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エコキュート排熱で街を“冷房”!流体解析で分かった新効果

2008/10/27

エコキュート
BIM
CFD
FlowDesigner
アドバンスドナレッジ研究所
オール電化住宅の省エネ効果を支える心臓部となっているのが、深夜電力で空気の

熱を使ってお湯を沸かすヒートポンプ式の給湯器「エコキュート」です。


現在では、消費電力に対してお湯がどれだけ作れるかを表す「成績係数(COP)」が

6という製品もあるとか。しかし、省エネへの貢献はそれだけではありません。



ナ、ナ、ナ、ナ、ナント、



冷排熱を冷房に利用



するというアイデアが真剣に検討されているのです。



先週末、東京・神田駿河台で開催された「2008年 Flow Designer ユーザーフォーラム」(アドバ

ンスドナレッジ研究所
主催)で講演した東京電力技術開発研究所の山田耕治さんが発表しました。


お湯を作るということは、逆に言えば「室外機」からは冷熱が吐き出されているわけです。

これが深夜に街中に放出されると、熱帯夜を緩和できないかと熱流体解析を行いました。


エコキュートの排熱により集合住宅周辺の外気温度が下がる様子


講演する東京電力の山田耕治さんと東京大学の柳原隆司教授


柳原教授の講演。ベンチレーション窓(左)は、日照による窓際の熱負荷を大幅に軽減できる(右)


大林組の石崎陽児さんの講演(左)。会場は約100人の参加者で超満員。申し込みを断らざるを得なかった人も多かったという(右)

解析結果によると、3階建ての16戸の集合住宅に計16台のエコキュート室外機を付けて

夜間に一斉に運転すると、周辺の気温が2〜3℃下がるという結果が出たそうです。


この解析に使われたのが、3次元空間で熱と流体の流れを解析する「Flow Designer」という

ソフトです。3次元ならではの、興味深い結果と言えるでしょう。


エコキュートの排熱利用という点では、



氷蓄熱で冷房



したり、冷蔵庫の冷熱源として活用できるのでは、というアイデアも生まれそうですね。


このほか、基調講演では東京大学大学院工学系研究科建築学専攻の特任教授、

柳原隆司先生が自然通風やベンチレーション窓などへの流体解析(CFD)の利用の

可能性や建築設備の定量評価の必要性などを講演しました。


また、大林組設備設計部 空調・衛生設計グループの石崎陽児さんは、同社の全店

でこのソフトを使って設計に活用していることを紹介しました。


CFDというと、これまでは完成した設計を確認するために1回だけ行うことが多かった

ようですが、今後、BIMソフトの一つとして3次元CADと連動すれば、よりスピーディー

に解析できるようになるので、設計段階の環境改善ツールとしてさらに普及しそうです。

家入 龍太ケンプラッツ

読者のコメント (8 件)  ※[ログイン]すると全文表示、投稿・投票ができます
エコキュートの実行効率COP約3というと高効率のガス給湯器と大差ないですよね。ちなみにエコキュートとガス給湯器の性能を比較する場合、単純にCOPでは比較できませんのでご注意を。
エコキュート:電気(二次エネルギー)、発電効率は30〜40%
ガス給湯器:ガス(一次エネルギー)
よって、3×0.4=1.2がガス給湯器と比較するエコキュートのCOPとなります。高効率のガス給湯器は0.9ほどです。 エコキュートがエコロジーかどうかは、使用する電気の発電方法をどう考えるかによります。
(2008/11/11 12:06)

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昨年、中国電力に確認したところ、広島地方の12月、1月でも各メーカーのCOP(成績係数)の平均値は2.97とのことでした。つまり、冬季でも普通の電気温水器の33%の電力で済む訳です。 貯湯槽の放熱は約8%程度と思いますので、エコノミーだけでなくエコロジーでも優れていると思います。ちなみに、メーカーによると外気温−20℃でも90℃の湯が沸くと記載されていますが、COPは不明です。そういえば、北海道電力のエコキュートの広告は見たことがないですね。
(2008/11/10 17:35)

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深夜電力は余った電力、昼間のピーク時に合わせて発電しているので深夜は余分になってしまう電力を使っていると聞いているのですが、それでもナンセンスでしょうか?  原子力発電はナンセンスという問題とは切り離して考えるとしてですが。
(2008/11/05 14:36)

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エコキュートは夜にお湯を沸かして昼に使うので、多少なりとも温度が下がりエネルギーの無駄遣いにしか見えず嫌いです。しかし、夏の熱帯夜の冷房の排熱を利用するならいいかもしれません。問題は、オール電化と組み合わされていて冬でも使わず済ませられないということでしょう。オール電化は単純に電力会社の顧客囲い込みだと思います。企業にはもっとエネルギーの有効活用を考えてもらいたいです。
(2008/10/30 09:41)

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深夜電力を増やして何とか発電所の負荷変動を軽減したいという発想をしているから、こんな議論になるのではないでしょうか。 電力は他のエネルギー源に比べて、何にでも使える大変良質なエネルギーなのです。その貴重なエネルギーをいかに有効に使うかという発想をしてもらいたい。 そうすれば、前の書き込みでも指摘されていた冬季、寒冷地の給湯をヒートポンプでやることなど、どれほどナンセンスなことかすぐに理解できるはずです。冬の冷廃熱で氷を作って夏まで置いておくというのならまだ許されるが。
(2008/10/29 12:22)

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私も以前、冷熱と温熱を同時利用するダブルパンドル型のエコキュートをメーカーに提案したことがあります。メーカーいわく、以前エアコンにて給湯・冷房用で使用する機種を発売したが売れなかったそうです。
(2008/10/27 18:12)

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「寒冷地においてもエコキュートは効率よくお湯を沸かせます」って売り込みしてきますが、寒冷地で使うと、この記事から言うとさらに冬は外気が冷える訳ですね。こういう都心部での発想だけ良い記事にして、冬の寒冷地はいつも無視されますね。
(2008/10/27 16:23)

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エコキュートがどんどん増えていったら,時間帯別電力消費量はどれほど変化するのでしょうね。深夜電力の需要が増えて原発を増設しなけりゃならなくなったりして。
(2008/10/27 14:58)

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