現在、東京・渋谷のアップリンクで公開されている、フィンランドの放射性廃棄物の最終処分場を描いたドキュメンタリー映画「100000年後の安全」(マイケル・マドセン監督)が、大きな注目を集めている。2日の公開初日から、連日満員の大盛況。東日本大震災を考慮して上映の中止、延期となる作品が続く中、緊急公開に踏み切ったことに、関係者は「今だからこそ見てほしい映画」と言葉に力を込めた。
いまだ、トラブルが一向に収まりそうにない福島第1原発に端を発する、放射能問題。そんな日本に「人間は、放射性物質とどう向き合うべきなのか」と疑問を投げかけるドキュメンタリー映画が、渋谷の小さな映画館で上映され、大きな話題となっている。
「―安全」は、フィンランドにある原発から出る高レベルの放射性廃棄物の最終処分場、通称「オンカロ(隠された場所の意味)」と呼ばれる施設に、世界で初めてカメラを潜入させたドキュメンタリー。同所で働く人々や、原子力の専門家の証言を織り交ぜながら、安全になるまで10万年を要するとされている廃棄物を、人類が管理していくことが可能かを問うている。
当初は秋に公開を予定していたが、先月11日の東日本大震災で放射能汚染問題が起きたことを受けて、急きょ公開することに。2日から、午前1回だけの上映ながら、休日は劇場に入れない観客が出るほどの盛況ぶりを見せている。
震災を連想させるとの理由から、「ヒア アフター」や「世界侵略:ロサンゼルス決戦」などが打ち切り、公開延期となるなど、映画業界全体がナーバスになっている中での上映。だが、配給するアップリンクの浅井隆社長は「今だからこそ見てほしいし、見るべきだと思う」と語気を強めた。
「放射能に対する正確な情報や知識を持ってもらうためのドキュメンタリー。『放射性廃棄物は永遠に危険』ということを知ってもらえれば」。劇場には年齢を問わず、様々な世代が足を運んでいるが、多くが「上映してくれてよかった」と話しているという。
「この映画は、原子力に反対している訳ではない。見た後に、それぞれが考えればいいこと」と浅井社長。16日からは上映回数を増やすほか、順次ロードショーを予定している。
[2011/4/9-06:03 スポーツ報知]