関東1都6県で15日、大気中の放射線量が通常の約7~110倍に急上昇したことが、毎日新聞のまとめで分かった。気象庁は「15日は関東を含む内陸に向かって風が吹いていた」と説明しており、福島第1原発から出た放射性物質が風に乗って関東地方に飛散したとみられる。
北茨城市や神奈川県横須賀市では午前5時台に高い数値が計測された。午前6時すぎに第1原発2、4号機で爆発が起きる前から放射性物質が継続的に漏れ出していた可能性もある。宮城県山元町でも14日に通常の約10倍の数値が計測された。
第1原発のある福島県も15日、県内7地区の放射能測定値の推移を発表した。原発の南に位置するいわき市の測定地点で、15日午前4時に1時間当たり23・72マイクロシーベルトの最高値を記録。福島市でも15日午後6時に20・18マイクロシーベルトまで上昇した。
いずれの自治体も測定値について「直ちに人体に影響が出るレベルではない」として落ち着いた行動をするよう呼びかけており、今後もモニタリングを続けていく。甲信や中部地方、西日本にある自治体の数値は通常レベルだった。
また、文部科学省が全都道府県に設置している「モニタリングポスト(自動観測局)」のデータによると、15日午前9時~午後5時に東京と栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、静岡の1都7県の放射線量がそれぞれ、計測が開始された1950年代後半以降の最大値を記録した。0・069~1・318マイクロシーベルトと健康に影響ないレベルだが、文科省は全都道府県に「継続的な計測」と「1日最低2回の数値報告」を指示した。
気象庁によると、福島第1原発から南に約50キロ離れた小名浜測候所(福島県いわき市)の観測データでは、14日午後8時以降は主に秒速1~6メートルの北東の風が吹いていた。原発で爆発があった午前6時ごろには、北北東から5メートルの風。その後、正午までは北北東、北東、東北東から3~5メートルの風が吹いた。
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(毎日新聞まとめ)
測定場所 最大値 測定時間 平常時との比較
北海道泊村 0.044 15時50分 通常レベル
青森県八戸市 0.027 16時 通常レベル
盛岡市 0.047 13~14時 07~09年度平均の約2倍
秋田市 0.036 7~8時 通常レベル
山形市 0.038 14~15時 通常レベル
宮城県名取市 0.38 18時 通常の7~12倍
長野市 0.037 17時 通常レベル
新潟県南魚沼市 0.57 19時 通常の10倍以上
北茨城市 5.575 5時50分 通常の約110倍
茨城県高萩市 4.470 6時 通常の約90倍
水戸市 0.629 13時10分 通常の約12倍
宇都宮市 1.318 9~10時 昨年平均の約35倍
前橋市 0.562 14時 前日の約30倍
さいたま市桜区 1.222 10~11時 通常の20~38倍
千葉県市原市 0.313 17時 通常の約7~14倍
東京都新宿区 0.809 10時台 通常の約20倍超
神奈川県横須賀市 0.258 5時48分 通常の10倍以上
甲府市 0.057 14時 通常レベル
静岡市葵区 0.089 11~12時 通常レベル
*15日夕までの国や各自治体への取材。測定値は1時間当たりで、単位はマイクロシーベルト(単位がグレイで公表された数値は1マイクロシーベルト=1000ナノグレイで換算)
毎日新聞 2011年3月16日 東京朝刊