2052年 4月25日 深夜3時
日本 東京都 渋谷 高級住宅街
「ようこそ我が館へ……」
年配のタキシード姿の小太りの男が、サングラスをかけた茶色のスーツ姿の男を自室に迎えた。
部屋はかなり広く、奥には窓が一つある。さらに天井には円形の天窓がある。 窓際にはベッドがあり、部屋の中央には、向かい合うように置かれたソファーが2つ、その間には長方形型のテーブルがあった。
「どうぞ、おかけになってくだされ。遠くからおいでになったのです。お疲れでしょう?」
「……有難う御座います」
二人は向かい合うようにソファーに座った。スーツ姿の男は、手に持っていたアタッシュケースをテーブルに置き、それを開けた。
「……フフフ。計画通りですな」
中には多くの一万円札の束があった。一束50枚ぐらいだろうか。その金は、 この男がスーツ姿の男が所属するアメリカンマフィアに送る麻薬との交換金であった。
「麻薬の方は、後日にそちらへ渡しますので、少々お待ちを」
小太りの男が、不気味な笑みを浮かべながらそう言った。
部屋には照明はついておらず、代わりとなっていたのは、天窓からの月光である。その月光が小太りの男の笑みをより一層恐ろしく見せた。
だがその時……
ガッシャーン!!!
突如、天窓が派手な音を出して割れ、その直後に銃声が鳴る。スーツ姿の男の脳天から鮮血が吹き出る。
「うぐぉっ……!」
スーツ姿の男がソファーにもたれかかったと同時に、ガラスの破片とともにテーブルに何かが降ってきた。
「……少年!?」
男が見たのは、少年だった。
身長は165cmぐらいで、普通の体格をしている。黒いシャツ、黒いズボン。その上には、黒いロングレザーコートを身に纏っている。少年の髪は黒色のショートヘアで、天窓が割れたことで強くなった月光が、それをより一層際立たせた。
一番気になる点は、その少年の右目だった。左目は黒であるのに対し、右目は鮮やかなルビーのような真紅色である。
「オッドアイ!? まさか貴様、『BLACK WALTS』の……!!」
「……大当たり」
少年は悪魔のように微笑むと、両手に持っていた黒と白の自動式拳銃を、小太りの男の頭に突きつけた。
「賞品は鉛球だ、クズ」
「ちょ、待っ――」
男の言葉が終わらないうちに、少年は引き金を引いた。男が頭から鮮血を撒き散らしながら、後方にぶっ飛んだ。
少年は二丁の拳銃を腰についているホルスターにしまい、ズボンのポケットから黒色のケータイを取り出す。フリップを開き、ケータイを耳に近づけた。
「こちらキース。対象殺害。修羅、周囲の状況は?」
「OK、キース。先程の銃声を聞いて、ガードマンがそちらに向かっている。かなりいるぞ」
「……少し夜更かしになりそうだ。先に帰っててくれ」
「えっ!? おい、ちょっと待て!! キ-ス――」
キースという少年は、仲間の修羅という者の言葉を最後まで聞かず、フリップを閉じた。
キースの表情は、密やかに微笑んでいた。目は笑っていない。そして、部屋の出口の扉に向かい、左目を片手で押さえながら呟く。
「……さぁ、パーティーはこれからだぜ……」