文部科学省が設置するモニタリングポスト(自動観測局、MP)の16日午後5時時点のデータで、宮城▽茨城▽栃木▽群馬▽埼玉--の5県の大気中放射線量が過去の1時間当たりの通常値を上回った。最も高かったのは茨城県の0・252マイクロシーベルト。1回のレントゲン検診で浴びる放射線は50マイクロシーベルト程度で、文科省は「身体には全く影響がないレベルだが、数値の変化に気を配って」と呼び掛けている。
また、文科省は福島第1原発から西に20~60キロ離れた福島県内の14カ所の屋外で、16日午前8時15分~午後2時15分、モニタリングカーによる計測を実施。放射線量は6・7~80マイクロシーベルトで、15日午後8時40分~同50分に原発から約20キロ離れた浪江町内の3カ所で計測した255~330マイクロシーベルトを大幅に下回った。
80マイクロシーベルトを計測したのは、原発から西北西に25キロ離れた葛尾村付近。北西に約30キロの同村付近でも58・5マイクロシーベルトを観測した。日中に吹いた風で放射線が飛散したとみられる。原発から南西方向では約25キロ地点でも10・5マイクロシーベルト以下だった。
一方、福島県は16日、福島市方木田の県原子力センター福島支所で午前8時に採取した水道水から、通常は検出されない放射性物質のヨウ素が1リットル当たり177ベクレル、セシウムが58ベクレル検出されたと発表した。原子力災害時の飲食物摂取制限に関する国の基準は、ヨウ素が300ベクレル、セシウムが200ベクレルで、今回は人体に影響のないレベルという。午後の再検査では、いずれも検出されなかった。
茨城県は16日、北茨城市役所に設置したMPで午前11時40分、通常時の約300倍にあたる毎時15・8マイクロシーベルトの放射線量を観測したと発表した。県原子力安全対策課によると、その後は低下しており、「健康に直接影響はない」としている。同市では15日朝にも5・575マイクロシーベルトを観測した。
文科省によると、MPは都道府県に1カ所ずつで自治体全域の放射線レベルを示す数値ではない。【篠原成行、大久保陽一、関雄輔】
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◆環境放射能水準調査結果(文科省発表)
都道府県 15日 16日 過去の通常値
北海道 0.028 0.027 0.02 ~0.105
青森 0.025 0.025 0.017 ~0.102
岩手 0.040 0.037 0.014 ~0.084
宮城 0.179 0.153 0.0176~0.0513
秋田 0.037 0.039 0.022 ~0.086
山形 0.099 0.057 0.025 ~0.082
福島 - - 0.037 ~0.071
茨城 0.214 0.252 0.036 ~0.056
栃木 0.286 0.215 0.030 ~0.067
群馬 0.480 0.110 0.017 ~0.045
埼玉 0.069 0.068 0.031 ~0.060
千葉 0.033 0.041 0.022 ~0.044
東京 0.056 0.054 0.028 ~0.079
神奈川 0.062 0.056 0.035 ~0.069
新潟 0.056 0.047 0.031 ~0.153
山梨 0.050 0.046 0.040 ~0.064
長野 0.102 0.087 0.0299~0.0974
岐阜 0.063 0.061 0.057 ~0.110
静岡 0.045 0.045 0.0281~0.0765
愛知 0.040 0.040 0.035 ~0.074
三重 0.050 0.056 0.0416~0.0789
※15日は午後11時~16日午前0時観測、16日は午後4~5時観測。単位はマイクロシーベルト(公表はマイクログレイ。1マイクログレイ=1マイクロシーベルトで換算)。福島県は計器破損のため計測できず。
毎日新聞 2011年3月17日 東京朝刊