福島第1、第2原発から3キロ余りの住宅に住み、大震災後、1000キロ以上離れた島根県出雲市まで避難してきた2人が16日、出雲市役所で毎日新聞などの取材に応じた。津波や被ばくへの恐怖から「できるだけ遠くに」とそれぞれ家族を連れて車で避難したという。
福島県富岡町の会社員、池田秀幸さん(30)と同県双葉町の無職、後藤充良さん(69)で、共通の知人を頼ってそれぞれ出雲市に避難した。市営住宅などに入居する予定だ。
東京電力の協力会社に勤める池田さんは昨年10月から福島第1原発で機器の計測業務に当たっていた。震災があった11日は業務の最終日で、午前中に原発を離れ、富岡町にある会社の事務所で被災した。翌日、原発でのトラブルを聞き、危険と判断。両親らと4人でかつて暮らしていた出雲市に避難してきた。仕事上の知人は今も原発周辺で作業している可能性が高い。「何事もなく会えればいいと思ってますけど……」と、声を詰まらせた。
後藤さんは震災翌日の12日、津波への恐れから、一家5人と兄夫婦の計7人で避難所を離れた。出雲市に住んでいる長女夫婦方を目指し、約17時間休まず車を運転し続けてたどり着いたという。後藤さんは「ここまで来れば大丈夫」とほっとした様子を見せた。一方、長男浩さん(39)は地元の消防士として今も救援活動を続けているといい、身を案じている。【細谷拓海】
毎日新聞 2011年3月17日 東京朝刊