藤本定義編 その一 阪神、巨人を指揮した名将

 プロ野球60年の中で“永遠のライバル”と言われる巨人と阪神2球団の監督を務めたのは、藤本定義氏ただ1人だ。あのV9監督・川上哲治氏を「おい、テツ!」と呼んだ“戦後初の優勝監督”が、今回の「猛虎豪傑列伝」の主人公。本紙評論家・小山正明氏が、藤本監督の愉快なエピソードを2週連続で語ります。

戦後初の優勝監督

 「戦後初の優勝監督」となった藤本の爺さんやけど、この人は金田監督(正泰氏=第11代、17代監督)の時にヘッド兼投手コーチとして、阪神に入ってこられた。昭和35年(1960年)やったな。僕が25勝(19敗)した年や。担当コーチやったから、我々投手陣とよく話をしたよ。

 戦前は巨人の監督として“第1次黄金期”を構築し、戦後は阪急の監督もされた。そんな藤本さんが何でライバル球団に入ってこられたのか、僕らにはわからんけど、当時の野田誠三オーナーと戸沢一隆球団社長の間で、何らかのつながりがあったんやろう。

 自身が早稲田で投手をやってたもんやから、そら能書きがすごかった。「ピッチャーいうのはな、体をねじったとき、内腿で○○タマを挟み込んで投げるんや。それくらい腰をうまく使わんといかん」。そんなことあらへんがな!!「球を放るものがタマ挟んでどないすんのや」と、皆で言うとった。ほんとにええ加減なもんやったで(笑)。

 爺さんで面白い話があんのや。夏の暑い時、東京へ遠征に行くやろ。宿舎やった旅館の8畳の部屋に、選手が4人寝るわけよ。クーラーなんてない時代。扇風機を回しても涼しくならんから、窓は開けっ放しや。そんな部屋に、外で酒を飲んできた石川緑(1962〜67年)という投手が夜遅くに帰ってきて「イーチャンやろう」と麻雀することになった。

 僕らの部屋の離れに、麻雀好きの古川(啓三氏=1959〜61年)という捕手が寝ていたんで、彼を呼びに緑が行った。その部屋には、当時ヘッドやった青さん(青田昇氏=故人)と藤本の爺さんもおった。酔った勢いで部屋に入った緑は、古川を足でつついて「おい、イーチャンいくぞ」と起こす。ところがや。なんぼやってもウンともスンとも言わん。「おかしいな」と焦った緑、よく見ると爺さんやった…。

 真っ青な顔して帰ってきて「俺、まずいことをやっちゃった。酒覚めちゃったよ」とこうや。次の日。青さんが緑を呼びつけた。

 青田「こら緑!!お前きのう何をガタガタやったんや?」

 石川「へ、ヘマやっちゃったんです」

 青田「爺さんが俺に言うんや。『夜中酒を飲むのはええけど、人が寝ている部屋に入ってきてガチャガチャするな、と言うとけ』とな」

 そんだけや。直接怒ることもなかった。あの人は細かい事は気にせんかったからね。遠征時の門限を、ヘッドの青さんが聞いたときも「子供みたいなことを言うな。出ていきたいやつは出て行ったらええやないか」と問題にせんかった。ああ言われたら、逆に出ていけんわな。

 爺さんに関してはまだまだある。続きは次回。

〈WHO’S WHO〉

▽藤本 定義(ふじもと・さだよし)1904年12月20日生まれ。愛媛県出身。松山商(旧制)から早大、東京鉄道局を経て、36年巨人初代監督に就任。42年までの在籍7年間(9シーズン)で7度の優勝を果たし、巨人の第1次黄金時代を築いた。以後、パシフィック・太陽、金星・大映、阪急で監督を歴任。60年から阪神ヘッド兼投手コーチを務め、61年途中から監督就任。62、64年の2度、リーグ優勝に導いた。68年退任。監督年数29年(31シーズン)は歴代最長。74年野球殿堂入り。81年2月18日死去。

▽小山 正明(こやま・まさあき)1934年7月28日生まれ、75歳。兵庫県出身。高砂高から53年、阪神にテスト生として入団。62年には27勝を挙げ、優勝に貢献。64年、山内一弘との“世紀のトレード” で、東京(現ロッテ)に移籍。73年の大洋を最後に現役引退。最高勝率・最多奪三振・沢村賞(いずれも62年)、最多勝(64年)。通算856試合320勝(歴代3位)232敗、防御率2・45。01年、野球殿堂入り。現本紙評論家。

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