【ブリュッセル福島良典】福島第1原発の事故を受け、欧州連合(EU、加盟27カ国)は15日、ブリュッセルで特別会合を開き、原発の危機管理と安全対策の見直しに着手した。欧州では地球温暖化対策として原発が活用されているが、「世界を一変させた」(エッティンガー欧州委員)日本の原発危機により政策転換を迫られている。
EU域内の原発は14カ国に計143カ所。環境保護団体「グリーンピース」によると、地中海沿岸諸国やバルカン地域の原発は地震に遭う可能性があるほか、仏独を含め数カ国には「福島原発と類似した技術が使われている原発がある」という。
EU特別会合では原発の危機管理や耐震強度、冷却機能などの総点検を決める。エッティンガー欧州委員はドイツのラジオで「日本から届く映像を見れば最悪の事態も想定外ではない」と指摘、安全点検の結果次第で原子炉の閉鎖もあり得るとの考えを示唆した。
ドイツのメルケル首相は15日、国内17基の原発のうち80年以前に稼働を始めた7基を3カ月間、停止し安全性を点検すると発表した。スイスは14日、老朽化した原発を更新する手続きを凍結すると発表。英国も関係当局に原発安全基準の点検を命じている。
地震の多いイタリアは「原発なき先進国」と呼ばれてきたが、ベルルスコーニ政権が原発再開にかじを切り、今年6月までに国民投票が実施される。政府は「計画変更はない」(プレスティジャコモ環境相)とするが、日本の事故が民意に影響を及ぼす可能性が取りざたされている。
一方、フランスは国内電力の8割を原発でまかない、世界最大の原子力企業アレバが新興国などで原発建設を進める「原子力大国」。ジュペ外相は15日、仏での原発の安全性について「議論は必要だが、今、仏国民に原発をやめると言うのはウソになる」と話した。
毎日新聞 2011年3月16日 東京朝刊