【コラム】それでも政府を信じる日本人
市民は普段の生活を取り戻しつつある一方、不安な日々は相変わらず続いている。3月11日に発生した大地震以来、マグニチュード5以上の余震がすでに400回以上発生している。テレビ画面には1日に何度も地震速報が映し出され、実際に余震でビルが揺れることもある。そのたびに「このままではビルが崩壊するのではないか」という、当時の悪夢がよみがえってくる。野菜や魚から放射性物質が検出されたというニュースが流れると「何を食べればよいのだろう」という不安が頭をよぎる。
欧米のマスコミが「人類精神の進化」とまで称賛する日本の市民意識は何に由来するのだろうか。現場を目の当たりにした記者が下した自分なりの結論は「政府への信頼」だ。外国人からすると、日本政府による危機管理能力はまさにゼロだ。災害現場からは「寒い」「水や食料がない」といった嘆きが聞こえてくるにもかかわらず、安全点検という名目で、救護品を積んだ輸送車の通行さえ遮ってしまう行政、大型タンカーを1隻も準備できず放射能汚染水を海に放出する無謀さ、救護車さえ動けないほどのガソリン不足でも、政府の備蓄は放出しない融通のなさ、情報が共有されず、閣僚が互いに抗議し合う省庁間の利己主義-。
政府のこのような情けない姿に、日本人はもちろん怒りをあらわにしている。だがそれでも政府の発表を信じ、指示通りに動く。政府が「健康に異常はない」と言えば、市民は原発のある福島県の野菜や魚を食べる運動まで始めた。市民の自発的な節電で、大停電の危機も克服した。インターネットでは菅直人首相の無能さが厳しく批判されている反面、支持率は逆に10%も上昇した。一方で外国人は、日本政府の発表そのものを信じていない。事務所を大阪や、香港など海外に移転する外国企業も多い。日本にいるというだけで恐怖を感じ、数千万円の損失を甘受して帰国に踏み切った外国人プロ野球選手のニュースも報じられた。
日本国民も外国人ほどではないが、不安を感じているのは同じだ。しかし危機を克服するためには、無条件に政府の言うことを信じ、その指示通り動かなければならないと考えているようだ。これは政府がいくら無能であっても、国民を欺くようなことはしない、という信頼感があるからこそなのだろう。
東京=車学峰(チャ・ハクポン)特派員