吉田義男編 神業プレー「そんなアホな!!」

 現役時代は“今牛若丸”との異名を持つ名プレーヤーで、指揮官としては、球団唯一の“日本一監督”でもある吉田義男氏(76)。本紙評論家・小山正明氏が語る「猛虎豪傑列伝」の4回目は、今なお異色の解説者として輝きを放ち続けている“ヨッさん”の登場。小山氏から見た伝説の名人芸とは‐。

トラ唯一の「日本一監督」

 まあヨッさん(吉田義男氏=阪神元監督、現野球評論家)の現役時代のプレーなんか、ここ近年ではありえないね。そらもう見事なもんやった。例えば、1死一塁で打者が二ゴロを打ったとせんかいな。二塁手から併殺狙いの球が転送され、遊撃のヨッさんがこれを捕ったか思うたら、もう一塁で併殺完成や。球が来た‐と同時に投げるんやもんなあ。ホンマやで。

 僕ら登板がないとき、ベンチでよお渡辺の省さん(渡辺省三氏=1953〜65年、元阪神スカウト)と話したもんや。「ヨッさんはどないしてあんなプレーできるんやろな」って。そんで、じかに聞いてみたことがあった。「ボールをつかまないと放れられしまへんやろ。一体どないしまんのや?」。そうしたらヨッさんの返事はこうや。

 「いや、できるで」。味も素っ気もない。それだけや。企業秘密いうんか、お前に教えたところでできへんやろ‐って感じやな。そらできるわけあらへんよ(苦笑)。僕はピッチャーやし、たとえ内野手であったとしてもできん。あんなもん神業としか言えん。

 藤村さん(富美男氏)が監督やったとき、自分で試合前のシートノックをしとった。このノックがまたうまいんよ。遊撃のヨッさんの番になったとき、捕れるか捕れんかという微妙なところに打つんやな。ところがこれを必死に追いかけて捕ってしまう。藤村さんは苦笑いや。これだけで、試合前の甲子園がドッと沸いとった。試合の中身よりも、あのシートノックが1つの“見せ場”やったわけや。

次元が違う

 僕がプロに入って初めて三振を獲ったのは、プロ野球界初の3冠王になった小鶴誠さん(元松竹=1942〜58年)やけど、その小鶴さんが、ヨッさんの神業にあ然とグラウンドに立ちすくんだことがあった。小鶴さんが広島に在籍していたときのことや。マウンドには藤村隆男さん。小鶴さんが放ったライナー性の打球が、藤村さんの足元を抜けていった。小鶴さんにすれば「よし、センター前や」てなもんやったやろ。

 抜けた!!っていう打球やから、ゆっくりと一塁へ向かった。そしたら、何でか球が一塁に送られてきた。一塁塁審のコールは「アウト!」よ。ヨッさんが例の神業で捕って一塁に矢のような送球をしたんやな。「そんなアホな!!」。小鶴さんは一塁手前でそんな顔をしとった。そらそうやろ。あんな打球、普通の選手やったら捕れっこないんやから…。

 鳥谷が入団して間もないころ、僕がテレビの解説をしているときに美技を見せ、ときのアナウンサー氏が「今牛若丸・吉田さんのようです!!」となぞらえた。とんでもない話やね!!「比べたらあかん」とはっきり言うたんや。次元が違う、とな。

〈WHO’SWHO〉

▽小山正明(こやま・まさあき)1934年7月28日生まれ、75歳。兵庫県出身。高砂高から53年、阪神にテスト生として入団。62年には27勝を挙げ、優勝に貢献。64年、山内一弘との“世紀のトレード”で、東京(現ロッテ)に移籍。73年の大洋を最後に現役引退。最高勝率・最多奪三振・沢村賞(いずれも62年)、最多勝(64年)。通算856試合320勝(歴代3位)232敗、防御率2・45。01年、野球殿堂入り。現本紙評論家。

▽吉田義男(よしだ・よしお)1933年7月26日生まれ、76歳。京都府出身。現役時代は内野手。山城高から立命館大(中退)を経て、53年に阪神入団。最多安打1回(55年)、盗塁王2回(54、56年)、ベストナイン9回(55〜60、62、64〜65年)。69年に現役引退。通算成績は2007試合1864安打、66本塁打、434打点、350盗塁、打率・267。阪神監督を3度(75〜77、85〜87、97〜98年)務め、85年には21年ぶりのリーグ制覇と球団史上初の日本一に導いた。同年、正力賞獲得。監督通算成績は1051試合484勝511敗56分け、勝率・486。92年に野球殿堂入り。現在は野球評論家。

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