18日に来日した国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は、菅直人首相や松本剛明外相と相次いで会談し、東京電力福島第1原発の事故に関する情報や対応策などについて意見交換した。菅首相は会談で「最大限透明性をもって、全世界の皆さんに包み隠さず情報を開示すると約束する」と表明した。
天野氏は事故について「多くの国が重大で深刻な事故だと受け止め、日本だけに任せるのではなく、国際社会が連帯して当たるべき問題だと思っている」と述べる一方、菅首相との会談では「もっと多く、もっと詳しく情報提供してほしい、という国際的な意見が非常に強い」と指摘。首相は「情報そのものの内容と質をさらに進める準備をしている」とも述べ、事故現場の定期的な写真撮影、モニター場所を増やすなど、さらなる情報提供に努める考えを示した。
海江田万里経済産業相との会談では「最大の懸案は、とにかく原発の安全性を回復すること。とにかく『冷やす、冷やす、冷やす』ということだ」と述べ、原子炉などの冷却作業が急務との認識を示した。会談後、天野氏は記者団に、20キロ以内の住民への避難指示と20キロから30キロ以内の住民の屋内退避という日本政府の対応について「国際的に見て妥当な対応だ」と述べた。
枝野幸男官房長官は18日の記者会見で、米国などが日本より広い範囲で自国民の避難を勧告していることについて「海外の自国民保護の観点から、より保守的な水準で指示するのは当然だ。私が同じ立場でも科学的数値を超えて指示することはあり得る」と理解を示した上で、日本政府の避難指示は適切だとの認識を改めて強調した。【宮城征彦、山田大輔】
毎日新聞 2011年3月19日 東京朝刊