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[26825] 鋼の棺桶【ロボットモノ】
Name: ヒロシキ◆fbfd4583 ID:6b326cfa
Date: 2011/04/13 11:51
 ※4/1 20:24 誤字等改訂
 ※4/9 16:35 w消去



プロローグ

起床のブザーが鳴り響く。


ここ数カ月で身体に組み込まれたルーチンが俺をたたき起す。

バタバタと身支度をし、廊下で部屋ごとに点呼、終了し次第外へGO。

10分も経てばグラウンドの集会場に全員が集まり、整列完了。

壇上に人が上がる。
胸にキラキラと勲章を飾った軍服の中年男。
瀬川中将…だったか。

「まず初めに、おめでとう。
諸君らは厳しい入隊訓練を乗り越えてきた。
そして本日、WLによる模擬戦・演習という最終試験が課せられる。
今まで培ってきた体・知・技の全てを動員し、素晴らしい結果を残してくれたまえ。
期待している。」

短い…!

いつもならフルコースなのに、今日は2分以内に終わった!
皆顔には出さないが同じ気持ちでいっぱいだろう。
瀬川五郎万歳!(本日限定)

ジーク・ゴロウ!(本日限定)ジーク・ゴロウ!(本日限定) ジーク・ゴロウ!(本日限定)

以下5行省略

はい、脳内国民はさておき、今は7月。
今日みたいな真夏日に2時間コースを喰らおうものなら即熱中症だ。
散っていった仲間たちも少なくない(死んでません、勝手に殺してはいけません)。
朝だっていうのにコンクリがじりじりと俺の身体を焼き続ける。

「解散!各自食堂にて朝食を摂れ!その後6:30よりミーティングルームに集合!!」

「篠田ぁ!!」

俺の名が呼ばれる。

「はっ、ハイ!!」

「復唱しろ!!」

「ハッ!各自食堂にて朝食!6:30よりミーティングルームに集合!」

「よし!」

毎度の鬼軍曹復唱指名タイムだ。
あの人軍曹じゃないんだけど…ここでは厳しい人=軍曹でとおっている。

この施設にいるWL候補生は約20人、周期的にそろそろ喰らうと思っていたが、実際指名されると慌ててしまう。

WLとはWeapon Luck の意、いわゆるモビル○ーツ、ヴァン○ァーだ、間違ってもA○みたいな鬼畜機動したりプライ○アーマーで攻撃弾いたりするバケモンではない。
(伏せ文字が多すぎるぜ)

WLはウェルと発音する。


こいつの候補生、結構つらいお。
全高10m程度の機体の中で座って戦うっていうのに初めは歩兵科と同じ訓練。
全高10mなだけに機体の振動がパねぇ。

吐き気が止まらん。
最初乗った時は降りた直後にゲロッた。
“出る!!まだ出る!!”みたいな。

ここに志願したのは、小さいころからガンダ○に憧れていたのもあるが、やっぱつらい。
つっても後戻りできないこの地獄。

なんの話だったっけか………WLか。

確かどっかの技術者が開発して“武器掛け”、つまりWeapon Rack と名付けたらしいが、あまりにそのまんまで、ボタン一つで戦う、ゲーム感覚の戦闘になっちまうとかで現代戦の象徴とまで揶揄されたらしい、どっかのゴシップ記事が波を呼んだとかなんとか…。
で、“運”という文字に差し替えられた。

こっちのタマがあたるように。
あっちのタマが外れますように。
生きて帰れますように。

だったか?
とりあえず人間味ある名前を付け加えて、命を賭けていることを強調したらしい。

日本での、
“アソビじゃないんだぞ♡”
のA○B48のCMはあまりにも有名。
アレのせいで非難に拍車がかかったと言っても過言でないレベルだ。

正直俺ら現場にとっちゃどうでもいい。
や、確かに可愛い娘いるけど…。質を量でカバーするのはいかがなものかと…。

はい、サーセン、そっちじゃなかったスね。


話戻しましょ、「戻る」ボタン押されたら堪らん。

モニターの向こうの戦闘に痛みが伴わないという考えそのものがおかしい気もするが、考え方は人それぞれなのだろう。

そんなこんなでずいぶんと批判されてきているが、
実際歩行重機の開発で、通常車両が進入できないところで救助活動ができるようになったりと、いいことも少なくない。

WLを導入するに当たって、自衛隊は軍じゃないからこんな兵器は必要ない、とかいろいろ揉めたようだ。

機関はディーゼルで特にガ○ダムみたいなヤバいもんは積んでないのに…。

そんなことしてたら周りの国が全部WL編成の機甲部隊作っちまったってんで慌て始める。
慌ててるうちに戦争、アフリカの独裁国家とアメリゴ・エギリル・ホランスその他をメインにした軍隊とがおっぱじめた。

もうヒドイヒドイ…戦場はWLの独壇場に近いと言っても過言ではなかった。
機動力こそ航空機に劣るものの、対地攻撃はもとより、対空攻撃能力もズバ抜けていた。
装備さえ変えれば戦艦すら一撃で沈めることもできる。

ハープーンミサイルでいいじゃん、と思ったアナタ!

今の時代ステルス装甲がはやっててミサイルの命中率がだだ下がりなう。
ロックオンそのものが難しい時代なのだ。

既存の兵器じゃろくに太刀打ちできん、ってんで即WL導入の流れができた。
で、気がついたら自衛隊が隊じゃなくて軍、自衛軍になったってオチだ。

WL運ぶには揚陸艦が必要だからねぇ…。
自衛隊のままじゃおおっぴらに配備できなかったんでしょ。

それに伴って階級もアメリゴと同じように小・中・大の尉官・佐官・将官に変更された、なんでって言われても…ねぇ、お偉方の考えることは分かりませんよ。

偉い人にしかわからんのです。

あ、無論核装備は禁じられてます。

そんなこんなで導入が遅れたせいでWLの基本性能は世界有数の最底辺。
ここの第3期生である俺らは1stシーズンと呼ばれるエリート(?)の仲間入りを果たしつつある。
あくまで日本限定のエリートだけどね。

「おいマコト、何一人でブツブツ言ってんだ?さっさと飯行くぞ。」

「んお、すまん、なんか話さずにはいられなかったんだ。」

「アホか、雄二も健太も行っちまったぞ。」

橋本龍一郎、俺のルームメイトだ。
目の前にいるリュウは健康的な日焼けが目を引くマッスルガイ。

俺がブツブツ痛いこと言ってても見捨てないでくれるいい奴。

よく俺とつるむせいかマッソー&モヤシで呼称される。
別に俺がモヤシってわけじゃない。
やや小柄なだけなのに…。(156cm、十分小柄ですね)

高野雄二、小野田健太とも結構つるむんだけど、なぜか奴らにはあだ名がない。
ちなみに2人とも俺のルームメイト。
ちなみに2人とも俺より背が高い。

……ダンチだ。

何食ったらそんなデカクなんだてめぇら…くそぉ。

まぁリュウだけは俺を名前で呼んでくれるし、気の置けない大事な仲間よ。
小走りで、次第に近づく食堂から良いにおいがする。

「おばちゃん!今日の朝はなんだい!?」

勢いよく扉を開き、仲のいい食堂のおばちゃんに声をかける。

名前?知らん。
強いて言うなら“飯くれるおばちゃん”だ。

「おう!今日は特製サバ味噌だよ!これ食って今日の試験がんばんな!」

キタァァー―――――――!
サバ味噌!!
待ってました!!!

漁港が近いせいか魚がんまい!
ばあちゃんの味噌がたまらん!
コレが唯一の毎日の楽しみですよ、ホント。

昼はレーションでゲロマズだし、へたすりゃ訓練で夜もレーションだし。
(ほぼ)毎回あったかい飯食えるのは朝だけです。(ウルウル

速攻トレーにご飯・サバ味噌・味噌汁・キュウリのぬか漬けを取り、雄二の隣に着く。
言うまでもなく飯は大盛りだ。

早食いと大食いならば負けん。

リュウが向かいの健太の横に座る。
この4人が部隊員なうえにルームメイト、なもんだから気がつきゃ結構仲良しになってた。
共同訓練もあったので他の部隊員とも面識が結構ある。
あんまり話す機会ないけどね。

ちなみに俺隊長…。


隊長だよ?ホント。
誰よりも小さいし誰よりも童顔だけど。

「ところで聞いたか?今日の模擬戦の相手、正規軍の連中らしいぜ、しかも1期生!」

コップの麦茶を飲みほしながら雄二が話しかけてくる。
こういう情報を仕入れるのだけは訓練生随一だ。
困ったときや作戦内容で分からんことがあればコイツに聞きゃなんとかなる。

「1期生だと!?」

なぜか超反応したのは健太。
強化人間もびっくりの反応速度だ。

「1期生と言えば…伝説の嶋野桐栄中尉じゃないか!!」

「…誰?」×3

「知らんのか!!頭脳明晰、容姿端麗!!
WL操縦において彼女の右に出る者はいないという伝説の女性ぞ!!」

なるほど、2つ目だなポイントは。
俺、リュウ、雄二は目を会わせて頷く。
こういう情報を仕入れるのだけは訓練生随一だ。

…とゆうかこういうことだけに才能を使うやつは珍しいだろう。
そっち関係はこの変態に聞けばだいたいなんとかなる。

「とはいえ、気になるなソイツ。」

サバ味噌をほおばりながらリュウが口を開く。

「この施設の1期生は約15人、俺ら3期生は20人、模擬戦やるなら複数対複数。
となればかなりの数の1期生が駆りだされるとみて間違いないだろう。」

結構深刻な顔をしている。

「アレ?でもさ、
1期生1小隊に3期生が各小隊で何セットかに分けて模擬戦すればいけるんじゃねーか?」

飯をかっこみながら聞いてみる。

「バカ、よく考えろ、
そんなことしたらいくら1期生でも疲労がたまって正しく評価できないだろ?
それに、もしそうだとしても、
健太の言うことが正しけりゃその1小隊のなかに嶋野とやらが入る可能性は高い。」

だろ?とアイコンタクトをとられ、確かに、とうなずいた。
評価する側がカンタンに負けちまうような編成で来るとは思えん。
それだけ強い奴が模擬戦に入る可能性があるならマークしておきたい。

「なんにせよ、その女については調べた方がいいな。」

リュウは一番言いたかったことを言い切り、また食事に戻った。

「つってももう模擬戦まで半日もないぜ?」

雄二がもっともなことを言う。
確かに…。

「そのためにコイツがいるんだろ?」

また顔をあげて顎で指すしぐさをする。
リュウの顎の先には…。

「こいつか…。」×2

雄二と見事にハモった。
健太が音をたてて味噌汁をすすっている。

この変態なら…きっと。
当の本人は全く気付いていなかった。



本編 タイトル…変態よ、大志を抱け!!(嘘

朝食が終わり、俺たちはミーティングルームへと向かう。

「なぁ健、さっきの件頼むぜ。」

一応念押ししておく、コイツ忘れっぽいから(とゆうかさっき聞いてなかった気が…。

「ほえ?」

…。
……キサマ。

「嶋野のことだよ!そいつの戦闘データとか調達頼むぜ!」

「ああ、コレでいいか?」

そう差し出された1枚のメモリースティック(64GB)。
まさか64GB目いっぱい入ってるのか…!?

「こいつに全て入ってる、あとで見な。」

コイツ…。
本当はスゴイ奴なのかもしれない。
健太=変態の方程式を変える時が来たようだ。
今まで変態であるならば健太、健太であるならば変態、だったからな。

「俺は完ペキ主義なのさ、こっちのデータも全収録だぜ。」

そう言ってジェスチャーするはボンキュッボン。


……。
………そいや入隊時に身体測定があったな。
忘れもしない、俺のトラウマの諸悪の根源だ。


あの時の絶望を…俺は忘れない。
そしていつか…見返してやる日が来ることを信じている!!

ってまさか!!?

「…89…6……85…。」

コイツ…犯罪者だ。
いまにも鼻血出しそうな顔しやがって……。
ぽや~としながらなにやらぶつぶつ言っていた。

なんか無性に腹立つ…。

やはり変態は変態でしかないのか。

とりま、ほおっておくことにした。

世界の常識はそうそう覆りはしないようだ。

もらった記憶媒体に使える情報が入っていることだけを祈ろう。


~1時間後~
「以上だ!」

佐々木勝男鬼軍曹のブリーフィングが終わる。
そばの、別小隊の奴が恒例の復唱をさせられている。
思ったとおり例の嶋野が入っている。
1期生の部隊は3個小隊、WLは計9機。
若干予想は外れたがまぁ問題なかろ。

それを演習場で20機の3期生と戦う。
3期生側が指定されたフラッグを一定時間死守すれば勝ちである。
こっちは1小隊4機の編成、それが5小隊、数でいえば倍以上の戦力差がある。

手渡されたのは、使用できる火器類のリスト、機体スペック、演習場の地形データ、それに仮想敵機の機種及びそのパイロットデータだ、残念ながら敵の布陣はわからない。
まぁ相手の編成がちっと分かってるだけでもめっけモンだろ。

中央に巨大なアメリゴ製陸戦艇の残骸があり、周囲を瓦礫の山が取り囲み、あちらこちらに障害物のポールが立っている。
WLの歩行にかなり支障が出そうだ。

今回は小隊個々の戦闘力だけではなくその連携も必要となっている。
かなり…厳しいかもしれない。
出撃まで、演習開始まであと3時間…。

まずは各小隊長とブリーフィングを開くべきだろう。




宿舎の一室を借りての作戦会議。
そこに第2小隊隊長である俺を始めとした、各隊長が集まった。
試験が試験なだけに皆真剣である。

プロジェクターで映しだされた演習場の立体図が俺たちの顔を暗くさせる。

「まずどう戦うかを決めたいと思う。」

真田第1小隊長が口を開く。

「守るか、攻めるか…ですよね。」

「そう、数ではこちらが勝っている、
フラッグがあるこの中心地点の周りを取り囲むのも手だ。
一方で、こちらの数が勝っているからこそ守りを残して索敵破壊を行うのも手だ。」

「守るのが無難なんじゃないか?日没までフラッグを死守すれば勝ちなんだ。」

第5小隊の奴の発言がなにか気になる。
そもそも20対9という時点でこちらが有利なわけだし、ゲリラ戦を挑まれやすい索敵破壊をするメリットはあんまりない気がする。

「いや、俺は攻めるべきだと思う。」

俺は素直にそう思った。
なぜ?と聞かれる前に理由を言う。

「2倍の戦力差があり、かつ目標がフラッグの死守である場合、
勝つことだけを考えるならその周囲を守るのがベストだと思う。
だけど、今回のこの数の差はそうさせるために仕組まれたことのように思える。
安直に守りに徹するのは危険じゃないか?
なにか、あちらに策がある気がする。」

むぅ、と皆が考え込み始める。

向こうの使用機体はわかるが使う兵装までは明らかになっていない。
フラッグ周辺に20機を配置すればかなりの密度になるのは目に見えている。
そこを一網打尽に攻撃されるかもしれないし、遠距離狙撃を喰らう恐れもある。

そこがなにか気になっていた…。


かといって約半々・8機と12機を索敵・守備に分けたとしても、練度で劣る3期生がほぼサシ状態で1期生に勝てるとは思えない。
いかに損害を少なく目標を達成するか、それによって俺たちの評価が変わる。

「わかった、確かにそうだな。
ただ守る戦闘はナシの方向で行こう、モヤシ、具体的にどうする?」

真田ぁ…。
でももうモヤシでとおってしまっているから何を言っても無駄なんだけど、納得いかねぇ。
一度決めたことはやりとおす完璧主義(?)な奴だが…あだ名でもそういう能力発揮しないで…。

ちくせう。
いつか見返してやるぜぃ~。

「そうだな、1小隊をフラッグの直援に回し、残りでフラッグをぐるりと囲むな。」

「待てよ、それじゃガチガチの守りじゃないか。」

まぁ待て、と他の小隊長を制する。

「ここからがミソだよ!次第に円を広げるように、残った4小隊16機でクリアリングを行うんだ、円周を広げれば広げる程間隔が広がってしまうが、左右との連携、背後との連携が一番取りやすいと思う、万が一抜けられても直援とクリアリングラインとで挟み撃ちにできるしな。」

「ふむ、いいなそれは、守るでもなく攻めるでもなく、中途半端さが気に入った。」

「モヤシのくせしてやるなぁ、完璧主義の真田が気に入ってるみたいだぜ!」

隣にいる第3小隊長に背中をバシバシされる。
いてぇバカ…。
自分の案が採用されるのはなんとなくうれしいもんだ。

「よし、あとは配置・兵装を決めるぞ!何が来るかわからんからな、まず配置だが…。」

真田…仕切り能力高くて助かるわ。
言いたいこと言えば汲んでくれるし…。
あ~、健からもらったあれも見ないとな。


~格納庫~
小隊長会議も済み、あとは搭乗待機となる。
作戦時間である11:30まであと1時間と30分。

俺たちが使う自衛軍の主力機、多摩型WL。
ぶっちゃけアメリゴ軍のおさがりだ。
訓練機としては申し分なく、性能もバランスがとれていて扱いやすい。
…ブースト性能はカスだが、ずっしりとした重量感が安心させてくれる。

乗ればわかる。

分厚い装甲板に囲まれたコクピットに座れば、ありき日のアカンボの時を思い出す。
一撃喰らえばお陀仏な動力炉のすぐ横にコクピットがあるってのに…不思議だ。

対する1期生機は日原型、俺らの多摩型を発展させた自衛軍独自のWLだ。

多摩型とは異なり装甲がかなり薄化しているのが特徴だが、それに応じて機動力がアップ、さらに追加ブースターの装備によって、短時間ではあるが飛行が可能である。
流石に飛んでライン突破はされないと思うが。
さらに頭部パーツも換装されていてセンサー類が充実している。
模擬戦では最悪の相手だ。

そんな情報を整理しながらもらったメモリーを眺める。
犯罪同然の行為で収録されたものなので他の隊の連中に見せるわけにはいかない。
お、フォルダでたでた。

戦闘データ、
演習場カメラモニター、
身体測定データ、
基地内監視カメラ、
…。
秘密データ…。

……最初の2つ以外が危険すぎるな。
基地監視カメラって…ハッキングしてまで映ってるシーン集めてんのかw。
秘密データってなんだ、ロックかかってるし。

まぁいいか…。
演習場カメラモニターは…と。

凄い。
嶋野桐栄の戦闘の全てのシーンがおさまっている。
毎回角度は変わるが、御愛嬌というやつだろう。
奴の魂が詰まっていると言っても過言ではない。

だが、凄い。
今度は嶋野の戦闘スタイルの方ね。
どうやら1期生同士の演習のようだが、左右へのステップ、機体に負担をかけないその着地技術、この機動を日原型でされるとやっかいだ。
目をやるたびに白い機体が軽やかに動き回る。

…。
……。

…!
基本的に射撃がメインとなりやすいWL戦で彼女はほぼ全てを接近戦で制している。
右・左のステップ後に突進、手甲のブレードソード(模擬戦用)で脚部を一閃。

だいたいこのパターンで敵機が沈んでいる。
シールド装備の機体も、とっさにボディユニットを防御してしまっていて脚が丸出しになっているようだ。

彼女…全ての演習で09式軽機関銃を使っている。
銃身が短く取り回しが良いだけのばら撒きマシンガン…。
彼女の射撃は牽制と考えていいようだな。

ちなみにナントカ式ってのは何年に開発されたかっていうのを表すモノで、09式は2009年に開発されたって意味でふ。

嶋野が狙うフットユニットは、WL乗りにとっては生命線でもある。

ちなみに脚部をやられた者は砲台としても戦えるが、被弾を避けられないため死に至りやすい、だから“脚やられ”は戦闘が治まるまでじっとしているのが普通だ。

いわゆる、WL乗りの暗黙の了解というやつだ。

しかし、何度見ても思う、
彼女は殺さずに戦闘力を奪う、そんな戦い方をしている。

それはさておき、なんとか癖を見つけることはできた。

作戦開始まであと30分。

「ブラボー1より各機、作戦の確認を行う!」

作戦中は第二小隊とか言い難いからブラボーとかで呼び合ってます、ハイ。
サイドモニターにリュウ・雄・健の3人の顔が映る。

「いいか、今回の作戦目標は全敵機の撃破だ。
チームアルファはフラッグ守備、ブラボー・チャーリー・デルタ・エコーの4小隊でフラッグを中心に展開、クリアリングを行う。我々の小隊は北部陸戦艇残骸近辺を担当するため、取り回しの良い11式突撃銃・小型シールド・ブレードナイフを装備する。
例の嶋野桐栄がくる可能性もある、コレの対策を今から伝えるからよく聞け!」

一瞬皆の顔が緊張する。

「やつの攻撃パターンは右・左・突進・脚部近接攻撃、だ!
攻撃時は姿勢を低く保ち、不用意に銃口をブレさせるな!それと、発見ししだい近隣の友軍機と連携を取れ、絶対に先行するんじゃないぞ!」

「了解!」

力強い返事が返ってくる。
健の顔アイコンだけが画面に残る。

「で、隊長、他の隊には言ったんですか?対策法。」

「言ってない、出所聞かれたら答えらんないもん、よくて除隊、へたすりゃ軍法会議だぜ?」

「デスヨネ。」

「全機通信ログ消しとけよ、00:00に本部にログ行くからなこの機体。」

「了解!!」

力強いです。
頼もしいっす。

さて、そろそろ移動する時刻だ。

「おーい、出撃だ!行ってこい!!」

外部マイクが声を拾う。

三崎整備長。
手を振っている、が恰幅がいいせいか(デブ)全身が揺れているようにも見える。

まさに毛玉海牛……。

なんか、しんそこウケルんだが…。

「ブラボーチーム出撃します!」

なんとか押さえこんで音頭を取る。

既に他のチームは出撃している。
演習場まであと数分、コクピットで上下に揺さぶられることになる。

俺、あんまり乗り物強くないんだよね。

正直搭乗関係の訓練が一番厳しかった。
だいぶ慣れてきたけど…。
無限の時間に感じられた移動もすぐ終わり、演習場の入り口を抜ける。

またしばらく上下にシェイクされながら予定ポイントへ向かう。

「アルファ1へ、こちらブラボー1、北部クリアリングラインに着いた。」

「了解した、他の隊が配置に着くまで待機しろ、演習開始まであと3分だ。」

了解、そう返事しつつ周りを見回す。
視界が悪い、残骸が多い、結構多い。
もらった地形データが古かったのか?
これじゃ目視は難しいな。
隠れられたりしたら発見は容易じゃない。

前にも言ったが現代戦ではステルス装甲・塗料が普及してきたために通常のレーダーがアテにならない。
こう金属片が多ければ磁気センサーもアウト。
最近の機体は冷却系・熱遮断塗装も充実しているからサーマルセンサーでの発見も難しい。
しかも実際の戦場なんて熱源だらけで更にアテにならん。

何に頼ればいいかっていうと…音響センサー。
10mクラスの機動兵器が無音で動くことは不可能だ、どの方向からどれくらいの大きさのモノが動いたかしかモニターに出てこないから曖昧だが、ないよりずっといい。
砲弾の着弾位置もだいたいわかるし。

あとは目視!
根性!!
GUTSだ!!!

「各員、センサーには目を光らせとけよ、模擬戦の開始だ!」

演習場の端にいる戦闘指揮車から信号弾が上がる。
あそこから各地点をモニターしてる。

「アルファ1より全機!クリアリングを開始せよ!僚機とスピードを合わせろよ!!」

「了解!」

真田の顔が一瞬表示され、また消える。

1歩、また1歩進む。
残骸の影、隙間ポールの後ろ、WLがいそうな場所を確認しつつ輪を広げていく。

「こちら異常なし!」

「こちらアルファ1よりブラボー1へ、
無線状況がそちらとだけ悪い、もういちど報告せよ!」

定期的にアルファチームに連絡を入れることになっているが…、
無線は出撃前にチェックしたはずだ。
となると…。

「こち…チー…エコー!敵…を補足!数…3、1個小隊…!」

左から爆音が聞こえる。

「ブラボー1了解!ブラボー4を増援に向かわせる。」
「こ…らデル……了解……ルタ2を…援に………せる。」

無線に本格的にノイズが入り始めた、やはり敵にはジャミング装備の機体がいるのか。
仮想敵機リストには装備までは書いてなかった。
とりあえず予定通り接敵した両隣から1機づつ援護に行くのは滞りないようだ。
これで西部は6対3に一応持ちこめた。
のこりの6機だ、問題は……。

「来た…!こ…ら…ームチャーリー!…機は…2、…、4…まだいる!…2個小隊だ!」

挟撃か!?
各小隊の機動力で撹乱をしてくると思ったが、単純に戦力を分けてきたか。
だが、まだ南北の6機、フラッグに3機残っている。
ほぼ2対1の戦況下で勝てると踏んだのか?

「こ……デルタ!東…ラインの支援…向…う………!」

もう無線機からは雑音しか聞こえない。
ジャミングの効果が強くなったのか…。

軍人として持ち場を離れるのは最悪の行為だが、このままココにいても仕方がない。
デルタの連中も同じ考えなのだろう。
東西に全敵機が確認された以上ここにとどまる必要はない…か。

「リュウ!雄!俺らも東の援護に回る!」

「了解!」

この至近距離なら通信は問題ないようだ。

「デル…より全…へ!敵……5……!6…じゃない!!ど…かに1機隠…てるぞ!!」

騒がしい無線機がかろうじて拾った一声。
何度も叫んで今にも枯れそうな声。

「なん…だと!?」

東は5機?
4機以上いたから2個小隊だと勘違いしたか…。
この瓦礫だらけの視界、責められはしないが……。

不意に純白の疾風が視界の端を通り過ぎていく。
同時に音響センサーが画面に線状の軌跡を残す。

「ぐあっ!こちらブラボー2雄二!脚部被弾アラート!損壊度レッド、継戦不能!」

なに!?
無論本当に破壊されたわけではない。
模擬弾・模擬ブレードが接触した個所とのコネクトを、模擬戦用プログラムが切っているのだ。

「リュウ!カバーしてくれ!」

白のカラーリング、奴か。

左手のシールドを投げ捨て、左腕格納式のブレードナイフを展開する。
東西の戦況は分からないが、この白い野郎(女だけど)以外は常識的な強さだ、なんとかなる(多分)。
各地で互角の戦いはできているはずだし、フラッグ地点の3機もいる。

「ここでお前を倒せれば、俺たちの勝ちだ!」

不意打ちさえ喰らわなければ望みはある。

機体を前に出す。
右腕の11式突撃銃が激しく硝煙を吹き、地面に黄色いペイントをなすりつけていく。
ペイントの波より一足早く純白の日原型が滑走し、後退、障害物の陰に隠れる。

「いいぞ距離を保てた!リュウは右からまわりこめ!一機で来たことを後悔させてやる!」

「わかった!」

激しいディーゼル機関の爆音が、走行の振動が、アサルトライフルの爆音と振動があいまって気持ち悪い。
軽い吐き気をもよおしながら足もとのペダルを踏み込む。

「近接して抑え込む!なんとか狙い撃ってくれ!」

背部の2基のノズルから真っ赤な炎と黒煙がたちあがり、
と同時にずんぐりした機体が飛ぶ。

狙うは敵機が逃げ込んだ残骸の向こう。
リュウがじきに射程におさめる、そこで足止めすれば相打ちででも倒せる自信がある。

「コッチが推進力ないからって、甘く見るなよ!!」

事実日原型と異なり、多摩型にはジャンプする能力しかない。
だが、推進剤をすべて使えばそれなりの飛翔も不可能じゃない、ノズルも着地も危険な状態になるが、なんとしても先制したい。

着地は気合でカバーする。

計器が激しく目盛りを振り、推進剤容量がみるみる減っていく。
下腹に強烈なGを感じ、赤く点灯する機内照明に目を細める。

ノズルが…もう……。

浮遊感。

入隊直後なら即グロッキークラスだが…まだ耐えられる。
噴射ノズルが溶けかけたようだ。
推進剤ももうわずか、自由落下するより道はない。

だが、それで十分だ。

白い機体がこちらを向く、気付かれたが…状況は大して変わるまい!!

右手の突撃銃でフラッグ側へ乱射する。
あちら側へ逃げられないようにすれば挟み撃ちにできる、と同時に左手のブレードナイフを重力に任せて突き下ろす。

気持ち悪い浮遊感にとどめが刺される。

着地と同時に大地がえぐれ、土ぼこりが盛大に巻き起こり、一瞬だけ煙幕代わりになった。
今ので一瞬奴の牽制射が当たりにくくはなったか。
ダメージパネルの脚部が赤く点灯し、俺の嘔吐レベルもレッドゾーンに突入している。

着地の直前に白い残像が右に流れていった。

外した…。
でも奴は俺とリュウ機の間に逃げた。

…勝てる。

「捉え…、マコト!!合わ…ろ…!」

リュウの声。

向こうも日原型を射程に入れたようだ。

「わかった!!だがコッチは着地の影響で脚が動かん!援護しかできんぞ!!」

「わかっ…るよ!無茶し…がって…!!」

膝をついた多摩型からペイント弾を吐き出させる。
胸部に設置された15ミリ弾だ。
本来牽制用だが、ペイント弾なら威力は関係ない。
かすればいい…。
ライフルの弾はもうほとんど残っていない、なのにやみくもに撃つわけにもいかんだろ。

日原型の方は…、
奴はどちらを先にかたずけるか決めていたようだ。
頭部のバイザーがこちらを向き、明るく光る。

障害物の地点を巧妙に渡り歩き、背を見せたリュウ機からの射撃をかわす。

「すま……!そ…ち…行っ……!」

こいつがジャミング源か…!
僚機との無線がみるみる聞きとりづらくなっていく。
だが…正直今となっては無線の有無は関係ない…。

リュウ機の射程を抜けて直進してくる日原型…。


焦る思い

焦るな、熱くなるな…。

落ち着け…奴の癖は見切ったんだ……。


サシ状態だからこそ奴は癖を出すはずだ…。

牽制の15ミリをばら撒き続ける。

無論あたるわけないが、なんとかあの癖モーションに入らせたい。

………あと30m

……来た!!

右ステップ、

左ステップ、

そして…、

「行け!根性みせやがれぇ!多摩ぁぁぁ!!!」

力の限りフットペダルを踏み込む
推進剤は残り4%、ノズルも半壊。

こっちが動けないと思い込んでいるアイツを…。

弱々しい光がノズルの奥から漏れだす。

「行けーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

人生…根性あれば半分はなんとかなる。
多摩型(コイツ)もその半分に入ったらしい。

弱々しかった一筋の光が急激に増え、濁流となる。

それは一瞬で消え失せてしまったが、重い機体を前のめりにさせるには十分すぎた。

突進しブレードを構えようとしていた嶋野が一瞬怯む。
間合い取りが重要となる近接戦、それを崩したのだから当然ちゃ当然だ。

出し切っていないブレードをアサルトライフルで押さえこみ、体当たりをかます。

二転三転。

視界がぐるぐる回る。

装甲厚、重量では勝っている、日原型ではひとたまりもあるまい…。
こみ上げる吐き気を必死に飲み込む。

口中に広がる苦みを感じながらブレードナイフをヤツのコクピットに当てる。


今まで憎らしいくらい灯っていたバイザーの光が消えていく。
撃墜扱いになったようだ…。

「勝った…か?」

ジャミング機を無力化したおかげで周囲との無線も回復する。
どこも戦闘を終えたようだ。
無論損害はあるが負けはしていない。

「大丈夫か?お前乗り物よえぇクセに無理すんなよ…。」

心配したようにリュウ機が近寄ってくる。

「あんまり大ジョブじゃない…、ちょっちゲロッた……。つかあんま寄るな!吐き気が…振動が……。」

「だせぇな、相変わらず!俺もモヤシって呼ぼうかね。」

「それだけはマヂ勘弁してくれ…ウップ…」

思い出しゲロりそうになるのを必死にこらえる。

演習終了の信号弾も上がり、俺たちはめでたく作戦を終えた。

組み敷いていた日原の目に光がつく。


模擬戦終了と共に機体が動くようになったのだ。

健も雄も機体が動くようになるだろう。

「帰るかね、リュウ!」

「ああ!」

俺たちはめでたく基地へ戻れる。
夕飯はあったかい飯が食えそうだ。

エピローグ

「マコト…聞いたか?西部の奴ら迫撃砲装備してたんだってよ。」

「?それがどうかしたか?」

「つまりな、密集形態とってたら瞬殺されてたってことだよ!てめぇのおかげさ。」

格納庫から食堂までの道すがら、雄と話していた。
他の奴らとも話したかったが既に酒モード入りつつあって話にならんww。

「じゃあアレだな、今度何かで恩返せよ!てめぇ速攻即落ちだったんだし!」

「はいはい…わかったよ。」

さてさて、ここからは戦場という名のパラダイスさ…。



「おばちゃーーーーん!!夕飯なんだーい!?」

毎度のようにドアを強く開け放つ。

「来たか食欲魔人!今日は天ぷらだよ!皆の合格祝いよ!」

おおおおお。
粗末な皿に所狭しとイカ、エビ、キス、かぼちゃ、オクラ…、
むむ!?タマネギの天ぷらまで!!??

いいよ、分かってるよおばちゃん、サイコーだよ。
俺はあんたに一生付いて行くよw。

超高速で食い物をトレーに乗せる。

ダッシュでテーブルに向かうぜ!!

「わたしを堕としたのはお前か?」

俺の顔が陰に入った。

…。
……。
………。
へ?

デカイデカイ…。
170は超えてるよこのヒト…。

俺よりも頭一つ分でかい女が目の前に立つ。

「もう一度聞く、お前か?わたしを堕としたのは…。」

「♡堕としただなんて♡…♡きゃ…」

斜め後ろにいた健の声が、轟音とともにかき消える。

パンチが見えなかった…(汗

汗が…汗がヤバい……。

滅多なこと言ったら消される…!

「そ…それが、どどどどうかしましたか?」

今にもジャンピング土下座ゑ門しそうな足腰をいさめながら言葉を返す。
凄く綺麗なヒトなんだけど…気迫が…ヤヴぁい。

「どうということはない、共に食事をと思ってな。」

むぉ?
これは…!?

「いわゆるツンデ…」

眼前に拳が迫る。

きぃやぁぁぁ……。

「レ?」

止まった…鼻先で触れるか触れないかのところで拳が止まっている。

「冗談ではない!」

「は…ハイ。」

「あちらのテラスへ行こう、此処は騒がしい…。」

「は…ハイ。」

後ろではリュウ達が呆然としている。
約1名は死亡している。

綺麗な花には棘があるというが…核弾頭搭載型とは聞いてないぜ…。

関わるのはこれっきりにしたい…。

それが俺の切実なる願いだった。



だが数日後、その思いは砕かれ、共に戦地を巡ることになる。
この安らかなゆりかごが、鋼鉄の棺桶だったということを思い知らされた。







今にして思えば、あの頃が一番幸せだったのではないか…。
ただ与えられた任務・訓練をこなし、仲間たちとバカ騒ぎできたあの頃が……。


                        

                     Fin




[26825] 鋼の棺桶 第2話
Name: ヒロシキ◆fbfd4583 ID:6b326cfa
Date: 2011/04/13 11:50
※ 4/9 16:40 w抹消


プロプロローグ

昨日の模擬戦から一夜あけた今日。
大部分の(元)訓練生が酒でダウンしている中、2小隊のメンツが会議室を占拠している。


「さて、今日皆に集まってもらったのは他でもない。」

俺、こと、篠田 まこと少尉(予定)の真剣味を帯びた口調に、第2小隊の面々が顔を見合わせる。






「実はコレ、前回で終わってたハズなんだ。」

気を利かせた照明が俺だけをスポットライトする。



「なん…だと!?」
「これだけ前回引っ張っといて!?終わり…!?」

机が強く叩かれ、雄二、健太が口々に文句を言う。


俺にとっても衝撃的な新事実だった。

即興で何かストーリー作ってはやめ、作ってはやめを繰り返していたあの野郎が…。
まさかここでもやっちまうとは…。



「終わりか…。」

「そうだ。」


腕を組み、深く腰掛けていたリュウが声を発する。



「イングリッシュではFin、イタリ―では……。」

「聞いてませんよ!!そんなこと!
わかりましたよ!ネタがないんでしょうあのバカは!!俺がネタになってやりますって!!!」

「まて健!!どこへ行く!!!??」


「お医者さんに~♪行きましょお~♪」


ちょ、コラ。
そんなショボイパクリしたら底の浅さが露呈するだけだろが…。
止める間もなく健太が飛びだす。

不味い、非常にマズイ……。

あいつのことだ、18禁モノにして固定層を引きこむつもりだ。
2話目にしてそんなことしたらどうなるか分かっているのか…アイツ。

どうするマコト…。
考えろ……何か手があるハズだ…。



「話は聞いたよ…、諸君。」

ドアの開く音。
謎のBGMと共に現れたその男は逆光でよく顔がわからん。

「誰だ!?」

少女漫画的なキラキラ感を全身に浴び、一人の(中年)男が廊下のバックライトに映える。
ビラビラした服まで着てるし。

…。
……。
………。

「あの、ドアあけっぱなしはやめてくれません?」

「すまんすまん。」


「コホン、では改めて…。」

シュババッ
最早擬音でしか表現できない動きを決める男。

「何を隠そう!!わたしはこの施設の所長!!」

謎の決めポーズを取る変態2号。

またもや気ぃ利かして照明が室内 全体 をパッと明るくする。




照明にまで見捨てられたか…所長……。
一応スポットしてやれよ室内センサー。

最早登場シーンでコケているというのに…。
まぶしい笑顔を絶やさない……非常にイラつきます、中将殿。


沈黙。





しばし沈黙。







まだ(以下略。







「ショチョウダッチューノ♡」


「今それどころじゃないんですよ!!!!」

長い沈黙を突き破って雄が机を叩く。

あぁっ!
日頃おとなしい雄がブチギレ状態に。
拳がわなわなしてる…ちょ、コレやべって。

確かに無駄に再現率高くてアレだったが…。
こんなことで怒ってたらこいつらの隊長務まらんし。


しかし瀬川所長…並(のバカ)ではない。



「HAHAHAHAHHA、話は聞いたと言っただろう!セガワイアーを舐めてもらっては困るな!!」

や、セガワイアーって、どうせドアに耳ひっつけてただけでしょww。

聞いたことがある(とゆうか昨日嶋野さんに聞いたし)。
この施設(ココ)には伝説のバカが住むと……。
まさか所長だったとは……。

「要はネタがあればいいのだろう!?あのバカ作者でも引っ張れるような!!」

ちょ、アンタどこ向いて誰に言ってんの…。
あんたよりバカなの居ないから、作者もここまでノリで書いて超後悔してるからw。

「そう!!先ほど救急の方から救助要請が来てな、シラフのお前らに出てもらおうと思ったんだ。」

イカン、このままではグズグズのギャグ小説に……ってえ?




プロローグ

出動命令が下り、俺たち第2小隊は各WLへ搭乗開始する。
バカ変態1号の姿が見えないが、まぁそのうちくるだろ。

「作戦の内容を説明する、救助目標は愛鷹山山道から転落した観光バス。
被害者は約25人、崖下がかなり入り組んでいて通常車両の進入には時間がかかる。また高い木々に囲まれた場所に転落したため救助ヘリも降下、接近できない。」

ヒュッと雄が口笛を吹く。

「誰が119番したんです?そんな山奥じゃ携帯も繋がらないのでは。」

「うむ、どうやら伝書鳩?的なもので連絡してきたようだ。」

モニターの向こうの所長が送られてきたであろう書類に目を通しながら顔をしかめる。
施設中が今日は休みだったからな、皆酒飲んで沈んでんだろ。
ご苦労様です所長。

「まぁこの世にゃ奇怪なこともあるからねぇ…。」

バカ2号を見つめる、無論鈍いので気付くはずもない。

「それはそうと、鳩で知らせてきたのならもう時間的に手遅れになっている可能性が高いと思いますが。」

まぁ、確かにそのとおりだ。
救助に行ったら全滅でしたは勘弁したいところだぜ。

「そこは問題ない、既に救急ヘリが上空待機している。
報告によれば、軽症の者が何名かおり、彼らに応急処置はさせたそうだ。危険な状態が続いているものの、早急に対処すれば助けられる者が多い、とのことだ。」

「了解!ならやりがいあるってもんです!」

人助け好きだからね、リュウは…。

「聞いての通り今回はキャリーヘリからの降下作戦だ、軟着陸できるようにマニュアル呼んどけよ!
ついでに、おまえたちには居住バックパックを持ってってもらう、オペバージョンだ。
ヘリでの輸送でも間に合わん者がいるようだ、事故現場で手術するらしい、ドクターは救助ヘリ内で待機している、着利後に降下するそうだ。」

「りょーかい!」

んな一度に言われてもなぁ…。
とりあえず居住バックパックとはWLの背中に背負う長距離行軍用の装備、寝床やら簡易コンロやらが一式詰まっている奴だ、1機でキャンプできると考えればいい。
で、オペVerってのが今回みたいな緊急災害時用の装備。
簡単に言えば簡易気密テントの中に病院の手術室が入ったようなモンだ。

「言い忘れてたが、貴様らの多摩型はスラスター性能が低いからな、臨時でプロペラントを付けるよう三崎整備長に頼んでおいた、一応問題ないはずだ、チェックしてくれ。」

そんな急ごしらえで駆りだすのかい。
コンソールパネルを叩き機体の各部をチェックする。


特には…ないかな?


ちなみにキャリーヘリとは空を使ってWLを運搬するヘリコプター。
エイみたいな形をしていて、WLの両肩のラックとでくっつける、要はぶら下がってる感じ。
その気になれば上にも載せられるくらいペイロードと強度があるため、WL以外の運搬にも結構使われてる。

「ブラボーチーム、準備はいいか?」

「はっ!!」×2

ん?
かける2??
待てよ?
変態がまだ来てないのか。

「所長!変態の確保お願いしてもいいですか、今格納庫にいないようなので。」

所長のアイコンが画面に映し出される。

「わかった、小野田健太だね?」

「そうです、つい本当のこと言ってしまいました。」

仮(強調)にも所長の前でなんてことを…しまったぁ……。

「健太をお願いします、では我々は出撃します。」

「わかった、とりあえずもう1人シラフなやつが残っていたので出撃準備させたぞ、健太君の代わりに連れて行け。すでにキャリーヘリとドッキング完了し、滑走路に待機している。」

「はっ。」

シラフなやつ?
確か昨日飲んでなかったのって……。

「遅かったな。」

格納庫を出ると聞いた声が無線から出てくる。

「デスヨネ。」

出たよ、ツンデレデカ女。
てかこいつが今回は俺の隊に…?

無理無理。
ムリだって……。

「キミがちゃんと指揮んなさいよ♡」

所長の顔が一瞬出て消える。

あっのやろおおぉぉぉ……。
訳わかんねーよ。
階級あっちのが上なんだからアイツに指揮らせろよ…。

「をい!さっさとドッキングしろ!モタモタしてっと置いてくぞ!ガキ!」

ヘリのパイロットに怒られた…。

「すんません。」

よく見れば係留作業に入ってないのは俺だけ、リュウも雄もすでにドッキングし始めている。

気まずい、非常に気まずい。



超速で連結を完了させる。
俺…天才かも……。

「や、それはない、安心していい。」

「うっせーよリュウ!!ヒトの心読むんじゃねー、
あー、お待たせしました、ドッキング完了!」

「んじゃ、行くぜ!目的地までだいたい30分ってとこだな、それまで空の旅を楽しんでくれ。」

4機のキャリーヘリがそれぞれ荷物を抱えて大空へ飛び立つ。
サイドバイサイドの大型ヘリコプター、間に合うかな…?

目的の愛鷹山まで約数十km。

向こうに着いたらどうするか決めなきゃ、
軟着陸のマニュアルを読みこまなきゃ、
現地の救急隊との連絡を取り合わなきゃ、

……。
・・……・…・・・。

やることが多いが、もう俺は限界だ。
巨大ブランコが高速移動してるような感覚…。

む・……り………ゲ……・・・。

俺の意識はそこで途絶えた。


本編…新感覚!!恐怖の空中スプラッシュ!!!(しません

「お目覚めかい?モヤシ。」

あん?
ああ、ヘリコのあんちゃんか。
お前までモヤシ呼ばわりすんのかい。

さては真田の根回しだな……。
ってかココどこ…?

「愛鷹山まで配達してやったぜ?あとは降下だけだ、さっさと準備しな、あちらさんもそう長くは飛んでられんからな。」

モニターにウィンドウが開き、救命ヘリの様子が映し出された。
確かに、そう何時間も滞空はできないからな。

「よし!降りるぞ!各機パージ準備!!」

気絶していたおかげで地獄の時間を過ごさずに済んだ、あとは降下中にスプラッシュしないよう気をつけるだけだ。

「了解。」×3

「こちらブラボー5、ブラボー1、軟着陸に不安があるならわたしの言うとおりにスラスターを吹かせ。」

「!了解、助かる。」

正直マニュアル1ページも読めてない……。
嶋野さんが女神に見えた一瞬だった。

「救命ヘリ!こちら沼津自衛軍パイロット養成施設、第2小隊隊長の篠田です。
これより降下を開始します。降下成功後、オペ用バックパックを開放致しますので降下地点確保後、降りてきて下さい!」


「こちら、ドクターヘリ、了解。
外科医2人、看護師2人、薬品コンテナを複数を運んできている、頼んだぞ!」

「了解。」

だいぶ積んできたようだな。
よく見りゃ機体にコンテナ係留してるし。

「降下開始5秒前、……3…2…1……、パージ!!」

頭上のラック解放レバーを下すと、前回とは比較にならない浮遊感が俺を襲う。

ブランコのったことのある男なら分かるだろう、なんか…キン○マがフライングしてるような感覚…。

「コレ耐えられるヤツ…バッカス……。」

降下開始。

かなり低空から降りるためパラシュートの類は付けていない。
あとは嶋野さん頼みダス。

「あと3秒でスラスターを徐々に吹かせ……今だ!」

「あいよ。」

自由落下する機体に制動がかかり始める。
例の気持ち悪さは下っぱらの痛みに変わっていき、毎度のように喉でせき止める。

プロペラントタンクの中身の減少に比例して、高度計の数値減少がどんどん穏やかになる。
落下した観光バス近辺の木々の枝葉をへし折りつつ降下。
流石にWLでも樹に正面衝突したら無事ではすまないが、その辺も考えて降下してきているから無問題(タブン。

「あとはヒザをクッションにしろ、それでずいぶん変わる!」

了解。

WLの脚が大地に沈む
ダメージパネルは一瞬、負荷を示すイエローになったが、今はグリーンに戻っている。

「各機、損傷はないか?」

「ありませんよ、むしろこっちが隊長に聞きたいくらいです。」

雄…ヒドイお……。

「酔いは大丈夫か?」

!!
嶋野…さん!?

「無我夢中だったらだいぶマトモだったよ、ちゅか…心配してくれてるのか?」

「違う!貴様がダウンすると面倒だからだ!!」

ツーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンデレ。

無線の切れた後の音がそう言ってる気がする。

「各機予定通り行くぞ!
ブラボー2,3はオペバックパックの展開、テントの準備!
俺とブラボー5は医療チーム降下予定地の露払いだ、かかれ!!」

「了解!!」×2

嶋野さん…返事してくれなくなっちゃたw。

いそいそと準備にかかる。
両腕に装備したブレードナイフで辺りの木々を切り倒し、降下地点を空ける。
嶋野機もブレードソードで伐採しまくっている。
無心だ…無心でやってるよあのヒト…(コワス。

コレ、ホントは対WL用のなんだけどねー。
つってもなんてこたない、ただのでかい金属ナイフだ。
ブレードナイフは約2m程度、ブレードソードは3m程度の刃渡りだ。
樹の幹にナイフを何度かブッ刺して、WLの両腕でへし折る。
あとはヘリコプターのローターにひっかかりそうなのを削っていく。

対WL戦の時は刺突して攻撃する。
いくら硬い金属ブレードでも同じ金属であるWL相手では効果が薄い。
ゆえに関節部や頭部、武器等を狙ってピンポイントで刺し込んで破壊するのが基本。
特にヒザ関節なんかはWLの全重量を支えているため、シャフトの1本でもヒビ入れさせたらもう、そのWLは戦闘不能だ。

そんなこんなでだいぶ掃除が出来上がる。

黙々とやれば早いんだね…。

切り株を引っこ抜くのはこのWLでも難しいため、できるだけ削って邪魔にならないようにした。

あとは誘導…。


うまくいけばいいが……。

「こちらブラボー5、隊長は下で負傷者の救出作業を手伝ってください、誘導はわたしがやります。」

「…了解。」

彼女の顔が表示されるが…、気迫が…なんかオーラがヤバい…。
美人じゃなきゃSound Only に設定したくなるほどw。

事故現場へWLを向かわせる、できるだけ振動を起こさないよう、ゆっくりと。

簡易手術室の準備ができたのか、リュウ、雄の2人も事故現場にいる。

「マコト!医療チームは来たか!?」

「リュウか、すぐ来る!!誰が一番ヤバいんだ!?」

コクピットからワイヤーで地上に降り立つ。

「この爺さんだ、なんでも数日前に頭ぶつけたらしいが、どうやら脳溢血らしい。」

あ?
脳溢血?
確かに外傷はあまりない、奇跡に近いレベルだ、これだけの事故で…。

「この事故が原因じゃねーのか?」

「わからんが…そのようだ、最悪のタイミングで発症したとしか思えん、早くしないと間に合わんぞ…。」

「わかった、とりあえず揺らさないように簡易手術室に運ぶぞ!他は!!?」

その老人を担架に乗せつつ、雄に聞いた。

「骨折、打撲・その他はいるが応急処置は完了した、あとはその人だけだ。」

「生き残ったのはそれだけか?」

「ああ……。」

そこにいたのはわずか5、6人、全員、応急処置で使う止血帯をどこかしらに巻いていた。
生き残ったのがこれだけいる時点で喜ぶべきなのだろうが…

「マコト!今はこっちを優先だ!行くぞ!!」

「あ、ああ。」

俺たちが簡易手術室に着くころには医療チームが万全の態勢で待っていた。

「あとは我々に任せてください。必ず、救ってみせますよ。」

「はっ、設備等不十分かもしれませんがよろしくお願いします。」

それとあの子、彼女に返してあげて下さい。



「伝書鳩?」

簡易オペ室の外、もう一つのテントの先に鳩がとまっている。

「ええ、鳩のおかげで上空と地上で対話できたのですよ、老人が一人脳溢血だというのも、彼女のほうから教えてくれましたし。
あの子(鳩)も人懐っこいですからやりやすかったですよ。」

なぬ…?
てこたぁだいぶアタマいいやつなのか…。
医療にも精通しているたぁ感心だわ。
どんな奴なんだろ…。

とりあえず鳩に寄っていく。
ヘリコプターの中まで飛び込む勇者だ、ちったぁ丁重に迎えよう。

鳩と目が合う。





ぬ、ヤキトリ風情がメンチ切るとは…。

最早称賛の思いは飛んでいた。

「あ、隊長!」

「どうかしたか?雄。」

「実は…嶋野中尉の縁者だという方がいらっしゃるんですが…。
…いったい何やってるんです?鳩相手に睨み合って…。」

「気にするな、これは漢の戦いだ、
ってえ?縁者?嶋野さんの?」

「はい、それで、確認を本部と取ったところ……、どうやら休暇中の外交官だということで、即刻保護しろとの命令が下りました。」

「マヂ?」

「マジです。」

「わかった、わかったよ、隊長が責任もって保護しますよ。」

こういうとき一番面倒だ。
お偉いさん系の仕事は部隊の上の奴が相手せにゃならん。
まぁその外交官、どんな奴か興味はあったからいいんだが。

「雄!!ちょっち待った!あのヤキトリ、連れて来てくれ。」

捕まえようとしても逃げる逃げる。
飛んで逃げないのがますますむかつく。

………。

「はい、どうぞ。」

「もう捕まえたのか、早いな。」

「いえ、普通に手を出したら乗ってきてくれましたけど?」

んん?

試しに手を出す。

がぶ。

…。
……。
………。

落ち着け、落ち着くんだ。
相手はただのヤキトリ…もとい鳩だ。

寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心
寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心
寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心
寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心寛大な心。

がぶがぶがぶがぶがぶがぶがぶ……。

「こんのヤキトリ野郎がぁぁぁぁぁぁ!!!
人間様なめるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇえぇええーーーーーーーーー!!!!」

「ちょ、モヤシ!?やめろって、相手は鳥だぞ!落ち着けって!!」

普段おとなしい雄が取りみだし、ダチの時の口調になってまで俺を止めた。

「はー、はー、はー。」

いかん、取りみだしてしまった。
背後から両腕を押さえられ、やっと落ち着く。

「なぁ、キミ、あのおにーさんに付いてってあげてくれないか?
キミの主人の所に案内するからさ。」

見えた!
俺は確かに見た!!

奴の、
“チッ、しょうがねーナ”という顔が!!!

しかも超しぶしぶ肩まで上がってくるし!
相変わらずコッチガン見してくるし!!
近くで見るとコエ―よ鳩ww!!!

「はは、隊長もやっと懐かれましたね。」

おい雄…おま、
どこをどうやったら懐かれてるって思えるの!?
アイツさっきからコッチ睨みながら首左右に振ってんだけど!

「それで、その子の飼い主、隊長のWL内で待っているようにと言っておきましたので、お願いします。」

「え?」

え?
いくら外交官だからって…WLに入れていいの?


見れば雄が ちょっちいい?的なしぐさをしている。

「つい先ほど、バス運転手の遺体を発見したのですが……。」

ふむふむ?

あと耳元で吐息はヤメレ。

「その…遺体がかろうじて原型をとどめている程度でしたので、分かりにくかったのですが…頭部に1発、銃創がありました。
ほぼ即死と思われます。」

な…!?

「そういうことですので…お願い致します。」

「わかった。雄たちは他のケガ人のケアにあたれ。」

了解、と軽く敬礼をして雄が立ち去る。

「暗殺…?」

外交官が休暇でココにいるとは思わなかった。
もし運転手の銃創が本物だとしたら、マヂで暗殺騒ぎになる。

それに…外交官が身分を明かして休暇することはまずない。(タブン
どこでどんな計画を以って休暇をとるかは、その直属の上司くらいしか知らないはず。
他にありえるとすれば最高ランクの権力者、その肉親だろう。

それに今回九死に一生を得た嶋野外交官はTVなど映像には一切でないが、かなりのやり手だという噂だ。
よもや桐栄さんの身内とは思わんかったが。
確か…ユシア相手がメインだったか?

とりあえず帰るには、中いかないとな。



~多摩型内部~

機体胸部のワイヤーをリモコンで降ろす。

上が無駄に騒がしい。




「おそいぞー!!いつまでまたせるんだー!!」

!?


「あ!あたしのトーコ!」

肩にひっついていたヤキトリが飼い主の手に戻る。

だが、俺は忘れない、
奴が俺の肩に爪を食い込まそうとしていたことを……。

お前は敵だ。

「えっと…お名前は…?」

「んー、嶋野真奈美!」

「えっと…おじょうちゃんが…あの外交官?」

「うん!」

「えっと…もしかして、桐栄さんとは姉妹?」

「うん!」

なん…だと。
俺のなかで外交官=おっさん、という方程式だったが…。

よもや幼女だとは思わなかったし、聞かなかったぞ…。

まさか………。
あの野郎…キャラで人気取りに来やがったか!?

幼女・ツインテ、ニーソ(縞柄)!?

狙いすぎだろ。

「こらー!はやく連れてけよー。」




・・・。



「そこ、俺のシート・・・。」

堂々と、ど真ん中に座っておいて施設まで連れてけとは…。
姉妹そろって横暴極まりない……。

どうやって操縦せいっつーねん。

「ブラボー1、そろそろ後続が到着する、わたしたちは帰還して構わんだろう。」

「お姉さま!!」

返事する前に・…。

「!!真奈美か!?どうしてここに?」

「へへー、山で観光ツアーしてたらさー、こうなっちゃったぁー。」

「…おまえなぁ、連絡くらいよこせ、てっきりまだユシアに滞在していたと思ったぞ。」

「ごめんゴメーン!」





…。
……。

確かに肉親との再会は喜ばしい。
だが………、

あえて言おう、

そこ、俺のシート……。


エピローグ

「はー、ようやっと作戦終了か…。」

基地に辿りつき、キャリーヘリと再び合流し、嗚咽との戦いを制した。

乗降用の梯子が臨時に設置され真奈美ちゃんが降りていく。

彼女が降りてったあとには鳩の糞まみれのコクピットが残った。
クソ…真奈美ちゃんの前ではいい子ぶりやがって…。
どんだけクソすんだよ、腹ん中どうなってんだヤキトリ野郎め。

「ん、御苦労。」

お。

モニターに瀬川所長の顔がでる。
でたはいいがちょうどヤキトリ野郎の糞が付いてる場所…。

顔が見えんぞ。

「報告書を頼む、何やら不穏な動きが見えるからな…。」

了解。

「それはいいんだが、その服、なんとかなりませんか?中将?」

朝見たまんまのビロビロ服、はっきり言ってダサいお。

「む、これは趣味だ、気にするな、覚えてるだろ?本来今日は休みだ、どんな格好しようが構うまい。」

「そりゃそうですけど。」

顔ウィンドウが消え、フンだけが残る。

かー、やってらんねー。
助けに行った先では20人近く死んでるわ、
コクピット糞まみれにされるわ、
コクピット前で20分立ちっぱだわ…。

あー。

空けっぱなしのコクピットの向こうにツインテールがなびく。

「あ?」

「へへー、お礼忘れてた~♪」

エ?

CHU!!

…おでこにやわこい感触が走る。

……エ?

「助けてくれてアリガト、隊長さん!」


「……ぶ…ブ…ブラボー1……?」

え?

・・・・・・。

桐栄…さん?モニター越しに殺気とばすのやめて下さいません?

「篠田マコトォォォ!!貴様!!何をしてるかあぁあぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

え?ちょ?なに?
俺がキスしかけたように映ってんの!?

おかしくない?

「待った!桐栄さん!?俺悪くない、悪くないって!!」

「待っていろ!今修正しに行ってやる!!」

モニター内の長髪が怒りに震えている。

「じゃね!バイビー♪」

コクピットから速攻で逃げる真奈美…。

は…謀ったな………シャ○。

は…ははは、
謀られたYO………○ャア。

ハッチが解放されたコクピットから見える夕日がきれいだ……。













「女にモテルっていいスね。」

「ああ。」

「アレ…死にますよね。」

「ああ。」

「そいや、健のバカ何やってんスかね。」

「知らん、また下らんことやって営倉放り込まれてるんだろ。」


新たにバカの仲間入りをした3人を横目に、リュウ・雄 両名は夕日を眺める。

ああはなるまい。
2人に共通した思いだった……。


~営倉~

「僕が…僕が一番エロをうまく使えるんだ!!」

リュウは彼をよく理解していたと思われる……。

                 Fin



[26825] 鋼の棺桶 第3話 
Name: ヒロシキ◆fbfd4583 ID:6b326cfa
Date: 2011/04/13 11:49

プロローグ

~会議室~

「ふぅん、昨日はそんなことがあったのか…。」

「おうよ、テメェらがいびきかいてる間にチャチャッとな!」

会議室にいるのは私、真田 治也と篠田 まこと、それに…彼の後ろで眠そうにしている少女。
この3人だ。
たまには他小隊の人とも、じっくり話がしたくてチェスに誘ってみた、ということで今2人で遊んでいる。

まぁ、他の小隊とはいっても今は第2小隊のこいつだけだが…。



ちなみに明日の修了式までわたしたちは一応訓練生扱い、それまでは休暇、というわけです。

昨日一昨日と出撃する羽目になった第2小隊の隊員たちはまだ寝ている。
疲労も限界だったのだろう…。
マコト君だけは起きて真奈美ちゃんとPGPをやっていた。
モンスターパンターといったか?
ちょっと前、大人気で手が出せなかったのがお手頃価格だったらしい。


「しかし、余裕綽々なわりには体中ボロボロだな?」

あちこちに打撲の跡が痛々しいマコト。
何があったかは想像に難くない。

考えながらポーンを手に取る。
所長から借りてきたという大理石製のコマ、手に持った時の冷たい感じが気持ちいい。
なぜか黒のキングの十字架が折れているが…。

「気にすんな、色々あったんだよ。あ、馬とり、王手!」

マコトの手の下でコトリと音がし、こちらへ攻撃してくる。

「おい、チェスはチェックだろうが、馬じゃなくてナイトと呼べ。」

「まぁまぁ、細かいこた気にすんなよ、おら、詰みだ。」

「なっ!?」

よく見る。
キングに逃げ場はない…、周りを味方のコマで防御しすぎていたのが祟ったか…。

「むぅ、またか。…しかし、面白い奴だよ、お前は。」

なんで?という顔をするマコトに対して続ける。

「初めて会ったときは生涯で1番許せないちゃらんぽらんだったのに……。
いまでは唯一許せるちゃらんぽらんだからな。」

「ヲイ、ソレ…褒めてんのか貶してんのか、どっちだよ。」


褒めてるんだよ…。



「ひまだぞー。いつまでツマンナイもんやってるんだー。」

さっきから彼の背中にひっついているもう一人が耐えかねた声を出す。

……マコトの頭を殴るのはやめてあげて欲しいものだな。
アレ以上ネジが飛んだらどうなるかわからん。

嶋野 真奈美…。前回彼が助けたとかで、以来無駄に付きまとっているという。

「ホラ!コレやるんだぞ!!そんなんしまえ!!!」

わっ!

スライドするように置かれるは“人生ゲームDX”、
机の上にあったコマが弾き落とされそうになる。



これ借り物!!



私とマコトで前のめりキャッチをする、壊したら申し訳が立たないどころではない…。
しかし、所長もよく貸出許可してくれたものだ。

「テメ!ちったぁ落ち着け!!それでも外交官か?」

「なにが“それでも”なのかはわからないけど、そおだよ!」

「まぁまぁ、確かにチェスばかりで飽きていたところだ、いいだろマコト?相手は一応子供だ、ムキになるなよ…。」

なにやらギチギチと歯ぎしりしてブツブツ言っているが…、あれが橋本が言っていた解説モード……というやつなのか?

「ホラ、お前からだ。」

「おう。」

一瞬で元に戻り、無邪気にさいころを受け取る。

振る。

「お!俺医者~♪」

「あー、ずるー。」

「へへー、強者はなににおいても強いのさ~♪HAHAHA~」

……、マコト…何考えているか全くわからんな……。

あるときはただのバカ、
あるときは熱血バカ、
またあるときは正真正銘のスーパーバカ。



…なんだ、結局バカか…。

だが、時折、戦闘において驚異的な力を発揮する。
洞察力に優れ、大胆かつ繊細な戦闘をこなす……。
まるで、“才能”という獣に“バカ”という分厚い着ぐるみがかぶさっているようだ。

「てかお前なんでまだ付いてくるんだ?仕事どうした、シ・ゴ・ト!」

「休暇あしたまでなんだよねー、このまえ殺されそうにもなってたみたいだしー、ココにいれば安全かなーって♪」

「あのなぁ…。」

嶋野真奈美程の人間が彼に懐いている、
そのことが彼の人間性を保証していると言っても過言ではない。

だが正直、小学生くらいの年齢の彼女と何の違和感なく話せている、というのはいかがなものかと思うが。
もう少し大人びていれば素晴らしい指揮官になれるはずだけれど。

「そういえば、その件でなにか心当たりはあるのか?」

嶋野真奈美…彼女は幼いとはいえ外交官だ、それも最近軍備強化をしているユシア相手。
何かしらの恨み、障害と思われてはいないのだろうか。

「ユシア側には恨まれてないと思うんだけどね、自衛軍の官僚の方に…ちょっと、ね。」

「や、ははは~、よくわかんないや~♪」


一瞬仕事での彼女になりかけたようだ。

わずかに本気になった真奈美の顔が目をかすめた。

仕事として共に活動したことはないが、政府高官である父からよく彼女のことを聞かされた。

“女を甘く見ると痛い目見る、常に相手の内側を探れ”と……。

無論それだけではないが。

「おい、真田!お前のターンだぜ!!さっさとしろ。」

「すまん、考え事をしていた…。」

手にしたさいころを転がす……。

今思えば、こいつとの出会いが、俺を柔らかくしたんだ。

”中途半端”を許せるほどに…。








~所長室~

ない!

「ない!!」

「ないんだけど!!!」

机の下にもぐり、下を探す。


「ちょっ、誰か知らない!?早く館内放送しなさいって!!捜索班の編成まだ!?」

私は焦っていた…。
このまえヤフオクで落とした23150円の大理石製チェスセット。
アレを毎朝磨くのが日課なのに!!

「有田君!!ちょっと!はやくしてって!!」

必死に秘書官の名前を呼ぶ。

「中将!落ち着いてください、そんな私的なことで施設の人間、備品が使えるわけないでしょ?」

「だってアレは…。」

「だってじゃありません!!」

有田君からオーラが出る。
う…動けない……!?

「サ…サイコヒット…!?」

おかっぱ頭の有田嬢から繰り出される威圧に私はただただひれ伏すだけだった。
は…ハ○ーン様……!?

「だいたい中将が訳わかんない服着てバカやったり!毎朝ニヤニヤしながらチェス盤磨いたり!力入れ過ぎてキングのアタマ折ったり!!それで指切って救急班呼びだそうとしたり!!!あなたが何かするたびに秘書官のわたしまで変な噂されるんですよ!!??」

「ご…ごめんなさい。」

自然と身体が土下座していた。

自衛軍に入る女性は強すぎる……。
次の秘書官は男にしなければ…。

そう堅く決心した朝であった。









~格納庫~

「んお、もう朝か…。」

不覚にも酔いつぶれてしまったわい。
久しぶりに1期の奴らと会ったもんじゃからな、はしゃぎ過ぎたようじゃ。

「なはは、やっと起きたか?三崎よ。」

「ぬぅ、勝男か…。」

「お前も衰えたもんだ、ビア樽の異名が泣いておるぞ?」

「ほっとけ。」

ぼりぼりと頭をかきながら膨らんだ腹を見つめる。
昔から酒ばかりがぶ飲みしていたせいかこんな身体になっちまった。

よく見れば辺りには酔いつぶれた1期生がうようよいる。


「こいつら雑魚だったな、飲み比べ挑むからもっとイケるかと思ったんだが。」

佐々木勝男が物悲しそうな眼を宙へ向ける。

「がはは、貴様のザル加減には誰も敵わんわ!!」

わしももう10年若けりゃなぁ、こやつと張りあえたんじゃが……。

「を?仕事すんのか?
やめとけやめとけ!どうせ今日は何にもねぇ日だ、身体休めて肝臓こき使えや!」

仕事に行こうとしたワシを引きとめる。
…差し出された杯は受けねば恥だ。

男として、
そう、漢として…。


仕事といっても、昨日臨時で取り付けた、第2小隊のプロペラントタンク取り外しくらいしかない。機体整備は昨日の夕方に仕上げが終わっている。

「フン、貴様がまだまだ青二才だと教えてくれるわ!」


格納庫の隅で、漢たちの闘いがひっそりと始まった…。







~来賓個室~


外からはけたたましいセミの声がする。

特にやることもない。

今回、この沼津パイロット養成施設へはゲストとして来たことになっている。
故に各個人には十分な広さの個室が与えられていおり、快適なはずなのだが…。

「ひとりは…怖い……。」

ただひとり…、
薄っぺらい毛布にくるまり、ベッドに横たわる。



わたしは意気地なし……。



ひとりが嫌だと思いつつも、ひとりであろうとしている。
ヒトに接近しようとしても、気がつけば足を遠ざけている。



今のウルフ小隊でも、隊員たちはわたしに口を聞いてはくれるが、心は開いてくれない。



…。


知っているか?
“ウルフ”はわたしだけなのだ……。



明日、修了式に立ち会えば元の配置に戻ることになるだろう。
そうなればセミの声も聞こえなくなる…。





外から聞こえるセミの声が、とてもうらやましい………。




本編…砕かれた空


~所長室~

「瀬川所長!!」

有田秘書官が所長室のドアを勢いよく開ける。

「…どうして……内線に出ないんです!?」

「はぅ!?ス…スマン、集中してて気が付かなかった!な、このとおりだから!」

いきなり土下座ですか…。
威厳もへったくれもありませんわね。

見ればあちこちひっくり返された跡。
アレから半日近く探し続けていたのかしら……。

その集中力を通常業務に割り振ってくれれば…。

あああああああイライラしますわ!

「とにかく!至急コントロールルームへお越しください!!探しといてあげますから!チェスセット!!」

瀬川五郎は半ば押し出されるように所長室をあとにした。



このコンマ数秒で顔にアザが増えたのは言うまでもない。



~中央制御室(CR)~

「何があった!?」

首元のネクタイをキュッと締めつつ自動ドアを通り過ぎる。


スイッチのOnとOffの明確な違いが、この瀬川五郎の魅力といえよう。

「ちょ、所長…あなたこそ何かあったんですか!?」

あちこちの士官が憐れむような声をかけてくれる。
そんなにボコボコか?ワシの顔……。

「有田さん…殴り過ぎでしょ…。」

そんな声があちこちで聞こえる。
彼女のバイオレンスぶりはちょっとした名物だ、既に。

「所長!友好コードを発しない航空機、複数の音紋をキャッチ、当施設に接近中です。あと10分で接触します!」

気を取り直したレーダー担当士官が声を荒げる。
仕方のないことだ、今までこんなイレギュラーなことは起きたことがないのだから。

「機種は?」

「音紋より照合、UH-60型3、CH-47型ヘリコプター5、CH-11キャリーヘリ9!!大隊規模、もしくはそれ以上です!!」

この施設のレーダーは最新型の指向性音紋レーダー、今日のように晴れていた日なら、ある程度の音を発するモノならほぼ確実にキャッチすることができる。
しかも音紋データと照合することで早期に敵戦力がわかるという優れモノだ。

新しい装備なので、今のところ試験的に、当施設にしか配備されていないが……。


ただ、雷雨のような悪天候時はほぼ使用が不可能に陥るので通常のレーダー(電波、磁気、熱量センサー)も装備している。
まぁ、悪天候で空を飛ぶリスクを冒す航空機はまずいないんだが…。

「所属はわかるか?」

「待って下さい、現在対空監視員が調査しています、が、既に暗いため確認が難しいとのことです。」

「ぬぅ、無線で呼びかけろ!貴隊の隊長官命、所属、当基地接近の目的を問う、と!」


「りょ、了解!」

「警戒警報を鳴らせ、イエローだ!!」

CR(コントロールルーム)が慌ただしくなる。
他基地への確認に奔走する下士官、
正体不明の部隊に通信を試みる士官、

各通路脇に設置された警報装置が黄色い光を寸刻みに放出する。

私はただ、座っていることしかできなかった…。


日本の国土で戦争なぞ起きない、そうタカをくくっていたのかもしれない……。





~ラウンジ~

“所属不明機接近!各員配置に付け!!繰り返す!所属不~”

!?

警戒警報!?

「イエローだ、マコト!行くぞ!」

返しそびれたチェスで遊んでいたリュウが急ぎ格納庫へと向かう。
白のキングの十字架もクラッシュしたが、まぁバランス的にちょうどいい塩梅だろう。


返す時、どうしよ……。


「ああ、今行く!先行け!!」

警戒レベルイエロー、“各員配置につけ”。
自衛軍で定められた警報における第3位の危険度だ。

戦闘が回避される可能性はあるが、戦闘になるその可能性が否定できない、そういった場合に発令される。

四の五の考えてる暇はねーか、

流石にこんな状況でバカやる気はない…、
とりあえず所長に気付かれないように返す方法だけ、考えておこう……。

後で修理するために、砕けた頭の方をポケットにほおりこむ。


~第3格納庫~

「オヤジ!機体はできてるか!?」

「やかましいわ!!そんな大声で怒鳴るんじゃねー!!完璧だよ!俺の腕なめてんのか?」

酒瓶片手にそう言われても説得力ないんだが…。

とはいえ、いつもの三崎整備長らしいと言えばそのとおり。
慣れ過ぎて信用すらできてくる。

解放されたコクピットへと続く特設階段を、甲高い金属音を響かせながら走る。



「隊長、遅いですよ!」

奥の多摩型の外部スピーカーから久しぶりーな感じの声が響く。

「健か!営倉だったんじゃないのか?」

「へへっ、あんなとこ交渉すりゃ1発ですって!!」

さては看守に何か握らせやがったな…、こいつというやつは、
相も変わらず…。

コクピットに滑り込む。
左脇のスイッチを複数入れ、多摩型を緊急起動、澄んだ音がしばし響く。

「CR!情報をくれ!何があった!?」

起動したてのゆるやかな振動が身体をほぐしてくれる。

「こちらCR!現在こちらも情報収集中だ、
現在分かっていることを伝える、
現在大隊規模の未確認勢力が当施設に接近中だ、目的は不明、複数のWLを搭載していると思われる。
万が一…備…て各小…長には独自…作……動権限が与え…れて…る、活用し…くれ。」

「!?」

模擬戦で味わったあの恐怖感。
自分が孤立する、あの恐怖…。

背後の動力が俺の鼓動と呼応して本格起動する。

これは……。

「全機!格納庫から出ろ!!急げ!!!」

間髪いれずに格納庫全体が激震に見舞われる。

パネルを叩き、ディスプレイの一角と基地外部モニターとをリンクさせる。

何があったのか…。

司令塔西部のカメラをスクリーンオン。

…、薄暗い中、激しい炎が黒煙を上げながら火の粉を飛ばしている。

これは…隣か!?
右隣の4番格納庫があとかたもない。


確かあそこはチャーリーチームの…、
いつもなら2,3は出てくる軽口も今はでてこない。

そうしている間にも
無誘導型の爆弾・ミサイルが次々と飛来してくる。


っ!!


操縦桿を押し込む。
機体を前進させ、
手にしたブレードナイフでシャッターを斬り飛ばす。

激しい騒音と共に滑走路脇にシャッターの破片が転がる。

迷っている暇はない………。


燃え盛る火炎が、俺たちを あ た た か く 迎えてくれることだろう…。


そう、ココは 戦 場 だ。

多摩型のヘッドセンサーが、シャッターの向こうの世界を凝視している…。




~中央制御室(CR)~

強い振動と共に電源がダウンする、バッテリーでも稼働できる、各計器の光が目にまぶしい。

アラートを示す黄色い光が小刻みに顔を映し出す。

「所長!主電源供給施設に被害!非常電源に切り替えます!!
西部格納庫にも被害!詳細はわかりませんがWL部隊の損耗を確認!」

「中将!なおも熱源接近!!無誘導ミサイル多数確認!」

まずった、こうもあからさまだとは……。



「緊急事態だ!!警報をEレッドに変更!
保有戦力を全て展開しろ!各砲座の偽装解除急げ!各個に応戦開始だ!!
通信士官!なんとか周囲の基地と連絡を取れ!!」

この施設は重要施設ゆえ一応の対空火器は存在する、が最近は情勢が情勢なため表向きは固定火器類はない、ということになっている。

一応パイロットの養成施設だからな…ここは。
そう今まで思っており、そんな火器は必要ないと思っていた。
まさか役に立つとはね…。


まばゆかった黄色い警報機の光が、更に激しい鮮烈な紅に変わる。
非常電源のわずかな明かりが目への負担を軽くする。

生きているうちにこの警戒レベルを見ることになろうとはな…。





~施設東部滑走路周辺~

機体コンソールパネルの端に真紅の点滅が表示される。

コンディションEレッド…だと……!?

Emergency Red 通称Eレッド…。

“緊急的な脅威下にある、あらゆる人員・方法を用いて対処せよ”


まぁ、この地獄絵図を見ればそれも納得……か。

「隊長!敵ミサイル群第2波来ます!!」

雄の悲痛な声が耳をつんざく。

「各員衝撃に備えろ!すでに滑走路へは着弾済みだ、ココでじっとしていろ、当たりはしない!!」

少し大げさに言いすぎたか、だがそうでもなければ浮足だってしまうかもしれん…。

なにしろ初陣なのだから、俺たちは…。
第一、これだけめちゃくちゃになった滑走路だ、もう狙う意義もないだろう。


施設からの火線も次第に伸び始める。

この施設に対空火器があったとは……。

再び、揺れる…。

空から降りしきる炎の雨が地上の対空砲火を洗い流していく、
ひとつひとつ、的確に…。



けたたましいローター音が上空に広がる。
数が多すぎて音響センサーでは把握しきれない…。



「来るぞ!!敵WLだ、迎撃しろ!!」

対空兵装を黙らせたとあればあとすることは一つ。
降下、制圧だ。

もうほとんど日も沈んでいる、目視による迎撃は厳しいが…やるしかない。

モニターの端ではアルファの連中が迎撃を開始している。
4機とも無事だったようだ…。

「アルファ1よりブラボー1へ、聞…えるか?
西側の部隊で残った…は俺たちだけだ、デルタの連中も格納庫ごとヤられた!!
敵WLはこちらで押さえる!!敵の人員輸送ヘリ…優先して落として…れ!」

「了解した、敵WLは少なくとも4個小隊は居る。こちらからもある程度は支援するぞ!」

「頼む…。」

わずかに通信が妨害されるが、問題はない。


「ブラボー1より各機!俺たちは優先的にツインローターの人員ヘリを狙う!
特殊部隊にでも施設に入られたらそれこそ終わりだ!」

「敵WLはどうするんです!?放っておいたらこっちがやられますよ!」

「なんとかあしらえ!そうしなきゃ施設が落ちる!
アルファチームは横に広く展開し始めている!ブラボーチームもそれに従うぞ、敵ヘリがどこに着陸するかわからん!目視し次第撃墜しろ!
最悪敵WLは真田たちに任せろ!!」

すでに日も落ち、目視がどんどん厳しくなってきている…。なんとか見つけないと…。


敵は西から侵攻している、対する俺たちは南北に伸びる滑走路に広く、満遍なく布陣している。何がどう来るかわからない以上これより良策はないだろう。

俺はアルファ1と共に中央部の防御に就いている。

「こちらブラボー2!敵WL確認、3機降下してきている!」

「こちらアルファ4、戦闘ヘリを確認。」

「こちらブラボー4、健だ!WL4機確認、1機落としたぜ!」

敵補足、の報告がひっきりなしにつながる。
まだ…敵人員ヘリ確認の連絡はない…。

WL機甲部隊で地上を黙らせてから降下するつもりか……。
それとも西部を避けて東に着陸するつもりか!?


「ブラボー1!ボヤボヤするな!!敵が来ている!WL3機だ。」

「わかっている!」

手にした10式長距離ライフルを放つ。
まばゆい閃光が自機を一瞬照らす、

尾を引く光弾が着地した瞬間の敵機に吸い込まれる。

「見たか!?一丁あがりだ!」

本来長距離戦用のをこの距離で放ったんだ、動力部を撃ち抜いたハズ。

敵WLが崩れ落ち…

爆発が起こる。

思ったよりも規模が大きい……、
まさかここまでとは…。


飛散するパーツ…。
前面装甲に何かが当たる金属音。


何かのはずみで目の前に頭部パーツが転がる。


そう、今俺はヒトを殺した。


悩むな…、
考えるな…。


「た、隊長!!」

さっきよりもひどい声が俺の思考を止めてくれた。

「何があった?ブラボー3?」




「て、敵は……自衛軍です!!」


「なんだと!?」


さっき撃破したWLの炎を受け、敵のWLが闇に映える…。


その肩には見間違えようもない証があった。

無垢なる白に、父なる太陽……。

そう、見間違えようもない、アレは……。



「こちらブラボー2!マコト!!敵の機種を見ろ!!西日本で開発されていた南秋型に北秋型だ!!
機体性能が違いすぎる!!このままでは押し切られるぞ!」

「なに…!?」

噂には聞いていた…、西日本にあるWL研究施設が開発していたという北秋型と南秋型…。

前衛となるべく開発された北秋型、日原型で示された耐久性の問題を克服した機動力ある機体、
後衛となるべく開発された南秋型、砲撃戦に特化した大火力の機体…。

噂が真実ならこのままでは全滅する…。

ここには旧式の多摩型しかない…、
ブラボーチーム全機に未だプロペラントタンクが装着されているが気休めにもならん。
とゆうか被弾時に誘爆する危険がある。

パラシュート降下中の無防備状態とはいえ、さっき数機落とせただけでも奇跡に近い。

どうすればいい?

人員ヘリ撃破のために上を向いているヒマがない。
このままでは…。



敵のアサルトライフルが闇夜に点滅する。

「くっ!」

狙いが正確だ…。

左右にそれぞれ持った操縦桿、両足のフットペダルを絶え間なく動かす。


それに呼応するように重い多摩型が左右にステップを繰り返す。

だが所詮は旧型、

みるみるうちにダメージパネルの各所が黄色く塗りつぶされていく。
特に関節部は酷い、無理な機動を強いたためか他の部位よりも警告色が濃い。

それにこう連射されてはロングライフルを照準する暇もない…。
一番近くにあった武装を持って来たんだが…ここで泣きを見るとはっ…。



…一瞬のスキが見えれば……クソッ!!


頼みの真田も南秋型に苦戦している。





「!?」

不意に背後からミサイルが飛ぶ、目視で放たれた一筋の光…。


ソレは俺の脇を過ぎ、北秋型の肩に命中する。
モニターを焼く光と共に北秋型のバランスが崩れる。

「今だ!!!」

この近距離なら外さない、わずかな時間で狙いも付けられる……。
再び光の筋が空を斬り進む。


狙い違わず北秋型の右足が吹き飛ぶ。

脚さえ壊せば無力化できる…、
それが実践できたことを、今誇らしく思う。



にしてもさっきの支援攻撃は…?

「佐々木鬼軍曹!!」

いつも持っているアルマイト製の酒ボトル、それを煽りながらガッツポーズをとるチョビヒゲ…。
佐々木勝男だ。

「バッキャロォイ!!テメェはなってねぇンだよぉい!!あと俺は大尉だぁ!!」

だいぶ酔ってるな…。


「さっきの中将の指示が聞こえなかったのかぁん!?
テメェらはさっさと現有戦力かき集めてぇ!!
南のヘリポートに連れてこぉい!!今すぐだ!!」

「はっ、了解であります!」

通信に不具合があったのだろうか…、一切聞こえなかった。

「それとぉぉぉぉ!!キサマらヒヨッコが見逃してたぁ輸送ヘリ!ウチの東側でゴミ共バラバラ落としていきやがったからなぁ!」

ゲ、人員ヘリ見ないと思ったら、やはり施設をまたいで東側で戦力を落としたのか…。
さっきの勝男大尉の言い方だと、もう施設は放棄するものと見ていいだろう。

間髪いれず、勝男大尉の後ろから装甲車が近寄ってくる。

「聞こえるか?ブラボー1…じゃったかのう?
集めた戦力でこの装甲車の支援を頼む。
コイツにゃ嶋野外交官も乗っておるからの、無事脱出させにゃならん。」

「…了解、とりあえず各戦線ともに不利ですが持ちこたえています、今のうち、先に南部に向かってください!すぐに戦力を集結させます!!」

あいよ!

動き出す装甲車に勝男大尉が走ってしがみつく。


「見な!!ホントぉにツエぇ奴は生身でもツエぇんだよ!!」

またもやチョビヒゲからミサイルが放たれる。

装甲車の外に設けられた取っ手を掴み、器用に照準をつけていた。

バケモノか…!?

今度は………遠くで真田が戦っていた南秋型だ…。


背部の動力部に直撃、大爆発を起こす。


「ダーーーーーーハハハハハハハ!!!!」

単発式のミサイルを投げ捨て、また酒を煽る。




「アルファ1だ、さっきのはお前か?ありがとう。」

「いや、…まぁそういうことにしておいてくれ…。」

いちいち説明するのがめんどくさい…。
第一なんて言えばいいんだ…。


「とりあえず戦力を固めて南部へ移動する、ヘリで脱出するようだ…。真田もメンツを集めてくれ!」

「それなら問題ない…。」

「なに!?」

「アルファチームで生き残ったのは……俺だけだ。」

そうか…。
クソマメな奴のことだ、基地の外部カメラ使って部隊員の戦闘区域を逐一チェックしていたのだろう…。

「わかった、こっちの奴らを集める!
ブラボー1より各機!!無事か!?
よく凌いでくれた!これより南部ヘリポートへ向かう、そこから脱出だ!」

「ブラボー2、了解!やっとか、助かったぜ。」

「ブラボー3了解!!死ぬかと思いましたよ!」

「ブラボー4らじゃ!!逃げるのだけは、得意なんでね♪」

たった数分の出来事が数時間にも思えた…。
生き残ってくれるとは…たいしたエースたちだよ…。

機体の性能差が戦力の決定的な差じゃねーってのはリアルだな、
学校卒業したてのペーペーがここまでやれるってのも、にわかには信じられないが。

「真田!すまないがブラボー3・4と南部への道を切り開いてくれ!
俺は北面のリュウの支援に向かう!」

「了解した。」




一番戦力が多く降下した南西部、ブラボー4、健の持ち場を突破する必要がある。
先に向かった三崎整備長もその手前で待機しているはずだ…。

それに戦線を放棄したわけだから北西部からもWLが侵攻してくる。

つまりリュウ機と健機が今一番危険といえよう。
雄の担当地区は建造物が多い、まだしばらく持ちこたえるはずだ。




自機前方にドンパチが見える。

「こちらブラボー2!待たせた!すまんが色々おみやげ付きだ、食うのを手伝ってくれ!」

「了解した、こちらでも捕捉している、リュウ!照明弾を上げられるか?」


「照明弾!?できなくはないが…俺が丸見えになるぞ?」

ただでさえ動きが鈍い多摩型だ、丸見えになれば攻撃をよけきるのは難しいだろう。

「だが、頼む、信じてくれ。」

俺のメインアームは10式長距離狙撃銃。
ボルトアクション式じゃないため、一発ごとに薬室の薬莢を手動で捨てたりはしないですむ。

つまり…ある程度連射が効く。
2機程度であればほぼ同時に撃破も不可能ではない。


リュウを危険にさらしてしまうが、ここで時間を食うわけにはいかない。

問題は…俺にそれだけの技量があるかどうかだ……。

「わかった、信じてやるよ…。3カウント後に照明弾を打ち上げる、頼むぜ?」

「ああ!任せな。できるだけ敵に向けて上げてくれ!」

シート脇にある照準器を目の前に持ってくる。
アームで固定したソレからは今、暗闇しかみえない…。

「ああ!……3、2、1…発射!」

リュウ機のバックパックから明るい花火が上がる。
花火と違うのはずっと明るい…というところだろうか。

「……見えた!!」


リュウ機が丸裸になる…が、敵機も見える…1……2…。

敵は2機、どちらも北秋型か…。

左手で照準器の倍率を上げ…

右手の親指をひねる。

スコープが一瞬真っ白になり、敵機の片足が吹き飛ぶ。

「次!!」

戦闘の基本は敵の意表を突くことだ…。
どんなことでもいい、
今みたいに、状況的に上げるはずのない照明弾を上げることでもだ。

五感のどこかに強い刺激を与えればヒトは怯む。
そう、最低でも一瞬は、敵が戸惑う。
用心深い軍人ならなおさら…。

そしてほんのわずかな隙、それが状況を変えてしまうこともある。

今回のように…。

やっぱりロングライフルを拾ってきてよかった…、ちょっと、さっきの思いを改める。

空薬莢の排出と共に2体目が沈黙する。
パイロットは恐らく無事だろ…。
脚狙ったし…。

「大丈夫だったか?左腕吹っ飛んでるが…。」

リュウの多摩型の左腕がかなりボロボロだ、
ボディの盾代わりに使っていたな…、さては。

「ヘーキだよ、ま、危なかったけどな!誰かさんのおかげで……正直信じてなかったんだが…(ポソッ」


……丸聞こえなんだよ…。

コイツ……、
後ろから撃っちゃおっかな…もぉ。

「スマンスマン!今度は南か?」

「そうだ、俺らも急ぐぞ、このままだと孤立する…。」

俺たちは急ぐ、だが…間に合うのか…?






~滑走路南西~

俺とリュウがなんとか辿りついた先、

「遅かったな…待ちわびたよ…。」

そ…その声わ……。

フットユニットが両断された北秋型を足蹴に、純白の日原型が待っていた。



「む、礼の一つもないのか?お前らを待っててやったんだぞ?」

む、なんか礼を要求されると礼を言いたくなくなる…。
複雑なお年頃って奴だな。


「というか……
俺たちがくるまでその北秋型、踏んづけてたの!?」

「いわゆる…ポージング……?」

「う……。」

「そ、そんなことはどうでもいい!早く逃げるぞ!!既にお前の部下たちはヘリポートに辿りついているはずだ!!」

「了解!」

よし、礼をいわんですんだぜぃ。
まだ桐栄さんとは出会って3日かそこらだが…意外と御し易い女性です。

……まぁミスると昨日みたいな大惨事になるけどな…。

なんにせよ、楽しい仲間には違いない。



無駄に(強調)目立つ白い機体を傍に、南部へと機体をおし進める。






~南部ヘリポート~

「こちらウルフ1より2、3へ!!待たせた!あとは任せてお前たちは脱出しろ!!」

なんとか間に合った。
護衛に残したウルフ小隊は無事のようだ……。

「こちらウルフ2!指示通り3期の連中と装甲車を離脱させました!!フィンチ・オウル小隊も生存機は脱出完了!!」

「了解…。」


ひときわ大きな爆発がモニターを焼き尽くす。

「マコト!!キャリーヘリがっ!!」

「わかっている!」

ブラボー小隊の叫びを無線が拾う。

2機残っていたキャリーヘリのうちの1機が大破・炎上したのだ。
だがそちらばかりに注意を向ければもう1機も落とされるかもしれない。
敵にはまだ数機、WLが残っている…。


「こちらストーク4!!これ以上離陸は伸ばせない!!脱出するなら早くしやがれ!!」

パイロットの焦りを表すかのようにローターの回転が早まる。

キャリーヘリに積めるWLは最大2機…、
それに…荷重ギリになる2機積みは機動力が落ちる、今の状況では命取りになりかねない。

「ウルフ2、3!機体を放棄して乗り込め!自爆設定を1分後にセット!わたしたちがそれまで援護する!」

「しかし!隊長は!?」

「貴様らの機体爆発を煙幕にする!いいから行け!死にたくないだろう!!!」

「りょ、了解…。」

うん、あとは奴らが脱出するまで守ればいい……。

「ブラボー1、2!お前たちも行け!」

もうひとりとして死なせたくない…。

いつもの09式を広範囲にばら撒きながら通信をおこなう。
こんな銃ではなんににもならないけど…気休めにはなる。


「ふざけんな!お前はどうすんだよ!!一人で死ぬ気じゃあねえだろうな!!」

激昂したマコトの声がコクピットに響く。

大規模な爆発が2つ、周囲を揺るがしす。
あれからまだ1分しか経っていない。
激しい黒煙がキャリーヘリ周辺を黒く塗りつぶす。

「わたしは死なない!だから行け!!」




「っ……わかった、いいな!!ゼって―死ぬなよ!?テメェが死ぬと胸くそ悪ぃ!!」

うれしい。折れてくれた……、この3日間、強情さを見せ続けた成果が出たのかもしれない。

至近弾が擦過……。

!!

煙幕があるとはいえこれ以上の時間稼ぎは難しそうだ…。

「当たり前だ。それに、死ねない理由もある……。」


「いいな!?約束したぞ!?
リュウ!!聞いた通りだ!機体を放棄する!さっさと行くぞ!!」

「りょ、了解した!」

多摩型2機が火線をばら撒きながら後退する。




……?


敵が…?

同時に敵の攻撃も…不意に止む…。
どういうこと?

背部カメラのスクリーン位置には豆粒みたいな2人、ヘリへ走っていく。

なにはともあれ脱出はなんとかできそうだ…。

「?」

何かが接近してくる…。
コクピットの中に未確認機接近のアラートが鳴る。
音響センサーにもその兆候が現れる。

西方距離200……。



…110

60…

かなりのスピード…。
こちらからは30m先も見えない…確認はできないが、確実に近づいて来ている。

20……!?

「上!!??」

平面の計器に表示される音響センサー、
ゆえに上空の敵だろうとなんだろうと2次元的な間合いしかわからない。

しまった…、

音の大きさ・速度からして通常の戦闘機、ヘリではない、

キャリーヘリか……!

「ストーク4!はやく離脱しろ!敵WLが新たに降下してくる!!」


怒鳴り声に煽られるようにじわじわと上昇し始めるCH-11ストーク4…。



眼前に黒い塊が降ってくる。

「……!なんだこいつは…!?」

すらりと伸びた四肢、
頭部両脇から伸びる大型のアンテナ装置。
背部に装備した、2枚の翼のような大型スタビライザー。

そしてなにより、真紅の光を放つセンサーが、恐怖心をかきたてる…。

新型がまだいた?



そいつは何も銃火器を携えていない。

あるのは右腕に装備している大型のブレードのみ。
わたしのブレードソードよりもさらに長いモノだ。


「わたしはモルモットか!!」

敵機が後退していったのも納得できる、
こいつの戦闘データを取る、というオマケ付きだとしたなら…。

黒い機体が跳ねる、

「!!」

左腕のブレードソードで敵機の斬撃を受ける。

コクピットに座っていてもわかる…、左腕関節部へのダメージが…。
関節部の悲鳴がダメージパネルに反映されていく。

こっちより細身なくせに、なんて出力…。

少しでも態勢を崩せば両断される。

機動力ではこちらを圧倒的に凌駕しているはず、
なのに…あえてパワーで押し切ろうとする…。


新しいおべべで無茶な遊びをする…。


まるで子供だ、こいつは……。

「どうする、桐栄?」

日原型には胸部15ミリは搭載されていない、
それに…自由な右腕の09式も、残弾はわずか、動力系を狙ったところで撃ち抜けはしない。

打つ手が…ない。

白と黒、2機のつばぜり合いが続く。


左腕に火花が散り始める。



もう、限界か……。
“注意”だった機内アラートが“警告”に変わる。

「ごめん…、約束…守れなかったみたい……。」




「あきらめるな!!!」

!?



ヘリのローター音が黒煙の中に見える。

地上での、WLの火災の音でレーダーい表示されにくかったのか…。


「んなこたどうでもいい!!
ライトアームで俺の多摩型を撃ち抜け!背部のプロペラントだ!!
その距離なら数発で撃ち抜けるはずだ!!!」

視線をマコトの顔アイコンからモニターに移す。
確かに…敵機が邪魔で見えにくいが、多摩型がこちらに背を向けて黙りこんでいる。

アレがマコトたちの機体か…。

撃つのはどうにも気が引けるけど、他に手もなさそう。

照準をそのプロペラントタンクに付ける。
かなり近い、外しはしない…。

「ごめん…。」

右腕を突き出す。
小刻みな閃光が多摩型に吸い込まれていく。

間髪いれずに爆発が2つ、連鎖的におこる。
プロペラントの爆発と、多摩型自身の爆発。

その2つの爆風を受けた敵機が態勢を崩す。

この距離で、この規模の爆風を受けてろくにダメージを受けないなんて…。

「邪魔よ!!」

とはいえ、敵を払いのけるのは造作もなかった。
射撃の為に突きだした右腕と、上半身を使って敵を地面に叩きつける。


「よし!!はやくこっちに飛び移れ!!」

見えていたのか、マコトの声がコクピットに広がる。

「キャリーヘリ下部のラックだ!」

止めを刺している暇はない、既に後退していた敵WL部隊が再び前進を始めている。

「了解した!」

上昇を始めるCH-11、

推進剤は十分に残っている…、飛んで機体下部の取っ手を掴むのには問題ない。

からっぽの09式を投げ捨て、スラスターをめいっぱい吹かす。

訓練生時代に搭乗した多摩型とは大違いだ。

幸い敵WL隊とは距離がある。
逃げ切れるだろう…。

優位に立ったがゆえに、ツメを甘くしたな…。

敵の指揮官は凡々…か、ま、助かったが……。






エピローグ


「む?ひとつの礼もないのか?桐 栄 中尉…?」


!!
無線の向こうでゲラゲラ笑っているマコトが見える…。

こ…こいつ……。


「待っててやったのになぁ~♪」


く…くくく…くそぉ……。

わたしだってさっきの礼はもらってないのに……!!


「そういえば…敵の動きが鈍かったが…アレ、どういうことなんだ?」

橋本龍一郎の声がマコトの脇から漏れてくる。
いいぞ橋本、よく話を逸らした。

「アレか?バカだなリュウはよ!?」

「なんだと!?」

「よく考えな!あったらしいヤツで来るのはいいが慣熟訓練をしてなかったんだよ!奴ら!!
まぁ新しすぎる機体だからな、そんなヒマなかったんだろうよ。
リュウもWL乗りならわかるだろ?
機体によってだいぶクセがあるんだよ!近距離、長距離特化の北秋・南秋型ならなおさらだ!
慣れてもいねぇ最新型で戦おうとするからああなる。
ま、なんで自衛軍が俺らを攻撃するかはわかんねーけどな。」


小馬鹿にしたような口調でも解説は欠かさない、なかなか便利な主人公だ…。
周りが楽できるっていうものね。


ん?…主人公…?なに?…それ……。
我ながら訳がわからんことを口にしてしまった。



「そういえば…そこ、ヘリのコクピットじゃない?パイロットはどうした?」

マコトの顔の脇から見える計器類が、どう見てもヘリのだ。

「あー、ああ、パイロットの野郎なら、逃げるって言って聞かなかったんでチト寝てもらった…。」

「あれだろ?前モヤシって言われた腹いせだろ?」

「うるせーよ、リュウ!」


ふふ。

なぜかこいつらと居ると気が落ち着く。
仲間の1人として見てもらえる。




それが…うれしくて。


でも、かなしくて……。









大きな荷物を付けたキャリーヘリが雲を抜ける。

眼下に広がる一面の雲、



地上の光が
雲の薄い部分を赤く照らしている…。

まるで粉々になったように、

そう…まるで、砕かれた空………。




         Fin




[26825] 第4話 プロローグ 本編 前半
Name: ヒロシキ◆0114d2c8 ID:6b326cfa
Date: 2011/04/09 21:26
ちす、最近前書きが言い訳だらけになってるヒロシキです。

根性とひらめきだけで乗り切ってきたSS、最近精神ポイント足りなくて危険な状況にあります。


前話で急速に話を展開させたせいで
以降にのんびりした話が入れにくくなってしまいまして…。


仕方ないのでチョッチ無理してぶちこみました。
このUPだと振りだけですが、がんばって人間を書きたいと思います。

(ロボバトルないです今回…)


てかなんでいきなりそんな人間関係?バカじゃないの?


と思われる方多いかと存じます。


ぢつは感想の方に…

>戦闘パートとか結構面白かったので~
>戦闘パートに移ると~
>ロボ戦が~


という感じの方がいらしまして…、

や、嬉しいですよ?
いっちゃん不安だった部分が以外と高評価で!!

だがbutしかし、

「俺…キャラが上手くかけてないのか!?」

ってなりまして…、

ツンデレデレな桐栄、エロ担当健太、ブレーキ役リュウ、潤滑剤、雄二。

こいつらを使ってなんとかせねば……と思ったのです。



長いですがもちっとお付き合いください、

加えてですね、横須賀基地とか出しちゃいましたけど実在のものとは一切違う、ということを念頭においてください。(沼津には基地、施設はありません多分…)
間取りも設定も全部テキトーですので。

加えて、かなりアンチョコなストーリー展開になりそうですが…というかなってますが、読んでいただければーと思います。

感想書いてくださった

葛原氏、ひらめ氏、風鈴氏、ブラボー6氏、nat氏、REX氏、(記入日時順)

ありがとうございます。






プロローグ

ヘリの、コクピットのわずかな照明が俺の顔を照らす。

先ほど連絡がついた横須賀からは、俺たちの到着を待ってから詳細を伝える、と来た。
向こうもまだ詳細を掴んでいないようだったが、東日本の施設の多くが攻撃を受けたらしい。


味方であるはずの自衛軍からの攻撃。
敵とおぼしき自衛軍は西方から仕掛けてきた。


まさか、西日本が戦争仕掛けてきた…なんてことはないと思いたいが…。


「マコト、大丈夫か?」

「あ、ああ、心配すんな。ちと夜更かししすぎただけだ。」

目をしぱしぱさせる、
施設での戦闘からここ、酔いは感じない。

必死…だったからかなァ。

あ、こりゃ…アカンな、何しても無駄だわ。
事実、あくびしようが何しようが、眠気に拍車をかけるだけだ。


「そうかい、まぁ横須賀基地まで40分くらいある、すこし寝ておけ。」


リュウと居ると気を使わなくて済むのが最高だ。
何かしたいなと思えば、気がつけばリュウがいち早く気付いてくれる。
そしてアクションを起こしてくれる。

どっかのデカ女にも見習ってほしいもんだぜ。

「へっ、ずいぶん優しい…じゃ、……ねーの…。」

意識が途絶える、
限界だ。










つめたい。


あたたかかった身体がすぐに冷えきる。


ここは、どこだ?



精神患者がいそうな、全面が真っ白な部屋。


ガラスの容器におさまった俺……。

動けない?

いや、動けなくはないが、起き上がれない…。


必死に手足を動かす。

だが、状況は何も変わらず、視界には小さな手だけが映し出される。

これは、赤ん坊……?俺なのか?




誰かが覗きこむ。

眼鏡をした、陰湿そうな研究員…
天井に備え付けられた蛍光灯の光が、そいつの顔を陰にする。

誰…?


手にした注射器から液が押し出される。
太い針、


そして、その先端が近づく…。

そして、全身を揺さぶるような衝撃が、体中に広がる。





「っ!!!!!!!!!」


「おい!マコト!?大丈夫か?」

う…ん?
そうか、ここはヘリコの中だ。

「うなされていたぞ、をい。」

「あ、ああ、大丈夫だ、今はどのへんだ?」

「今ちょうど横須賀に着いたところだよ。」

ああ、確かにそうだな、
ヘリの窓から見える照明がコンクリ固めのヘリポートを映し出している、後ろの方には桐栄さんの白い機体も見える。

さっきの痛みは着陸時の衝撃か、どおりでリアルなわけだ。

とはいえ、ゲームでもし過ぎたのかもしれない、あんなベタなネタが夢に出てくるとは…。


自分が特別な存在だと、ヒトは思いたがる。
だが現実は、そうじゃあない…。

シートベルトをはずし、
後ろでノビているヘリパイロットを、引きずりながら乗降口へと歩き出す。

このキャリーヘリで脱出したのは施設職員を含めて18人。

ひとりひとりの顔を出口で見る。

やつれきっている…。
たった数時間でこうも変わるものか。

皆が降りたのを確認し、俺も降りる。

横須賀、第1護衛隊群が配備されている基地…。

それくらいしかしらねぇ。
東京湾近くに作られたヘリポートに降り立つ。

んー、とドコだ?
きょろきょろ辺りを見回す。
WL機甲部隊は特に陸上自衛軍のみに配属されてるわけではないが…。
つい先日まで訓練生だったもんだからこの基地の中身はわからない(ぶっちゃけまだ沼津養成施設しか知らんが)。


「沼津の方たちですね?
ぶしつけですが責任者の方はおられますか?」

若い士官が駆け寄ってくる、ココの人間だろう。

責任者…か、階級的には桐栄さんが中尉、俺が少尉(予定)、リュウは准尉(予定)、ヘリコの野郎は…知らんがとりあえず下だった気がする。

「アレが最高位ですね。」

そう言って指をさす。

わたし?という顔で桐栄さんがこっちを見据える。
そう、あんた、というように俺は顔をこくこくとする。

「あのぉ…上官にアレはないんじゃないですか、さすがに…。」

「あ、スンマセン、今のは気にしないでください。」

「それで、その、えっと、次に階級の高い方は…?」

「あ、俺だね。」

やけに腰が低い人だ。
見たところ俺の階級(予定)より高そうな人なのに。

「その、ですね…沼津の状況が知りたいと、司令がお呼びです。司令室までお越し願えますか?」

ああ、そういうことか。
俺らよりも先に脱出した奴らでは最期までわからんからな。

「わかりました、案内、よろしくお願いします。」

「承知いたしました。」


リュウたちとは一旦別れ、若い士官、俺、桐栄さんの3人で近くの建物に入る。

「ここは横須賀の総督部なんです、基地司令室はここの2階にあるんですよ。」

へー、ととりあえず相づちを打っておく。
他にどう言えばいいのかわからんかった、というのがホントのところか。
あと何か言っていた気もするが…、

「桐栄さん、何言ってた?」

「いや、聞いていなかったな。」

それぐらい、聞いててわかりにくい話の長さだった。
まぁ基地施設の紹介だったんだろう、タブン…。

エレベーターに乗る、2階ごときでコレを使うとは…。

ん…待てよ?

「コレ、司令メチャ厳しいんでねーの?」

「どうしてだ?」

案内人の後ろでひみつ会議が行われる。
当人はペラペラと解説に勤しんでいて振り返る気配もない。
ぽそぽそ話すぐらいでは気付きそうもないな。

「よく考えろ、部下のあいつがあれだけビシッとしてんだ、きっと司令なんかもっとやべぇ頑礼儀作法至上主義者にちげぇねぇ。」

「む…、言ってることは何となくわかったが、確かにやりづらいな、それは。」



ここです、と案内されたのはいい木目をした両開きのドアの前。

「小島司令、お二人をお連れいたしました。」

わざわざ扉まで開けてくれる。

「おう、待ってました!ささ、入って下さい。」

「あ、は、はい!」

俺と桐栄さんはぺこぺこしながら中に入る。


なんか、
めちゃフランクな人じゃないの…。

「おいっ、こりゃどういうことだ!?」

「わたしが知るか!」

小声で討論が交わされる。

「なにボソボソしてんだ?」

うぃ?
小島司令っぽい人の前に2人が立っている。

「んん?お、お前は…。」

「や、そんなに驚くこたないだろ。」

いや、真田…、お前がいることに驚いてんじゃなくて。

「アレ?なんで有田秘書官までここに?」

この司令室では今、沼津施設の状況報告をしているはず。
こういうのは階級高い人が行うしきたりだけど…、秘書官ってそんな階級高かったっけ?
てか所長はどこいった?

「わたしは中佐だよ、篠田訓練生?」

いっ?

「ま、まぁ、そうなんだよ、俺もさっき知ったんだけど。」

頭をぽりぽり掻きながら真田がそう言う、俺と同じ反応をして何か言われたのだろう。
有田秘書官のバイオレンスぶりは噂に聞いている。

気をつけないと危険だ、目をつけられたら終わる……。

「さて、再会の挨拶はそこまでにして、篠田くん?施設の状況を司令に伝えてくれないか。」

「は、はい!」

(名前、割れてる時点でどうかと思うが…。)

そんな目をしてこちらを見る桐栄さんと真田。
俺の心が読まれた!?

まぁそんな気がしただけだから、そんなこたないと思うけど。


「それでは、報告します……





(長いので割愛)





          。」





本編 前編

「…………・・・、報告は以上です。
この戦闘データを参照すれば詳しくわかるでしょう。」

そう言って1枚のメモリーを司令に手渡す。

「そんなもの、いつの間に?」

「ああ、脱出間際に多摩型から引き抜いたんだよ。役立つと思ってね。」

ふふん、と自慢げに話す。
思い入れのあるアイツを捨てて逃げる羽目になったんだ、心ぐらいは持って帰ってやらんと…。

「そうか、だいたいのことはわかった、じゃあ今度はこっちが状況を伝えよう。」


唾を飲み込む。



「あー、まぁ俺の口から説明するよりコッチのが早いな。」

チョ…、溜めるだけ溜めてそれは…。
緊張が瞬時に崩れる。

小島司令が手にするはビデオテープ。
かなり前時代的な遺産が出てきたな、オイ。

小島司令が卓上のテレビをこっちに向け、下にあるであろうビデオデッキをいじり始める。

…なんで司令室にビデオ?

「よし、見たまえ。」


テレビがパッとつく。

『ふたりはプ・リ・キュア♪プ・リ~♪♪』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

司令、
ないよ、ソレは…。

タイミング的にも、年齢的にも…。

後ろにいる有田中佐から超殺気が向けられている気がする。
司令と彼女の間にいる俺は気まずいというか、背中が痛い。


「ほ…ホラ!今のはサ…その、アレだよ。
友達に頼まれてたヤツなんだって!あとで渡すつもりだったんだって!」

・・・。
言い訳までガキくせぇ…。

どこのアタマもこんなバカばっかなのか?
大ジョブなのか?自衛軍…。


「ん、コホン。
あー、まぁ俺の口から説明するよりコッチのが早いな!」

だが、立ち直りの早さはやはり凄まじい、
堂々と、さっきと同じセリフでやり過ごそうとしている。

「これを見たまえ。」

やはり歴戦の猛者だ(俺たち)、あれほどのことがあってもほとんど動じない。
持つべきものは無能な上司か?
や、それはないな…。





「……我々西日本自衛軍は、我らに与せぬ全ての自衛軍に対し宣戦を布告する!」

一時停止を指す2本の縦線が画面に映る。

は?

「エ?」


今度ばかりは動じずにはいられない。

「そういうことだ、・・・続けても、いいかな?」

「は、い。」

深呼吸を挟んで俺は答える。
周りの奴らもまだ飲み込めていないようだ。

「夢のようだがクーデターだ。
既に各地の官邸、自衛軍基地が攻撃を受けている。
首謀と思われるこの男は佐世保の司令、前田靖。
軍事だけじゃなく、政治手腕もキテる奴だそうだ。政治家も何人かあっち側に行ったって情報もある。」


…。


「まだ現実味が湧かないか。
貴様らとて数時間前に戦っただろう?我が国の国旗をペイントした機体と。
お前らが思っていた以上に日本は不安定だったんだよ、経済も、軍事も…。」

「し、しかし!
政権を軍に戻して何をするつもりなんですか?」

知るかよ、というしぐさで小島司令が続ける。

「もともと奴は今の政治に不満を持っていた、それは知っていたし、この世界じゃ有名だった、だがな、ここまでやるバカだとは思わなかったぜ。
って、おうおう、そんなに心配そうな顔するな。
今、政府側が安保理に助けを求めている。それさえうまくいけばこの騒ぎもおさまってくる。ま、貴様らは、今日は休め。」

「しかし、彼の部下たちはなぜ従うんです!?」

おかしい、そんな危険な男の指示に従うような奴らが自衛軍に?

「ああ、お前は知らなかったか、ここ数年、妙に人事が騒がしかったんだ。
理由もきちんとした内容だったし、そんなだから気にも留めていなかったんだが…。」

こうなっちまった、とお手上げのポーズを取る。

「今頃奴の周りはシンパだらけだろうよ。」

そんな…。

「もういい、休め。」

はい…。


「宿舎までお連れします。」

丁寧な士官が再び、道を示してくれる。





~宿舎~

「それじゃ、マコト。わたしはあっちの個室だから。」

桐栄さんが軽く手を振って遠ざかっていく。

ちっ、女はいいよな、個室あてがわれてよ。

ん…?
いま、名前を?
気のせいか。




って?
アレは有田中佐?

桐栄さんと別れ、自分の部屋の前に立った時、向こうを歩く中佐が見えた。
俺の部屋の向かいの方、屋外へと続く道だ。

あと、つけてみるか…。

コンクリ製の床が乾いた音を廊下に漏らす。

確か…ここ。

有田中佐が出ていったと思しきドアから出る。

「篠田君か?」

っ、いきなりばれた…、結構静かに出たつもりだったんだが…。

「いつから…気付いていました?」

「廊下で私を追い始めた時からだ。」


…俺、探偵的な稼業は向いてないのか。

「で?私に何か言うことでもあるのか?」

ありません、と答える。
事実、何となくついてきただけだし…。

「そうか、ならいい、安心したよ。」

「そういえば、所長は…?」

彼女の顔を見て、ふと思い出す。
あのどうしようもない所長、彼女は常に彼の傍にいたはずなのに…。

有田さんが深くため息をつく。

「言うことはないんじゃなかったのかい?安心した矢先にこれか…。」

夜の外灯が彼女の顔に、深い、影を作りだす。
短く、肩で切りそろえた髪が風に揺れる。

「篠田君、沼津での、あれだけの奇襲で、コントロールルームが攻撃を受けなかったと思うのかい?」

かすかに声が震える。

「思いません。」

「では、そういうことだ。」

うつむきながら傍の手すりに寄りかかる。
彼女は再び、深いため息をつき、空を見上げる。
濁り、星すら見えない空を、飽きもせず眺めつづけている。


「好き…だったんですか?」

俺はただ、立ちつくしながら、聞いてしまった、力になってあげたかった、ただそれだけだ。

「嫌いじゃなかったさ、でもね、好きでもなかった…。
あのまま日が経てば好きになったんだろうけれど……ね、もう、この気持ちが進むことも、退がる事もないの。
ねぇ、私は…どうすればいいのかな?」

頬を一筋の光が伝う。



涙交じりに語る有田忍さんを前に、俺はどうしようもなかった。

まさかここまでうち明けてくるとは……。
思ったよりもハードな地雷を踏んじまったようだ。

虫の声が、しばし空白の時間を埋めてくれる。
物悲しいBGMを俺たちはただ聴いていた。



「有田さん、これを…。」

思い出したように、俺はポケットに突っ込んで忘れていた、アレを取りだす。

「それは…」

そう、白のキングの十字架…。
かなり小さい、爪の先くらいのソレだけれど、彼女の所長の思い出、それは溢れるように残っていることだろう。

「あ、あああああぁぁぁぁぁあ……!」

駒の破片を受け取り、崩れ落ちる忍…。
俺には彼女を抱いてやることも、慰めてやることもできない。

「忍さん…夜は冷えますから、早めに中に入って下さいね。」

来ていたジャンパーを忍さんにかける。

俺は、過ちを犯したかもしれない、彼女の心を、所長につなぎとめてしまった…。



ドアの軋む音が、いつもより大きく聞こえた。





今日の自分のねぐら、
そこへ繋がるドアを開く。

「お、どうだった?状況は…ってすげぇ顔だな、鏡見るか?」

相も変わらず第2小隊の雰囲気は軽い。
やっぱ俺たちゃ相部屋か。

差し出された鏡をのぞき見る。
確かにひどいわ、ヘリ内で見た誰よりも…。

「まぁこれで顔ふきなよ。」

弁当とかによく付いてくる個別包装のおしぼり。
雄、いつも持ち歩いてんのか。ババくせーよ…。


「んじゃまぁ、報告してもらいまひょか。」

手にしたゲーム機を放りだし、ベットから健が身を乗り出す。

「ああ、そのことなんだがな……。」

さっき司令室であった話をそのままする。
皆、思ったよりは驚かなかったようだ、ついさっきあれだけドンパチしたからだろうか。
ただ単純な奴らだからか…。
驚きよりも、そうか、という認知の度合いが強かった。

「で?これから俺らはどうすりゃいいんだ?」

「わからないな。
一応ここにもWL部隊はあるみたいだし、俺とリュウのは沼津に置いて来ちまってて(俺のは壊れたがな)部隊行動が取れないし、東日本各地の連携が取れるようになるまでは、出る幕ないかもな。」

ヘタに「僕らも戦いますぅ」的なことをすればかえって混乱を招きかねない。
どこの誰?お前…、みたいにさ。
ここは大人しく待機するのが吉だろう。

何かあれば司令の方から連絡が来るはず。

「で?わたしはどうすればいいのかな?」

…。

「で?なんでお前がココにいる?」

2段になったベットの上にツインテールのヤツがいた。
気付かなかったぞ、どんだけ溶け込んでるんだ…。

「えー、だってぇ~、お部屋いてもヒマだし~。」

PGPしながら、こっちに向けた足をぱたぱたさせる。
このぼりぼり食う音はポテチか?

「ここは男の相部屋だ、一応女なんだし、自覚もってくれよ…。」

「いいんじゃねーの?
遊びに来てるだけだし、それにコイツ、モンパン強いぜ、お前もやるか?」

布団の上に放ったPGPを拾い、再びピコピコ始める。
図太いというかなんというか、こいつ(健限定)神経使ったことあるんかいな。

「あのな、今日はそれどころじゃねーだろ、もう寝ねーと明日からつらいぞ。」

モンパン、モンスターパンターの略。
目的のモンスターを自分だけの戦車で倒す、新感覚ゲーム…。
倒した敵の素材で装甲厚、砲塔、動力、ペイントなどのカスタマイズを行っていく。
パッケージには、二次大戦で名を馳せたパンター戦車がアップになっている。
前作はどっかの県民と同じ数だけ売れたとかで大騒ぎしてたな。

俺もつい先日中古で買って結構楽しんだ。
まぁ楽しいけど、今はちょっとね、そんな気分じゃないかな。

「だって~、眠くないモン。眠れないモン!」

「あのな、お前も明日から忙しくなるんじゃないのか?外交官なんだろ?」

そう言って諭そうとすると、
真奈美はもぞもぞと布団の上で旋回し、こちらに顔を向ける。
めっさふくれっ面しとる…。

「私、職場戻りたくないなぁ。」



「だって~、今回の件で私、絶対なにか言われるモン。」



「なにか…とは?」

真奈美がちょっと、困った顔をする。

「まぁ、お兄ちゃんたちは信用できるから言っちゃうけどサ、私ってユシア相手がメインだったじゃない?」

あー、そうね。
そういやそんな話あったな。

「つい先日ね、その前田靖少将とユシアとの軍事的な繋がりを見つけちゃったのよ。」

はい?

「え?ってことは西自衛軍はユシアの支援を受けてるのか?」

「まぁ、そうなっちゃうわね。」

最早どう反応していいのかもわからない。
自衛軍による離反、沼津の陥落、おまけに他国家まで介入…。

「それは上に報告したのか?」

「したわよ!これでも仕事はきちんとしてるのよ!?証拠の書類も含めて全部、ね。
でもなきゃ休暇なんて取らないわよ。」

手にしたゲーム機から視線をこちらに向け、激しい口調で話す真奈美。
自分のした仕事への絶対的な自信がそうさせているのか。

「むぅ、ってなると…真奈美ちゃんが休み取ったのが一昨日、
その前には前田って奴のやることはばれてたわけだ、それなのにフツ―にクーデター起きてるってなると…」

「ま、嶋野の上司があっち側だったってことだな。」

本をアイマスク代わりにしていたリュウが〆る。
さっきから黙ってたからてっきり寝てたかと思ったぜ。

「そう、なるわ。
多分、証拠が詰まった私の事務所も、パソコンも押さえられているでしょうね。」

そうか、それであの暗殺騒ぎか。
証拠は握りつぶせば何とかなる、あとは口封じで…ってことだな。
暗殺が失敗したからクーデターの開始を早めた、そういうことなのかもしれない。

「どうする真奈美ちゃん、司令に報告に行くか?。」

・・・
彼女は黙っている。

自分が生きていると分かればまた、命を狙われかねないからだろう。


「わかった、行方不明者のリストに真奈美ちゃんの名前を入れておこう。」


「ホント!?ほんとにホント?」

っ!!
真奈美ちゃんがベットの上から飛びかかってくる。

いくら相手が小さいとはいえ態勢が悪かった、腰に鈍い痛みが走り、頬から冷や汗が垂れる。

「モヤシ…正気か?ヘタすりゃ戸籍が…。」

心配そうに雄が話しかけてくる。
結構慎重な奴だ。

「そのための行方不明だろ?
最終的に病院かなんかで意識不明でしたって診断書もらえば問題なしだ。
行方不明ってなってる奴をあえて探し出して殺そうとするやつはいないだろうしな。」

そういうもんか、と言う雄に
そういうもんだ、と俺は答えた。

大学生のころはしょっちゅうつてのある医師に偽造してもらったもんだ…。
おかげで出席してなくても考慮してもらえたし。

とと、こら関係ないな…。


「大好きだよぉ!まことぉ!!」

改めて真奈美ちゃんにはぐはぐされる(噛まれたんじゃないよ。




そして空気読め的にここのドアが開く。

「マコト?話したいことがあるんだが…いいか…な……って……。」

・・・

状況確認(俺脳内)

俺の首に手をまわした嶋野真奈美。
ドアを開けた嶋野桐栄。
ドアまで約1.5m、
窓まで2~3m、

逃げ場…なし。

浮き上がる血管。

憐れむ仲間。


俺、終了・・…。

状況確認終わり(約0.5秒)

「マコトおぉぉぉぉぉぉぉ!」

あ、超デジャビュ…。
この前の戦慄が身体を襲う。



「あ、篠田君ちょっといいかな?」

室内のテレビカメラが明るく光る。

殺害現場の瞬間を見せるわけにはいかないのか、桐栄さんの拳が止まる。

とりあえず命拾いした、と考えてよさそうだ。

「あー、お取り込み中かな?」

全然、と手を振って答える。
我ながらちとオーバー過ぎたかもしれん(アクションが。

「それならいいんだが、ちと用事がある。今迎えを寄越したからそいつのあとについてってくれ。」

「了解です。」

いきなりですか、1日くらい空くかと思っていたんだが…、というか眠いんだが…。
タイミングを見計らったようにさっきの若い士官がやってきた。

「はいはい、今行くよ。」

「おっと、そうそう、小野田健太、嶋野桐栄 両名は司令室まで来てね、至急だよ?」

小さくせき込むように健が、桐栄さんがモニターを見る。

「や、悪くない話だから。そんな渋い顔しないで。」

モニターの中の小島司令が大きく笑う。

「では、篠田まことさん、こちらへ。」

「あいよ。
いいな?お前ら、早く寝とけよ?」

念のためリュウ達に釘を刺しておく。
リュウは規則正しく生活できるんだが…他のバカ(主に健)がフリーダム過ぎるからな、
また処罰されないように気を付けて騒いで欲しいもんだ、とばっちりは俺に来るんだから。

俺は前を歩く士官のあとについていく。

いったい、何の用なんだろ…。





~司令室~

「うむ、来てもらったのは他でもない。」

きちんと敬礼をするおれ、桐栄を前に小島孝は敬礼で返す。
なんだっておれがこんなとこに…。

「キミらの任務はこれだ。」

小島司令から差し出されたモノを見る。
かなりの数のチケット。

「はい?」

「や、コレが任務。」

「司令、銭湯の貸し切りチケットにしか見えないのですが…。」

横で渋い顔をした桐栄さんが発言する。
普段は見られない彼女の顔に、ちょっちドキドキするおれ。

「うん、どう見ても銭湯のチケットだね。
これはね、私からの労いだよ、労い。
君らよく沼津の職員をアレだけ救出できたって感心してるのよ、わたしゃ。」

はぁ、そうですか、としか答えなかった。

「それで、そのチケット…ですか。」

「そおです、ウルフ小隊、アルファ小隊、ブラボー小隊、それに有田君たち職員数人の分。
結構手配大変だったんだから、汗流して、明日十分休んでくれ。」

「基地防衛の人手は足りているのでしょうか?」

「あーあー、その点は心配いらん、敵の動きからしてもしばらくはココを攻めたりはしてこないさ。
私の苦労を無駄にしないようにしてくれよ?」

そこまで言われたら受け取らないわけにもいかないだろな、それに、明日まで休めるたぁいい感じだ。
いきなり基地防衛戦に駆り出されないで済むんだから。


「了解いたしました、ありがたく頂戴いたします。
ただ、緊急の際には私たちにもお知らせください、我ら沼津の者も戦います。」

えー、そこは嘘でも休みたいでーすって言おうよ。

「わかった、んじゃ、作戦開始だ。行って疲れ落としてこい!」

はっ

そう言って桐栄さんが部屋から退出する。
んじゃ、俺も…。
男どもの分のチケットを持って出ようとする……と、

「健太君、ちょっといいかな?」

呼びとめられる。

とりあえず残る。

「君にもう一つの任務だ。それも、極秘の…。」

唾を飲み込む音が頭に響く。

「これを渡せば全てわかってくれると思う。」


差し出されたモノに目をやる。

こ、これは…

「こ、高性能小型カメラ!!」


司令と目を合わせる。

「内訳は?」

「全 員 分だ、出来によって報酬を上乗せしよう。」

再び司令と目を合わせる。
最早語ることはあるまい、司令からの贈り物を受け取る。


おれは司令室をあとにした。

おれの、おれの戦場へ向かうために…。

あの司令とは馬が合いそうな気がする。




       前編Fin



はい、まぁアリ…でしょうかね?
タイトルにロボモノって堂々書きながらロボ出てこない話があるっつーのは。

まぁ、そんなこんなでいつか書いてみたかった温泉(銭湯)話、次回堂々完結!!

前回セリフ出し忘れた嶋野(小)、なんだかんだであんまり登場してない健、+ダブルオヤジ、名もないウルフ小隊の面々で頑張りたいと思います。

どんな批判が来てもへこたれない勇気!!
大事ですね。

ロボ系期待してた方サーセン。
次はチョッチロボ入るんでゆるして…。

















[26825] 第4話 本編後半 エピローグ
Name: ヒロシキ◆0114d2c8 ID:8e76483d
Date: 2011/04/13 11:45
色々あって前書き、後書き抹消、ソレ用に一枠取りました。





~総督部地下~

若い士官が厳重なセキュリティをひとつひとつ開けていく。

「はい、ここですよ、まことさん。」

案内されるがままに地下の一室に入る。

「ここは?」

暗かった室内に明かりがともる。
4台のコクピットが並んでいる、バーチャルシュミレーター用のヤツか。

「あなたの戦闘データ、見せてもらいました。
突然でなんですが、あなたをテストパイロットとして当基地で雇用したいのです。」

彼が手にしたデータチップ、アレはおれの多摩型の…。

どうやら受けなきゃならないみたいだな…。
コレだけのセキュリティのところに足を踏み入れちまったんだ、断ってしまえば、ただでは帰してくれないだろう。

促されるままに一台のシュミレーターに入る。

「引き受けてくれてありがとう、自己紹介がまだだったね。僕は加藤学、中尉だ、よろしくね。」

よく言う…。

「俺は篠田まこと、少尉(予定)だ。」


にしても、このコクピット、金をかけているのがわかる。
こういうシュミレーターは実機と同じ造りをしているもんだが…、ここまで装備が整っている機体、コストがかかり過ぎないか?

「まこと君、いいかい?さっそくシュミレーションを始めるよ。」

加藤少尉の声と共に、シュミレーター内のモニターに映像が映し出される。

「?このWLJ-004(AN)ってなんぞ?」

起動時に映し出される文字列、

「ああ、それはその実験機の型番ですよ、WLなんたらっていう型番は多摩型にもあったでしょ?」

そういや、そうだったっけ。
ずっと多摩たま呼んでたからな、そんなモンすっ飛んでたぜ…。


「いくよ、任務は簡単、敵機を全て撃破すればいい。」

READY?

指を操縦桿に食い込ませる、慣れない機体でどこまでやれるのか。
だが、シュミレーターならそうそう酔いは来ないからな、なんとかなるだろう。

「見せてくれ、君の力を…。」

GO!!

状況は市街戦、昼、上空より侵入した敵WLの撃破。
仮想敵機は「清-08式」、華国の機体なのだが、いいのか?勝手に敵扱いして…。

まぁいいか、

音響、その他のセンサーで敵の位置を確認しつつ機体を滑らせる。
若干ノイズが大きいが、なんとか識別できる。
だが…この上下への揺れはどうにかならんもんかな、完璧に再現されている…うっぷ……。
並行して自機の兵装を確認。


「…嘘だろ?」


パネルに表示された武装は2つ、そのどちらもが俺を動揺させた。

ライトアーム…レールガン
レフトアーム…レーザーブレード。

実用化されていたのか、レーザー兵器が…。
てっきり実態弾系の武器がすべてだと思っていたが、あるじゃないか…ビー○サーベル。

こんな大電力を消費する兵装をWLに積みこむなんて…、一瞬で電力を吸い取られるんじゃねぇのか?


あ……そうでもないのか。
レールガンもレーザーブレードも、電力供給はバッテリーパック形式だ。

マガジン形式のバッテリーだけでコレが撃てるとは、驚異的だ…。

とはいえ、どちらも長期戦には向かない装備だな。



コクピット内に警報が鳴る。
捕捉されたようだ、後方からの攻撃が至近距離に着弾する。
アサルトライフルのようだ。

「やってみるか!」

機体を振り返らせ、照準をつける。
敵機の主兵装はまだ有効射程内ではないはずだ、なのに撃ってくる
…所詮はバーチャル、か…。


レールガンへの電力チャージが完了する。
思ったよりも早い。
砲身からが青白い光が漏れだしている。


右手の動きと連動して、モニターが一瞬青白く染まる。
昼、という設定なのになんて明るさ…。

光が直進し、

敵の脚部へ命中する、

破壊した敵機がうつ伏せに倒れ、脚部から黒煙を上げ始める。

無駄にリアルに作り込んである、まるで現実だ、これは…。
無論武装による爆発、土煙等も完全に作りこまれている。
ゆえに実戦同様の戦術が使えるみたいだ、何回かシュミレーターに乗ったことはあったが、これだけのモノは初めてだ。

レールガン下部からバッテリーパックが排出される、1発あたり1パック使うのか…。
残りのパックは両肩シールド裏に各2、腰部アーマーに2個。

レールガン自体の弾倉も残り6発。

今の戦闘で他の奴らが寄ってくるなこりゃ、
腰部のパックをレールガンへ装着し、機体を移動させる。

すごくなめらかなで、静かな挙動が、俺の酔いにやさしい…。




~せんとう前~

「ここか、その銭湯とやらは。」

おれは件のカメラを胸に銭湯の戸の前に立つ。

「わ~い♪お姉さまとお風呂~♪」

モヤシの言ったように行方不明者リストに名前が載った嶋野(小)だが、堂々と外に出てきた。
ペットの鳩まで一緒とは…。
幼女は射程外なんだが、まぁニーズはあるだろう。

「じゃあ行くか。」

リュウが戸を開け、中に消えていく。
続いて真田、雄、有田秘書官、ウルフ小隊の面々が続く。

おれは戸の脇に立って皆を先に入れる。
レディーファーストってヤツかな?若干男どもも先行ったが…。

「すまんな小野田。」

「さんきゅ~♪」

嶋野姉妹が通る。
これで終わり、おれも中に入るべ。

「いらっしゃいませ、横須賀の方々ですね、話は聞いております、ごゆっくりどうぞ。」

さあさぁ、と老・経営者に指し示されるままに男湯の方へと向かう。
女湯へ行くには番頭の婆さんの前を通る必要があるな…。

正面突破はやはり無理そう。

「じいちゃんたち!あたしのトーコ、預かっといてね!」

「おお?ひよっこ共のお出ましか!遅かったなぁ!!」

「んが?」

鬼軍曹に三崎整備長…既に出来上がってやがる…。
そいつらに自分の鳩を預けるとは、中々度胸があるじゃないの。

ってか風呂にも入らず休憩所で酒盛りをしているのか。

真奈美ちゃんにとっては愛するペットの預り所と化しているが…。
まぁさして邪魔にはならないだろう、どうせずっと酒飲んでるんだろうし。



男湯ののれんをくぐり、
更衣室の木製ロッカーに衣類を脱いで放り込む。
無論たたみなんてしない。

大事なカメラ、でかいバックパック(防水密閉式)を両手に湯への道を開ける。

ここの銭湯については来る前に調べ済みだ。

まずは屋内の湯、大して広くない湯船に、やや広めの流し場、一枚の壁を挟んで女湯がある。

一歩一歩タイルを踏みしめる。

そしてあの奥の戸、アレが露天への入り口だ…。
ここの目玉、周りの私有林の真ん中に位置する大露天岩風呂。

私有林の周りは高い塀で囲まれているが、隣接する男湯・女湯から私有林へは低い柵しかない。ちなみにこの露天、広いうえにいびつな形の湯船、更にあちこちに岩が入っている。
さらにさらに!!
今は真夜中、暗いうえに、夏とはいえ気温もそれほど高すぎはしない。
つまり、湯気でもカムフラ出来るんだよ、これが…。


正面が無理でも裏からの突破なら不可能ではない!!(クワッ



とはいえ、ここの名物は露天、女性陣も速攻で外へ出ていることだろう。
いくら湯煙があるからといっても見つかりかねん。(ショボーン



とりあえず勇者たちを集める必要があるだろう、団結しておけば色々役に立つ。

まずは……

「おい!雄!!ちょっといいか?」

湯煙で真っ白な中、雄二の姿を見つける、まずは親友を引きこんでおくべきだろう。
ウブなわりにムッツリだから大ジョブなハズ。

「これから女湯へ行く、仲間になれ。」

は?という顔を浮かべる雄。

「ええ?覗くの?」

「バカ!覗かネーよ!撮るんだよ!!」

手にしたカメラを見せびらかす。

「でもさ…。」

なかなかしぶといな、
むぅ、致し方ない、こうなれば…。

「いいか、雄、耳をすませろ。いいから!!」

騒ぐ雄を押さえつけ、無理やり女湯側の壁に押し当てる。
向こう側は花園、そうじゃない会話もそれらしく聞こえるはずだ、そうなりゃこっち側の人間にできる。


・・・
・・・・・・
…・・………・…………・・・・・・・。

「どうだ、これでもまだ行かないか?」

…?

「雄?」

水音が…?
赤い水が雄の鼻からおかしいくらいに漏れだしている。

視界の一部が赤くにじむ。

雄ぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーー!!!

「おいっ!雄!?
ちょ、そこのアンタ!運ぶの手伝ってくれ!」

たしかウルフ小隊唯一の男パイロット…名前は知らないけど、助けを借りることにした。


とりあえずカメラとバックパックを近くに置く。

俺が頭、奴に足を持ってもらい、更衣室へ出る。


「おーい!ばあちゃん!!氷嚢とか、持ってきてくれー!」

さっきの番頭していた婆さんに色々と物資を要請した。
その間ウルフの彼は雄の尾翼を押たりして止血してくれていた。

「健太だっけ?お前の連れどうしたよ?まだ湯に浸かってねぇんだろ?」

「あーあー、まぁ気にしないでくれ、コイツムッツリだからサ。」

「ムッツリか!ははは、鼻血吹くなら実物拝んでからにするんだな!」

だろ?
と下らないことで場が盛り上がる。

「はいはい、この方の手当ては私に任せなさい、せっかく銭湯来たんだ、満喫しとくれよ。」

よっしゃ、とウルフの彼が立ちあがる。

「んじゃ、任せましたよ。」

おれも、満喫しなくちゃな!




残念だが、雄はもう戦えないだろう。
リュウや真田は堅物だし、あとはコイツに賭けるしか……。

そう思い、彼をじっと見つめる。



「!、俺も行くぜ!!」

まだ何も言っていないのに…。
コイツ…やるな!

「白井良一だ。」

「おれは小野田健太。」

おれと彼は改めて中へと入っていく。固く握った俺たちの拳がその決意を表していると言っても過言ではない。






~総督部地下~

4台並ぶシュミレーターのうち、手前の一つが激しく稼働する。

なるほど、ね。
僕はシュミレーター横でパネルを見ている。
中々、まこと君は才能あるみたいだ、初めて扱う機体にクセのある兵装を使っているのに
人並み以上に戦えている。


シュミレーターのライブモニターが青白い光で包まれる。
今ので3機目か。



ん……?

だが、その割にスコアが伸びない。
アレだけ正確に敵機を撃破しているのだからもっと高いスコアが出てもおかしくはないのに…。

パネルを操作し、撃破した機体の詳細を表示する。

「なるほど…ね。」

全ての被弾個所が脚部に集中している、それも一番脆いヒザ関節。
このシュミレーションにおいては敵機の完全な撃破が高得点につながる。
彼の戦い方では低いスコアになるのもいたしかたないか…。

「これでは選べないな。」

何人かの候補パイロットから実機訓練をする者を決めるつもりだったのだが…、これでは比べられない。


「まこと君?これから別のシュミレーションを開始する。少し待ってくれ。」

まことの入ったシュミレーターと、隣のヤツとをリンクさせる。

あとは僕が入るだけ、
パネルでデータの回収ができていることを確認して、急ぎ隣のシュミレーターへと入る。


飛びこむようにシートに座り、シートベルトをつける。

パネルを叩き、設定を始める。

使う機体は…北秋型でいいな。
まこと君からもらったチップを元に作った北秋型のデータ、シュミレーターのシートの造りとは異なるが、使ってみたい。

僕に実機は使えないが、シュミレーターなら十分にいける。

「待たせたね、今度の敵は1機、そいつを破壊すればシュミレーション終了だ。」

「わかった、やってみるよ。」

まこと君は気付いていないようだ、これが僕とのサシだということに。

READY?

毎度の文句がモニターに表示される。


GO!

始まる、
フィールドはさっきと同じ市街地、僕の使う武装は11式突撃銃を2丁。
加えて両腕甲にブレードソードを装備している。

あわせてかなりの重量になるが、障害物も多いし、この機体の機動力は高い、特に問題ないだろう。

射程は向こうに分がある、速やかに接近する必要があるな…。

機体を滑走させ、まこと機の方へと接近していく。

「それに…その機体の弱点はわかっている!」

彼の使う機体、WL-004(AN)は東日本で、空自・海自が共同で開発した新鋭機。
空・海での広域戦闘を想定してセンサー類の感度が、デフォルトで引き上げられている。

その耳の良さが命取りだ…。

脇の計器をいじくり、バックパックの射出口を開ける。

次にいかにもスイッチ、な音をたたせて指を弾く。

北秋型からチャフ・フレア弾頭が上空に放り出される。
多摩、日原、北秋型はそれぞれ同型のバックパックをしょっており、そこに色々便利な物が詰まっているのだ、
この射出時の、ワイン栓を抜いた時のような音がたまらなく好き。

暇があってはシュミレーターで遊んでしまう。(イケナイんだけどね…


そうこうしているうちに小さな破裂音が戦場に花咲く。
辺りが金属片やら熱源やらでいっぱいになる。
こちらのセンサーもオジャンだが、有視界戦闘なら自信がある。

それに、向こうのセンサーはこっちとは比べられない程酷くなっているはずだ。
無論機体のセンサー感度を落とせば対処できるだろうが、初めて使う機体ではそれもできまい。


「耳が聞こえない中どう戦うのか、見物だよ。」


機体がセンサーの闇に溶け込んでゆく…。






~せんとう開始~



「いいか、作戦を説明する。」

おれの言葉に白井が頷く。
とりあえず身体をあっためるために露天に入りながら議論することにした。
テンションも俄然あがってくる。

「いいか、目標は露天に集中している、
今音紋照合(盗み聞き)したところ身体を洗っているウルフ2、つまり赤嶺由真以外が集結している。」

ふむふむ、と相づちを続けている。

「唯一有田忍中佐の居場所が判明しないが…かねてからの予定どうり、まずは目標の注意を入り口側にそらそうと思う。」

「なるほど、で?策は?」

フフン、と鼻を鳴らす。
余裕こそが成し得る所業だろう。

露天のドアに影が映る…。

頃あいだ。

「そこはもう考え済みだ!
銭湯になくてはならぬ必須アイテム!そしてなおかつ万人の心を掴んで離さないアルティメットアイテム!!」

正義のヒーロー的な決めポーズを決める、身体が火照ってテンションゲージが振り切りつつあるようだ。



「さぁさ!牛乳は要らんかね?有料だけどさ!」

曇りガラスのドアがスライドされ、牛乳瓶を入れたトレーを両手に、婆さんが入ってくる。


「おう!!おばちゃん俺フルーツ牛乳ね!」

「あいよ!」

近くまで寄ってきた婆さんがトレーから黄色い包装をされた瓶を取りだす。
そう、これぞマジックアイテム。


「そっちはなんにするね?」

「俺?俺は…フツーの牛乳かな?」

外しにくい紙蓋を爪ではがし取り、一気飲みをする。

…っ・・・っ…っ・・・っ…かーーーーーーー!

まったりとした甘さがたまらない。
この世にこれだけ人を満足させるアイテムがあるだろうか。(反語


「ばあちゃん、コレ女どもにもあげてやってくれねーか?俺の奢りって言ってやってくれ!」

コレが止めだ…。

「あいよ。あっちの旦那達にもやってから行くからね、ちっと待ってぇな。」

そう言って婆さんはリュウ・真田の方へと歩き出す。
奴はコーヒー牛乳派…だったっけか?

空いた牛乳瓶をタイルの上に置く、コトリと音をたてるのがまたいい。
風呂場の中で飲む牛乳は格別だナァ。

「なるほどね、アレがリーサルウェポンってか?」

ちびりちびりと飲む白井が感心したように話しかけてくる。

我が戦略に一点の曇りなし…。

「ってか、よく先にこっち来るってわかったな、女湯に行った後だったら無理だったんじゃねーか?」


ふふふ、

「ばかめ、婆ちゃんってのは男の子を可愛がるモンなんだよ!番頭がどんな奴かも予習済みさ。」

ほへー、としきりに感心し続ける白井良一を横目に、ちょっと得意げになる。


「あとは婆さんが向こう行ったのを確認して突撃すればいい。」

「だな!」


しかし、湯…ったけぇ…。
これは、いいものダァ……。

もやもやっとした湯けむりが夢心地に拍車をかけてくる。




「それじゃ、女湯の方にも行ってくるよ!」

リュウにも売り終わったらしく、いそいそとドアの方へと向かう番頭の婆さん。

「おうよ。」

「覚悟しときなよ?私の見立てだと、あの女性陣は飲むよ?」

どんとこいだぜ、
それ以上のモンを見せてもらうわけだから安いもんだ。
カメラ等の機器は露天の奥に隠してある、このもやでは発見される心配もない。


腰の曲がりかけた婆さんがドアの向こうに消え、影も見えなくなる。


……。

急に帰ってくる心配もなさそう。


「出撃るぞ!」

「ああ!!」

漢には進まねばならぬときがある。
ややもすれば死ぬかもしれん作戦でも、そこに桃源郷が存在するのであれば…。

おれと白井は、湯水をかき分けながら露天奥へと歩を進める。






~総督部地下~

「敵の機種は…?」

新たな追加シュミレーションが開始されて数分が経過する。
敵機の種類もわからない。

音響センサーは街の喧騒で、あちこちから反応が出てきている。
モニターのあちこちに通常車両、走って逃げようとする民間人が表示されている。

「なにもこんなところまで作り込まなくってもさ!!」

もしも流れ弾が当たったら、と思うとぞっとする。そこまで作りこまれていないことを切に願うが…。

この時点でアテになるのは磁気と熱量センサーなのだが…どっちも自動車とかのノイズが入る。

わかりにくい…。


めっちゃ不利じゃねーか?コレ…。


!!?


上空で爆発?

同時に全ての索敵装備が使えなくなる。どこもノイズで完全に埋まってしまった。

チャフに、フレアか!?

っ…、
忌々しく歯を噛み合わせる。


今度の敵はさっきのバーチャルとは違う!
ココまで徹底的にこっちのセンサーを狂わせにくるとは…。

汗で操縦桿が滑る、

が、そんなこともお構いなしにモニターを食い入るように見つめる。
機体の頭部が左右に振られ、情報をモニターに映し続ける。


どこから来る?

普通に考えるなら背後から…、だがその裏をかく、ということも考えられる。

しかもこっちのメインアームは連射が効かない、
仕留めるなら一瞬で仕留めねばこっちがやられるだろう…。

「なら!」


フットペダルを深く踏み込む。

多摩型とは比べ物にならない推力がスカイブルーの機体を持ち上げる。

上空ならこちらも敵を見つけやすい、既に捕捉されているからこそできる選択だった。




地面の一点が激しく光る。



「見つけた!!」

こちらの突然の挙動に焦って発砲したのか、二筋の火線がこちらに伸びてくる。

上空にいれば下が被害を受けることもない。

…所詮はシュミレーションなのに、もうクセだな。

機体を削る乾いた音が響くが、大したダメージは受けていない、
肩部シールドにあたったようだ…。


足の動きが激しさを増し、空中での機動が素早くなるにつれ、機体背部の2枚のウイングバインダーがオートで展開する。
上空での姿勢制御をサポートしているようだ、いつか多摩型で大ジャンプをした時とは大違いの安定性能。




充填済みのレールガンを敵機に向ける、



最大出力で射出された実体弾がにもないアスファルトを大きくえぐり土煙をたてる。、


「外した!?」

こちらが撃つよりも早く建物に隠れた、
思ったよりも素早い…、本当に北秋型か?


ノズルの温度上昇を示すサインがパネルに点滅する、
そういつまでも滞空してはいられないか…。

目を下方カメラに移す。

……!

すぐ近くに空き地がある、

一旦休ませよう…、
この機体、かなり余裕のあるスラスターを持っているようだが、やはり長時間の連続噴射では熱が籠ってしまうようだ。


大きな地響きが土煙を巻き起こす。

3辺をビルで囲まれた空き地、ここなら守りやすいだろう。
それぞれの窓には若干ながら人影が見え隠れする。

先ほどカラになったパックを排出、新たに装着する。
残弾は残り3発、

相も変わらずセンサー類は騒がしい、本命の影すら見えない。


「まだか?」

どれだけ時間が経っただろうか、たった数秒が永遠の時に感じられる。


!?

装甲をなでる瓦礫の音…。





影…?
自機の影が急に大きく、いびつになる。




これは…!?


「上か!!」

背後のビルの上から!

落ちつけよ、状況は…、
確実に仕留める気なら、敵はブレードで近接戦を挑んでくるはずだ。


操縦桿を全力でひねり、全速で振り向かせる、

親指を、武器と連動したスイッチに当て、レーザーブレードを振り向きざまに薙ぎ払う。

瞬間火力を最重視されている兵装ゆえに長時間の使用はできない、が、一瞬であるあらば、


「負けはしない!!」

ブレード発振器から形成されたレーザーが空を斬り裂く。


一瞬だった…。

どうなったかはもう詳しくはわからない、無我夢中だったんだ。

ただ、切り落とされた敵機のブレードが遠くのコンクリートに突き刺さり、北秋型が道路の方向に流れていった、
そして、電力を使い切ったパックが大地に沈んだのは確かだ。



態勢を崩し、倒れ込んだ北秋型がアサルトライフルを構える。

「!!」


とっさにフットペダルを踏み込んだ……


はずが、足が動かない。
正確には動かせなかった…、今ここをどけば…後ろのビルは……。


至近距離から放たれた55ミリが雨霰のように降り注ぎ、前面装甲をはがしていく。

コクピット内が轟音に包まれる。

「しまった!!」

ダメージパネルが一気にレッドゾーンに達し、頭部が黒く塗りつぶされる。
頭部が失陥した…、それと同時にモニターのほとんどが消えてしまう。

今見えるのは肩部のサブカメラに腰部の下、後部カメラのみ…、




そうか、これはシュミレーションだった…。

…気にする必要は、ないんだった…。

瞬く間に各部位とのコネクトが途絶え、シュミレーターが停止する。
撃墜、されちゃったみたいだ…。




俺は首を横に振りながらシュミレーターから出る。
目と鼻の先にある情報収集機、入る前までそこにいた加藤中尉はそこにはいなかった。

「あれ?中尉?」

「ここですよ!」

背後から彼の声、
振り向けば彼もまたシュミレーターから出てくるところではないか。

「アレ?なんでそこに?」

「あら、気付かなかったんですか?さっきの北秋型は僕ですよ!」

ああ、
なるへ~、どおりで前の清-08とはダンチなわけだ。
人が操ってたんじゃあナァ…。

「だけど、あんなに強いんだったら中尉の方が向いてるんじゃない?テストパイロット。」

なにか照れくさそうに頭をかきはじめる加藤学。

「ふふふ、ありがと。
でもね、僕、実機になると途端に操縦できなくなるんだ。だからこいつのテストパイロットは無理なんだよ。」



「シュミレーターではいけるのに?乗り物酔いが酷いとか…?」

「さぁね、特に乗り物に弱くはないんだけど…
と言うより、乗り物に凄く弱かったらシュミレーターも無理でしょ!」

ははは、確かに…、
俺はこらえてるけどな。

「とりあえず今日は夜分遅くにありがとう、手間、かけちゃったね。貴重なデータは今後に生かさせてもらうよ。」

そういや今、夜だっけか…。
シュミレーションが真昼間だったもんだから、時間感覚が一瞬ずれちまったぜ。
夜だと自覚し始めると、急に身体が眠気を探し出してくる。

「そうそう、君の部隊員たちはこの近くの銭湯に行ってるはずだよ、まこと君も疲れ落としてきたら?」

銭湯か…大好きだけど、今は眠いんだ……。(それに財布が…

「タダだよ!」

シャキーン!!

なら話は違うな、無料ときたら行くしかねぇ、どんなに疲れていてもだ!!

差し出されたチケットを掴み、もと来た道を駆けだす。
ここのセキュリティ、出る分には身分証等は要らないようだ…。







シュミレーターの騒音もなくなり、静まり返った研究施設。

「元気だね、彼…。」

やはり彼が一番向いているかもしれない、
手にした複数の資料のうち、1枚を除いてシュレッダーにかける。

あとは司令に連絡すれば今日の仕事は終わり、僕もゆっくりしよう…。






~決戦(銭湯)~

「どうだ!?」

向こうの壁に耳を当てている白井、ヤツに状況を聞く。

「……イケルな!案の定牛乳婆に喰いついてやがる。」

よし、あとは突撃あるのみだ。

「行くぞ!油断するなよ!!」

「了解!!」

露天の岩によじ登り、裏の林とを区切る竹製の柵を乗り越える。
あとは向こうへと歩くだけだ…。

「ここが正念場だ、ぬかるなよ?」

「当たり前だぜ!」

男湯、女湯を隔てるベルリンの壁。
今まさに、それを乗り越えるのだ。(迂回して

壁の向こうを念のため確認する。

……いない、な。

よし、牛乳飲み放題が効いたようだ。
財布は寒くなるが心は熱い!

「行くぜ!!」

迅速に柵を乗り越え、音・波たてないよう静かに露天に滑り込む。

しばし、女湯に浸かる一時を味わう。

これは、一人の男にとっては小さな1歩だが、漢達にとっては偉大な飛躍である…

コレわ歴史に残るな…。



ワレ・モクヒョウ・ニ・セッキン・セリ
アト・ニ・ツヅケ…


ハンドサインを送り、柵の向こうで待機している良一に行動を促す。

そろそろ目標が露天に戻ってくるはずだ…。
バックパックから双眼鏡を取りだし、偵察する。

…、湯けむりのおかげでよく見えないか。
とはいえシルエットはわかる、

興奮に胸が高まる。

お?

おおお?

おおおおお?

タッパの小さな、しょっちゅう動く奴・出るとこ出て締まるとこ締まってる奴・あとは……、

ちっ惜しむらくは靄ではっきり見えないことだが…まぁパソコンでデータ修正すれば何とかなるだろう。

いそいそとカメラで撮影を開始する。

「で?小野田君の本命は誰だ?」

「本命?そりゃ嶋野桐栄さんに決まって………って?え??」


背後からした声、どう考えても白井良一のモノじゃあない。
双眼鏡にかろうじて見える人数は3人、となると……?

ゆっくり振り返ると、身体にタオルをビッチリ巻いた中佐が湯につかっていた。


タオル巻いて湯に浸かるのはマナー違反だお…。
てか汗がとまらない、
………。

「中佐…?なんで、ここに?」

おれは恐る恐る聞く、まだ岩の上にいる良一も口をパクパクさせている。

「いや、ただひとりで温まっていたら、君らが見えてな、中々いい作戦だ…。」

…中佐の顔が赤いぞ、キレてる!?キレてるよね!?
まずい、非常にマズイ…。

ここでバラされたら間違いなく死亡する。
ダブルバイオレンスで間違いなく片道切符が手に入っちまう!!


「わっ、わわっ!!」

高い水柱と水音をたてて、良一がお湯に落ちる。
ビビって滑りやがったか、コノヤロ……。




「…?忍さぁーん?大丈夫ですかぁ?」

聞きなれない声がする、恐らくアレがウルフ小隊員、赤嶺由真だろう、

ってマヂメに分析している暇はないじゃねーか!!
激しくせき込む良一の口を押さえ、とっさに岩陰に隠れる。


「なんでもない!少し足を滑らせただけだ!!」


??

「気をつけてくださいねー!」

「心配掛けてすまない!」

????

なんで?
有田中佐が向こうの女性陣をあしらってくれた・・・?
どゆこと?

「予め一人でいたいと彼女らには言っておいたからな、私の傍にいればバレなくて済むぞ?」

…悪魔的な笑顔で顔近づけないでください、ホント頼みますから。

「なんでですか?」

ぐったりしている良一に代わって中佐に聞く。
なにかよからぬことをたくらんでいるに違いない。(おれらのコレはよからぬことではない

「なに、ただ此処で潰すよりもいじった方が面白いと思ったからだ、気にするな。」

…、
鬼か、このおばはん…。

「どうする?私の写真でも撮るか?」

腕を頭の上で組み、悩殺(?)的なポーズをしてくる。

ぬぅぅぅぅ、思ったよりもいい体つきしてやがる…、
さっき見えた一番ムチ×2な奴よりはアレだが…オバンのくせしてなかなか…・…。
だが…負けん!おれにはおれのポリシーがある。おれは…無防備なシーンが撮りたいんだ!!


「誰が撮りますか!オバサンなんて!!」

「お、オバ…!?」

悔しさまぎれに発した一言、
まさかそれが死亡フラグだったなんて……。

(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗
(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗
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(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗
(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗(汗


「あ…あの?忍中佐・・・?」

彼女の周りの湯が大きく波紋をたてる。
湿っているはずの髪が怒髪天になっている…、

ちょ、コレ…ヤバくね?



「わ、私は…私はまだ28だぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」




ありた しのぶ が あらわれた !!

コマンド

たたかう            けんた          りょーいち
どうぐ            HP 30 / 30     HP 10 / 40
▶にげる           MP 15 / 50      MP 2 / 30
どげざ             

頭の中にRPGのせんとうBGMが流れる。


「逃げるっきゃねーーーーー!!!」

完全に噴火している。

土下座なんてしたところで人生・The・Final的な感じで即終了になっちまう!
女性に年齢ネタは禁物だが…ここまでキテルとは思わんかった…、

起きた良一と共に湯をかき分け、出口へと向かう。
間には女連中がいるがもうかまやしない、突っ切って逃げないと死ぬ気がする…。

ええい、足にまとわりつく湯がわずらわしい!

「うわ!!?ケンタ!?」

「なんで!?白井が!?」

慌てふためく女性陣のど真ん中を突っ切る。

激しい水しぶきが辺りを覆う。
恥ずかしそうにタオルで隠すその様子、その反応が堪らんのだが…、

「今はそんなこと言ってられねぇぇーーーーーーーーーーー!!!!」

背後に死神が迫っているのだ、立ち止まってホンワカしている暇などない。

いかに危険な状況とはいえ、カメラだけはしっかりと握る。
白井と共にドアをぶち破り、室内の浴室になだれこむ。

女湯のドアは木製のようで、蹴破っても留め具が外れたぐらいだ、すぐ直せるだろ…。

転がるようにタイルの上を走り、滑り、駆け抜ける。

「待たんか貴様らあぁぁぁぁ!!!!」

つるつる滑るタイルと焦りが心拍を跳ね上げる。

ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいって!!

確実に指一本だけでどっかの冷蔵庫粉砕できるって!!
戦闘力、桁がヤバいって!!!



やっとの思いで更衣室に飛びこむ。

まだある程度距離がある。

「良一!なんかでドアを固定しろ!!これじゃ逃げ切れん!!」

即座に白井が近くにあった清掃用のモップで、戸につっかえ棒を立てる。
この辺の反応の早さは軍ならでは、と言えるか。

「よし!これなら…」




ゲ!!

凄まじい破砕音が脱衣所に響き渡る。

砕け、飛散した木片が板打ちされた床に落ちていく、


安心したのも束の間だった、怒りに震えた彼女が徐々に姿を現す。
どうやって逃げろと…?
ためらいもなく備品破壊したぞ……。



「健太!破られた!!逃げよう!!」

「言われんでも逃げるわ!!!」


こうなったら逃げる先はただ一つ、

「外行くぞ!」

タオル一枚腰に纏っただけだが、逃げ切るにはそうするしかないだろう、男湯に逃げたところでフクロられるのがオチだ。

それに、少しでもオバンに理性が残っているのなら、女がタオル一枚で外へ飛び出す、なんてことはしない……はず。



折れ曲がった通路を駆け、のれんを抜ける。

視界のはしっこで飲んだくれているおっさんどもが妙に憎たらしい。

あと少し、たった5m…

隣で派手にこける良一。
足の裏が濡れたまま全力で走ったからだ…、足ふきマットはちゃんと踏んでおけって…。

キミの勇姿は忘れない…(ブワッ

出口までほんの少し、
背後からのプレッシャーが近づいてくる。

ほんのちょっと、あと1歩…

おれは出口に向かって飛びこむ。

床を蹴った体が宙を飛ぶ。


「小野田ぁぁぁぁぁぁ!!!」

背後からも床を蹴る大きな音が聞こえる。

止めを刺しに来たか!?なんとか逃げねば!!






「さぁて、あったま・……ってえ?」

閉まっていた戸がスライドする。

え?

向こうにいるのはモヤシ……。

「ちょ!?モヤシ!どけって!!」

「へ?」

何が起こっているのか全く読めていないモヤシ、どうすることも出来ずにただ立ち尽くしている。

恐らく、ヤツの目には飛び込んでくる2人が映っているに違いない。



ゴシャッ!!

まさに擬音どおり聞こえた鈍い音。

おれの飛びこみがモヤシにヒットした音ではないらしい。

あっ!?

右手に持ったカメラがはずみで吹っ飛ぶ。
カメラが飲んだくれの方向へ…、一瞬一瞬がスローモーに見える。


コマ送りに見える世界の中、上では足の裏を、顔面で受け止めているモヤシ。
オバン…その格好で飛び蹴りとは、やるな…。

モヤシを蹴り飛ばした反動で中佐は着地、タックルする形になったおれはモヤシと共に表の土の上に放りだされる。

もう見えないが、機械が壊れる音がする。

カメラが…(ショボーン。


「し、忍…さん、げ…元気そうで、なにより…です。」


何言ってんだ?モヤシ…。
元気過ぎて困るぐらいだっつーの!

「し、篠田!?すまない!!」

モヤシを心配して駆け寄る中佐の声も足音も、俺には死刑執行のカウントダウンにしか聞こえなかった。






任務、失敗……。










エピローグ

「なんだ?そりゃ…?」

もう何杯目になるだろうか、杯をテーブルに置き、勝男がワシに聞いてくる。

「知らん、フィルム…みたいじゃがのう。」

ついさっき足もとに転がっていた小さな円筒形の物体、カメラのフィルムのようだ。

「さっきの騒ぎと関係あるのか?」

アレだけ飲んでまだまともに会話が成り立つ、というのは驚異的なのだろうか。

「さあな、興味もないわい。」

「だな!!」

手にしたソレをそこらに投げ捨てる。
どこか狭いところにでもハマったのか、小刻みにはねかえる音が聞こえる。

「ホレ、お前も飲むか?」

小皿に熱燗をなみなみと注ぎ、もうひとり(?)の飲み仲間に差し出す。




その晩、


鳩の舌鼓(鳴き声)と2人の断末魔が銭湯に響いたという…。






 銭湯盗撮大作戦   決算

女湯露天ドア   修理費 31,200円
女湯脱衣所ドア  修理費 66,150円

牛乳代 男湯   100×4 400円
    女湯   100×42 4,200円
カメラ修理費       36,758円
            
計           138,708円也(健太、良一持ち)


         作戦失敗



[26825] 前書き、後書き集
Name: ヒロシキ◆fbfd4583 ID:8e76483d
Date: 2011/04/13 12:03
色々ありまして全前書き、後書きをこちらにコピペしました。

字数数えたら6,000字近くて…消すのモッタイナイ!と思ったのでこっちに移動です。



第1話前

クリックしていただきありがとうございます。
最後まで読んでいただけたら幸いです。

初投稿なうえ、ミリタリーモノということで、そっちのファンの方々からすれば
☆SHINE★ボケナス♡
ってな感じですが、

HAHAHA、ださっ(プッ

という風に鼻で笑って下さって結構です。
用語…あんまりわかってないけど使いたかったんだふ……。

読んで…みて下さい。

ちなみに題材がハポン(日本)ですのでどうしても漢字の名前になります。
ゆえに実在しそうな名前になってしまい非常に不安です。

とりあえず実在の個人、団体とは一切関係ないモノにしようと努力しました。

実在してたらごめんなさい、ゆるして…。



第1話後
ありがとうございますぅ~。
ここまで読んでくれたあなた!
多分10の指に入りますよ、確信してマス!

いかがでしたか、
”いかが”なだけに最後のメニューも烏賊でしたが……。





サーセン。
まぢサーセン。
もう調子こかないんでゆるして下さい。

完全に次回あります的な臭いプンプンしてますが、エピローグ使っちまったんでここで終了してます。

当たり前だ!!カスが!!

という以外の思いを秘めている方、どうぞ感想の方に…。
や、批判な方もどうぞどうぞ、的確な叩きは上達の1歩だと確信しております(多分。

また続き読みたいと思われた奇特な方、いましたら感想にでも”キボンヌ”(古いww)してください。

あ、作中主人公の名前がちゃんと出ませんでしたが、

篠田 まこと です。

名前は平仮名、真であり、誠であれ、ということですね。

聞いてねぇよそんなこと、というあなた!

ひらにスミマセン。


え~此度SS投稿掲示板に出馬しました、ヒロシキ、ヒロシキでございます~。SS投稿掲示版の明るい未来のため~、どうか~、どうか清き一票をお願いいたします~。











どこの政治家やねん!!??

という突っ込みをしてくれたアナタ!
才能あります。

その能力を大事にしてくださいー。

ではでは。

ほんにありがとうございますぅ。



第2話前


引き続き2話目となります。

第2話ページ見てるってことはある程度興味もってるってことッスよね!
信じていいっスよね!!

意外と根性出してみれば何とかなるモノで、ゴロ寝ゲームしながらでも1日で書き切れました。

前回適当に書いた、根性が世界の半分だ的な発言は間違ってはなかったのかと。
感想版の方のおかげでしょうか。(嘘でも力湧きます


ハイ、
先に申し上げます。

ごめんなさい。

前作の流れで行くと完全にギャグ小説化しそうだったので、
最初ギャグ、
途中シリア…ス?(疑問形
〆ギャグ。
の構成にしました。

全然そうは見えないぞボケ!
と感じられた方、サーセン。

しかも今回おニュー装備のお披露目はありますが一切戦いません。
さらに正確には1.5話目というのが正しい位置づけになってます。
オマケに勢いで書いたので、見直してないです。じゃから「は?」的な部分も浮き彫りになってるかと存じます。

あと先の見通し考えて書いてませんので、更新が超遅くなると思います、
生温かい目で見守っていただけたら幸いです。



第2話後

いかがでしたか?

若干今回も烏賊ネタで天丼しようと思ったんですが……
フクロにされそうなんで自重します。


はい、
で、感想箱で、あえて聞かれたんですが、
あえて答えようと思います。(ガチで)

読むのだりぃという方、一気に下の塊ぶっこ抜いていいです。

Q1…WLが対地攻撃、対空攻撃に優れているのは何故!?

A…対地攻撃からいきますが、代表的な戦車VS WLを考えます。まず戦車VS戦車を考えてください。
どっちも平べったいっすね。こいつらで撃ちあったとします。戦車のタマが命中しうるのは敵戦車の全面のみです(迫撃砲等は考えません)。無論戦車は前面装甲がフツーに分厚いわけですから(被弾しやすいからね)命中しても粉砕できるとは限りません。しかも目標の晒している体躯が前面だけなので命中率も自然落ちていきます。それに射界にも限界があり、対空用の砲塔がないと航空機に手も足も出ません。一方WLは約10mです。ライフルは約6m位置から撃たれるとしましょう。戦車と比べて高い分相手の天井が見えます。往々にして戦車の上部装甲は比較的薄い(被弾を想定していない)ので撃破できる確率が上がります。しかも見えるのが前面及び上面ですので少なからず命中率も向上するでしょう。
「それは向こうも同じでしょ!!」
というアナタ!
MS…もといWLはマニュピレーターがあります。故にあらゆる戦況に対応できるのですが、「シールド」というものも存在します。なにも陸戦型ガンダ○のような取り回しを優先したシールドだけがシールドではありません。しかもこの作品におけるWLは若干ながら飛ぶことができます。空中への攻撃手段が乏しい戦車に対し、そこそこのサイズのシールドを装備していれば、WLがタンクに負ける可能性は皆無といっていいと思います。


…長ーなおい。

次、対空攻撃がなぜ優れている!?
はい、この世界においてミサイルによる誘導攻撃はかなり難しい(ステルス装甲ですね)ものとなっています(誘導しないわけではありません)。航空機は特性上常に直進します(ヘリコとか除く)、故にじっくり照準をつけるというのが困難だと考えます。
ちゅうことで航空機にWLが落とされる可能性は0ではありませんが低い確率と見ていいでしょう。
一方で、WLから航空機に関してですが、常に前進するという特性をもつ航空機であるがゆえに予測射撃がしやすいでしょう。ただ航空機は3次元的に飛び回るので苦労するかもしれません。無論高高度からの絨毯爆撃にたいしては長距離ライフル等を装備しない限りWLは無力と言えるかもしれません。

以上、全般的に見てWLの攻撃力は対地、対空どちらに対しても有効かと思われます。

長すぎるよ…興味あった人もどっか行ったよコレ。

でもまだ終わりじゃナーイ。

Q2、WLが装備変更したら戦艦沈む?ありえねくね?
作品を無駄にリアルにする、それが俺の目標です。
コレの発言はマコトによるもので、学者、ナレーターによるものではありません。
「じゃあなんぞや?」
つまりある種の噂話と言えるでしょう(無責任)。
いわば巡洋艦を無力化できるほどの弾頭が開発されたとして(ハープーンにできますから通常弾頭でもできるかと思います←曖昧)、その実験に立ち会った者が弾頭の威力をあちこちに宣伝します。

上層部には正確な威力が伝えられたとしても、一般兵以下の訓練生に正確な情報が行くという保証はありません。噂は噂を呼び、尾ひれ羽ひれいっぱい付いたのかもしれません(苦しい…!?。

まぁ分かりやすく言えば宇宙○紀のシャ○・アズ○ブルの撃墜スコアと一緒です。
5隻の戦艦がどーとか行ってますが3席はサラミ○です。

生き残ったあなたは勇者です。






最期…だいぶ苦しかった気もしますがこじつけだけなら右に出るものはいないと自負しております(左は定かではない。


はい、以上です。

少しでも楽しんで読んでいただけたならもう嬉しいことこの上ないです。

うんちく臭くなってごめんなさい、
「俺のこじつけ最強!!HUuuuuuuuuuu!!」
という方、よろしければ感想にお願いします。


ちなみに前回あんまり活躍しなかった雄二氏をそこそこ登場させてみました。

機会があれば皆のプロフィールも晒したいと思います。


ではでは

ご愛読ありがとうございます―。



第3話前前


ちわっす。

毎度ヒロシキでござんす。

はてさて、実は感想箱の方に…

「おまえの作品なに?Wの使い方分かってんのかタコ!」

というご指摘がありました。
いやはや、ついに来てしまいましたよ!!

正直にいいます。






知りません(ローリングバクテン宙返り土下座





完全にフィーリングで付けたいときに付けたいだけ付けてましたお。

世の中根性で半分~とうんたらかんたら述べましたが、だぶりゅー は根性がわの半分には含まれなかった模様でふ…。


まぁ、ご指摘した方がこのページを開くことは2度とないとは思います。
がしかし、少なくとも1人以上の方に不快な思いをさせてしまった以上お詫びしなければならないかと思います。

この場を用い、謝罪させていただきます。

申し訳ありません。



ハイ、
さて、過ぎたことは気にしない性質(タチ)ですので今回の概要いきたいと思います。(Wは使わないようにしました~♪)

今回は各キャラ(主要キャラ&登場回数少ないキャラ)の掘りさげをメインに作られております。

(そうしないと後々「は?」となりやすいからでふ、ガマンしてチョ。)
故に戦闘パートは存在いたしません。

ロボ描写見たかった方、

サーセン。

ただ次回はガチシリアス(?)に突入する可能性が大ですので、ロボ系バトルも自然多くなります。


なお、今回のみ、試験的に主人公以外の目線で、オムニバス形式で話が同時展開していきます。
故にその場での視点となるキャラの思いを綴っております。
(つまりあっぱー(頭が)的な描写が非常に少なくなっております。)

ですので、前回までのようなウケ狙いな部分が少ないです。

楽しみにしていた方、申し訳ありません。
次回シリアス編展開予定ですが、できる限りウケポイントを設置していきたいと思っておりますので、






見捨てないで……。←結論



今回のUpはプロローグのみですので約3000字で収まっています。
細かい時間などにどうぞ。

(参考…1話約12000字、2話約9000字)



前書き長いですがまだ続きます。

俺が足りない脳みそ振り絞って考え出した題名。

ggってみました。

「なん…だと!?」

ボトム○が真っ先に出てくるじゃありませんか!!??

しまったぁぁぁぁぁあ!!!パくられたぁぁぁ!!!(違います。

万が一ボト○ズ的な何かを期待して読んでおられた方…。

サーセン、ホントサーセン。

俺ボ○ムズノーマークでした……。


長くなりましたが、どうぞ、プロローグをご覧ください。


第3話前後

すまねぇぇぇ!!楽しみにしてた皆ぁあぁぁぁぁ!!!!(居るのか!?居るよね!?
今日は大学行ってたんだ――――!

決してNEET(通称NT)じゃないんだ!
俺はオールドタ○プだったんだよ……。

次は期待に添えるようガンバル!!(キリッ



第3話後前

ヤバい…もう毎日かあさんならぬ毎日こうしんが終わった…。


なんかズルズル更新間隔が開きそうなヒロシキです、ちわっす。



てか今思った、このSS板ツワモノ大杉…。
なんだPVウン十万って……。
バケモノか…。
基本性能の差をまざまざと見せつけられた瞬間であります。





さてさて、今回は予告通りガチシリアス(?)展開を目指しました~。
それはなぜか…。


ネタがないからです(キリッ!

ぶっちゃけ現代日本を模写って書いているんですが……、

あんまりおおっぴらに戦闘できないジャマイカ!!!!(気づくの遅い
どうする!?アイ○ル~♪的な感じだったのが3日前。

じゃあ自分を極限に追い込もうと、1話完結型の話じゃズルズル逃げちゃうだろうと(俺の心が)。
ちゅうわけで逃げないようにババッとデカい話を持ち上げた次第でございます。

おかげでロボ描写ばっか……。

意訳)ギャグがなくなってしまった…。

さすがにヒト死んでる中で主人公にスーパーバカさせるわけにもいかず…。
しかもかなり考えないで設定(警報その他)練ったので粗くてもイヂメないで…。

広域での戦闘を描写しているため、セリフのないキャラはトコトンないのであしからず。

硬めな文体になっちゃった気もするけど…、




見捨てないで……←またかい。


第3話後後

どうだったでしょ。

ナイワーかHuuuuuu!かのどっちかな気もしますが…(圧倒的に前者寄り)。

なんで味方が攻撃してくんの!?バカなの?死ぬの?

的なお考えをお持ちの方、

次回明かそうと思ってます…、お待ちください。

や、何も考えてないとかそんなんじゃないよ?決して!

…信じてない視線を感じる今日この頃です。


読んでくれてありがとうございますー。
また近いうちにお会いできるといいんですが。


第4話前前


ちす、最近前書きが言い訳だらけになってるヒロシキです。

根性とひらめきだけで乗り切ってきたSS、最近精神ポイント足りなくて危険な状況にあります。


前話で急速に話を展開させたせいで
以降にのんびりした話が入れにくくなってしまいまして…。


仕方ないのでチョッチ無理してぶちこみました。
このUPだと振りだけですが、がんばって人間を書きたいと思います。

(ロボバトルないです今回…)


てかなんでいきなりそんな人間関係?バカじゃないの?


と思われる方多いかと存じます。


ぢつは感想の方に…

>戦闘パートとか結構面白かったので~
>戦闘パートに移ると~
>ロボ戦が~


という感じの方がいらしまして…、

や、嬉しいですよ?
いっちゃん不安だった部分が以外と高評価で!!

だがbutしかし、

「俺…キャラが上手くかけてないのか!?」

ってなりまして…、

ツンデレデレな桐栄、エロ担当健太、ブレーキ役リュウ、潤滑剤、雄二。

こいつらを使ってなんとかせねば……と思ったのです。



長いですがもちっとお付き合いください、

加えてですね、横須賀基地とか出しちゃいましたけど実在のものとは一切違う、ということを念頭においてください。(沼津には基地、施設はありません多分…)
間取りも設定も全部テキトーですので。

加えて、かなりアンチョコなストーリー展開になりそうですが…というかなってますが、読んでいただければーと思います。

感想書いてくださった

葛原氏、ひらめ氏、風鈴氏、ブラボー6氏、nat氏、REX氏、(記入日時順)

ありがとうございます。



第4話前後


はい、まぁアリ…でしょうかね?
タイトルにロボモノって堂々書きながらロボ出てこない話があるっつーのは。

まぁ、そんなこんなでいつか書いてみたかった温泉(銭湯)話、次回堂々完結!!

前回セリフ出し忘れた嶋野(小)、なんだかんだであんまり登場してない健、+ダブルオヤジ、名もないウルフ小隊の面々で頑張りたいと思います。

どんな批判が来てもへこたれない勇気!!
大事ですね。

ロボ系期待してた方サーセン。
次はチョッチロボ入るんでゆるして…。



第4話後 前後合同

紆余曲折あってここに前・後書きです。
詳細は感想箱の方をば…、


若干健太君のフェチズムというかなんというかはわたしと共通しているところがないこともないです。




ちょ……変態を見る目で見ないでください、頼みます。

そんなこんなで書ききった銭湯戦闘編、どないだったでしょうか。

おそらくココは野ざらし状態になっていくと思われますが、
たまに、

「こんなバカ居たっけーハハハァ!」

みたいに思っていただければ、と思います。



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