藤村隆男編 一時代築いた「怖〜い」エース 

 本紙評論家・小山正明氏が語る「猛虎豪傑列伝」の新春第1弾は、初代ミスタータイガース・藤村富美男氏の実弟で、主戦投手として一時代を築いた藤村隆男氏の登場です。今では“虎のご意見番”として鳴らす小山氏も若かりし頃、隆男氏には「よく怒鳴られた」という。その実像とは‐。

楽しみな藤村兄弟の「血」

 隆男さんなあ…。それはそれは“怖い先輩”やったで。僕がタイガースに入った昭和27(1952)年当時、甲子園球場のロッカーが通路を隔てて「ベテラン組」と「若手組」に分かれてた。その僕らのロッカーに、先輩たちがいつも使用済みのアンダーシャツや、パンツを放り込んで、山積みにするわけや。その最たる人が隆男さんやった。ホンマにかなわんかったわ(苦笑)。

 試合が終わって、若い選手が先に風呂に入ろうもんなら「貴様、どういうことや!」と雷が落ちてくる。あの人も“軍隊帰り”やったからな。監督の松木さん(謙治郎氏)やお兄さんの富美男さん、その他にも軍隊で鍛えられた方がたくさんいた。そんな人らに怒られたり、とばっちりを食うのは若いこっちや。

 普段は口数が少ない方やったけど、しゃべり出すと早口になって聞き取りにくい。「何ですか?」と聞き直すと、もう黙って何も言うてくれん。あれにも参ったよ。

 亡くなった先輩を悪くいうわけやないが、個人的には意地悪みたいなこともされた。後ろからボールをぶつけられたりなあ。外野でアップをしていた大崎(三男氏)を「相撲や!」と言うてつかまえ、何と足を骨折させてしもたことがあった。これには兄の“ミスター”が激怒や。

 「隆男、ちょっと来い!」と呼びつけると、そらすごい剣幕で怒った。「お前、人が嫌がることをするな!と俺がいつも言うとるのがわからんのかぁ!!」とな。さしもの隆男さんも、ミスターには一目も二目も置いとったから、言葉もあらへんがな。うつむいてブツブツ言うだけやった。

   

球のキレ抜群

 野球の“腕”は確かやったよ。梶岡さん(忠義氏=1947〜55年)と共に、僕らの前の世代を支えた方やった。渡辺の省さん(渡辺省三氏)と同じく、スライダーとシュートがよかった。体型こそ“ずんぐり型”やったけど、球にはキレがあったねえ。

 昭和28(1953)年に21勝したんやけど、その年はオールスターまでに18勝を挙げたんや。そら面白いように勝ち星を積み重ねとった。ところが、そこからわずかに3勝のみ。登板過多がたたってバテたのかなあ。中5日や中6日という今の時代と違って、当時の主力級は中3日とかで平気やったからね。ただ、あの年の後半を見ていると、バテが来とったのは間違いないな。

 お兄さんの項で言い忘れたけど、この藤村兄弟の“血”というのはすごいと思うよ。富美男さんのご子息が高校野球の監督になり、3人の孫が揃って甲子園大会に出場したんやもん。こうなれば“4代目”にも期待せんわけにはいかん。“ミスター”や隆男さんの血を引いたスターの出現を、僕は心から待ちたいね。

〈WHO’S WHO〉

▽小山 正明(こやま・まさあき)1934年7月28日生まれ、75歳。兵庫県出身。高砂高から53年、阪神にテスト生として入団。62年には27勝を挙げ、優勝に貢献。64年、山内一弘との“世紀のトレード”で、東京(現ロッテ)に移籍。73年の大洋を最後に現役引退。最高勝率・最多奪三振・沢村賞(いずれも62年)、最多勝(64年)。通算856試合320勝(歴代3位)232敗、防御率2・45。01年、野球殿堂入り。現本紙評論家。

▽藤村 隆男(ふじむら・たかお)1921年10月5日生まれ。広島県出身。現役時代は投手。呉港中(旧制)から40年に兄・富美男が所属していた阪神に入団。戦時中の出兵を経て、戦後の46〜47年はパシフィック・太陽に在籍。49年に阪神への復帰を果たした。52〜53年には2年連続20勝以上をマーク。最高勝率1回(52年)。57年に広島移籍後、同年現役引退。通算成績は414試合135勝97敗、防御率2・65。引退後は広島、近鉄、阪神で投手コーチ、2軍監督などを務めた。93年12月25日死去。

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