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東日本大震災:福島第1原発爆発 「正確な情報を」 周辺の自治体、判断に苦慮

 ◇公的連絡乏しく

 地震発生から6日目を迎えた16日未明、福島第1原発で、また4号機から炎が上がり、3号機はトラブルも--。1、3号機の爆発、2号機の燃料棒露出による「空だき」状態に続き、残る4号機でも次々と発生する異常事態。繰り返される余震の上、放射能漏れの恐怖にもおびえ続ける住民の不安は増すばかりだ。国や県、東京電力からの情報が一向に入ってこない周辺市町村は「現場に情報が入ってこないとどうしようもない」と訴えている。【池田知広、長野宏美、伊藤一郎】

 福島第1原発から20~30キロ圏内に位置する南相馬市の桜井勝延市長(55)は「情報が入らず報道を通じて判断している」と困惑する。市役所に泊まり込みで対応に追われているが、津波被害に続く放射性物質への恐怖に住民の不安は増すばかり。限られた情報の中、自主避難を始める住民や避難できずに不安を募らせる住民を目の当たりにしている。「県に問い合わせても『確認中』と言われ原発の情報がない。住民の命を守るため国から正確な情報が瞬時にほしい」と悲痛な声をあげた。

 市内の一部地域が第1原発から20キロ圏内に入る田村市では「県を介しての情報では遅い」と、テレビから得た情報で判断し、圏外住民に屋内退避を呼びかけるなど自主的な対応を続けている。ただ、危険性の判断は難しい。広報担当の男性職員は「東電の会見を聞いてもはっきりしない。何でもよいから、リアルタイムでの情報がほしい」と訴える。

 市内の体育館など11カ所で、原発周辺から避難してきた約8000人を受け入れている同市だが、さらに他の自治体へと脱出する人も増えている。男性職員は「現場の状況を一番把握していて、実際に動くのは市町村。そこに情報が入ってこないとどうしようもない」と嘆いた。

 第1原発から30キロ圏外の相馬市では、避難指示を受けた近隣住民約550人を受け入れている。近隣住民が避難所に多く押し寄せたため、急きょ、市の判断で移転で使用していなかった高校の校舎を開放した。事故情報などはテレビを通して入手しているが、「東電や国からの発表はあった方がいいが、情報だけ出ても不安をあおるだけだ」と広報担当職員は困惑する。

 一方で、屋内に退避すべきかどうかの判断やガソリンがない中で交通手段をどう確保するかなど、住民らが必要としている情報は多い。職員は「対応の仕方も併せて出してもらえると混乱せずに済む。避難指示を受けた住民向けの避難所の開設も事前に県なり国が調整した方が後手にならない」と注文をつけた。

毎日新聞 2011年3月16日 東京夕刊

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