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東日本大震災:福島第1原発事故 東電、電源ケーブル敷設着手 冷却復旧あす以降

 政府と東京電力は18日、東日本大震災で被災した東電福島第1原発の事故対応へ全力を挙げた。東電は地震と津波で失われた外部電源復旧に向けた電源ケーブルの敷設に着手。その後、陸海空3自衛隊に東京消防庁を加えた合同放水作業を実施し、総合的な対策を講じて冷却機能を回復させる方針だ。ただ、ポンプなどの冷却機器が復旧するのは19日以降となり、放水作業も継続的な実施が必要とされ、完全な機能復旧は長期化しそうだ。【酒造唯、藤野基文、犬飼直幸、川崎桂吾、伊澤拓也】

 東電は当初、17日中に復旧作業を完了する予定だったが、「沸騰している3号機の燃料プール冷却を優先したい」と判断し、自衛隊に放水を要請した。漏電の危険があるため放水と電源復旧の作業は並行してできず、開始が18日にずれ込んだ。

 外部からの送電が回復すれば、原子炉内に一気に水を注水できる緊急炉心冷却装置(ECCS)や、燃料プールに水を送り込めるポンプなどが使えるようになる可能性がある。さらに、原子炉の状況を計測する機器類や中央制御室が機能を取り戻すことも期待できる。

 しかし、これまでのトラブルで機器がダメージを受けている可能性も高い。「実際はやってみなければ分からない。まずは原子炉内への注水系を優先し、復旧できるところからやるしかない」(東電)のが現状だ。

 東電によると、約20人の作業員が従事し、福島第1原発の山側にある6900ボルトの配電盤で途切れている外部電源を、1~4号機で唯一、津波で水没していない2号機のタービン建屋にある配電盤へ接続する。

 東電は同日午前、1号機の原子炉建屋近くに仮設した配電盤と2号機の配電盤を、1号機のタービン建屋を通してつなぐ。午後は、外部電源と仮設配電盤を道沿いに大きく迂回(うかい)して長さ1・5キロの高圧線でつなぎ、作業が完了する。

 ただ、現場の放射線量は、外部電源の配電盤付近で毎時3ミリシーベルト、最も高い仮設配電盤近くで毎時20ミリシーベルトと高い。作業員の被ばく限度は例外で、年間250ミリシーベルトとされたが、高い場所では約12時間作業すると、今後1年間は作業ができなくなる。このため、被ばく線量を確認し、作業員を交代させながら工事を進める。

 作業前には放射線管理員が現場の線量を測定して作業員の被ばく量を推定。作業員は全身一体型の特殊な防護服や、顔を全面覆うマスク、ゴム手袋を着けた上、作業時間を線量計で管理する。

 東電は「線量測定に加え、重装備のため通常の3倍ほど時間がかかる」と説明。また、経済産業省原子力安全・保安院は18日、1、2号機とは別の送電線を復旧し、3、4号機にも20日めどで電源の回復を目指していることを明らかにした。復旧を目指す送電線は、一部の鉄塔や送電線が地震の影響で壊れたが、迂回路を設けるめどが立ったという。

 ◇自衛隊、午後に地上放水

 防衛省・自衛隊は18日午後、福島第1原発3号機の使用済み核燃料プールの冷却に向け、高圧消防車による地上放水を再開する。また、東京消防庁は18日午前、ハイパーレスキュー隊を現地に派遣、1号機の使用済み核燃料プールへの放水を実施する方針。防衛省と東京消防庁は電源ケーブル敷設作業後に連携して放水を実施する。一方、北沢俊美防衛相は陸上自衛隊ヘリによる上空からの海水投下を18日は見送る考えを示した。

 防衛省は17日、陸自の大型輸送ヘリCH47J2機で計4回、上空から3号機を狙って放水。さらに3号機近くの地上から高圧消防車5台で計30トンを放水した。警視庁も高圧放水車を使って放水を実施した。

 枝野幸男官房長官は18日午前の記者会見で東京消防庁の部隊を1号機への放水作業にあたらせる計画を明らかにした。「3、4号機ほど切迫した状況ではないが、できるだけ水を増やして冷却に万全を期す」と語った。

 自衛隊の高圧消防車6台と隊員30人が福島県楢葉町の運動施設に待機。18日昼前、埼玉県の航空自衛隊入間基地の消防車2台が合流した。17日に放水作業した約30人の放射線量を検査した結果、全員が5ミリシーベルト未満だった。

 18日に再開する地上放水は、17日に続いて当初想定していた計10台をホースで連結して海から取水して行う方式を断念した。統合幕僚監部は「放射線量が高く、連結作業で外に出るのは危険なため」としている。一方、任務に当たる自衛隊員の累積被ばく総量限度を厚生労働省が新たに定めた上限250ミリシーベルトに引き上げて行う。

 東京消防庁から派遣されたのは、ハイパーレスキュー隊139人と放射性物質災害などに対応できる特殊災害対策車など車両30台。福島県いわき市で待機した。石油貯蔵施設火災などで出動する大型化学車やホースを最大2・1キロ延長できる遠距離大量送水装備スーパーポンパー、地上22メートルから放水できる屈折放水塔車が含まれる。

 関係者によると、同隊の作業は、特殊災害対策車で周辺の放射線量を測定して相対的に安全な場所を確保し、くみ上げた海水をはしご車か屈折放水塔車で放水することが考えられるという。

 防衛省と東京消防庁は楢葉町の施設内に指揮所となる「調整所」を設置し、自衛隊の統制下で統合作戦を実施する。自衛隊の放水作業には、在日米軍が東電に提供した高圧放水車1台も加わる。

毎日新聞 2011年3月18日 東京夕刊

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