●米「80キロ圏外へ」
【ワシントン古本陽荘、ニューヨーク山科武司】在日米大使館は16日(日本時間17日未明)、福島第1原発から半径50マイル(約80キロ)以内に居住する米国人に対し、予防措置として圏外に避難するよう勧告するルース大使名の声明を出した。避難が難しい場合は、屋内に退避するよう求めた。
米国はこれまで「半径20キロ以内は避難、20~30キロ圏は屋内退避」とした日本政府の判断を「適切」としてきたが、対応を変更した。今回の勧告は、米原子力規制委員会(NRC)が「米国の指針に沿った対応」を求めたことを受けたものと説明されており、カーニー大統領報道官は「米国の基準に従ったまでだ」と強調した。
一方、米国防総省のラパン副報道官も同日、救援活動にあたる米軍関係者も福島第1原発の半径50マイル以内に立ち入らないよう指示したことを明らかにした。圏内で活動する場合は許可制とした。
●英なども勧告
【欧州総局】英国は16日、日本政府が屋内退避を指示した福島第1原発から半径30キロ圏の外では深刻な健康被害の心配はないとしながらも、東京以北にいる英国人に退避を検討するよう呼びかけた。スイスも、東北地方と東京・横浜周辺のスイス人に安全な場所への移動を求めた。必要であれば、日本国外に退避するためのチャーター機を用意するという。
一方、AFP通信によると、ドイツやイタリア、オランダも自国民の被災地域からの退避などを勧告。ロシアは、日本に駐在している外交官の家族らを18日から国外に避難させるという。
各国大使館の対応について、菊地透・医療放射線防護連絡協議会総務理事は「政府が決めた避難指示範囲の半径20キロもかなり安全を考慮したもの。(3号機から白煙が確認された後の)16日午後に20キロの地点で1時間当たり約10マイクロシーベルトの放射線量が観測されたが、そこに1年住んでも健康に影響のないレベルだ。20キロ圏外の住民まで避難のため動き出したら、移動の間に病人や高齢者が亡くなる事態にもなりかねない。日本政府は海外の大使館などに正確な情報を発信すべきだ」と懸念する。
毎日新聞 2011年3月17日 東京夕刊