事故原発“ボイコット”寸前…所長ブチ切れ「やってられねぇ!」

2011.04.14


東京の事故対策統合本部とのテレビ会議が開かれる福島第1原発の免震重要棟(東京電力提供)【拡大】

 収束への見通しがつかない東京電力福島第1原発で、水素爆発や汚染水漏れよりも重大な事態が起きていた。その勇敢さから「フクシマ50」と称賛された現場の作業員が、事故対策統合本部が強引に指示した1号機への窒素注入を「危険だ」と猛反発。ボイコット寸前だったというのだ。『週刊文春』の最新号が伝えたもので、原発の状態は決死の作業員に支えられているだけに事は深刻だ。

 同誌によると“反乱”の一部始終はこんな具合だ。

 「もう、やってられねぇ!」

 声の主は第1原発の吉田昌郎所長。5日、現地の免震重要棟にある会議室と、東電本社に設置された事故対策統合本部を結んだテレビ会議中だった。

 この前日、テレビ会議で吉田所長は原子炉へ窒素注入を実施するのか質問した。東電幹部は「いち早く1号機に実施しなければならない」と、準備を開始するよう指示。これに対し、吉田所長は「予想もつかないことをやることは大きなリスクだ」と事故後初めて声を荒らげた。

 そして5日。吉田所長は抗議の意味も込めたのか、サングラス姿で会議に臨んだ。前日に続き、本部が窒素注入開始への説得に入ると、「危険なところへスタッフを行かせられない」「それでも窒素封入(注入)をやれというのなら、俺たちはこの免震棟から一歩も出ない!」と怒りを爆発させたという。

 1979年に東電入りした吉田所長は、入社直後に第1原発2号機の建設にかかわった。本社で原子力設備部長などを歴任したが、社歴の半分以上は福島で生活した。昨年6月25日、第1原発所長に就任。大事故が「第2のふるさと」という福島で起きたやりきれなさ。そして、震災後の対応による疲労がピークに達し、感情的になってしまったのかもしれない。

 結局、7日未明になり、1号機への窒素注入は「新たな水素爆発をふせぐため」として敢行。この間、東電本社は本部で説明にあたっていた技術者を第1原発に派遣し、吉田所長を説得、予定された作業は本部の指示通りに実施された。

 1〜3号機の制圧に手間取るなか、4号機でも燃料損傷とみられる現象が起こった。また、経産省の原子力安全・保安院は14日までに相次ぐ余震を受け、原子炉建屋の耐震補強工事を行うよう東電に指示。現場は、また新たな作業に追われることになる。

 

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