村山実編 その一 「不仲説」の真相は…

 本紙評論家・小山正明氏が語る「猛虎豪傑列伝」も、いよいよ今週と来週で店じまい。2週にまたがってお届けするのは、小山氏とエースの座を激しく争った“ザトペック投法”村山実その人です。性格、そして投球スタイルが対照的な2人の本当の関係はどうだったのか。約半世紀の時を越え、その真相が明らかになる!?

62年特別功労賞

 僕と村山の関係については、マスコミがいろいろと書き立てたなあ。オフの話題には事欠かんかったと思うわ(苦笑)。僕は「10‐0」でも「10‐9」でも「とにかく勝つこと」を大前提に考えた投球を固い信念にしてやっていたんやけど、彼はどんな状況であろうがとにかく「すべてに全力」を振り絞ってた。投球スタイルは本当に対照的やったからね。

 マスコミとの付き合い方もそら対照的でなあ。僕がマスコミが嫌いで寄せ付けんかったのに対して、村山は彼らと親しく付き合っていたし、ファンでさえ自宅に入れたりもしとった。そんなところから、リーグ優勝した1962(昭和37)年の一件が起こるんやな。

 あの年、村山は25勝14敗、防御率1・20という成績で、こっちはそれを上回る27勝11敗、防御率1・66(13完封は史上最多)を挙げた。しかし、シーズンオフに最優秀選手に選ばれたのは村山の方やった。これは記者投票やから仕方ないことやけど、腹が立ったのは、僕に「特別功労賞」てな訳のわからんものを連盟がくれたことや。

 奥井さん(成一氏=当時球団総務課長)からそれを聞かされたとき、もう頭に来てなあ。「毎シーズンこんな賞があったんでっか?毎年あるんであれば喜んでいただきますよ。でも今年だけでっしゃろ?それなら辞退しますわ!!」。そう言うたら奥井さん、困ってしもて…。完全に取って付けたような賞やったからね。頑として受け取らん‐という気持ちやった。

 最終的には「村山のMVPにミソを付けてしまうのも大人げない」と考え直し、受けることにしたんやが…。

 村山との確執を色々言われたけど、僕個人には思うところなんか何もなかった。彼の入団は僕より6年あとだし、年齢も2歳年下。当時は「ええ球投げるヤツが入ってきたな」という感じで見とった。関大の先輩だった西山(和良氏=元編成部長)に連れられてあいさつに来たのをよう覚えとるけど、礼儀正しくあいさつしとった。村山が小山に凄まじい対抗心を燃やしてた‐というのは、後で聞いた話やね。

 これは余談やが、インターネットの某に僕と村山の話が書かれてるのを見ると、言うてもないことが載っとるからええ加減なもんやで。

 「『適当に力抜かないとパンクしてしまうぞ』と声をかけた」てな記述があったが、それは「そうした方が負担がかからんからいいんじゃないか」と言うただけ。村山が「力を抜くとキャッチャーまで届かない気がする」と答えたことで「『なんだ、あいつ、かっこつけやがって』と思っていたそうである」という記述もデタラメ。

 しかも「葬儀の際『この年になって村さんの言葉がようやくわかるようになった』と述べている」という記載には、笑うしかない。年長の僕が「村さん」という訳がない。まあ、今となってはどっちゃでもええがな。

 彼との話はまだまだあるんで、最終回にもう一回書かせてもらうわ。

〈WHO’SWHO〉

▽村山 実(むらやま・みのる)1936年12月10日生まれ。兵庫県出身。現役時代は投手。住友工高から関大を経て、59年阪神入団。最高勝率(70年)、最優秀防御率3回(59・62・70年)、最多勝2回(65〜66年)、最多奪三振2回(65〜66年)、最優秀選手(62年)、ベストナイン3回(62・65〜66年)、沢村賞3回(59・65〜66年)。72年現役引退。背番号「11」は永久欠番。通算成績は509試合222勝147敗、防御率2・09。70〜72年は兼任監督、88〜89年は2度目の監督を務めた。93年野球殿堂入り。98年8月22日死去。

▽小山 正明(こやま・まさあき)1934年7月28日生まれ、75歳。兵庫県出身。高砂高から53年、阪神にテスト生として入団。62年には27勝を挙げ、優勝に貢献。64年、山内一弘との“世紀のトレード”で、東京(現ロッテ)に移籍。73年の大洋を最後に現役引退。最高勝率・最多奪三振・沢村賞(いずれも62年)、最多勝(64年)。通算856試合320勝(歴代3位)232敗、防御率2・45。01年、野球殿堂入り。現本紙評論家。

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