リビア:政府施設に放火 カダフィ氏退陣論

2011年2月21日 21時32分 更新:2月22日 2時18分

リビア東部のベンガジとみられる都市の写真。煙が立ち上る政府関連施設とみられる建物の周辺に人々が押し寄せている。動画投稿サイト「ユーチューブ」に2月20日に投稿された映像から(撮影日は不明)
リビア東部のベンガジとみられる都市の写真。煙が立ち上る政府関連施設とみられる建物の周辺に人々が押し寄せている。動画投稿サイト「ユーチューブ」に2月20日に投稿された映像から(撮影日は不明)

 【カイロ伊藤智永、和田浩明】反政府デモが首都トリポリにも拡大した北アフリカ・リビアでは20日夜から21日未明にかけ、トリポリの政府施設への放火や国営テレビ局襲撃などが相次いだ。中東の衛星テレビ、アルジャジーラによると、治安部隊とデモ隊の衝突で新たに61人が死亡。アラブ主要紙は、政権幹部が近くカダフィ大佐の退陣と軍部への政権移譲を求めると報じた。アラブ諸国で広がる民主化要求の波はリビア国内でも一気に拡大、41年もの独裁体制を続けてきた最高指導者カダフィ大佐に対する包囲網は極度に狭まってきた。

 汎(はん)アラブ紙アッシャルクルアウサトは21日、カダフィ大佐の側近とされる旧「革命指導評議会」の複数の幹部が、退陣と軍部への権限移譲をカダフィ氏に求めることを決めたと報じた。ユニス国防相が率いる暫定政権下で1年以内に憲法を導入、選挙を行って民主的な新体制に移行する計画という。

 ◇法相ら抗議の辞任

 さらに、リビアの「クリナ」紙(電子版)は21日、アブドルジャリル法相が「過剰な暴力の使用」に抗議して辞任したと報道。また英BBCによると、リビアの駐インド大使も抗議の辞任をした。アラブ連盟のリビア代表も既に辞任を発表。ユニス国防相のほかオベイディ公安相が離反したとの情報もある。カダフィ大佐の次男セイフ・アルイスラム氏は21日未明のテレビ演説で武力行使によるデモ鎮圧を辞さない姿勢を表明したが、側近から不協和音が聞こえ始め、カダフィ大佐は苦しい立場に追い込まれた。

 ロイター通信によると、1カ月前まで報道担当だった前政府高官は21日、「リビアの徹底した変革について対話を始めるべきだ」と述べ、指導部による武力鎮圧は誤りとの考えを示した。また、アラブ連盟のムーサ事務局長も同日、「改革や変化を求めるアラブ民衆の要求は道理にかなったものだ」と述べ、暴力の即時停止を呼びかけた。

 アルジャジーラなどによると、セイフ氏が21日未明のテレビ演説で憲法制定も含めた改革を約束して以降も、トリポリ中心部の「緑の広場」などに多数のデモ隊が集まり、治安部隊や雇い兵によるとみられる銃撃音が響き渡った。集まったデモ隊にカダフィ大佐の支持派が発砲したといい、BBCは「虐殺」と伝えた。21日朝までに内務省や警察などの建物が放火されたほか、国営テレビ局の建物も一時襲撃された。トリポリ市内で治安部隊の一部がデモ隊に加わる動きを見せているとの情報や、治安部隊が銀行などを略奪しているとの情報もある。21日未明までの死者数の合計は300人以上に達したとみられる。

 またトリポリ近郊にある韓国企業の建設現場を約500人のリビア人が襲撃し、韓国人3人とバングラデシュ人十数人が負傷した。

 英外務省は21日、武力鎮圧が図られたことを非難する声明を発表し、駐リビア英大使を本国に召還する抗議措置をとったことを明らかにした。AP通信によると、英石油大手BPは従業員を近く国外退去させる方針を明らかにした。

 日本の外務省によると、リビアに滞在する在留邦人約100人は日本時間21日夜までに全員と連絡が取れ、無事が確認された。

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