その昔。“虎の鉄人”と言えば、三塁のホットコーナーを堅実に守り続けた三宅秀史だった。現鉄人・金本に抜かれるまでの「882試合連続出場」と「700試合連続フルイニング出場」は、今なおさん然と球史に輝くが、試合前の不慮の事故が選手生命をも短くしてしまった。今回の「猛虎豪傑列伝」では、その事故の原因を作ってしまった本紙評論家・小山正明氏が後悔の念も込めて真相を語った。
この三宅に関しては、まず「あの事故」を話さんといかんやろう。
1962年(昭和37年)の9月6日、場所は当時大洋の本拠地だった川崎球場。激しく優勝争いをしていた大洋との23回戦に先発予定だった僕は、いつものように、山本哲ちゃん(哲也氏=1953〜64年)を相手に外野で遠投をしとった。その日は肩が思いのほか軽くて、ホップするような球がビュンビュンいくわけや。そんな調子で投げた1球が、哲ちゃんのミットから大きく逸れた。
こっちが「しもた…」と思う前に、哲ちゃんが「危ない!」と大声を出した。彼と背中合わせに三宅がキャッチボールしとったからや。ハッと横を向いたところに、僕の投げた球が直撃した。まさに出合い頭やったわけやけど、あんな悲劇的な出合い頭もないわな。試合の方は、僕が完封して勝った。優勝争いの真っ直中で、尾を引きずっている場合やなかったからな。必死やったよ。
何ぼこっちがコントロールいいといっても、狙って当てられるわけじゃない。ただ、三宅には「申し訳ない」と謝って、オフの契約更改のとき、三宅が終わった後に更改するという形をとった。僕にすればそんなことをするのが精一杯やった。
彼と僕は同い年なんやけど、鳴り物入りで来たわけやなかった。岡山・南海高から入って下積みを経験した後、1軍に上がってレギュラーをつかんだ。打率はそんな高くなかったものの、パンチ力はあった。思い切りのいいスイングによる鋭い打球なんか、一級品やった。ボールが飛ばない時代、彼がバックスクリーンに放り込んだシーンを何度見たか。
それと何と言っても守備や。ショートのヨッさん(吉田義男氏)は天才的やったけど、この三宅もすごかった。よく巨人の長嶋(茂雄氏)と比べられてたが、長嶋が派手に簡単なゴロをさばくのとは対照的に、三宅はきっちり取ってオーバースローで的確に送球しとった。それやから球が逸れないわな。基本に忠実なプレーを淡々とする。加えて肩も強かったよ。
特に、三遊間へ飛んだ難しい打球のさばきなんか、相手チームも度肝抜かれとったんやないか。そんな三宅を相手は「ネコ」と呼んどった。打って走るときでも、音も立てずにササッと進むし、守りでも平然とビッグプレーをする。しかも、性格が物静かときているから「ネコ」や。もっと格好のいいニックネームがなかったのかと思うけどな。これは僕が直接聞いた話やから本当やで。
そんな三宅に、僕はこんなことを言われたことがあった。打者の外角低めを徹底的に突いていた配球を見て「もう少し内を突いたらどうや?」ってな。僕は打たれないという自信があったからそんな配球をしたんやけど、三塁の三宅にすれば外一辺倒に不安があったんやろうな。割と寡黙な性格でも、言うときははっきり言う男やった。
金本に破られるまで、連続試合フルイニング出場の記録を持っとった。あの事故がなければ…と今でもつくづく思うなあ。
▽三宅 秀史(みやけ・ひでし=登録名は66〜67年まで三宅伸和)1934年4月5日生まれ、75歳。岡山県出身。現役時代は内野手。南海高から53年、阪神入団。ベストナイン1回(57年)、オールスター出場4回(57〜60年)。通算成績は1219試合3894打数983安打100本塁打376打点、打率・252。67年の現役引退後は阪神でコーチ、2軍監督を務めた。
▽小山 正明(こやま・まさあき)1934年7月28日生まれ、75歳。兵庫県出身。高砂高から53年、阪神にテスト生として入団。62年には27勝を挙げ、優勝に貢献。64年、山内一弘との“世紀のトレード”で、東京(現ロッテ)に移籍。73年の大洋を最後に現役引退。最高勝率・最多奪三振・沢村賞(いずれも62年)、最多勝(64年)。通算856試合320勝(歴代3位)232敗、防御率2・45。01年、野球殿堂入り。現本紙評論家。
◇アニキに破られるまでの日本記録
三宅は入団4年目、56年4月11日・大洋戦から連続試合出場、翌57年7月15日・広島戦からは連続試合フルイニング出場を続けていた。しかし、62年9月6日・大洋戦の試合前練習で目を負傷。試合も欠場することになり、連続試合出場は前日5日までの882試合、連続試合フルイニング出場は700試合でストップした。なお、700試合連続フルイニング出場は、04年・金本知憲に破られるまでの日本記録だった。
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