10日、投開票が行なわれた神奈川県知事選挙で、国際医療福祉大学大学院教授の黒岩祐治氏(56)が、170万を超える票を獲得し、初当選した。黒岩氏に対し、選挙前に行なったインタビューを掲載する。
<漢方から学ぶ「食」の重要性>
この話を聞いて早速、漢方の専門医であり、また西洋医学の医師でもある劉影先生にお願いして入院中の父を診断してもらうことにしました。診断結果は気が落ちているので非常に危険な状態にあるということでした。気が落ちているということは衰弱しているということです。
劉先生からは「ナガイモ(自然薯)を蒸して食べさせて下さい」と言われました。有胃気即生(ゆういきそくせい)、すなわち胃に気が有れば生きられる、という意味だそうです。これは漢方の教えですが、食べられるということが非常に大事なことなのです。食べられる力があれば生きる力が出てくる。西洋医学では、食べられなくなった人、つまり経口摂取が困難な人には胃に小さな口(穴)を作りチューブを入れ、水分や栄養を流入させる「胃ろう」を行いますが、漢方の場合は、食べられる状態に戻してあげる対策を講じるのです。その胃に気を入れるためにナガイモを蒸して食べさせるわけですが、父は毎日三食、ご飯代わりにナガイモを蒸して食べ続けました。
そうするとだんだん食欲が出てきたんです。寝たきりだった状態から起きられるようになり、ステーキを食べられるようになりました。そのうち毎晩ビールを飲み始めました。そしてどんどん太ってきました。その回復ぶりを見て家族はがんが治ったんだと思いました。しかし、その後の検査結果を知り驚いたんですが、6cmだった肝臓がんが12cmに拡大していたのです。40以下が正常値の腫瘍マーカーが5,200まであがっていました。これにはびっくりしました。がんが治ったとばかり思っていたのが実は逆だったのです。
西洋医学では、EBM(エビデンス・ベイスド・メディシン)を重視する医療ですが、見方を変えればデータ優先主義と言えます。患者さんを診るのではなく、データを見ながら治療する。これに対し、東洋医学は人間そのものを診るわけです。データでは読み取れないものは、五感を使って読み取ろうとするのです。
検査値を見ながら医師は、父に向って「あなたのがんは治っていません。肝臓の中で風船のように膨らんでいます。風船が弾けたらそのまま死んでしまいますから気をつけて下さい」と言うんです。その言葉を聞いた父はがっくりきて、夜も寝られない状態になりました。
美味しい物を食べ、好きなビールを飲んで、家族に囲まれてのんびり暮らしているからこそ、気が高まりQOLが良くなっていたのに、無神経な医師の言葉によって一気にQOLが下がってしまった。そこからまた仕切り直しです。劉先生の指導を受け、中国から「漢方抗がん剤」を取り寄せ、半年間、服用しました。そうしたら、12cmが3cmに縮小し、腫瘍マーカーも5,200から20に低下しました。そして、西洋医学の医師からは「完治しました」と言われたのです。その後はとても元気になり、家族が飲み過ぎを心配するほど元気を取り戻しました。最後は苦しむことなく、まさにピンピンコロリというように亡くなりました。
これこそ西洋医学の限界を東洋医学で補った一つの事例であり、また私の体験です。一見すると奇跡にように思えるかもしれませんが、それは日本の医療のあり方がそういう見方をさせるのであって、日本の医療が変われば、こういうことは普通に起こるかもしれません。
【吉村 敏】
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<プロフィール>
黒岩 祐治(くろいわ・ゆうじ)
ジャーナリスト、国際医療福祉大学大学院教授、早稲田大学大学院公共経営研究科講師。
1954年生まれ。兵庫県出身。1980年、早稲田大学政経学部卒業後、フジテレビジョン入社。
報道記者、番組ディレクターを経て「FNNスーパータイム」「報道2001」「新報道2001」のキャスターに。2年間のワシントン駐在を経験。自ら企画・取材・編集を手掛けた救急医療キャンペーンが救急救命士誕生に結び付き、放送文化基金賞、民間放送連盟賞を受賞。92年から放送の「感動の看護師最前線」シリーズのプロデュースキャスター、ミュージカル「葉っぱのフレディ」のプロデューサーを努める。著書に、「日本を再生するマグネット国家論」(新潮社)、「恩師の条件」(リヨン社)、「末期ガンなのにステーキを食べ、苦しまずに逝った父」(講談社)など。