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震災発生から1カ月 被災地の衆院議員に聞く

 東日本大震災による津波の被災地から選出されている衆院議員が地元と国会の往復を重ねながら、被災者支援に奔走している。発生から1カ月、郷土の再生に懸ける思いを3氏に聞いた。(東京支社・元柏和幸)


◎復興先進モデルを/安住淳氏(宮城5区)

 自宅は全壊し、事務所も駄目になった。消息が6日間つかめなかった父母は近くの小学校に避難している。生まれ育った光景が、がれきの山になった。まだ親類、同級生、支援者ら安否が分からない人がいる。いまだ現実を受け止められない。
 週末、石巻に帰るたび、市役所で職員と寝泊まりしている。喪失感は一生拭い去れないだろう。だが立ち止まっていられない。豊かな三陸の海で何百年と生計を立ててきた地域だ。「津波に負けてられるか」という気持ちはものすごく強い。
 食料と水は確保できた。欠乏していたガソリンも、供給が回復しだしている。一方、避難所の衛生問題は大きな課題で、感染症などを防ぐためにも、2次避難を考える段階にきている。その間にがれき処理を急ぎ、仮設住宅を用意したい。地盤沈下の難題もある。土地利用のビジョンをつくるにも、まずはきれいな更地にしないといけない。
 復興の道は、東京電力福島第1原発の事故もあり、とてつもなく長い戦いになる。単なる原状復帰でなく、高齢化が進む地方の先進モデルを創造したい。継続的なサポートには「復興庁」が欠かせない。仙台など被災地に担当大臣を置くのは、一つの選択肢だと思う。
 大風呂敷かもしれないが、道州制をにらんだ拠点づくりの視点があってもいい。100年先を見据え、東北を根本から考え直すチャンスになる。
 今は政治休戦して態勢を立て直す時だ。巨費を要する復興は、与野党の枠を超えないと乗り切れない。助け合う気持ちを国民に育んでもらうためにも、国会を含めた「オールジャパン」の仕組みを働き掛けていく。


◎支援金支給早急に/小野寺五典氏(宮城6区)

 「全く情報がありません。テレビを見て、どこに津波が来ているか教えてください」。気仙沼市長から受けた電話越しの言葉に、事態の深刻さを察知した。あれだけ防災対策を練り、システムを張り巡らせたのに、すべてが機能不全に陥った。
 翌日、避難所を夜通し探し、母と弟を見つけた。海に近い実家の木造旅館は壊れた。10人いた宿泊客の荷物を気に掛け、母は避難所から崩れそうな3階部分に戻っている。自分の地元での住まいも、その3階部分だ。
 震災直後、緊急車両以外の給油が難しくなり、高速道路も走れなくなった。物資が途絶え、パニックが起きた。政府は初動対応に大きな課題を残した。災害救助法で支援の仕組みはあるのに、すべて遅かった。官邸の頭が原発事故に向き、被災者の声は届いていない。
 失業者があふれ、仕事をめぐる相談が数多く寄せられる。物資が届き、ようやく商店も開き始めたが、買うための現金がない。早急に生活支援金を手渡す必要がある。
 生活の糧だった水産業は何も残されていない。大型船が流され、製氷工場、冷凍庫、加工場はほぼ全滅だ。造船場、給油施設もやられた。漁船漁業の1セットを再建するには数年かかるだろう。
 だが魚は帰ってくる。小船があれば収入の道が開ける。秋にはワカメ養殖の季節を迎える。手段を整えれば、生産者として活躍の場ができる。
 被災者は毎日、避難所でぼうぜんとしている。将来に不安を抱えている。犯罪も増え始めた。1カ月たち、心が折れて荒廃しそうな状況をどう食い止めるか。一人一人に復興への歩みを踏み出してもらう支えが大切だ。


◎雇用の創出が重要/黄川田徹氏(岩手3区)

 妻と長男、父母の家族4人が、若い男性秘書の車で津波から逃れようとしたが、5人とも間に合わなかった。
 まだ妻と父は見つかっていない。そろって弔ってやりたいが、遺体の損傷が進めば、確認も難しいのが現実だ。
 陸前高田市の惨状に言葉を失った。市街地には下りて行けなかった。同僚だった市職員らが、家族を捜すことすらできずに、避難所を必死に走り回っている。
 復興の道筋は1カ月たっても見えてこない。市庁舎と、若く能力ある職員が大勢流された。避難生活の日常に追われ、不明者の調べにも手が回らない。トータルでものを考え動ける状況にない。
 ようやく物資は行き渡り始めたとされるが、大量の食料などはしばらく必要になる。財産を根こそぎ流された被災者には布団1枚もない。日用品もない。時々に必要なものは続々出てくる。救援物資などの置き場にすら難儀している。
 体育館などでの避難生活は限界だ。がれき処理、仮設住宅の建設、遺体の捜索など、やるべきことは決まっている。制度の弾力運用や法整備などでスピードを加速していくことが重要だ。
 政府からは明確なメッセージが届かず、被災地は不安感を募らせた。「会議は踊る、されど復興は進まず」では困る。国が守り、暮らしを支えるという安心感を与えることが何より欠かせない。
 生活再建には法律やさまざまな手当も必要だが、飯の種となる仕事をどうつくるかが重要だ。理屈じゃない。医療だって、テントで不眠不休の診察態勢ではもたない。持続できる仕掛けづくりを急がなくてはならない。


2011年04月12日火曜日


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