ウランちゃんのなるほどアトム教室

私たちが毎日食べているたべものには、放射性物質が含まれているものもあると聞きましたが、人体への影響はあるのですか?


アンサー
私たちが食べているたべものには放射性物質が含まれていますが、その量はからだに影響を与えるレベルにはないといえます。

たべものに含まれる放射性物質

放射性物質には、自然の放射性物質と人工の放射性物質があります。
たべものに含まれる自然の放射性物質の代表的なものは、カリウム40と呼ばれるものです。カリウムは、生物の必須ミネラルであり海草類などに多く含まれます。カリウムの大部分は放射線を出しませんが、カリウム40はカリウムに約1万分の1含まれ、放射線を出す性質があります。(図-1)

図1 食物中のカリウム40の放射線量(日本) 【図1】

カリウム40以外にも、自然の放射性物質には、炭素14やルビジウム87などがあり、私たちのからだにはたべものに由来したこれらの放射性物質が存在しています。(図-2)

図2 体内の放射性物質の量 【図2】

(出典:原子力安全研究協会「生活環境放射線データに関する研究」)

一方、たべものに含まれる人工の放射性物質としては、過去の核実験に由来するストロンチウム90、セシウム137などがあります。

これらは、現在でも検出されることがありますが、自然の放射性物質に比べて極めて少ない量です。

平成18年度第3四半期に採取した環境試料を例にすると、牛乳1キログラムに含まれるカリウム40の量は42ベクレルであったのに対し、セシウム137の量は0.02ベクレルと、カリウム40の約2,000分の1でした。また、ぶた肉1キログラムに含まれるカリウム40の量は95ベクレルであったのに対し、セシウム137の量は0.15ベクレルと、約600万分の1でした。

たべものによる被ばく

飲食や呼吸などにより放射性物質がからだに取り込まれると、からだは内部から放射線を受けて「被ばく」します。これを「内部被ばく」と呼び、からだの外にある放射性物質などからの放射線を受ける「外部被ばく」と区別しています。(図-3)

図3 【図3】

たべものなどによる「内部被ばく」(内部線量)は、1年間1人当たり0.29ミリシーベルトであり、自然放射線による1年間の放射線量2.4ミリシーベルトの約1割を占めています。(図-4)

図4 【図4】

(出典:「国連科学委員会(UNSCEAR)2000年報告」より)

汚染されたたべものと規制

昭和61年(1986年)4月、旧ソ連ウクライナ地方にあるチェルノブイリ原子力発電所で大事故が起こり、大量の放射性物質が拡散しました。欧州では食品が汚染されたため、各国は食品1キログラム当たり370ベクレル(放射性セシウムの濃度)を超える食品を輸入禁止としました。この基準は、かりに基準値の食品を毎日食べ続けたとしても、1年間に受ける放射線の量は約0.04ミリシーベルトに相当するものであり、国際放射線防護協会の勧告基準(年間1ミリシーベルト)を十分下回るものでした。

また、原子力安全委員会が定める防災指針においては、飲料水、牛乳・乳製品については、1キログラム当たり200ベクレル(放射性セシウムの濃度)、野菜類、穀類、肉・卵・魚・その他については、1キログラム当たり500ベクレル(放射性セシウムの濃度)を摂取制限の指標としています。

これらを踏まえると、私たちが毎日食べているたべものに含まれる放射性物質は、さきほど例として紹介したぶた肉に含まれるセシウム137が1キログラム当たり0.15ベクレルであったことを考えても、からだへの影響を及ぼすレベルにはないことがわかります。
ウランちゃん
※シーベルトとベクレルの違い
シーベルトは放射性物質を体内に取り込んだり、身体の外から放射線を受けたときに「人体への影響はどのくらいか」を表す単位であり、ベクレルは「あるものから放射線がどれだけ出ているか」を表す放射能単位です。