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東京電力、汚染がれき除去の「秘密」で記者会見紛糾

2011年04月11日
(約9400字)

 東京電力福島第一原子力発電所は、建屋を破壊され、外界に放射性物質を放出する異常な事態に陥っている。4月10日、原発の危機に東京電力はどう対処したのか。東京都千代田区内幸町の東京電力本店から報告する。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽関連記事:   連日連載・東京電力本店からの報告


 ■がれき除去はリモコンで

 10日午前11時、広報部の寺澤徹哉部長と原子力設備管理部の3人の課長、そして、見慣れない中年の東電社員による記者会見が始まる。

遠隔操作重機でがれきをコンテナに積み込んでいる様子=4月6日撮影(東京電力が4月10日に記者に提供した写真)

 放射性物質で汚染された瓦礫(がれき)を少しでも早く取り除くため、遠隔操作(リモートコントロール)で重機を動かすシステムが導入されつつあると東電側から紹介される。雲仙普賢岳や新燃岳(しんもえだけ)など、火砕流の恐れがあって人間が近寄れない場所で使われたことのあるシステムだという。

 この件を説明するのは主に、これまで記者会見に登場したことがないと思われる東電社員。その説明によれば、油圧ショベルやブルドーザー、クローラーダンプなどそれぞれの重機にはカメラが載せられている。放射線の少ない場所に止めた車の中で、モニターの映像を見ながら重機を操作する。そして、容積4立米のコンテナにがれきを入れ、運び出す。大成建設、鹿島建設、清水建設の3社が共同企業体(ジョイントベンチャー)を組んで作業する。6日に現地で試運転して、安全に重機が動くことを確認したという。

 がれき除去に自衛隊の戦車を使うという話が以前あったが、結局、戦車を使うことはなかったという。

 ■格納容器まるごとの冷却も検討

 10日午後6時36分、原子力・立地本部の松本純一本部長代理の記者会見が始まる。

後半が大荒れとなった東京電力の記者会見=4月10日午後6時46分、東京都千代田区内幸町の東電本店3階で

 質問に答える形で、松本本部長代理は、原子炉圧力容器の炉心だけでなく、その外側にある格納容器をもひっくるめて冷却の対象とするアイデアを検討していることを明らかにする。

 ――あすで事故から1カ月になるということで改めてお伺いしたいんですが、現段階で「安定的な冷却」を実現するまでにどんな課題とか困難があると考えておられるのか? どういったアイデアが浮上しているのか?


 現在は、いわゆる注水、あるいは、コンクリートポンプ車からの放水によりまして、水を注入することで冷却を確保している。注水したものが蒸発することによって熱を逃している。この方法から、循環型――原子炉内部の水を熱交換器で除熱するというタイプ――のほうに切り替えていきたい、切り替えることが「安定的な冷却」であると考えています。(注入型から循環型への切り替えにあたって)どういった点が困難なのかという点については主に2つあると思いまして、

 一つは、タービン建屋の地下の溜まり水に高線量のもの(高い放射線を出す水)があるということで、なかなか現場のほうにスムーズにアクセスできていない、ということが第一に大きいのではないかと考えております。現在、タービン建屋の溜まり水を復水器ですとか集中廃棄物処理施設のほうに移送することで作業環境を改善するとともに、原子炉建屋から(タービン建屋などに汚水が)漏れてくるところを早く見つけて止水をしたい、というところが1点目でございます。

 2点目の「困難さ」と考えられますのは、やはり、原子炉の中や周辺の機器の状況がはっきり分かっておりませんで、どういったことで循環型のラインをつなぐ、構成するかが難しい点ではないかと思っています。海水系への除熱(外部から取り入れた海水で内部の熱水を冷やすこと)につきましては、代替の海水ポンプ(の仮設)でありますとか、並行してライン(配管)の確認等を行っておりますけど、最終的に、原子炉の水をそこの熱交換器(海水と炉水を薄壁ごしに間接接触させて炉水の熱を海水に逃す機械)に循環させるというようなところを、どういったルートで構成するかというところが難しい点だというふうに思っています。原子炉圧力容器だけでは難しくて、格納容器(圧力容器を包むように圧力容器の外側にある容器)をまるごと使って循環させるという方法もあろうかと思いますが、現在、その方法について検討している段階でございます。

 以上2点が現在、私が考えております「困難さ」ではないかと思っております。現在、採り得るオプション(選択肢)をさまざま検討している段階でして、いつの段階で「これで行く」あるいは「工事が終わる」といった時期的なことは現時点では申し上げにくいと思っています。


 ――格納容器まるごとで(循環型冷却を)考えられるか検討したいというお話がありましたが、もう少し具体的に教えてください。


 採り得るオプションを何通りか検討している段階ではございますけれども、まずは、発電所でそもそも持っております「残留熱除去系」というのが使えるのかどうかを確認していきたいと思っています。こちらは圧力容器の中の水を直接引き出しまして熱交換器を通して圧力容器にまた戻すというような系統構成になっておりますので、これが使えれば、一番、普通の状態といいますか、従来これまでのプラントと同様の措置がとれるということで、一つのオプションと考えています。

 残留熱除去系のほかに、「原子炉冷却材浄化系」というのもループとしては持っております。こちらも系統の中に熱交換器がありますので、残留熱を取るための普通の装置ではないんだけれども、今回のような異常事態で、熱除去に使える選択肢としてはあろうかと思っております。

 今回、ポンプの稼働が可能なのかどうか、あるいは、配管を確認していく中で、(残留熱除去系や原子炉冷却材浄化系について)やはり「使えない」という判断になりましたら、格納容器全体を水の容器といたしまして、そこで何らかの水の循環をさせて、外部に熱を取り出すという方策も考えとしてはあろうかと思っています。どうやってもループを構成しない限り、外に熱を取り出せませんから。格納容器から出てくる配管の一部を熱交換器につなぐ、あるいは、仮設のポンプを置く等により、新たに循環するループをつくるというようなことは、選択肢としてはあろうかと思います。

 現時点ではどれを選択するという段階ではありませんで、採り得るオプションを何通りか検討していくという段階だとご理解くださればと思います。


 原子炉の冷却にもたついたがために、3月12日から3月15日にかけて、1号機、3号機、2号機が次々と危機的状態に陥った。現在は、原子炉内に水を一方的に入れることで小康状態を保っているが、将来のことを考えれば、炉内で熱せられた水を外部に引き出して冷ました上で再び炉内に戻す、という循環のループを作らなければならない。それが完成して初めて原子炉を安定的に冷却できる状態になる。それが東電の当面の最大の目標なのだ。

 ■地震直後はどこまで冷却できたか?

 事故が発生して11日で満1カ月を迎えるということもあってか、最近、記者たちの関心のかなりの部分は、3月11日から15日にかけて各プラントに何があったのかという点に向けられている。

 3月11日午後に津波の来襲を受けて全部の電源を失った後も、福島第一原発の原子炉はしばらく水位を保ち、核燃料の冷却が続いていたことが分かっている。1号機の燃料が水面に露出し、燃料の損傷が始まったと思われるのは地震の翌日、3月12日朝だった。

 ――1号機のアイソレーションコンデンサー(原子炉内で発生した蒸気を冷やして水に戻し、炉内に戻す装置)はどの程度働いたのかどうか、停止したのだとすればどの時点で停止したのか?


 1号機のアイソレーションコンデンサー、日本語では「非常用復水器」でございますが、地震当初は動いていたようでございます。ただし、このアイソレーションコンデンサーはバッテリーで駆動しておりますので、バッテリーが今回、枯渇すると申しますか、電源装置等が軒並み津波で故障したということを考えますと、何らかの時点で故障して使えなくなったんじゃないかとは推定できますが、いつの時点で、ということはまだ検証は終わっていません。

 こちらにつきましては、原子炉で発生した蒸気を復水器で冷却してそのまま原子炉に戻す装置でございますので、水の量が途中で増えるということはございません。原子炉の中で発生したものがそのまま戻るという系統でございますので、水の量といたしましては、増えたりしないということでございます。

 一方、パラメーター(水位)のほうは変動がございますので、逃がし安全弁が作動して(開いて)、(原子炉圧力容器内の)蒸気が(圧力容器から)サプレッションプール(格納容器の内部にある圧力抑制室)のほうに行ったのかというようなところにつきましては今後、詳細に検証していきたいと考えています。


 ――2号機、3号機については、高圧注水系の冷却機能が機能したのかどうか? どの時点で停止したのかはっきりしたのか?


 2号機、3号機につきましては(地震が発生してから数日)、ある程度、水位が確保されていて、炉圧のほうも6メガ、あるいは7メガパスカル程度あるということを考えますと、ある時点までは、高圧注水系は、――いわゆる蒸気で駆動するECCS(緊急炉心冷却装置)の一つでございますので――、ある程度の期間は動いていたのではないかと推定しておりますが、どこまで動いていたのかとかは今後の検証になると考えております。


 ――2号機、3号機に関して、冷却系が地震後にいつごろ停止したのか?


 こういったパラメーターを見る限りでは、動いていたというふうに推定しています。なぜ「推定」と申し上げるかというと、動いてはおったと思いますけれども、中央制御室の表示灯とかが、電源がなくなった関係で見えなくなっているという状況下でございますので、パラメーター(水位や圧力の計測値)の状況からは、そうではないかと考えております。止まった、機能が停止した、というところにつきましては、直流(電源)がなくなれば止まることになるんですけれども、いつの時点で止まったかはまだ解明ができておりません。


 3号機は3月12日夜までは原子炉内の水位を保っていたが、13日、ECCS(非常用炉心冷却装置)の「注水不能」が国に報告され、水位が下がっていって、翌14日、建屋が爆発した。2号機は、1号機、3号機の後を追うように14日、ECCSの「注水不能」が国に報告され、夜、燃料棒が全露出する状態に一時的に陥った。15日朝、2号機格納容器の圧力抑制プール付近で異音が発生した。

 このころ、まるでドミノ倒しのように1号機、3号機、2号機、4号機と危機が拡大していったが、そのとき何があったのか、実は明確にはなっていない。断片的な情報があちこちに散らばっていて、それらをつなぎ合わせれば、ある程度の姿は見えてくるが、結局のところ何が起こったのかは判然としない。

 ■「私契約だから公表しない」で大荒れに

 会見が終盤に差しかかろうとするとき、回答のないまま積み残しになっていた質問について、女性記者が回答を催促する。「午前中に質問したことへの回答を頂ければと思います」

 司会を務める広報部の寺澤部長がそれに答える。

 「これまでにどのような支援の提案があったのかということですが、企業、国など有償・無償のさまざまなお申し出を頂いています。現状では件数などはすべて集約しきれていない現状でございます。ただし、海外からの無償支援のご提案については、4月8日現在で受け入れが決定している件数ですが、9か国約21団体。支援の内容ですが、ロボット、ディーゼル発電機、コンクリートポンプ車、バージ船、防護服などの物資の提供、専門家の派遣などの技術支援でございます」

 さらに、がれき除去の共同企業体(ジョイントベンチャー)と東電の契約について、女性記者が回答を促し、寺沢部長がマイクを握る。

 「がれきのジョイントベンチャーのほうの、具体的な発注時期、契約時期、金額等については私契約にかかわることでございますので、回答を控えさせていただきたいと思います」

 「発注の時期も、要請をいつしたかというのも言えない、ということですか?」と、その女性記者は尋ねる。

 「はい」。寺沢部長は間髪入れず、きっぱり答える。「たいへん恐縮でございますが、契約にかかわることでございますので、回答は差し控えさせていただきたいと思います」

 大成建設などの共同企業体にいつ作業を発注したのかということさえ公表できないのかという驚きと怒りが記者の間に広がる。

 女性記者は「じゃ、この方法を考えついたのはいつですか?」と尋ねる。

遠隔操作重機による作業の様子。バックホゥ(左)、コンテナ(中)、クローラーダンプ(右)=4月6日撮影(東京電力が4月10日に記者に提供した写真)

 松本本部長代理が答える。

 「がれきの除去に関しましては、高い線量の中でがれきを除去しなければならないということでございますので、何らかのリモートコントロールによる処理は必要だろうというふうには爆発があって以降、頭の中にはございましたけれども、結果として、4月7日あたりから、システムを稼働させたということでございます」

 以後、さまざまな記者が質問のマイクを握るが、その質疑の相当部分がこの「私契約だから言えない」問題に費やされる。もっぱら広報部の寺澤部長が答える。

 ――ジョイントベンチャーの件、なぜ言えないのか、今後も、公にしないのか?


 私どもの私契約にかかわることですので、控えさせていただきます。


 ――「私契約」うんぬんの話なんですが、通常のビジネスの中での話であるのならかまわないと思うんですが、今回はこれだけの事故が起きて、多かれ少なかれ、国のお金、国民の税金が投入されることが明らかになっているにもかかわらず、契約を理由に明かさないというのは筋が通らないような気がするんですが、いかがですか?


 先ほどと同じように、私契約にかかわるということでございますので、回答につきましては、差し控えさせていただきたい。


 ――それは、国民の税金が事故の後処理や補償に使われるにもかかわらず、ビジネスを理由に明かせないということですか? それは先方さん(契約の相手方)に対する配慮ですか、それとも、東電さん側の身内の配慮ですか?


 現状では私契約にかかわる……


 ――どちらに対する配慮ですかと伺っている。都合の悪いことは全部そうやって無視しているけれども……


 とは申しましても、相手さまもあることでございますので……


 ――それは東電さんの事情ではなくて、相手の契約先への配慮ということですね? 向こうがそういうこと(秘密扱い)を求めているということですか?


 いや、私どものほうから回答は差し控えさせていただきたい、ということでございますので……


 ――「私契約」の件についてこれは菅首相の決定なんでしょうか? だれの決定なのか教えてください。


 菅総理かどうかはちょっと私は存じ上げませんけれども、私契約ということで回答は差し控えさせていただきたいと思います。なにとぞ、なにとぞ、ご理解をいただきたいと思います。


 ――先月24日に3号機タービン建屋で170〜180ミリシーベルトの被曝をされた3人の方がいらして、その方々の所属している会社も言えないというお話でしたけど、それも「私契約だから」という理由なんでしょうか?


 そちらのほうは基本的にはプライバシーにかかわることでございますので、所属会社などについては控えさせていただいております。


 ――所属している会社がみずから「自分のところの社員だ」と明らかにしている場合であっても「言えない」ということなんでしょうか?


 私どものほうから会社様の名前をお話しするのは控えさせていただいております。


 ――それは「プライバシーだから」という理由ですか?


 たいへん恐縮ですが、何度も同じ話になりますけども、けがをなさった方の所属会社の社名などを私どものほうから申しますのは控えさせていただいております。


 ――先方の会社がみずから取材に対して答えて明らかにしている場合であるのに、東京電力がそれを言わない理由というのがよく分からないんですが……


 たいへん申し訳ございません。


 ――持ち帰って理由を後ほど説明してください。


 それは同じご回答になると思いますので……。


 ――いまこういう事故が起こっているからこそ、東京電力がどういうことをやっているのか、その内容については最大限明らかにするということだと思うんですけども、「プライバシーだから」とか「私契約だから」とかいうのは、通用しない理由だと思うので。相手方の企業が了解している場合は、少なくともその場合は、理由がないと思うんですが……


 何度も申し上げますけど、ご本人のプライバシーにかかわることでございます。私どものほうからは回答は差し控えさせていただきたいと思います。


 ――その本人の所属している会社がみずから明らかにしている。それでも言えない理由というのがよく分からないんですが……


 そういった、たぶん、皆さんのご取材なさっている過程の中で把握されるんでしょうけど、私どもからは社名などは控えさせていただきたいと存じます。


 ――今後、廃炉に向けた作業の中で私契約というのはどんどん出てくると思うんですが、東京電力さん1社だけでやれるわけではないと思いますので、それはすべて「言えない」ということになるんでしょうか?


 そういう意味では、JVさん(がれき除去のジョイントベンチャーを構成するゼネコン)のお名前とかは出させていただいておりますけども、具体的な契約の内容とか時期とか金額などにつきましては控えさせていただきたいと思います。


 ――被曝している人の所属している会社の名前も言えないというのは明らかに異常な対応だと思うので、そこはよくよく検討してみていただければ、と思います。


 分かりました。いったん持ち帰らせていただきたいと思います。


 ――「私契約」の件は統合本部の決定ということですか?


 私ども会社としての方針でございます。私どもの従来からの方針ですので、よろしくご理解たまわりたいと思います。従来から私どもの方針として私契約については回答を控えさせていただきます。


 ――「私契約だから言えません」というのは官邸からの指示?


 決して官邸からの指示ということではなくて、私ども、東京電力としての方針ですので、よろしくご理解願いたいと思います。


 ――東京電力独自の方針ということで認識してよろしいですか?


 はい、けっこうでございます。


 ――そうすると、この対応について統合本部の政府の人間には報告されていない?


 きょう時点の対応については報告はまだ致しておりません。


 ――東京電力さんだけの問題ではないわけですから、国も含めた大きな問題になっているわけで、被害者の会社名も出せないということについて、「今までと同じように私たちの方針を貫徹します」という理屈は通らないと思うので、(どういう対応をするか検討するために)お持ち帰りください。


 ご意見として承りたいと思います。


 ――ご意見じゃなくて、検討して回答してください。


 同じ回答になると思いますけど。


 ――そんなの失礼ですよ。ここにいる人はみんなそう思ってますよ。


 たいへん恐縮ですが、同じ回答になります。


 ――それはだれの判断ですか? 広報部長の判断ですか?


 記者たちがまるでマイクをリレーしていくように「私契約だから言えない」問題について質問を重ねる。会場の不規則発言がこれに輪をかけていく。ゼネコンの共同企業体にいつ発注したのかという、見方によっては些細な話ではあるが、これを前例とされることを許してはならない。そんな会見場の空気が、同じ質問の繰り返しと不規則発言を許している。会見場の脇に控える鈴木和史・広報部長が「広報部長の鈴木でございますけども、とにかくお話を頂いていますので、いったん持ち帰らせていただきます」と話を引き取る。

 最後に、松本本部長代理との記者との間でも、同じ問題に関する質疑が交わされる。

 ――統合本部(菅直人首相が本部長を務め、東電の勝俣恒久会長が副本部長を務める事故対策統合本部)ができているんですが、東電だけで意思決定することがあるんですか?


 ことの大小によりまして、統合本部の指示を仰ぐこともございますし、東京電力のほうで判断するというものもございます。


 ――「ことの大小」というのはどういうことですか?


 いろんな仕事、事象が起こった際に、いろんな統合本部、関係等々、保安院等とご相談させていただきながら判断していく。


 ――「ことの大小」は東電さんが決めるんですか?


 いえ、統合本部の中で決めていくと思います。


 ――いまの件というのは統合本部で決めたということなんですか?


 私契約につきましては、私どもが従来から私契約については公開しないということでございます。


 午後8時12分、記者会見は1時間32分で終了する。

 ■方針を変更して発注の時期を公表

 午後10時5分、定例の夜の記者会見が始まる。

 広報部の寺澤部長が冒頭、がれき除去を発注したのは3月28日だと明らかにする。2時間前まで開かれていた記者会見で「私契約だから」という理由で頑として公表を拒否していた、その態度をあっさりと変える。

 「発注の時期などについて、先ほど、私のほうからは『契約上のことなので申し上げられない』と申し上げましたけれども、発注時期についてはご報告を申し上げたいと思います」

 契約金額については引き続き言えないという。

 この記者会見は19分であっさり終わる。

 ■清水社長の二者択一

 10日午後11時46分、鈴木広報部長と寺澤部長が前触れなく静かに会見室に現れ、マイクの前に立つ。鈴木広報部長がおもむろに話し始める。

清水社長の翌日の予定について発表する鈴木和史・広報部長(左)と寺澤部長(右)=4月10日午後11時53分、東京都千代田区内幸町の東電本店1階で

 「あした、発災ちょうど1カ月という大きな節目を迎えます。非常に私ども改めて重く受け止めておりまして、あしたの予定につきましては、明朝、ご案内したいというふうに思っておりますけど、いま何をやっているのかということにつきましては、あしたトップが福島に赴く、あるいは、その調整ができなければ、こちらで記者会見をやるということも含めて、いま、調整を図っているところでございます。調整には明朝までかかると思いますので、あしたの朝、なるべく早くご案内したいと思います」

 清水正孝社長は4月11日、地震後に初めて福島に行く、あるいは、久しぶりに地震後2度目の記者会見を東京で開く、ということらしい。

 「その二択ですね?」という記者の念押しに、鈴木部長は「いま私の頭の中にはその二択がありますけど」と答える。

 「まる1カ月ということで、重たい日でございますので、そういうことを考えたいと思います。心身ともに県民の皆さまにはご苦労をおかけしておりますので、そういうことを踏まえての気持ちをお伝えするということは大きうございます」

 午後11時54分、3月10日最後の記者会見が終わる。

 10日午前6時半の時点で、福島第一原発で働くのは277人。うち東京電力社員は208人、「協力企業」は69人。

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