはまるで終わる事のない運命を象徴するかのような、そんな不吉さをまどかに感じさせた。

 荒廃した世界の中、少女は独りで歯車に立ち向かっていた。
 もう護るべきものはないというのに。何もないその世界で、逃げ出す事もせずに彼女は戦っていた。
 銃弾をばら撒き、爆弾を投げつけ、木々の間を跳び移り必死に歯車との距離を詰める。
 歯車の放つ炎を避け、投げつけられたビルの上を走り、歯車の上に飛び乗って両手からマシンガンを取り出したと思った瞬間には攻撃を開始していた。

 発射! 発射!! 発射!!!
 銃から次々と弾を吐き出し、歯車にダメージを蓄積させていく。
 歯車もやられっぱなしではない。炎を出し、触手を伸ばし、彼女を叩き落そうとする。
 だが彼女は歯車の上で踊るように嵐のような攻撃を避け、かすらせ、身体が血に染まって尚攻撃を止めない。
 マシンガン。ショットガン。爆弾。
 次々と武器を代え、銃弾が尽きると同時に捨てて次の武器を出す。

「頑張って……っ!」

 まどかは手を強く握り、彼女へと声援を送る。
 すると彼女はまどかに気付いたのか、ハッとした顔になり、その隙を突かれて歯車に弾き飛ばされた。

「ああっ!?」

 ビルの側面に激突し、苦痛に顔をしかめる。
 そこに追い討ちのように炎が放たれるも、少女は次の瞬間そこからいなくなり、別の場所へと移動していた。
 手に構えるのは、少女の手には大きすぎる兵器、RPG-7。
 日本においては対戦車ロケット弾発射機と称される事もある武器だ。
 凶暴な現代の火器が火を吹き、歯車を爆炎に包む。
 更に跳躍。くるり、と回転して爆弾を投擲し、続けてマシンガンを発射。
 “ぱららららっ!”というタイプライターのような音が響いたと思った瞬間、爆弾は次々と連鎖爆発し、歯車を傷つけていった。
 だがそれでも歯車は止まらない。
 急速に横回転を始めたと思ったら、彼女に向かって突進。
 彼女はそれを再びその場から消えることで回避するが、歯車が全方位に向けて滅茶苦茶に放った炎のうちの一発に被弾し、木の上に落ちる。
 だがそれでも彼女は戦いを諦めない。袖から銃を二丁取り出すと、それを連射。
 歯車は少しずつ欠けていくが、少女のダメージの方が大きい。
 このまま戦いが続けば先に力尽きるのは少女だろう、ということが理解できてしまう。

「そんな、こんなのってないよ……あんまりだよ!」

 何故彼女は独りなのだろう。
 何故誰も彼女を助けようとしないのだろう。
 たった独りであんな物と戦うなんて、あんまりだ。
 
『仕方ないよ。彼女一人では荷が重すぎた。
けれど彼女も覚悟の上だろう』

 声が、聞こえた。
 振り向けばそこにいたのは白い小さな生き物だ。
 兎のような、猫のような、そんな見たこともない不思議な生物へとまどかは恐る恐る尋ねる。

『諦めたらそれまでだ。けれど君なら運命を変えられる。
避け様のない滅びも、嘆きも、全て君が覆してしまえばいい。
その為の力が、君には備わってるんだから』
「本当、に? 私なんかでも、こんな結末を変えられるの?」
『勿論だよ』

 まどかの質問に頷き、白い生き物は可愛らしく小首をかしげる。

『だから、僕と契約して魔法少女に……』

 その、次の瞬間だった。
 突然明後日の方向からもう一匹の白い生物が飛来し、先にした白い生物を弾き飛ばした!

「え?」

 先にいた白い生き物は空の彼方まで吹き飛ばされ、そこに二匹目の生き物が着地する。
 突然の出来事に唖然とするまどかの前で白い生き物は振り向き、尻尾を犬の如く高速で振りつつ、鼻息荒くこう言った。



『そんなのどうでもいいから僕にパンツ見せてよ!!!』



*



「……酷い夢」

 まどかの起床第一声がそれであった。
 なんだろう、今の夢は。
 途中までは何かこう、絶望の世界に立ち向かう魔法少女物、と言う感じだったのに最後の最後、一番いい所で台無しにされた。
 何よ、パンツ見せろって。あんなの絶対おかしいよ。

  鹿目まどかは極々平凡な中学二年生の少女だ。
 魔法少女でもなければ、あんな荒廃した世界に住むわけでもない。
 夢の中でくらいヒーローをやってみたかったなあ、などと思いつつベッドから起き上がり、洗面台へと向かう。
 顔を洗い、歯を磨いて母と一緒にうがいを済ませた後に学校の制服へと着替える。
 その後母の薦めで赤いリボンで髪を結わえ、父の作った朝食で腹を満たしてから家を出た。

 外に出れば二人の親友、美樹さやかと志筑仁美と出会い、じゃれ合いながら登校。
 彼女達の通う見滝原中学校は少し変わった学校だ。
 通常の学校と違い、教室などの壁が全てガラスなっており、教室の外から中が見えるようになっている。
 これは教師などが生徒の姿をよく見れるようにする為だという。
 始業時間が始まれば担任が「卵の焼き加減にケチをつけるような男とは交際しないように」などと授業と全く関係のない事を言い出し、それだけで“今回も”失恋したのだとわかった。
 今回は付き合って三ヶ月と結構長持ちした方なのだが、相手の男が「卵は半熟に限る」という無意味なこだわりを持っていたため破局してしまったらしい。

「あー、あと転校生紹介しまーす」

 いや、普通そっちが先だろう。
 生徒達は一斉に心の中で突っ込みを入れ、その彼女達の前で一人の少女が教室へと入ってくる。
 艶のある長い黒髪は背中で二つに分かれ、整った顔立ちは鋭利さを感じさせる。

「うわっ、すげー美人じゃん」

 まどかのすぐ後ろの席に座るさやかがそう漏らし、周りからもほう、といった感嘆の声が聞こえる。
 美人。そう、確かに美人だ。
 それこそ、このクラスで最も男にモテる仁美よりもその容姿は上かもしれない。
 だが、まどかはそれとは全く別の所で驚いていた。

 あの子、夢の中に出てきた子……?

 そう、今朝見たあの夢の世界で歯車と戦っていたあの少女そのものなのだ。
 分かれた黒髪も、その鋭い目も、全てが一致している。

「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

 どうやら暁美ほむら、という名前らしい。
 少し変わった、だが格好いい名前だなとまどかは思った。
 そして、その格好いい名前に恥じない凛々しさがある。
 名は体を表す、とは誰の言葉だったか。まるで彼女の為にあるような言葉だ。
 私なんかとは大違いだなあ、と。
 そう思うと、少し気分が沈んだ。



 彼女は、本当に凄い転校生だった。
 転校初日だというのに授業についていくどころか、教師の出す問題にスラスラと答え、ホワイトボードに難解な……少なくとも、まどかにはサッパリわからない……計算式を書き、教師を感嘆させた。
 体育となれば高飛びで見事な跳躍を見せつけ、その高さは国内記録すらも塗り替えかねないものだった。
 文武両道、才色兼備。
 まるで非の打ち所が見当たらない完璧な少女。
 それがまどかが彼女、暁美ほむらに抱いた印象だった。

 そして休み時間。
 案の定というか、好奇心旺盛なクラスメイト達は揃って暁美ほむらの元へ詰め寄った。
 元々転校生など珍しい上に、滅多に見ない美人とくればこれは予期されて然るべき光景だっただろう。
 ほむらもまた、その剣幕に気圧されることなどはなく、次々と出される質問にまるで最初から予想していたかのように手短に、かつわかりやすく答えていく。
 同じ年頃でもああまで違うものなのか、とまどかは思う。
 勉強も運動もいま一つで何のとりえもない自分のような人間もいれば、彼女のように何でもこなせる人間もいる。
 嫉妬などはないが、ただ純粋にすごいなあ、などと思ってしまう。

 そんな事を考えていると、突然声をかけられた。
 声の主は、まさに今頭の中を占めていた転校生その人だ。



「鹿目まどかさん。貴女、保険委員よね? 連れていってもらえるかしら……保健室に」

























淫QB『萌えはエントロピーを凌駕するんだ!』
原作QB『わけがわからないよ!』



[27019] 第三話
Name: ファイヤーヘッド◆99432fa5 ID:054727e8
Date: 2011/04/12 19:36
 見滝原中学校の廊下を二人の少女が歩く。
 暁美ほむらが先行するように前を歩き、その後を鹿目まどかがついていく。
 これは少々奇妙な光景だ。
 ほむらは転校生であり、この学校の廊下を歩くのは初めてのはずである。
 なのに、保険委員であるまどかの案内を必要とせず、最初から道がわかっているかのように歩いている。
 それもそのはず、彼女はこの学校の構造を把握し切っている。
 幾度もやり直し、幾度も同じ道を通った。
 保健室への道など、まどか以上に熟知している。
 つまり保険委員の案内など最初から必要としていないのだ。
 それでもまどかをここに連れてきたのは、少しでも彼女と言葉を交わしたいという小さな望みと、どうしても伝えたい事がある為だ。

「あ、あの、暁美さん……?」
「……ほむらでいいわ」

 彼女に暁美さん、などという他人行儀な呼び方をされると悲しくなってしまう。
 もし叶うのであれば、“昔のように”親しみを込めて気軽に読んで欲しい。
 だがそれは叶わないし、叶ってはいけない。
 己のいるこの戦いの世界へ彼女を巻き込まない為にも、一定以上の距離を縮めてはならない。

「あの、なんで私が保険委員だって知ってたのかなあ、って」
「早乙女先生に聞いたの」

 歩きながら、周囲を見る。
 ガラス張りの、中身が見える教室の壁はまるで外から監視されているかのようで、酷く居心地が悪い。
 生徒達は気にした様子もないが、その様はまるで囚人だ。
 同じ時間を繰り返す時の囚人である自分が通う学校としては最高に皮肉が利いていて相応しい。
 そんな皮肉じみた思考に自分で嫌気が差す。
 ああ、昔はこんな考え方しなかったのに、と。

「あの、その、ほむらちゃんって……変わった名前だよね」

 やめて。
 その先を言わないで。
 ほむらは拳を握り、次に彼女が言うであろう言葉に備えて唇の端を噛む。

「ああ、変な意味じゃなくってね……格好いいなあって」
──ほむらちゃんって、格好いい名前だよね──

 ああ、駄目だ。
 初めて出会った時の事を思い出して、泣き出しそうになる。
 今すぐに彼女の胸に縋り付いて、“私の事を思い出して”と喚きたくなる。
 心を鎧で隠し、情も捨て去ったはずなのに。それでも彼女の言葉だけはそんなものを無視して心の中に入ってくる。作り上げた今の“強い自分”を容易くかき乱し、弱さを露呈させる。

「……鹿目まどか」
「え、あ、はい!?」

 もう限界だ。
 これ以上彼女と話していたら、彼女に甘えてしまう。
 弱さを見せてしまう。
 だから必要な事だけを述べて、早くここから離れなくては。

「貴女は家族や友達の事を大切だと思っている? 日常を尊いものだと、考えている?」

 答えのわかりきった質問だ。
 彼女はいつだって、友達や家族を大切にする少女だった。
 そして自分を大切にしない少女だった。
 いつもいつも、どんな経過を経ても最後には自分を犠牲にしようとする。
 そんな彼女が何よりも愛しく……何よりも憎い。

「勿論、大切だと思ってるよ。家族も友達も、皆大好きだもん」

 強い意志を感じさせる、澄んだ目で言い切る。
 ああ、やはり彼女は強い。そして優しい。
 そしてこんな彼女だからこそ、今度こそ守って見せると、何度でも誓いを自分に課すことが出来る。

「その言葉が本当ならば、この先何が起ころうとも“自分を変えよう”だなんて思わないで。
さもなければ、貴女の大切なものを全て失う事になる」

 まどかはまどかのままでいて欲しい。
 日常のどうでもいい事で一喜一憂し、殺し合いなどとは無縁の世界で大切な人達と笑い合っていて欲しい。
 たとえそこに自分の姿はなくとも。
 それでも、彼女には笑って生きていて欲しい。

「貴女は鹿目まどかのままでいればいい。今までも、そしてこれからも」



*



『ふぅ……』

 人気のない建物の中で一匹の獣が満足そうに溜息を吐く。
 その周囲には何に使ったのかも不明なティッシュが散らばっており、微妙に変な匂いがしている。
 そして彼の前にはノートパソコン(盗品)があり、そのディスプレイにはエロゲヒロインの裸体が映っていた。

『やっぱりセイバーはいい。僕の中の至高のきゅっぷぃだ』

 彼は器用にキーボードを叩くと、フォトショップを開く。
 そしてどこかのいかがわしいサイトから拾ってきたヌード写真を加工し、その首の上にほむらの頭を合成し始めた。
 彼女はガードが固くて全然風呂に入れてもらえないが、それならそれで僕にはパソコンという文明の利器があるのだ。
 さて、では第二ラウンドを始めよう。

「何をしているのかしら?」

 背後から声が響き、次の瞬間千を超えるお宝画像を保存していたマイパソコンが砕け散った。
 後ろを振り返れば、そこには学校の制服を着たほむらが立っており、その手に握った銃は煙を上げている。

『僕のマイパソコンがあああああ!?』

 キュゥべえに涙を流す事は出来ない。
 だがもし涙腺などというものがあれば、きっと彼は滝のような涙を流していた事だろう。
 バンバンと地面を叩き、地面を転げまわってから彼は叫んだ。

『今のはまずかったよ、ほむらあ! よりにもよって僕のパソコンを壊すなんてどうかしてるよ!』

 この女、もう許さん!
 今この場できゅっぷぃしてくれる!
 そう怒りに燃えて耳を伸ばしたキュゥべえだったが、額に銃口を突きつけられてあえなく意気消沈した。

「黙りなさい」
『Yes、Boss』

 キュゥべえに戦闘能力はない。
 正面切って戦えば時間停止を使える上に現代兵器を多数所持しているほむらに太刀打出来るはずもないのだ。

「で、今何をしていたのかしら?」
『ほむらのヌード写真を作ろうとしていたのさ』

 瞬間。殺気を感じたキュゥべえは横に跳び、ほむらの指が躊躇なく引き金を引いた。
 間一髪だ。
 もし回避が後一秒遅れていたら命はなかっただろう。

「……殺すわ」

 やばい。この女マジだ。
 目が全然笑っていない。いつも笑ってないけど。
 このままでは僕は殺されてしまう!
 そう判断したキュゥべえは普段からは信じられない機敏さを発揮し、ほむらから逃げ出した。
 その後をほむらも慌てて追うがなかなか追いつけない。

『助けてセイバー! なのは、フェイト、はやて!
セシリー、ええとこなた、ハルヒ、ルイズうわあああああん!』
「諦めなさい。貴方はどっちかというとそれらに駆逐される側よ」

 思いつく限りの少女に助けを求めてみるが、当然救いの手は来ない。
 当然だ、それらは二次元の産物である。実在するわけではない。

『えーとえーと、鹿目まどかああああ!』
「!」

 この淫キュベーター、よりによって一番呼んではいけない子を!
 ほむらの中で怒りの炎がメラメラと湧き出し、走りながら銃口を向ける。

『もしかして地雷踏んだ!?』

 ソーコムMk23。
 全長245mm。重量783gのハンドガンだ。
 ご丁寧にサイレンサーまで取り付けてある。
 とはいえ、先ほどは勢いに任せて殺してしまいそうになったが、よく考えれば殺すのは得策ではない。
 これを殺して、それでその後に自分の知るいつも通りのインキュベーターが来ては面倒だ。
 こいつは女の敵ではあるが、従来のインキュベーターに比べればまだマシなのである。
 だからとりあえず足や耳でも撃ち抜いて動きを止めればいい。
 そう思ったのだが、これがなかなか当たらない。
 いっそ魔法少女に変身してしまおうかとも思ったが、こんな奴相手に魔力を使うのは勿体無さ過ぎる。

 だがその躊躇いがまずかったのだろう。
 もう少しで追いつける、という所に来て遂にまどかが姿を見せてしまった。
 キュゥべえは彼女を見つけるや否や、その胸に飛び込んだ。

『助けて! 殺される!』

 まどかはキュゥべえを抱きかかえるが、それを見て更にほむらの怒りは大きくなった。
 まどかとキュゥべえが触れるなど、一秒だってあって欲しくはない事なのだ。
 だがほむらの事情を知らないまどかはキュゥべえを守るように更に強く抱いてしまう。

「まどかそこをどいて。そいつ殺せない」
「ほむらちゃん!?」

 厄介な事になった、とほむらは歯噛みする。
 キュゥべえとまどか。一番接触させたくない二人が接触してしまった。
 どうにかしたい所だが、今攻撃を行うとまどかを傷つけてしまう。

「そいつを渡しなさい」

 持っていたソーコムをスカートの内側に付けたホルスターに差し、代わりにエアガンを取り出してその銃口をまどかへと向ける。
 見た目だけは本物と変わらない、よく出来た玩具だがまどかに本物との区別がつく筈もないだろう。
 実際に撃つ気はないし万一誤砲しても弾の入っていないエアガンだ。何の問題もない。
 むしろこんな玩具でもなければ、たとえ撃つ気がないとしてもまどかに銃を突きつけるなど出来るものか。

「だ、駄目だよ! こんな子を苛めちゃ……」

 ここでまどかは胸元にある違和感に気付いた。
 はて、何だろう、と思い下を見る。
 そして、顔を引きつらせた。

『ハァハァハァ、たまらないよまどか! この控えめな感触がなんともきゅっぷぃだ!』

 抱きかかえていた白い獣が鼻息を荒くしながら顔を胸に摺り寄せている。
 表情こそ全く変化していないが、逆にそれが怖い。

「い、いやああああ!?」

 まどかは嫌悪感に耐え切れずにキュゥべえを投げ捨ててしまい、すかさずほむらがそれをキャッチ。
 耳を掴んで思い切り地面へと叩きつけ、さらに踏みつけた。

『僕を放り投げるなんてどうかしてるよ』

 靴の底でグリグリと踏みにじられながら、何故か嬉しそうに尻尾を揺らす。
 駄目だこの淫獣。早く何とかしないと。
 そう思いつつもほむらは更に強く踏みつける。
 とりあえずまどかの清らかな胸に薄汚い顔を擦り付けた罪は死しても尚ありあまる。
 その為死なない程度に踏みつけているのだが、逆に喜んでしまっている。
 もうやだこいつ。

「まどか!」

 そこに親友であるさやかが駆けつけ、キュゥべえを踏みつけているほむらと震えているまどかを見て首をかしげる。
 これ、どういう状況? と言いたそうな顔だ。

「この淫獣が迷惑をかけたわね。まどか、大丈夫?」
「う、うん。その、私の事守ろうとしてくれてたんだね……」

 よくわからないが、どうやら転校生はまどかの味方らしい、とさやかは判断した。。
 そしてキュゥべえは一瞬でまどかの信頼を失ってしまったようだ。
 これはもしかしなくても、今までほむらが見てきた中で一番営業が下手なキュゥべえかもしれない。

「あの、とりあえずどういう状況か私に説明してくれない?」

 さやかがまどかの隣に立ち、説明を求める。
 ほむらとしては彼女……美樹さやかにいい感情を持っていない。
 毎回毎回、魔女になっては事態を悪化させる困った奴。それが彼女が持つ美樹さやかへの印象だ。
 個人的にその人柄は嫌いではないのだが、魔法少女に関わるとなると最悪と言わざるを得ない。
 半端な正義感を持ち合わせ、頑固で人の忠告を聞かず、最後にはいつも勝手に破滅して周囲を巻き込んでいく。
 魔法少女としては致命的な少女。それが美樹さやかだ。
 だからほむらとしては彼女を関わらせたくはないのだが、こうなってはそれも難しいかもしれない。

「それは……」

 とにかく、何とか彼女達をこの件から遠ざけないと。
 その為に口を開き……ほむらは、嫌な気配を感じて振り返った。

「こんなときに!」

 迂闊!
 己の甘さに呆れ、ほむらはまどか達を守るように背を向ける。
 見れば空間が歪み、捩れきっている。
 あちこちから奇妙な物体がワラワラと集まり、ほむら達を包囲していく。
 それは例えるならば蝶から生えた花、といったところか。
 ヒラヒラと舞う黒い蝶の頭に当たる部分から茎が伸び、花に当たる部分には人の顔。
 だが顔といっても髪も眉も目も鼻も口も耳もない。
 あるのは、国民的に有名なアクションゲームの主人公である、某赤い配管工男とそっくりの髭のみだ。
 「マンマミーヤ」とか言い出しそうである。

「な、何!? なんなのこれ!」

 まどか達が怯えたように身を縮こまらせ、ほむらは意を決したように魔法少女へ変身しようとする。
 彼女達に魔法少女というものを見せたくはないが、状況が状況だ。
 だがどうやらその必要はなかったらしく、銃声が響くと同時に髭……魔女の使い魔達が吹き飛んだ。

「マンマミーヤ!」

 更に銃声が二度、三度と鳴り響き、使い魔達が消し飛ばされていく。
 無論これをやっているのはほむらではない。

「まさか……」

 銃声のしたほうを見る。
 この区域にいて、銃で使い魔を攻撃する存在。
 そんな人物は、ほむらの知る限り一人しか該当しない。

「あら、もしかしてお邪魔だった?」

 そこにいたのはまどか達よりも若干年上の少女だった。
 黒い帽子を頭にちょこん、と乗せ黄金の髪を黄色いリボンで留めている。
 垂れた髪はクルクルとロール状に巻かれ、背中辺りまで伸びている。
 やや自己主張の激しい胸元も黄色いリボンで留め、スカートは薄黄色。
 温和そうなその目はやや垂れ目気味で、口元は微笑みの形を作っている。
 その両手に握られているのはマスケット銃だ。

 それは、ほむらの知る限り、佐倉杏子と並ぶ現役魔法少女最強の一角。
 かつての先輩であり師。



「巴マミ……」


























                     炎
                     ○<もう何も怖くない!
                      く|7
                   ┌'弋
                       ,亅  |
                 // \|
                //    \    へ
               //.        \ ///
              くx  ◎       // \
                \      // /  .\
                 \   // /  /  \
                  ヽ// /  /  /  \
                  //        /  / \
                 く/\          /  / \
                     \          /  / \
                      \            /  / \
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[27019] 第四話
Name: ファイヤーヘッド◆99432fa5 ID:054727e8
Date: 2011/04/10 19:58
「それで、一応確認するけど貴女も戦えるのよね?」
「心配は不要よ」

 マミと背中合わせになり、ほむらは袖から二丁の銃を取り出した。
 ベレッタM92を彼女独自に改造したカスタム銃だ。
 魔女すら殺せる爆弾を自作できる彼女にとって銃の改造くらいはお手の物だ。
 セミオート、フルオートでの連射が可能でマガジンの底には、打撃用の小さな突起が出るギミックが内臓されている。
 その二丁の拳銃を持ったまま使い魔達の密集している箇所へ跳躍、着地。
 銃という武器を持ちながら、あろうことか己の身を敵の眼前に晒す行為は端から見れば愚行にしか見えないだろう。

 だがそれは間違いだった。
 向かってくる使い魔達の動きをこれまでの戦闘経験で得た統計に基付き予測し、常に死角へと回り込む。
 そしてある時は銃で殴り、またある時は零距離で撃ち抜き、最小限の動きで以てして最大限の戦果をあげていく。
 攻撃される前に撃つ。攻撃動作に入ると同時に撃つ。相手が何かしらの行動に出る前に撃つ。
 前を、左右を、後ろを。
 まるでカンフー映画のような機敏な動きで次々と撃ち抜き、一方的に駆逐していく。
 ほむらは魔法少女の中でも最強レベルに位置するが、それは決して魔法少女としての強さではない。
 むしろ彼女は魔法少女としては極めて弱い部類に属されてしまう。
 変身してもこれといった攻撃手段を持たず、身体能力の向上も他と比べると低い。
 彼女の強さを支えるのは魔法少女としての力ではなく、自ら作り出した高火力の爆弾と経験によって培ってきた彼女自身の戦闘理論。
 そう。
 時間操作を度外視すれば、彼女の戦闘力は変身前と変身後でそう大差はない!

「やるじゃない。この程度は変身するまでもないってこと?」

 ヒュウ、と口笛を吹きマミは自らの周囲に無数のマスケット銃を呼び出す。
 そして攻撃開始。
 マスケット銃を手にし、発射すると同時に投げ捨てて次の銃を手に取り撃つ。
 これら一連の動作を一秒以内に終らせるその様は、まるで一つの演舞だ。
 彼女もまた歴戦の魔法少女。
 幾度にも渡る戦いで培った彼女独自の戦闘理論を持ち、それに従いマスケット銃で敵を蹴散らしていく。
 近づいて来る使い魔は銃で殴り飛ばし、撃ち、弾がなくなった銃を投げて使い魔にぶつける。
 こちらもほむらとは違えど、銃を用いた攻防一体の舞いで使い魔を圧倒していく。

 黒い少女は無骨に、鋭く。黄色の少女は優雅に、美しく。
 互いに背中を向けている少女二人は銃弾を次々と発射するが、そのうちの一発として味方に当たることはない。
 フレンドリー・ファイアしない事が最早奇跡。そうとしか言えない銃弾の嵐の中を臆した様子もなく二人は舞い続ける。

 最後に二人はクルリ、とターン。
 そして何を血迷ったのか互いに銃口を向けあった。

「何をっ……!?」

 まどかが息を呑む中、互いの背後から使い魔が飛び掛る。
 それと同時に両者共に発砲。
 放たれた銃弾は互いの頭上を経過し、それぞれの背後に迫っていた使い魔を撃ち落とした。

「……変身なしでここまでとはね。貴女とは敵対したくないものだわ」
「それには同意するわ」

 マミは穏やかに笑い、ほむらは無表情のまま銃を袖の中へ仕舞う。
 互いに敵意がない事を確認した為だ。
 もしキュゥべえを追っている最中に出会っていたら険悪になっていたかもしれないが、そういう意味では実にベストなタイミングで遭遇したと言えるだろう。

「ところで、キュゥべえの頭に足跡があるのだけれど、これは貴女がやったのかしら?」
「そうよ」
「理由を聞いてもいいかしら?」

 穏やかな物言いだが、わずかに目が鋭くなった事をほむらは察した。
 彼女、巴マミはキュゥべえを命の恩人と考えており、また友達と思っている。
 だからこのような仕打ちが許せないのだろう。
 それに対しほむらは無言でキュゥべえを持ち上げると、マミの胸に放り投げた。

『きゅっぷぃ! なんという柔らかな感触! これは革命だよマミ!
中学生でこんなけしからん胸をしてるなんてどうかしてるよ!』

 胸に顔をすり寄せて鼻息を荒くしている変態生物にマミの顔は引きつり、気付けば無意識のうちに投げ捨てていた。

「ご理解頂けたかしら」
「ええ、とっても」

 はて、キュゥべえとはこんな奴だっただろうか、とマミは疑問に思うが目の前にいるのは間違いなくキュゥべえだ。
 姿も声も自分の知るそれと一致するし、疑う余地はない。

「あの……」

 おずおずとしたまどかの声に反応し、二人と一匹は振り向く。

「その、助けてもらって有難うございます」
「転校生もありがと! あんたがいなかったら私らどうなってたか」

 まどかとさやかの礼にマミは微笑み、ほむらはあくまで無表情を崩さない。
 もしかして私ほむらちゃんに嫌われてるんだろうか、などとまどかは少し不安になってしまった。

「ところで、あなたは?」
「ああ、自己紹介がまだだったわね」

 マミは「いっけない」などと言いつつ変身を解除し、制服姿となる。
 それはまどか達と同じものだ。
 それだけで彼女が同じ学校に通う生徒であるということがわかる。

「私は巴マミ。よろしくね」

 自己紹介を終えてからマミはキュゥべえを見る。
 そういえば彼女達はどうもキュゥべえの姿が見えているように思える。
 先ほど自分が投げ捨てた時なども目で追っていた。
 それが意味するところはつまり、彼女達にも魔法少女の素質があるということだ。

「ねえキュゥべえ。もしかしてこの子達も……」
『そうだね』

 よかった、ようやくいつも通りのキュゥべえになってくれた。
 そう安心するマミの前でキュゥべえはまどか達へと向き直る。

『まどか、さやか。実は僕、君達にお願いがあるんだ』

 キュゥべえはニコリ、と笑顔を浮かべて首を動かす。
 そして彼女達二人への“お願い”を口にした。



『君達のパンツが欲しいんだ!』



 その一秒後、少女四人の蹴りが同時に炸裂していた。



*



 その後マミの家に三人共呼ばれ、魔法少女や魔女についての説明が行われた。
 ここでわかったのは、やはりマミは一番重要な部分を知らないままだということだ。
 淫キュベーターのように何かしらのイレギュラーで知識などが変わっている可能性も危惧していたのだが、それはないらしい。
 だがそれは逆に言うならば事実を知り暴発する危険を孕んでいる事も意味する。
 その為ほむらはあえてマミの説明に補足などを入れることをせずに相槌だけを打っておいた。

 とりあえずマミとそれなりに友好的な関係が築けたのは大きい。
 これまでのループはどうしてもキュゥべえを巡って対立してしまっていた。
 マミは味方にすると頼もしいが敵に回すとこの上なく厄介な存在だ。
 その後、まどか達に魔法少女がどういうものか知ってもらう為魔法少女の体験ツアーをやる事になり、ほむらもそれに同意した。
 魔法少女として戦う事の恐ろしさを知れば彼女達も諦めるかもしれない。
 そうなればかなり自身の望み達成に近づく事が出来るだろう、と踏んだからだ。

 とは言え、ほむら自身はその体験ツアーへの同行を断っておいた。
 そこいらの魔女程度ならば別に二人いなくとも、マミ一人で片が付く。
 というより、彼女が負ける可能性がある魔女など数える程度しか存在しない。
 その数少ない存在……シャルロッテの時にだけ同行しておけば後はどうにかなるのだ。
 それよりも問題はマミを生存させた状態でどうやってまどかの契約を止めさせるか、だ。
 ほむらの知る限り、マミが生存しているとまどかが魔法少女になってしまう確率が極めて高く、逆にまどかが最後の方まで契約しない時はマミが早死にしている時だ。
 それというのもマミが生きていると、何か他人の為に役立ちたい、と考えているまどかが彼女に憧れて魔法少女になってしまう。
 死んでいる場合はマミの死に様に恐怖し契約を躊躇してくれるわけだが、これは避けたい。
 マミが生き残って、尚且つまどかが契約しない。これが最善だ。
 巴マミは強い。彼女がワルプルギスの夜まで生き残っていればそれだけで勝率がぐっ、と上がる。
 可能ならば助けたい存在だ。

 ……だが、現状で打てる手はなさそうだ。シャルロッテとの戦いの後にでもまどかを止めるしかないだろう。
 最悪の場合、分の悪い賭けになってしまうが真実の一端をマミに話してしまうしかない。

 マミ以外ならば、現れない時間軸もあるが佐倉杏子も戦力に加えておきたい。
 ほむらの知る限り魔法少女の中でも最も精神的に安定した少女であり、まどかを除けば真実を知っても壊れない唯一の存在だ。
 加えて戦力も申し分なく、マミにだって引けを取らない。
 能力はマミと比べてやや汎用性に欠け、防御が薄いという弱点もあるが、それを差し引いても彼女の攻撃力は魅力的である。

 美樹さやかは……正直いらない。
 スペックそのものは悪くない。むしろ佐倉杏子にすら比肩し得る。
 だが経験不足のせいで戦力は安定せず、ワルプルギスの夜までに鍛えるのも難しい。
 それどころか一度契約してしまえば後は下り坂を転がり落ちるように破滅へと向かい、しかもそれに他者を巻き込んでいく。
 ある意味キュゥべえよりも厄介な存在だ。

 ではそこで問題となるのはどうするか、だ。
 放置しておけば彼女は間違いなく魔法少女となってしまう。
 そして破滅へ一直線だ。
 まず考えられる手早い方法としては、志筑仁美か上条恭介のどちらかを消してしまう事である。
 志筑仁美がいなければ美樹さやかが失恋に気付くまでの時間を遅らせる事が出来る。ワルプルギスの夜を越えるまでの間ならば何とかなるかもしれない。
 上条恭介を消してしまえば、美樹さやかが契約する理由そのものがなくなる。
 だがこの場合は上条恭介を失ったさやかが自暴自棄になり、どう動くかが予測できない。
 しかしどちらの方法を用いても、きっとまどかが悲しむ未来に繋がるだろう。
 まどかの為ならば手段を選ばないと決めているほむらであるが、そのまどかが悲しむような事は極力避けたい。

「……何かないかしら」

 ほむらは思考を巡らす。
 何か、何かないのか。まどかが悲しまず、美樹さやかが契約しない。そんな方法が。
 その時、悩むほむらの視界に飛び込んできたのは白い淫獣の姿だ。

「…………」
『きゅっぷぃ、きゅっぷぃ』

 奴は相変わらずの変態ぶりで、道を行く女子学生などのスカートを覗き込んでいる。
 ほむらは思う。
 ああ、いっそ上条恭介があれくらいどうしようもない奴だったならよかったのに、と。
 それならば美樹さやかのほうから愛想を尽かし、彼の為に魔法少女になろうだなどと思わなくなるだろう。

「……!」

 そこまで考えて、ほむらは閃いた。
 そうだ、その通りよ。
 上条恭介がそういう奴ならいいんだ!
 美樹さやかが彼に愛想を尽かすような、そんな奴にしてしまえばいい!

 突破口が見えた。
 ならばグズグズしている暇などない。美樹さやかが上条恭介に接触する前に準備を終らせなくては!



*




「恭介ー」

 さやかが上条恭介のいる病室のドアを開け、中に入る。
 その手にはお見舞いの品とCDがあり、大事そうに抱えられていた。
 さやかは、上条恭介に恋をしている。
 ただの幼馴染ではない。自分を一人の異性として見て欲しいと思っている。
 そんな彼が苦しんでいるのは悲しいし、早く元気になってもらいたい。
 昔のようにまた彼の演奏を聞かせて欲しい。
 その為ならば自分は何だってするつもりだ。
 そんな乙女チックな想いを抱えて入室した彼女であったが、入った瞬間その動きは停止していた。
 彼女だけではない。
 中にいる上条恭介も止まり、その中を一人だけ……ほむらだけが動いた。

「……ごめんなさい」

 ほむらは恭介の前に人形を置く。
 それは服の着脱可能な美少女フィギュアであり、そっち方面の人間ご用達の品だ。
 続いて人形の服を脱がせ、恭介の右手を彼のズボンの中へと入れる。

「貴方に恨みはないのだけれど」

 更に容赦なくほむらは追撃をかける。
 彼の周囲に湿らせたティッシュを適当に転がし、枕元にセーラームーンやキューティーハニーなどといった人形を置いていく。
 これでセット完了。
 何も知らない者が見れば彼は人形の服を脱がせて自らのズボンに手を突っ込んでいる変質者にしか見えないだろう。
 そして美樹さやかは割と耳年増で、男の“そういう行為”がどういうものなのかを知っている。

「これも(間接的に)まどかを救うためなの」

 最後にほむら自らは窓から飛び降りて病室を後にし、変身解除。
 それと同時に時は動き出し、病室からはさやかの悲鳴が聞こえてきた。
 恋なんていうものは刹那の情熱のようなものだ。この年代ならば尚更である。
 時に美樹さやかのような刹那的な生き方をする人間ならばより一層その傾向が強い。
 これできっと百年の恋も冷め、恭介への熱もすっかり消えたことだろう。
 もし駄目ならばまた同じ事をしてやるまでだ。



 上条恭介。彼はこの日、社会的に死亡した。


























    , --‐―‐ 、
   /  「ニニニiヽ
   l i| |ノ/ノハノ))!
   | (| | ┰ ┰| |
   | ハN、''' - ''ノN<愚か者が相手なら私は手段を選ばない。
  ノノ /,}| {.》《} lヾ,ヽ
  ((バCく_#l_##j,〉D リ
       (__j__)
     炎
/人|||◕‿‿◕人\<選んでやれよ!?

【ベレッタM92ほむほむカスタム】
彼女が独自に改造したマシンピストル。
いくつもの機能を持ち、常に袖の中へ隠している。
袖の中には銃を必要時に射出する器具が装備されており、これは予備のマガジンを再装填するスピードローダーの機能も持っている。
この銃を使いこなす事で攻撃力は120%上昇、一撃必殺の技量も63%上昇する……らしい。

つまり、ぶっちゃけこういうこと↓

ガン=カタは拳銃を
総合的に使用する
格闘技である
  (゚д゚)
 (| y |)

この格闘技を
極めることにより…
  (゚д゚)y=- y=-
  (\/\/

攻撃効果は120%上昇
  (゚д゚)y=-
  (\/\
        \y=-

一撃必殺の技量も63%上昇
    ー=y―
       |
      (゚д゚)
ー=y_/| y |

ガン=カタを極めた者は
無敵になる!
ー=y   (゚д゚)   y=-
  \/| y |\/



[27019] 第五話
Name: ファイヤーヘッド◆99432fa5 ID:054727e8
Date: 2011/04/10 19:57
 まどかの動向を監視しつつ魔女を狩り続ける。
 そんな日々が数日続いたある時、ほむらは病院近くに展開されていた魔女の結界へと足を踏み入れた。
 甘ったるい匂いの漂う、好きになれそうもない場所だ。
 巨大なショートケーキが積み上げられ、地面にはポッキーが突き刺さり、至る所にお菓子が散乱している。
 佐倉杏子辺りならば喜びそうな場所だが、ここまでお菓子まみれだと胸焼けがしそうだ。
 これだけでも充分だと言うのに、この結界の主は余程お菓子が好きなのか使い魔達は飽きもせずにせっせとお菓子を運んでいる。
 赤い斑点模様のついた黒い卵のような胴体の中央に、青い渦巻き模様が描かれた白い顔が付いている。
 頭に被っているのは小さなナースキャップだ。

「間違いない、この結界は……」

 こんなお菓子だらけの結界を作り出す魔女など一体しか存在しない。
 お菓子の魔女シャルロッテ。
 その性質は執着。
 お菓子を無限に産み出す能力を持つが大好物のチーズだけは自ら生み出せないという奴で、そして巴マミを殺し得る数少ない存在である。

「早く合流しないと」

 ソウルジェムが輝き、ほむらを光が包む。
 ブーツ、ソックス、服が一瞬で切り替わり左手には盾が装着される。
 変身も慣れてしまえば早いものだ。ほむらのそれは巴マミなどの既存の魔法少女よりも効率を重視しており、瞬き一瞬の間に全工程が完了する。
 まだ戦っていなければいいのだが。
 ほむらはマミとまどかの無事を祈りつつ、その場から全速力で駆け出した。



*



 巴マミは、いつも独りだった。
 魔法少女になった事を後悔するつもりはない。あそこでキュゥべえと契約していなければ今の自分はなかっただろう。
 だがそれでも彼女はまだ中学生に過ぎない。怖いと思う心も、弱さも、その全てを克服できたわけではない。
 自分は誰かの為に戦っている。自分が戦う事で救われる人がいる。
 その事だけを心の支えとし、今にも崩れてしまいそうな弱い己を必死に繋ぎとめている。それが彼女の誰にも見せない本当の姿だ。
 だがそれでも独りになれば部屋の中で涙し、枕を濡らす。
 誰か側にいて欲しい。この擦り切れそうな心を温めてくれる優しさが欲しい。
 隣に立っていて欲しい、と。

「マミさんはもう独りじゃないですよ」

 差し出された小さな手を見る。
 鹿目まどか。魔法少女の才を持つ後輩。
 彼女がくれた言葉が何よりも嬉しかった。
 差し出してくれた手が、泣きたくなる程に尊いものに見えた。

「私なんかじゃ頼りないかもしれないですけど……私も一緒に戦っていいですか?」

 断る事など出来るはずもない。
 何故なら、これこそ本当に求めていたものなのだから。
 ようやく解放されるのだ。
 やっと、自分は独りではなくなるのだ。
 差し出された手を強く掴み、マミは涙を浮かべて微笑む。

「勿論よ。魔法少女コンビ、結成ね」

 ああ、もう私は独りじゃないんだ。
 もう暗い部屋の中で泣かなくてもいいんだ。
 なんだか今が夢のようで、幸せな気持ちで胸が一杯になる。
 そこに水を差すようにキュゥべえの声が響いた。

『マミヘルプ! グリーフシードが動きだした!』
「ええ、わかったわ」

 全く無粋な魔女だ、と勝手な事を思いつつもソウルジェムに手をかける。
 今日はこれからまどかの願い事を決めなくてはいけないのだ。
 チマチマと戦っている暇などない。

「オッケー、それじゃあ今日という今日は即効で終らせるわよ!」

 黄金の光に包まれ、マミの姿が変わる。
 スカートが切り替わり、ブーツとソックスが変化。
 続けてスカート、服が魔法少女のものになっていき、頭にはちょこん、と帽子が乗る。
 最後に胸元をリボンが締め、変身完了。
 変身時間一秒半。手には銃が現れ、クルクルと回す。
 そしていざ出陣、という所でそこに第三者の声が割り込んだ。

「待ちなさい、巴マミ」

 静かで、冷たい声だ。まるで感情というものを感じさせない、まどかとは正反対の氷のような声。
 それはつい最近共闘したこの町にいるもう一人の魔法少女のもの。
 出鼻を挫かれ、少々気分を害したようにマミはそちらを向いた。

「暁美さん、あなたも来てたの?」
「ほむら、ちゃん……」

 どうやら今日は前回と違い変身しているらしい。
 まどかはその姿を見て小さく息を呑んだ。
 それはあの夢の中で見た彼女の姿そのものだったのだ。

「今回の魔女は私が狩る」

 ほむらの言葉にマミは眉をひそめる。

「暁美さん。貴女とは確かに同盟を組んでいるけれど、獲物の横取りはお行儀が悪いんじゃなくて?」
「今回の魔女は今までとはわけが違う」

 火に油を注ぐ、とはこう言う事を言うのだろう。
 ほむらのその言葉が逆にマミの自尊心を刺激してしまい、見るからに不機嫌そうな顔となってしまった。

「それは私じゃ勝てない、と言いたいのかしら?」
「……貴女は強い。でも、その貴女でも危険な相手よ」

 低く見られたものだ、とマミは思う。
 これでも自分は魔法少女の中ではベテランだし、数多の戦いを潜り抜けている。
 音に聞く“ワルプルギスの夜”ならばともかく、そこじょそこらの……それも、産まれたての魔女になど負けるものか。

「随分過小評価されているわね、私も。
いいわ、ならその心配が杞憂だって教えてあげる」

 ついてらっしゃい、と言いそのままマミは歩き出す。
 それにまどかも慌ててついていき、ほむらも小さく溜息を吐いて同行した。

「それじゃあ気を取り直していくわよ!」

 病院の集中治療室のような“手術中”と書かれた扉を潜り、中へと踏み込む。
 そこは今まで以上に甘ったるく、一面生クリームで構成されているのではないか、と言いたくなる場所だった。
 マミは使い魔達の前へ躍り出るとマスケット銃を周囲に召喚。
 向かってくる使い魔達を片っ端から撃ち抜いた。
 右手で銃を取り、撃ち、投げると同時に蹴り飛ばして当てる。
 左手も銃を取り、撃ち、投げ捨てる。
 クルクルと回りながら全方位に対して攻撃と防御を行い、時には蹴り飛ばす。
 自分でも信じられないくらいに身体が動く。敵の動きが止まって見える。
 まるで負ける気がしない。

 ──身体が軽い。

「出番はないわよ、暁美さん!」

 今の自分は一味違う、とマミは確信する。
 思えば今まではいつだって、恐怖と向かい合いながらの戦いだった。
 心のどこかに暗いものがあった。
 今はそれがない。
 まるで心に羽でも生えたかのように、自分は満ち足りている。

 ──こんなにも幸せな気持ちで戦うなんて、初めて。

 両手に大砲を装備して一気に左右を吹き飛ばす。
 銃を次々と呼び出し、数百の使い魔を殲滅させる。
 舞うように、踊るように。それでいてマミは掠り傷の一つすら負わない。
 怖いくらいに絶好調だ。
 今ならばたとえワルプルギスの夜が来たとしても返り討ちに出来そうな気すらする。
 もう恐れるものなど、何一つとしてない。

 ──もう何も怖くない!
 ──だって。
 
 巨大な注射器の上に乗り、そこに巣食っていた使い魔達を撃ち落とす。
 足をかけて高く跳躍。
 数十メートル下へのダイブを行い、数百のマスケット銃を召喚、落ちながら一斉総射!
 弾丸の嵐が場を支配し、蹂躙し、駆逐する。
 そして着地した時、すでにその空間に使い魔は一匹として存在していなかった。
 ソウルジェムを見る。
 思わず笑みが浮かんだ。
 ここまで戦ったというのに、ここまで暴れたというのに、ソウルジェムには濁り一つない。
 心が満ちるとここまで強くなれるのか。
 今の自分はもう魔力消費すら克服している!
 マミは確信する。
 今の自分に敵はない。今日の私は無敵だ、と。
 
 ──だって、私もう独りじゃないもの……!

 跳躍。空中で後転してまどか達の前に着地し、ほむらを見た。
 その顔にはわずかに驚きのようなものが見えた。
 きっと彼女も、今の自分がここまで強いとは思わなかったのだろう。

「どう? これでも私が勝てないって思うかしら?」
「……油断は禁物よ」

 なかなかに強情な娘らしい。
 だが負け惜しみだ。
 マミは不敵に笑い、まどかの手を引いて駆け出す。
 魔女だろうがワルプルギスだろうが、ゴジラだろうがどんと来い。
 今の自分に勝てる存在などいるものか。

「マミさん!」
「おまたせ!」
『相変わらずいいおっぱいだ。走るたびにたゆんたゆんと揺れるのがたまらな……きゅべらっ!?』

 ようやく見付けたさやかの元へ駆け寄り、淫獣を蹴り飛ばしてから魔女を見る。
 全く無茶をする、と思う。
 何でも病院に刺さっているグリーフシードを見付けたから嫌がるキュゥべえと一緒にその場に残り、見張っていたらしい。
 何でも幼馴染がそこには入院しているらしく、その為どうしても守りたかったとか。
 そこまで必死になるとはもしかして大事な人なのだろうか、とテレパシーでからかったりもしたが、「それはない」とやけに冷めた声で返されたのが印象的だった。

「……あれが魔女ね」

 見付けた魔女は……なんというか、拍子抜けだった。
 椅子の上にちょこん、と乗ったピンク色のそれはまるで人形だ。
 頭は紙で包まれたキャンディのような形状をしており、中央には白い顔。
 顔には大きな瞳と小さな鼻、口があり愛らしい。
 短い手は服に包まれて隠されており、首には赤いマフラーのようなものが巻きついている。
 玩具として売れば小さい女の子に人気が出るだろう。そんな、おおよそ魔女のイメージからはかけ離れた存在がそこにいた。

 あんなのに私が負けるわけないじゃない。

 心の中で即座にそう結論を出し、マミは弾丸のような速度で飛び出す。
 距離を詰めマスケット銃で殴打。
 壁に激突した所を狙って両手足を撃ち抜き、最後に頭に銃口を突きつけて一発。
 この間、わずか三秒。
 続けてリボンで拘束して身動きを封じてから、特大の一発を放つベく最大の攻撃力を誇る大砲を呼び出した。

 これが彼女の必勝パターン。
 魔法少女となってから今日まで、どんな敵相手にも勝利してきた何よりも信頼に足る必殺の一撃。
 これで葬れなかった魔女は一体として存在しない。

「ティロ・フィナーレッ!!!」

 轟音が響き、黄金の光が吐き出される。
 弾丸ではなく高純度の魔力によって構成されるこの一撃はあらゆる防御を貫く彼女の切り札だ。
 シャルロッテもまたその例外ではない。
 マミの一撃は容易く彼女の腹部を貫き、ダメ押しとばかりにリボンで更に拘束。
 仮に大砲の一撃に耐えても、続くリボンの圧殺に繋がるという隙を生じぬ二段構えだ。

 勝った!
 マミはこの瞬間に勝利を確信していた。



 ずるり、と。
 シャルロッテの口から何かが吐き出された。

 それは黒く長い何かだ。
 大きな目と尖った鼻、そして巨大な口のついたアメコミにでも出てきそうなファンシーなモンスター。
 その胴体は恵方巻きのようにも見え、蛇のようにのたうっている。
 最初マミはそれが何なのかわからなかった。
 だって今ので勝負は終ったはずなのだ。
 ティロ・フィナーレは完璧に決まったのだ。
 だから、有り得る筈がない。

 大きく開かれた口が、今まさに閉じられようとしているなんて嘘だ。
 そのまま閉じると、自分の首が噛み千切られる位置にあるなんて嘘だ。
 もう、逃げる暇がないなんて……嘘だ。

 ここでようやくマミは現状を認識した。
 自分はここで、死ぬのだ、と。

 嫌だ。
 そんなのってない、あんまりだ。
 だってこれからでしょう?
 これから、ようやく自分は独りじゃなくなる。やっと希望を掴んだ。
 なのに、ここでお終い?

 嫌だ。嫌だ……嫌だ! 死にたくない!
 マミの心に死の恐怖がどっ、と押し寄せる。
 思い出さないように蓋をしていた過去の恐怖が溢れ出す。
 あの交通事故で味わった、耐えられそうにない死の恐怖。絶望感。
 それがどうしようもない形で今、自分に迫っている。

 そして口が閉じられ……。



 そこに、マミの姿はなかった。



「……え?」

 マミは恐る恐る自分の首に触れる。
 ……繋がっている。まだ首はある。
 横を見れば唖然としているまどかとさやかがおり、まだ自分が生きているのだとわかる。
 腰に回されている手の感触に気付き、見上げればそこにあったのはほむらの横顔。
 彼女は普段とまるで変わらない無表情のままシャルロッテを睨んでおり、マミをまどか達の側へと座らせた。



「選手交代よ、巴マミ。ここからは私がやる」



























             |:.|
             ti |
             /)>t
            レuソi
             r--,
             i ̄lj
             l  l
             |==|  炎
            .,r‐;;i, ◕‿‿◕人\<こんなの絶対おかしいよ!?
            l   ,,ヾ≧llヾ=,、
             ト、_入__,,斗、_ノ  まだやれる! 頭の代わりはいくらでもあるわ!
                 }  ||dli.{    
               /   }|di{{i
                 /\/}dl{i人
ほむら「Σ!?」



[27019] 第六話
Name: ファイヤーヘッド◆99432fa5 ID:054727e8
Date: 2011/04/11 20:28
 シャルロッテの大口が迫る。
 だがほむらには微塵の動揺もない。
 くるり、とターンをし回転しつつ爆弾をシャルロッテの口に放り込んで横に移動。
 更に遠心力を加えた銃で横面を殴打し、殴り飛ばす。
 シャルロッテの口の中で爆弾が爆発し、動きが止まった所で走って距離を取り跳躍。
 空中で反転し、右手でグレネードを数個投げつける。
 更に左手でイングラムを発射。“ぱらららららっ!”と銃声が響き爆弾を次々と爆破していった。

 シャルロッテは倒したと思っても分裂することでダメージを軽減し、耐えてしまう。
 マミのティロ・フィナーレが効かなかったのもそれが原因だ。
 分裂してしまえば前の身体はただの抜け殻。いくら傷ついても問題ないわけだ。
 だがその分裂も一定の速度で行われるものであり、それすら間に合わない速度で破壊し続ければ滅することは容易い。
 すなわち、ここで取る攻撃手段は唯一つ。

 高火力での連続攻撃!

 空中で回転し、椅子の上に着地。
 その際ついでにシャルロッテと共に座っていたピョートルを踏み潰す。
 これはシャルロッテが女装させた彼女の手下だ。
 他の使い魔よりもシャルロッテに大事にされている存在であり、シャルロッテを倒した後も自力で魔女になってしまうかもしれない。
 その為念を入れて倒しておいたのだ。

「これで終わりよ」

 カチリ、と盾のギミックが作動しこの世の時を止める。
 彼女の盾の中には砂時計があり、この砂を止める事でこの世の時間を停止させる事が可能となるのだ。
 そしてRPG-7を取り出すと未だ爆炎に晒されているシャルロッテへ向けて構え、発射。
 先ほどのグレネードと合わせ、これだけの火力があれば倒しきる事が出来るだろう。
 それは今までの戦いで得た統計からも間違いのない事だ。

「“時は動き出す”」

 時間停止解除と同時に爆発。
 爆破、爆破、また爆破。
 シャルロッテも必死に分裂を繰り返して逃げようとするが間に合わない。
 遂に彼女の身体はダメージに耐え切れず木っ端微塵に砕け散り、爆風がほむらの髪をなびかせた。
 最後に爆風に乗って飛んで来たグリーフシードをキャッチし、ターン。
 魔女の結界の消失を確認してからまどか達の元へと歩いていった。

「マミさん! しっかりして下さい、マミさん!?」

 何やらまどかが取り乱している。何かあったのだろうか。
 そう思って見てみれば、どうもマミの様子がおかしい。
 座り込んだ彼女は自分の身体を抱きしめるようにしており、その顔は青ざめている。
 歯はカチカチと鳴り、目の焦点が合っていない。
 これがあの巴マミなのか、と疑いたくなる程に、それは弱弱しい姿だ。

「戦いは終ったわ、巴マミ」
「ひっ!?」

 ほむらが声をかけると、彼女らしからぬ怯えた声で悲鳴をあげる。
 だが相手がほむらだとわかると安心したように、平静を取り繕い始めた。

「あ、ああ……暁美さん、か。助けられちゃったわね」
「…………」

 もしや、と思う。
 だが彼女の心の弱さならばあり得ない話でもない。
 ほむらはしゃがみ込むと、マミの首にそっと指を触れさせる。
 別に害意も何もない。
 だがマミはビクリ、と大きく震えるとほむらの手を払いのけ、後ずさるようにしてほむらから距離を取ってしまった。

「い、いやああああ!?」
「マミさん!?」

 再び青ざめて震え出してしまったマミの姿にまどかが動揺し、さやかが怒りを込めてほむらを睨みつける。

「転校生! あんたマミさんに何をした!?」
「何もしてないわ」
「嘘を付くな! 何もしてないのに、マミさんがああなるわけないだろう!」

 ほむらは首を振る。
 何かしてああなったのならまだマシだ。
 ここで問題なのは“何もしてないのにああなってしまった”事だ。

「率直に聞くわ、巴マミ。……死ぬのは怖い?」
「……ッ」

 マミは唇をかみ締め、悔しそうに俯く。
 そして数秒の時間を置いてから、小さく頷いた。

「戦うのは怖い?」
「……ええ」

 ああ、やはりか、と思った。
 なんと言う事だ。
 せっかく巴マミを生存させたのに、これでは最早死んだも同然ではないか。
 少なくとも、戦力としてはもう期待出来そうもない。

『きゅぷぃ、きゅっぷぃ』
「い、いやああああああ!?」

 何を考えたのかキュゥべえが耳を伸ばし、マミの首をくすぐる。
 すると当然マミは半狂乱になり、涙目となる。
 だがそれが楽しいのか、淫キュゥべえは更にマミへと耳を伸ばし、どさくさ紛れに胸も揉んだ。

『ハァハァ……た、たまらないよその反応。
君の泣き顔は僕の中のサディズムを刺激して止まない。これはエントロピーだよ、マミ』

 この淫獣は状況を理解しているのだろうか。
 人が真面目な話をしているときに馬鹿な事ばかりしやがって、とほむらとさやかは怒りに任せてキュゥべえを蹴り飛ばした。

『きュべらっ!』

 キュゥべえがいなくなり、再びほむらはマミへと視線を向ける。
 そして彼女の足元にグリーフシードを三個ほど転がした。

「ソウルジェムは心の乱れに影響される。濁り始めたら使いなさい」

 普段のマミならば反論の一つもするのだろうが、もはやそんな気力もないのだろう。
 彼女はおずおずとグリーフシードを手にする。

「ごめんね、まどかさん……」
「え?」

 突然謝られたまどかは戸惑い、マミを見る。

「あなたとの魔法少女コンビ、もう組めそうにないわ……。
……私はもう……戦えない……」

 マミは、まだ震えていた。
 歯をかみ締め、涙を流し、まるで小さな子供のように怯えていた。
 あのマミさんがこんなになってしまうなんて、とまどかは愕然とする。
 一体どれほど怖かったのだろう。それは自分なんかでは想像すら出来そうにない。
 あの強くて格好よかったマミさんが、こんな幼い子供のようになってしまう。
 魔法少女とは、それほどに過酷なものなのか……?
 その内心の問いに答えるように、ほむらが口を開く。

「まどか。よく目に焼き付けておきなさい」



 ──魔法少女になるって、そういうことよ。



*



 ほむらは家に戻ると、ソファに腰をかける。
 そして持ち帰ったキュゥべえを無造作に放り投げ、銃のメンテナンスを開始した。

『僕の扱い酷くない?』
「正当な扱いよ」

 キュゥべえの言葉を無視しながら銃を解体し不備がないかをチェックしていく。
 次に現れる可能性が高い魔女は箱の魔女エリーだ。
 相手の心を読み取る読心能力を持つ彼女へ有効な攻略法は“考える前に攻撃する”事。
 つまり要は何も考えずに攻撃すればいいのだ。
 だが何も考えずに攻撃するとなると命中率は著しく低くなる。
 ましてや相手だって動くのだ。
 美樹さやかのような考えるよりも先に動く衝動的な人間ならば相性最高であるが、ほむらのように考えて行動する人間との相性はあまりよくない。
 ならばここで有効なのは広範囲への攻撃だ。
 ほむらは部屋の奥へと向かい、クローゼットを開ける。
 中から出てきたのは可愛らしい女の子用の服の数々……ではない。
 ズラリと並んだそれは、黒い現代の凶器。
 いずれも女子中学生が所有していてはいけない銃火器である。
 その中の一つをほむらは手に取り、深く頷いた。

「……よし」
『全然“よし”じゃないよ。魔法少女なんだから魔法使おうよ』

 ほむらが取り出したのはショットガンだった。
 レミントンM870 。
 全長946mm。重量3、2kgのポンプアクション式ショットガンの定番だ。
 動く的への命中率に定評のある散弾銃ならば、エリーに対してはかなり有効だろう。
 とりあえず他の銃よりは相性がいいはずだ。
 まあ最悪の場合は時間を停止して攻撃すればいいわけであるが。

「キュゥべえ。巴マミは使い物にならなくなったわ」
『僕は一向に構わない。あの泣き顔は萌える』
「……ここは彼女のテリトリーだった。そのマミが戦えなくなった以上代わりの魔法少女が必要じゃないの?」

 この町の魔女を狩るだけならばほむら一人で事足りてしまう。
 だがそれでは駄目だ、とほむらは考える。
 自分一人ではワルプルギスの夜を攻略する事が出来ない。
 割と毎回いい勝負は出来ているのだが、どうしても先に息切れしてしまうのだ。
 やはり、味方が一人は欲しい。

『そうだねえ。でもこの町は魔女が多すぎて狩場を通り越して危険区域だよ。
マミだからこそやってこれたようなものなんだ』
「ベテランが巴マミ一人ってことはないでしょう?」
『んー、まあ一人いるにはいるかな』

 キュゥべえは尻尾を振り、何を考えているのかわからない顔でほむらを見る。

『連れてきて欲しそうだね?』
「ええ。この町は魔女が多すぎるもの」
『連れてきてあげてもいいんだけど、条件があるんだ』

 次に何を言うかを察し、ほむらは右手を横に振る。
 すると袖からナイフが飛び出し、それをキャッチ。
 鞘を親指で弾き、クルクルと指先で回転させてから刃先をキュゥべえへと向けた。

『僕と一緒にお風呂に……いや、やっぱりいいです』

 このキュゥべえはどうも死というものを他の個体よりも恐れる傾向にあるようだ。
 そのおかげでこうして脅すのが有効だと理解できた。
 これは今までのキュゥべえには見られなかった兆候だ。

『ああ、その冷たい眼がなんともたまらない。僕の中のマゾヒズムを刺激する。
これはエントロピーだよ、ほむら』
「…………」

 ハァハァと荒く息をつきながら、頬を染めて意味不明の言語を話す淫獣に頬がひくつく。
 ああ、なんかもう、今すぐ殺してしまいたい。



*



 ほむらの家を追い出されたキュゥべえはムーンウォークで町中を歩いていた。
 ほむらにはああ言ったものの、インキュベーターとしての役割を考えるなら新しい魔法少女を連れて来るのは必須事項だろう。
 何せほむらはその正体も目的もいまいち掴めないイレギュラーだ。
 ならばマミに代わり自分の自由に動かせる魔法少女をこの町に配置するのは正しい選択だ。
 ……と、前までならば思ったのだろうが今の彼は欲望に従う変態モンスター。
 そんなの後回しだ。まずは萌えの道を追求しなくてはいけない、とネットカフェへ向かってしまった。

 その道中、キュゥべえは奇妙な集団を見付けた。
 夢遊病患者のようにフラフラとした足取りで歩き、同じ方向を目指す人間達。
 キュゥべえはそれを見て一目で“ああ、魔女のくちづけを受けてるね”と理解した。
 しかし理解したからといってすることなどない。
 彼にしてみれば人間……特に男……がどうなろうと知ったことではないのだ。
 だがその一団の中に一人の少女の姿を見つけ、彼の目が光る。

 ややウェーブがかかった緑のセミロングに、垂れ気味の目。
 上品そうな雰囲気を持ついかにも“お嬢様”といった感じの少女だ。
 確か名前は志筑仁美といったか。まどか達のクラスメイトだったような気がする。
 魔法少女としての才能がなかった為以前のキュゥべえは気にもしなかったようだが実に勿体無い。
 マミにも負けない美少女ではないか。

『ハァハァハァ』

 姿が見えないのをいい事にスカートの下に行って柔らかな太ももにしがみ付き、白い聖域を拝む。
 そうして数分は堪能しただろうか。
 やがて彼は満足したようにそこから移動し、溜息をついた。

『……ふぅ』

 いいものを見た。
 それにしても彼女はどこへ向かっているのだろうか。
 これ程素晴らしい聖域の持ち主だ。魔女のくちづけ程度で死なせてしまうのは惜しい気がする。
 そんな実に最低な理由でキュゥべえはその集団に同行してみることにした。

「仁美ちゃん!?」
 
 聞きなれた声がしたので、そちらを見ればそこにいたのは何とまどかだった。
 彼女はキュゥべえにも気付かず、仁美を説得しようとしているが悲しいかな、魔女のくちづけを受けた人間に正常な思考はない。
 仁美は「いい所に行くんですのよ」などと言いながら倉庫へと入っていき、集団もそれに続いた。
 どうせいい所に行くなら僕と一緒にホテルに行ってくれればいいのに、というどうでもいい感想をキュゥべえは抱いた。

 倉庫の中に入った仁美達が最初に取った行動は何とも血迷ったものだった。
 彼女達はその場で練炭を取り出して「ウツダシノウ」とか言い始めたのだ。
 集団自殺を始める気らしい。
 それをまどかは咄嗟に窓を破る事でどうにかしたが、これは魔女によって引き起こされた事だ。
 その程度でどうにかなるわけがない。
 まどかを閉じ込めるように魔女の結界が現れ、魔女が姿を見せる。
 これはいけない、とキュゥべえは少しだけ焦った。
 他はどうでもいいが仁美とまどかが死んでしまうのはまずい。
 だが仕方がない、ともキュゥべえは思った。
 彼女達が死ぬのは惜しい。惜しいのだが、それだけだ。
 別に自分が助ける義理などないのである。
 まあ、まどかは宇宙の寿命を伸ばすのにこの上ない才能の持ち主なので死なれては困るのだが、今からではどうしようもあるまい。
 いや。
 まてよ、とキュゥべえは考えた。
 これはひょっとしてチャンスではないか? と。
 今ならば魔法少女になる契約を持ちかける絶好の好機であり、ノルマを容易く達成出来る。
 うむ、それは実に冴えてる考えだ。
 今までならば一切の躊躇なくそれをしただろう。

 だが、何故だろうか。
 自分の中の何か……よくわからないノイズがそれを止めようとしているのは。



 まどかは、これは罰なのかもしれない、と思った。
 心が折れてしまったマミさんの代わりに戦う事も出来ない弱い自分への罰。
 だから自分はこうして殺されようとしているのだ。

 魔女の使い魔がまどかに近づく。
 出来の悪い、木製のキューピー人形のような片翼の天使だ。
 その顔は不気味な笑い顔のようであり、それが四体。
 彼等はまどかの手足を掴み逆方向に引っ張り始める。
 まどかの身体など魔女の使い魔にかかれば千切れてしまう事だろう。
 私、ここで死ぬのかな、とまどかは目を閉じ……。

 小さな影が、使い魔を弾き飛ばした。



『天呼ぶ地呼ぶ萌えが呼ぶ』

 まどかは、自分を助けてくれた存在へと目を向ける。
 それは小さな獣だ。
 耳から耳が生えているかのようなよくわからない形状をし、その表情は無表情。

『少女の叫びが僕を呼ぶ』

 それは夢の中でセクハラ発言をかまし、初見でセクハラをかまし、そしてとにかくセクハラばかりしてきた淫獣。
 ほむらに踏まれてはハァハァしマミを苛めてはハァハァし……とにかくロクな事をしておらず、まどかも彼の事を避けていた。
 だから、一瞬理解が追いつかなかった。
 だってそうだろう。
 まさか、その変態モンスターである彼が助けてくれるなどと、一体誰が考えるというのか……。



『少女の味方! 紳士的宇宙生物、淫キュベーター推参ッ!!!』



























        |\           /|
        |\\       //|    
       :  ,> `´ ̄`´ <  ′  
.       V         #V<ビキビキ 
.       i{ ●      ●  }i  どうかしてるよ……。
       八    、_,_,     八  わけがわからないよ……契約するチャンスだったじゃないか……。
.       / 个 . _  _ . 个 ',
   _/   il   ,'    '.  li  ',__

原作QBさんはお怒りのようです。
そしてマミさんはマミらなくてもやはりマジマミマミ。
信頼と実績の豆腐メンタルでお届けしました。

シャルロッテについて。
よく「シャルロッテの本体はほむほむが踏んだアレで、本体を倒さないとシャルロッテは倒せないんだ!」という声を聞きますが、それは間違いのようです。
季刊S 2011年4月号によると、ほむほむが踏んだあれは女装させたピョートルであり、ただの手下だとか。
私もつい最近まであれが本体だと思っていましたよ。



[27019] 第七話
Name: ファイヤーヘッド◆99432fa5 ID:054727e8
Date: 2011/04/12 20:05
 少女達の持つ感情というエネルギーを集める事を目的とした異星からの使者。
 孵卵器端末インキュベーター。
 一が全であり、全が一。
 一つの個体が得た経験や知識は全てのインキュベーターへと伝えられ、そして他のインキュベーターが得た知識を得る。
 そうして互いに影響し合う事で意識を一つに纏め、常に学習し進化する。
 独立した一つの生命でありながら、一つの目的と思考の元全く同じ行動を取るそれはまるで一個の生命体のようだ。
 知性があり、知能があり、だが感情と個性がない。
 それだけの生き物。それがインキュベーターだ。

 最初は率直に、道を歩く少女にコンタクトを試み、真実を話していた。
 だが少女達は彼等を見るや怯えて逃げるばかりでコンタクトが取れない。
 最初は無機質な、手足も何もない物体だった。
 だがその姿は少女達のお気に召さなかったらしく、逃げられてしまう要因の一つだった。
 人間には“恐怖”という感情がある事を彼等は知った。
 だから、その恐怖を刺激しない方法を学ぶ必要があった。

 彼等は学習する。

 真実を話してはいけない。人間はデメリットがあるとわかるとすぐに逃げてしまう。
 だから重要な部分を打ち明けず、ぼかして話す事を覚えた。
 これは彼等人間も多用する言葉遊びを参考にしている。
 外見は、思春期の少女が好みそうな“可愛らしい”獣の姿とした。
 可愛い、というものが何なのかはわからないが、この姿は好評のようで今までよりも警戒心が薄れるのを知った。
 この警戒心というのが少し厄介で、無機質な話し方をしていると何故か疑われてしまう。
 だから“親しみやすい”同年代の少年の話し方を取り入れた。
 人間の警戒心は感情がある分、自分達インキュベーターよりも大きい事を知った。

 彼等は学習する。

 人間は何の得にもならない事には難色を示すらしい。
 だから奇跡という報酬を用意した。
 この年頃の少女が憧れるような“魔法少女”という呼び名を与え、いかにもそれらしい“魔女を倒す”という使命も与えた。
 この報酬は正当なものだとインキュベーターは判断する。
 後に絶望に墜ちる運命を背負うが、それでも充分対価として釣りあっている。
 どうせ人間は何もしなくとも、事故や自殺、他殺や病気などの様々な要因で死んでいくのだ。
 あるいは生きていても自分の生涯に不満を持ったり、何の目的もなく日々を繰り返したりする。
 幸せに生きられるかどうかなど、はっきり言ってしまえば運だ。
 そこに奇跡という、どんな願いでも叶う未曾有のチャンスを与え、本来は無駄になる命を宇宙の為に有効活用する。
 そこに一体何の問題があるというのだろうか。
 契約すればそういった事故や病気などではまず死なない身体にもなる。普通の人間よりも余程効率的で頑丈だ。
 しかし人間はそれでも不満を漏らす。
 真実を打ち明けると決まって自分達を非難する。
 ……わけがわからない。

 彼等は学習……出来ない。

 わからない。
 感情とは何だ? あのエントロピーをも凌駕する複雑極まりないエネルギーはどういう構造で出来ている?
 何度も学習を試み、何度も統計を取って演算を繰り返す。
 だがわからない。
 どれだけ計算しても、どれだけ考えても理解出来ない。
 あのエネルギーはどうやって生産されている?



 ある日、彼は一人の少女と出会った。
 それは“萌え”なるよくわからないものを追求する少女だった。
 検索……該当あり。
 萌え。それは日本の男性の一部が用いる謎の定義。
 その使用用途は幅広く、難解極まる。
 主に少女などを見る際に発されている事から、性欲や求愛の一種とも考えられる。
 しかし同性であるはずの女性なども稀に用いる事があり、それがより一層意味不明さを助長していた。

 接触。契約成立。
 これより学習を開始する。

 幸か不幸か、彼女の願いは“相手に理解させる”ものだった。
 これはいい。
 これならば自分は感情というものを学習出来るかも知れない。
 相手を知ればより効率的な動きが可能となる。
 今までよりも更にスムーズに契約が行えるかもしれない。
 そう判断し、彼は一ヶ月もの間少女の元に滞在した。
 また、それに合わせてプロテクトの一部を解除。
 これは魔女のくちづけなどをインキュベーター自身が受けたりしない為の精神防壁であるが、それがあると学習の邪魔になってしまうかもしれない。
 その為一時的にそれを解き、あえて少女の能力を受けてみたのだ。

 そして。



 彼は、バグった。



*



『キノコ狩りの男! 淫キュベーター!』

 キュゥべえは耳を伸ばすとその先端を枝分かれさせ、触手へと変える。
 そして使い魔達を捕らえていき、一匹としてまどかに近づけさせない。

『ボルガ博士、お許しください!』

 そう言うと捕らえた使い魔を投げ捨て、別の使い魔へと叩き付ける。
 続けて別の使い魔を捕まえ、また投げる。

『いくぞッ! 両耳を伸ばす事で100万×2の200万パワー!』

 跳躍!
 それなりに高く跳び、彼は叫ぶ。

『いつもの二倍のジャンプで200万×2の400万パワー!』

 回転!
 なんだか目が回りそうだが、きっとこれは強い攻撃なんだ、と自分に言い聞かせる。

『そしていつもの三倍の回転を加える事で、400万×3の……魔女エリー! お前を超える1200万パワーだー!』

 だが悲しいかな。
 これはゆでワールドだからこそ通用するゆで理論であり、こんな出鱈目な計算式は適用されない。
 そもそも、インキュベーターに100万パワーなど備わっておらず、あって精々10パワーといったところだ。
 つまり、通用するわけもなくキュゥべえはあっさりと殴り飛ばされてしまった。

『くっ、ならばこれはどうだ!』

 キュゥべえは使い魔の背後に移動。
 その両手を素早く耳で絡め、その背中の上へ飛び乗る!

『パロ・スペシャル!』

 両手両足をガッシリと拘束する蟻地獄ホールド!
 だが悲しいかな、キュゥべえの短い足では相手の足を拘束出来ない。
 結果から言うと、ただ相手の両腕にぶら下がっているだけの状態だ。

『しまったあああ!』

 加えて言うならば敵は一体ではない。
 完全な選択ミスだ。
 二体目の使い魔に引っ張られ、キュゥべえは投げ捨てられた。

『オ、オウフ……』
「キュゥべえ! 大丈夫?!」
『大丈夫だ……も、問題ない』

 まどかが駆け寄るが、キュゥべえはそれを手で制す。
 やはり人間は理解不能だ。
 自分がこうして相手を止めているというのに、何故わざわざ自分から来るというのか。
 全くわけがわからない。
 自分の努力を無駄にする気なのだろうか、この少女は。
 ここは逃げるべきだろう、常識的に考えて。

『まどか……なんでこっち来るのさ』
「だ、だって」

 そう言っている間にも使い魔達はこちらへと近づいて来る。
 まどかは怯えたように息を呑むが、もう後の祭りだ。
 今からでは逃げる事も出来ないし、もうキュゥべえも動けない。
 元々インキュベーターに戦闘力などないのである。
 ここまで戦えただけでも自分を褒めてあげたい。

 動けないキュゥべえを横切り、使い魔達はまどかへと近づいていく。
 だがまどかは何かを決意したような表情となり、逆にキュゥべえへと駆け寄った。
 これはもしかして、と思う。
 こういう決意した顔を今まで何度も彼は見てきた。
 今のまどかはそれと同じ……いや、それ以上に強い決意を秘めている。
 ならば次に出てくる言葉はきっと、魔法少女への契約を頼むものに違いない。

「キュゥべえ、私も戦う! 今度は私が貴方を守る! だから、私を魔法少女に……!」

 そして予想通りまどかは魔法少女の契約をしようとし……。



「その必要はないわ」

 そこに、冷たい氷のような声が割り込んだ。



 ぱらららららっ、とタイプライターのような銃声が響き、まどか達に近付いていた使い魔達が一斉に倒れた。
 遅いよ、と思いつつキュゥべえは声の方向を向き、まどかもそれに釣られるように見る。
 そこにいたのは、まどかと同じ見滝原中学校の制服を着た黒髪の少女だ。
 彼女……暁美ほむらが宙を舞い、銃弾を次々と使い魔達へ叩き込んでいく。
 使い魔達の密集している地点に着地すると同時にマシンガンをスカートの中のホルスターへと収め、両腕を左右へと広げる。
 すると両袖からベレッタを改造した銃が飛び出し、手に取ると同時に発砲。
 左右の使い魔を撃ち抜き、続いて攻撃しようとしていた正面の使い魔を銃身で殴る。
 続いて後ろの使い魔が手を伸ばそうとした瞬間にターン。遠心力を上乗せした銃身で殴り飛ばし、跳躍。
 そこにマミのような美しさはない。
 どこまでも相手を殲滅する為だけの機能美があるだけだ。
 銃口よりマズルフラッシュが迸り、十字の紋章を刻む。
 これこそが断罪の浄火。死の宣告たる銃声が響き、無慈悲に使い魔達を粛清していく。
 そして着地した時にはすでに使い魔はそこになく、いるのは魔女のみとなっていた。

 ハコの魔女エリー。
 その性質は憧憬。憧れを全てガラスの中へ閉じ込める引きこもり魔女であり、相手の心を読み取る厄介な相手だ。
 だがすでに対策は済んでいる。
 ほむらはベレッタを袖の中へ戻すと、背負っていた銃を手に取る。
 エリーの為に用意したショットガン、レミントンだ。
 それを特に何か考える事もせずに適当に発砲!
 発射、発射、発射!
 攻撃範囲の広い散弾銃ならばある程度適当に撃っても当たる。エリーに対しては最適な武器と言えるだろう。
 魔女の絶叫が響き、動きが鈍った。
 こうなれば後はしめたもの。止めを刺すだけだ。
 距離を詰め、銃口を突きつける。

「さよなら」

 一発の銃声、それが決着の合図だ。
 魔女の結界が薄れていき、周囲の景色は元の倉庫へと戻っていった。





 魔女を始末したほむらは、無言でまどかへと近付いた。
 その目は鋭く細められており、拳は握られている。
 もしかして怒られるのだろうか。
 そう思い、まどかは小さく身を縮こまらせた。

「……怪我はない?」

 だが出てきた言葉は予想とはまるで違う、身を案じるものであった。
 驚き、見てみればわずかに彼女の瞳が揺れている。

「え、あ、うん。キュゥべえが守ってくれたから……」
「……よかった」

 ほむらは安心したように小さく息を吐く。
 その様子を見て、まどかは不謹慎ながらも嬉しくなった。
 ……心配してくれていた。
 もしかしたら嫌われているのではないだろうかと不安だった。
 何か自分に問題があるのではないか、と思っていた。
 だからこそ、こんな時だというのに自分の身を案じてくれるのが嬉しい。
 嫌われているわけではないとわかるのが、こんなにも幸せだとは思わなかった。

「……どこか、痛いの?」
「え?」

 ほむらの心配そうな声に顔をあげる。
 彼女にしては珍しくわずかばかり動揺したような顔になっており、そこでまどかは初めて自分が泣いていることに気が付いた。

「ううん、嬉しいの」
「……嬉しい?」
「うん。私、ほむらちゃんには嫌われてると思ってたから……」

 ほむらは驚いたように目を見開く。
 そして何かを耐えるかのように唇を噛み締めた。

「……あなたを嫌うなんて……出来るわけがない」
「え?」

 ここでほむらは己の失言に気が付いた。
 ハッ、としいつもの無表情を取り繕う。
 これ以上はいけない。まどかと一定以上の距離を詰めるな。
 彼女は優しいから、仲良くしてしまうと自分を助ける為に魔法少女になろうとしてしまう。

「……鹿目まどか。私は無駄な行動を取る愚か者を軽蔑するわ」
「え……? ほむら、ちゃん?」
「軽々しく魔法少女になろうとしないで。迷惑よ、そういうの」

 傷付いたようなまどかの顔に胸が痛む。
 こんな顔をさせたいんじゃない。
 彼女には笑顔でいて欲しい。
 出来るのならば、今すぐに謝ってしまいたい。
 酷い事を言ってごめんねと、本当は大好きだよ、と伝えてしまいたい。
 “あの時”のように、彼女と一緒に笑い合いたい。

「二度と魔法少女になろうだなんて思わないで」

 くるり、と背を向けてスカートの下に移動しようとしていた淫キュベーターの耳を掴んで持ち上げる。
 きっと今顔を見られては、泣きそうになっている事がわかってしまう。
 だからこれ以上はここにいる事が出来ない。

「待って、ほむらちゃん! 私……」
「……夜道には気を付けなさい」

 突き放すように冷たく言い放ち、彼女は夜の闇へと消えていった。



 自宅へと戻ったほむらはキュゥべえを無造作に放り投げ、ソファへと腰をかけた。
 とりあえず心が落ち着いたら次の行動を考えなくては。
 次に現れる魔女に有効な戦略を練り、その為の武器を用意しなくては。
 本当は一秒だって休んでる時間などないのだ。

『僕の扱い酷くない? 今回結構頑張ったよ』
「その点は評価するわ。後はその変態ぶりさえ直せば優しくしてあげてもいいわよ」
『無理だ。出来るわけないじゃないか』

 はあ、と溜息をつきソファに深く背を預ける。
 また、彼女を傷付けてしまった。
 何よりも守りたい人なのに、その人を自分が一番傷つけているという矛盾。
 酷い奴だ、と自分で思う。
 それでも。
 こんな事をしてでも、守りたい約束があるのだ。どんな手を用いても助けてみせると誓ったのだ。
 その為ならば、何をしても……まどかに嫌われても、構わない。

「……あなたを嫌いになんかなれるわけがない……」

 目を閉じ、思い出す。
 初めて出会った時の事。笑いかけてくれたあの顔を。
 あの笑顔を守る為ならば……彼女が生きていてさえくれるならば……。
 他の何も、自分には必要ない。何も要らない、求めない。



「まどか……たった一人の、私の友達……」




























        |\           /|
         |\\  炎  //|
        :  ,> `´ ̄`´ <           あ…ありのまま 今 起こった事を話すよ!
.        V            V 
.       i{●      ●   }i        『ぼくのメインシーンキター!と思っていたら
       ./|__、_,_,___,ハ        いつのまにかほむほむシーンになっていた』
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<  ヽ        な… 何を言ってるのか わからないと思うけど
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾl ハ        ぼくも何をされたのかわからなかった
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::ヽ  
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ        わけがわからないよ…
   /'´r ー---ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐   \  
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    QB苛めだとかQBざまあwだとか
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://     ヽ  }    そんなチャチなもんじゃあ 断じてない
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...イ     もっと恐ろしいほむほむの片鱗を味わったよ…



[27019] 第八話
Name: ファイヤーヘッド◆99432fa5 ID:054727e8
Date: 2011/04/13 20:03
 学校の帰り道。
 まどかとさやかはケーキを三人分購入し、マミの家を訪ねた。
 あのシャルロッテとの戦い以来マミは魔女や使い魔と戦う事はしなくなり、学校にも行かなくなった。
 特に最初のほうは酷いもので、まどか達が訪ねても反応せず、一日中布団を被って震えている有様だった。
 それも今では大分持ち直したようで、普通に日常を過ごせる程度には回復している。

「ごめんなさいね。格好悪い所ばかり見せちゃって」

 マミは二人に紅茶を出しながら、苦笑しつつ言う。
 彼女自身も今のままではいけない、と思っているのだがどうしても死の恐怖を拭い去れないのだ。
 戦いの事を考えるだけで足が震え出し、身体が凍りつきそうな恐怖に襲われる。
 そんな彼女へと、まどかは困ったように返答する。

「そんな事ないですよ。もし私が同じ事になったら、きっとまだ震えちゃってます」

 マミはその返事にクスリと笑い、皿の上に乗せたケーキを並べた。
 後輩に心配ばかりかけるなんて、駄目な先輩ね。などと思うと気分が沈むが、せっかく来てくれた彼女達の前で暗い顔をするのも悪い。
 だからせめて今くらいは笑っていなければ。
 だが、やはり空気の読めない人間というものはどこにでもいるものだ。

「そうそう。それに今はちょっとした休憩時間だと思えばいいじゃないですか。
その分復活した時にポポポポーン、と大活躍すればいいわけですし!」
「ちょっとさやかちゃん!?」

 さやかが自分の失言にも気付かず身振り手振りを加えながら場を盛り上げようとするが、慌ててまどかがそれを止める。
 今のさやかの言葉は裏を返せば“そのうちまた戦え”と言っているようなものである。
 彼女もまどかに止められて気付いたのだろう。「やべっ」と呟いた。

「そう、ね。……うん、そうね。復帰した時にはこれまでの遅れを取り戻すくらいに派手にやんなきゃね!」

 一瞬表情が曇るも、マミはさやかの言葉に乗り冗談っぽく言う。
 とりあえずジョークを飛ばせるくらいには立ち直れていたようだ。
 まどかとさやかは内心でほっと息をついた。

「そうだマミさん。そろそろ気晴らしに外に出てみませんか?
ずっと家の中っていうのも健康に悪いですし!」

 話題を切り替えるためにまどかが外出を提案する。
 あれ以来マミは自宅に引き篭もり続けているが、いつまでもそうしているわけにもいかないだろう。
 外に出て気分をリフレッシュさせれば、少しは改善されるかもしれない。そう考えたのだ。

「そうね。鹿目さんの言う通りだわ」

 マミ自身もそれはわかっていたのだろう。
 いい機会だし、ここは外に出るのもいいかもしれない。
 そう考え、彼女はまどかの提案を受け入れる事にした。



*



 一面の青空の下、いくつもの糸がぶら下がり、そこには洗濯物のようにセーラー服などが吊り下げられている。
 空中には机や椅子が飛び交い、糸の上を使い魔がスケート靴で滑る。
 その使い魔の姿はかなり人間の女子生徒に近い。
 スカートから除く健康的な足が動き、キュゥべえがハァハァしている。
 だが腰から上が存在せず、下半身のみの不完全な人間の姿だ。

 委員長の魔女パトリシア。その性質は傍観。
 蜘蛛のような糸を吐き、結界内に自分だけの学園を作り出す魔女だ。
 その姿は黒いセーラー服から無数の手が生えている、という不気味なものだ。
 袖からは勿論として、本来は首や足が出ているはずの襟やスカートからも手が生えている。

 その彼女が吐く糸の上を、黒髪を揺らしながらほむらが歩く。
 脳裏に浮かぶのは、かつて未熟だった己の姿。
 あの頃はまどかやマミと共に戦っていたが、今は誰もいない。一人だ。

──今よ、暁美さん!──
──すごいよ、ほむらちゃん!──

 隣に立つ者はいない。いなくていい。
 もう誰にも頼らないと決めたのだから。
 私は独りでも、戦える。

「……弱さ、ね。これは」

 弱さを振り払うように両手を振り、袖に仕込んだギミックを作動させる。
 すると愛用の改造ベレッタが飛び出し、手に取ると同時に発砲を開始した。

 両手を左右に広げて撃つ。
 クロスさせて左右に撃つ。
 再度両手を広げて撃つ。

 両手を演奏の指揮者のように振りながら弾を吐き出し、的確に使い魔達を撃ち落としていく。
 この使い魔達はパトリシアが糸で操っているだけの存在だ。
 だから糸を断ち切ってやればそれだけで無力化できてしまう。
 パトリシアもほむらを近づけまいと使い魔達を送り込むが、まるで意味を為さない。
 統計に基づいた行動予測で的確に後の先を取り撃ち落としていく。
 それはまさに完成された一つの機能美、その到達点。
 彼女の戦い方は銃を用いた“型”であるが、彼女はそれを振るっているのではない。
 もはや彼女自身が“型”そのものなのだ。
 極めつくされたその“型”を前にしてこの程度の魔女が太刀打ち出来る道理など、ありはしない。

 両手を左右に広げて撃つ。
 クロスさせて左右に撃つ。
 再度両手を広げて撃つ。

 振り子運動のように一定のリズムで両手を動かし、次々と使い魔を行動不能にしていく。
 歩みのリズムも一定だ。急ぐ事もないが、止まる事もない。
 一歩。また一歩と確実に距離を詰めていくその様は忍び寄る死神といったところか。
 そしてとうとうパトリシアとの距離が零となり……。
 ……ほむらは、そのまま通り過ぎた。

「さよなら」

 直後、爆発。
 いつの間にかパトリシアには爆弾が取り付けられており、それが通り過ぎたほむらの後ろで爆発したのだ。
 爆風に乗るように跳び、結界の消失と同時に着地。
 そして最後に落ちてきたグリーフシードを受け止めると、そのまま用はないとばかりにその場を立ち去った。



『いつもながら圧倒的だね』
「そう言いながらさり気なくスカートの下に潜ろうとしないで」

 今日も平常運転のキュゥべえを踏みつけ、耳を掴んで引きずりながらほむらは町中を歩く。
 全国の魔法少女に対しての呼びかけは終った。後は誰かがマミの代わりにやって来るのを待つだけだ。
 とはいえ、誰が来るかなど分かり切っている。
 こんな魔女だらけの危険区域へやって来る奴など佐倉杏子以外に考えられない。
 後は何時やってくるかだが、今までの経験から言ってそろそろ到着する頃だろう、とほむらは踏んでいた。
 佐倉杏子。彼女は強力な戦力だ。
 他はともかく、彼女だけは確実にワルプルギスの夜との戦いに連れて行きたい。
 その為の手柄として与えるグリーフシードもかなりの数がすでに集まっている。
 これならば戦いで消耗することを計算に入れても尚余るだろう。
 だがほむらは妥協しない。念には念を入れ、更に可能な限り魔女を狩るつもりだ。
 既存の銃火器で戦うほむらは、ほとんど魔力を消耗せずに戦う。
 グリーフシードを使わずに連戦し、十体以上の魔女を葬った事もある。
 それ故に他の魔法少女よりも効率的に集める事が可能なのだ。

「キュゥべえ。佐倉杏子の位置はわかる?」
『勿論さ。僕の美少女センサーが彼女程の美少女をキャッチしないなど有り得ないね』

 キュゥべえは自慢げに胸を張るが、耳を掴まれている状態では格好がつかない。
 誰か僕に優しくしてよ、などと思いつつ杏子の位置をサーチ。
 そして割り出した位置は、デパートだ。

『三丁目のウロブチデパートだ』
「そう」

 だがそこにある反応が一つではない。
 魔女の使い魔の反応が一点と、更に魔法少女の反応もある。
 それも、よく知る少女だ。

『マミも近くにいるね』
「……なんですって」

 まずい。
 そう思ったほむらは即座にその場を駆け出していた。
 彼女に掴まれているキュゥべえは当然ゴリゴリと地面を引きずられるわけだが、ほむらはまるで気にしない。

『ちょっ、いたいいたい! 擦れる、擦り切れちゃう!?』

 キュゥべえの言葉も耳には入らない。
 何とかあの二人が接触する前に現場に到着しなくては、というのが今ほむらの頭を占めている思考だ。
 佐倉杏子は過激な考えを持つ魔法少女であり、マミとはあまり仲が良くない。
 今のマミを見たら戦闘になる可能性があり、そうなってしまえばマミには何も出来ない。
 本来この二人の実力は五分なのだが、今は駄目だ。
 今戦えば、確実に佐倉杏子が巴マミを殺してしまう!

 引きずられながら、キュゥべえはいつしか無言になっていた。
 息絶えたのだろうか。
 いや、違う。
 彼の目は必死にある箇所を凝視しており、鼻息を荒くしている。

『くそっ、もうちょっと、もうちょっとだ! スカート仕事しろ!』

 ほむらが走るたびにスカートが揺れ、もう少しでデルタゾーンが見えそうなのだ。
 だが流石の鉄壁ぶりというべきか。見えそうでなかなか見えない。

『くっ、これが絶対領域というやつか!?』

 いくら周りが真面目にやっていようとお構いなし。
 揺るがぬ変態、淫キュベーター。
 彼は今日も平常運転であった。



*



 気晴らしに外へと出かけたマミ達は、デパートの中を歩いていた。
 女性は買い物を好むというが、彼女達も例外ではない。
 服やらお菓子やらなどを買い込み、談笑する。
 どうやらこの外出の効果はあったようでマミにも大分笑顔が戻り、以前の明るさを取り戻していた。
 この分ならば近いうちに学校に通うくらいは出来るようになるだろう。
 だが、何事も上手くいかないのが世の常と言う事なのだろうか。
 楽しかったはずのデパートが、突如として牙を剥いた。

 それは、小腹が空いたから飲食店にでも入ろうかとした時だった。
 突然周囲の空間がグニャリ、と歪みまどか達を取り込んだ。
 一体何が起こったのか、など考える必要もない。
 ……魔女だ。

「あ、ああ……」

 マミの声が奮え、顔が青ざめる。
 周囲を飛び回る魔女の手下が恐ろしくて仕方がない。
 それはまるで子供が描いた落書きのような飛行機であり、びゅんびゅんと飛び回っている。
 普段ならばただの雑魚だ。
 だが今のマミにとってそれは、とてつもなく恐ろしい存在に思えてならなかった。

「ま、マミさん……」

 怯えたようなまどかの声を聞き、マミはソウルジェムを握る。
 守らなくちゃ。
 この子達を、私の大事な後輩を守らなくては……!

「大丈夫……大丈夫よ。さほど強い魔女じゃないみたいだし、これなら今の私でも……」

 大丈夫、やれる。
 私はまだ戦える!
 そう自らに言い聞かせ、マミはソウルジェムから光を放つ。
 随分久しぶりに思える、魔法少女への変身だ。

「っああああああああ!」

 自らを奮立たせるように吼え、マスケット銃を大量に召喚。
 それを手に取り、手当たり次第に発砲する。
 発射! 発射、発射! 発射!
 だが放つ銃弾はどれも命中せず、空を飛ぶ不細工な飛行機はマミを馬鹿にするように飛び回る。

『キャハハハハハハッ!』
「なんでよっ! なんで、当たらないの!?」

 マスケット銃を更に多く召喚し、一斉掃射。
 下手な弾も数撃ちゃ当たる、ということだろう。
 使い魔を撃ち抜き沈黙させるが、すぐに新しい使い魔が現れた。

「このっ、このおおおお!」

 それはマミの戦いぶりを知る者からすれば、信じられない無様さだっただろう。
 放つ弾丸は尽く無駄撃ちになり、魔力消費効率も悪く、以前のような流麗さもない。
 まるで初陣の魔法少女……いや、それ以下だ。
 そこには、現役最強とまで言われた魔法少女マミの面影は最早ない。

 そんな彼女に追い討ちをかけるかのように手下が迫る。
 視界一杯に広がる、使い魔の姿。
 そこで遂にマミの心は決壊し、恐怖に耐え切れなくなった。

「いやっ、こないで! こないでえええ!」

 涙を流し、滅茶苦茶に撃つがもう掠りすらしない。
 そんな彼女を嘲笑うように使い魔が近付いていく。
 そして。
 声が、そこに響いた。



「なんだい、その無様さは。全く見てられないよ」



 紅の閃光が奔った。
 一発、二発、三発。
 空間ごと使い魔を切り裂き、真紅の槍が牙を突き立てる。
 四発、五発、六発。
 たったこれだけの攻撃で全ての使い魔が一層され、残るは魔女のみとなる。
 魔法少女はいかに魔力を無駄にせずに戦うかで強さが分かれる。
 その点で見るならば一度の攻撃で複数の使い魔を同時に仕留める“彼女”の技量は並外れていると言う他ない。
 七発、八発、九発。
 今回の魔女は隠れんぼが大好きな落書きの魔女だ。
 未だ姿を見せない相手を、しかし真紅の槍は的確に捉え、傷つける。
 相手が姿を見せないならばそれでいい。
 隠れている物陰ごとぶっ潰す!

「そぉうらあ!」

 高い声が響き、槍の持ち主が赤い弾丸と化して魔女が隠れている場所へ飛び込む。
 続いて響く魔女の絶叫。どうやら一撃で絶命したらしい。
 それを為した少女が振り向き、まどか達は思わぬ身構える。
 それは、同年代程の少女だった。
 胸元に付けたソウルジェムは怪しく輝き、赤いポニーテールが揺れ、勝気そうな目は細まり、弧を描く口元からは牙のように尖った八重歯が覗く。

「あんたらしくもない無様さだね、巴マミ」

 消えていく結界の中、変身を解除して彼女はマミへとその猫のように鋭い目を向ける。
 ポケットから“ブラックサンダー”と書かれたチョコレート菓子を取り出すと、袋から出して齧り付き、咀嚼。
 ぺロリ、と唇の周りを舐め取った。

「貴女は……何故、貴女がこの町に……」

 マミが信じられない、と言いたそうに彼女を見る。
 それは、マミと並ぶ現役最強の一角。
 魔法少女中最大クラスの攻撃力を誇る、もう一人のベテラン魔法少女。



 佐倉杏子。
 彼女が、マミの前で不敵に笑っていた。




























                   _... -─- ._
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               c .|:::: ≠ミ/|/ .|ィハ:::::|::::::::|    ,! ほ ほ !
            c  .ノ::::::|.r';;;ソ {ux:=ミ:::::::| っ l. む む l
            '/^ '<::::::ノ|''   '  r';;;ソ|:::::|::|  っ∠ ほ  っ j
      ,. -─< ヽ }  rx‐‐っ===( 。 ''/|:::::|( ((    ヽ む   /
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      \____,|l|  .|__ノ二 、))^冂\ノ゚ハ::|. ヾ
          └‐ァ':::::|ヽ_ミと>>‐7/ .{ }ノ  .〉 ))
 jヽjvi、人ノl__   /:::::::::| ° (7(⌒)).  |  ヾイ\
 )   ほ   7:::::::::/:::::::}    |^| ̄|^|  .ハ   V::::ヾ
 )   む    て::/::::::::ハ    V.ハ.V  ./:::ハ.   |:::::::::\
 7   っ     ( ::::::::::/   )) ∨ ノ'{__,イ⌒\  |::::::ト、::::) ))
  )   !!.    ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ }三__\  }}_/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ^⌒~^⌒^~⌒^'           `⌒´   `⌒´

QB『……早く行かなくていいのかい?』
ほむほむ「腹が減っては戦は出来ぬ、よ」

ついに杏子ちゃんが登場しました。
そしてここからはマミさんのターン。
しばらく主役の座が彼女に移行し、ほむら&QBの主役二人の出番が減ります。

とりあえずほむほむには舞台裏で飯でも食っててもらいましょう。



[27019] 第九話
Name: ファイヤーヘッド◆99432fa5 ID:054727e8
Date: 2011/04/14 19:54
「何故貴女がこの町にいるのかしら……佐倉さん」

 デパートの中で対峙する二人の少女は、それぞれ敵意を隠そうともせずに向かい合う。
 片方は不敵に、駄菓子を口に運びながら。
 もう片方は必死に弱気を隠し、されど怯えを隠しきれぬまま。
 無論そんなマミの強がりなど佐倉杏子にしてみればガラス張りの教室のように見え透いたものだ。
 彼女はマミを馬鹿にしたように笑った。

「何故だって? そりゃあんたが一番知ってるんじゃないのかい? 巴マミ」
「……どういう事かしら?」

 鈍いね、と言いながら杏子は行儀悪く食べかけのお菓子をマミへ突き付けて言う。

「あんな戦いぶりじゃあ、この町でやっていけないだろ?」
「……ッ」

 ギリ、と悔しそうに歯を噛み締めるマミの前で彼女は勝ち誇ったようにふんぞり返った。
 反論は……出来ない。
 彼女の言っている事は正論だからだ。

「アタシにさあ、この町譲りなよ」
「何、ですって?」
「ここは絶好の狩場だ。腑抜けちまった今のあんたにゃ勿体無いよ」

 馬鹿な事を、とマミは思った。
 確かに佐倉杏子は強い。彼女ならばこの町でも十二分にやっていけるだろう。
 だが彼女のやり方では犠牲者も多く出てしまう。
 何故なら彼女は使い魔を無視する。
 使い魔は人を数人殺す事で魔女へと成長し、グリーフシードを産み出す。
 彼女はその使い魔が成長する過程で出る犠牲を見殺しにしてしまうのだ。

「駄目よ、貴女にだけは任せられない。貴女のやり方は犠牲を多く出す」
「はっ、相変わらず甘いね巴マミ」

 杏子は食べかけのチョコレートを一口齧り、もぐもぐと口を動かす。
 その途中、店員に「店内での食べ歩きは……」などと注意されたが睨み一発で追い払った。
 逃げていく店員の後姿をお菓子で示し、彼女は言う

「弱い人間を魔女が食う」

 チョコレート菓子を魔女、逃げる店員を弱い人間、と見立てているのだろう。
 更に今度はそのチョコレートを齧り、続ける。
「そしてその魔女を魔法少女アタシらが食う!」

 ここでまどか達にも、マミの言う「犠牲を多く出す」という言葉の意味がわかったのだろう。
 さやかなどは明らさまな嫌悪を滲ませ、杏子を睨み始めた。

「食物連鎖ってやつさ。どの魔法少女もそれに従っている。
あんたの方が異端なんだよ、巴マミ」
「知っているわ。それでも、いえ、だからこそ私のいるこの町だけはそうはさせないと誓った。
その為に私は魔法少女をやっている」

 はっ、と馬鹿にしたように杏子は息を吐き、大げさに肩をすくめる。

「やっぱりアンタとは気が合いそうにないね」
「……同感ね、佐倉さん」
「まあ、最初からアタシとアンタとの間で話し合いが成立するなんて思っちゃいない。
言ってもわからねー馬鹿とくりゃあ、やることは決まっている」

 そこで一転。突然猛禽類のような殺意を滲ませた眼となり笑いも消える。
 強者の放つ威圧。
 それにまどか達のみならずマミまでもが気圧され、背筋に寒いものが走った。

「ぶっ潰しちゃうしか……ないよね?」



「その必要はないわ」



「!!」
「!?」

 突然割り込んできた第三者の声に杏子とマミ、そしてまどか達も同時に振り返る。
 そこには一体いつからいたのか、飲食店の前に立つほむらの姿があった。
 杏子は瞬時に腑抜けたマミよりも危険な相手だと判断し、警戒をそちらへと向ける。
 服装は魔法少女のものではなく、まどか達と同じ制服だが、杏子にはわかった。
 こいつは同類だ、と。

「……いつからいやがった? 何か魔法でも使いやがったのか?」
「気配を消すくらい魔法がなくとも容易いものよ。潜入は得意なの」

 ダンボールがあれば完璧だわ、などと冗談か本気かわからない事を言う女へ対し、更に警戒が強まる。
 何だかわからないが、受け手に回ってはまずい。
 そう判断し、杏子はほむらに殴りかかる!
 だがほむらは杏子の手を掴むと引き寄せ、流れるように手を腹へ当てる。
 そして袖からは銃が飛び出し、それを掴むと杏子の腹へ押し付けた。

「ッ、てめえ、何て物持ってやがる……!」
「拳を引いて。貴女と戦う気はない」

 変身すればこの密着状態からでも銃を避ける事は出来るし、一発くらい撃たれてもどうにかなる。
 だからこれは決定的な負けではないし、ほむらだってその程度は理解している。
 しかし、少なくともこれで実力の一端は見えた。
 この一度の攻防で杏子が出した結論は“進んで敵対するべき相手ではない”というものだった。

「ちっ」

 杏子は距離を取るように後退し、ほむらも銃をすぐに仕舞う。
 角度の問題から監視カメラなどに映らないようにはしたが、流石に出し続けていれば警備員が来るかもしれない。

「ここは退きなさい、佐倉杏子」

 名を呼ばれた事で杏子は更に警戒を強める。
 こいつの前ではまだ名乗っていないし誰も自分の名を呼んでいない。
 マミだって苗字こそ呼べど名前はまだ口に出していない。

「……どこかで会ったか?」
「さて、ね」
 
 杏子はほむらを観察する。
 見覚えは……駄目だ、やはりない。
 間違いなく初対面だ。
 だが相手はこちらの事を知っており、戦闘力も高い。
 戦っても負けるとは思わないが、手札が全く見えないのは面倒すぎる。

「……ちっ、手札がまるで見えないとあっちゃねぇ……。
わかったよ、ここは退かせてもらう」
「賢明ね」
「は、言ってろ」

 流石にベテランというところか。引き際もしっかり弁えている様で、杏子は拍子抜けする程にあっさりと引き下がった。
 佐倉杏子は一見直情型に見えるが、その実かなり頭の回転が早く感情のコントロールもうまい。
 攻めるべき所ではガンガン攻めるが、退きべき時は退く潔さがある。
 だからこそ彼女は魔法少女としての過酷な戦場の中を生き抜いてこれたのだ。
 逆に言うならば引き際も弁えない人間……例えば、美樹さやかのようなタイプは絶対に長続きしない、とも言える。
 その為ほむらは佐倉杏子を評価しているし、魔法少女としての理想形とすら考えている。
 魔法少女には彼女のような存在こそが相応しいのだ。

 杏子が出口の自動ドアから外に出たのを確認し、ほむらも踵を返す。
 巴マミとの衝突は何とか避ける事が出来た。
 ならばもうここに用はない。

「あの、ほむらちゃん」

 だが呼び止められ、首だけを動かして後ろへと視線を向ける。

「何かしら? 鹿目まどか」
「助けてくれたんだよね……有難う」
「礼には及ばないわ」

 髪をかきあげ、何となしにマミを見る。
 すると彼女は視線を逸らし、下を向いてしまった。
 わかっていた事だが、やはり弱弱しい。
 こんな状態で佐倉杏子と戦わせていたら間違いなく死んでいただろう。
 間に合ってよかった、と少しだけ安堵する。

「用件はそれだけ?」
「え? あ、うん」
「なら、私はこれで失礼させてもらうわ」
 
 まどかの礼すらも突き放し、ほむらは出口へと向かう。
 後ろで美樹さやかが「なんだよその態度!」とか言っているが気にしない。
 だが、まどかが捨てられた子犬のような眼をしており、良心が大きく揺さぶられた。
 時間にしてわずか一秒程の躊躇。ほむらは背を向けたまま、まどかに声をかけた。
 今は、これが限度だ。

「巴マミを、支えてあげて」



*



 街中にあるゲームセンター、店名“ニトロ+”。
 一人の少女が店内のダンスゲームの上で小刻みにステップを踏んでいた。
 音楽に合わせてテンポよく足を動かし、一つのミスもなく高スコアを叩き出していく。
 画面の中では黒いヘルメットを着けた全身黒尽くめのレスラー“ウォーズマン”や髪の毛が画面に収まりきらない巨漢“ゴンさん”などの愉快なキャラクター達が一心不乱に踊り、ゲームを盛り上げる。
 最近導入された新作ダンスゲームで、名を“ダンス×ダンス×マッスル”というらしい。

「よっ、ほっ、は!」

 赤い髪を振り乱し、口にポッキーをくわえたまま彼女は踊る。
 難易度は最大の“世紀末”モードであり、これはダンスゲームで名の知れた達人などでもかなり難しいとされるものだが、彼女は汗の一つもかいていない。
 いや、それどころか後ろに近付いてきた人間の気配に気付き、声をかける余裕すらあった。

「よお、今度は何さ?」

 踊りながら彼女……佐倉杏子は後ろに立っていたほむらへと話しかける。
 一体何を考えているのか表情からは読み取れないが、とりあえず敵意のようなものは感じられない。
 だが、だからこそ余計に何をしに来たのかが読めなかった。

「この町を貴女に預けたい」
「どういう風の吹き回しよ?」
「今の巴マミではこの町の魔女達に対処し切れない」

 タン、タタン、とステップを踏む。
 ゲームはラストスパートに入ったようで、画面の中には白髪のイエス・キリストのような男が現れる。
 こいつの動きについていけばゲームクリアだ。

「それと、巴マミには今後手出ししないで」
「ふん、元々この町は頂くつもりだったけどさ。アンタ何者だ? 一体何が狙いなのさ?」

 杏子はほむらの考えが読めないでいた。
 マミの味方かと思えばどうも違うようだし、この町を狩場にしているかと思えばあっさりとこちらに明け渡す。
 真意が見えないというのは全くもって不気味極まりない。

「二週間後、この町にワルプルギスの夜が来る」

 ピクリ、と杏子の眉が上がる。
 今出てきた名前は聞き逃すには少々苦労するビッグネームだ。
 少なくともある程度経験を積んだ魔法少女ならば誰もが知っている。

「何故わかる?」
「秘密」

 相変わらず手札が読めない。
 だが笑い飛ばすには少々、この情報は重過ぎる。
 もし本当だとしたらここは絶好の狩場ではなく、ただの死地だ。
 ベテランである杏子ですらワルプルギスの夜と進んで戦いたいとは思わない。

「そいつさえ倒せば私はこの町から出て行く。後は貴女の好きにすればいい」

 なるほど、要するに同盟ってわけか、と杏子は理解した。
 確かにワルプルギスの夜はやばい魔女だ。
 だが二人がかりならば勝算は充分にある。

「で、私に何の得があるんだい?」
「グリーフシードを十個程用意してある。全て貴女の物にしていい」

 杏子は提示された条件を吟味し、考える。
 なかなかに悪くない取引だ。
 魔法少女をやっている以上いつかはワルプルギスの夜と戦うだろうし、要はそれが早いか遅いかの違い。
 そのワルプルギスを相手に二人で挑み、グリーフシードも手に入って絶好の狩場もこちらのもの。
 なるほど、破格だ。
 勿論こいつが嘘をついている可能性もあるわけだが、その時はその時でぶっ潰してしまえばいいだけの話。
 とりあえず、話に乗ってみるだけの魅力はある。

「面白い」

 そう言って笑う杏子の前、画面の中では白髪の男が修羅の国を制し、拳を天に掲げている。
 ゲームクリアを示す映像だ。
 白髪の男は『見えるはずだカイオウ、ヒョウ、ハン、後その他諸々の修羅達よ! あの死兆星が!』などと言っている。
 これは最高難易度をクリアしないと見れないレアな映像だが、杏子にとってはもう見慣れたものとなってしまっていた。
 それだけでも彼女の運動能力の高さがわかるというものだ。
 杏子はクリアしたゲームから降りてほむらの前に立つと、彼女の前にポッキーの箱を差し出した。
 これは彼女なりの親愛を示す挨拶のようなものだ。



「食うかい?」




























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/ || ̄ ̄||  炎     気付いたら主役である僕の出番がない・・・
|.....||__|| (     )   わけがわからないよ・・・
| ̄ ̄\三⊂/ ̄ ̄ ̄/
|    | ( ./     /

 ___
/ || ̄ ̄||   炎
|.....||__|| ( ◕‿‿◕ )  わけがわからないよ!?
| ̄ ̄\三⊂/ ̄ ̄ ̄/
|    | ( ./     /

 ___ ♪   炎 .∩
/ || ̄ ̄|| r( ◕‿‿◕ )ノ  わけがわからないよ!
|.....||__|| └‐、   レ´`ヽ   わけがわからないよ!
| ̄ ̄\三  / ̄ ̄ ̄/ノ´` ♪
|    | ( ./     /

ほむら「お前の出番は次回よ」

【ダンス×ダンス×マッスル】
杏子のプレイしていた謎のダンスゲーム。
筋骨隆々の逞しい漢達が一心不乱に踊るというカオスゲー。
主な登場キャラは3m超えの大男「山田政人」、ゴリラのような男「ウボォーギン」
全身黒尽くめのレスラー「ウォーズマン」にイエス・キリストそっくりの「レオリオ」。
髪の毛が画面からはみ出している「ゴンさん」に、そして何故かマッスルでもない「キルア」。
難易度は「ハンター試験モード」「超人オリンピックモード」「暗黒武術会モード」「世紀末モード」の四つが設定されている。

ゲームオーバーするとキルアがマッスル達に熱い抱擁をされるという可哀想な画面が表示されるので頑張ってクリアしてあげたいところ。


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