「ロッテ4‐6楽天」(12日、QVC)
被災地を勇気づける楽天の開幕戦勝利だ。決めたのは選手会長の一振り。同点の七回2死一、三塁、嶋基宏捕手(26)が勝ち越しの1号3ランを放った。
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迷いを断ち切った。真っすぐだけを待った。振り抜いた打球は、得意の右方向ではなく、楽天ファンの待つ左翼席に突き刺さった。こぶしを振り上げた。これこそが、嶋基宏の底力だ。
同点の七回2死一、三塁で出番は回ってきた。「1点でもいいから返そうと。芯に当たったので、越えるとは思ったけど、まさか入るとは」。プロ入り4年間で6本塁打の男が描いた弾丸ライナー。「よっしゃあ!」と絶叫で出迎えた星野監督は「嶋の底力。意地を見せたね」とたたえた。
東日本大震災以降、選手会長としてチームを引っ張った。募金活動、物資の積み込み、チャリティー試合のセレモニー、そして帰仙。選手の意見を集め、監督、球団代表に伝える。最大の希望だった開幕前の帰仙を、過密日程の中実現させた。
だが本業の野球は、極度の打撃不振に苦しんだ。6日のオリックスとの試合形式練習後や、9日のQVCでの練習後、チームバスが去っても居残りで打撃練習。横浜に移籍した昨季のチームメートの渡辺にも、11日に悩みを打ち明けていた。
結局出た結論は「もうここまで来たら気持ちで打つしかない」だった。だが、この日はそれが正解。「東北の皆さんと一緒に戦っている。その気持ちがあの打球に乗ったんじゃないか」。楽天ファンに歓喜を、ロッテファンに落胆を与える衝撃度抜群の一発だった。
開幕しても、依然地震の不安と背中合わせの毎日が続く。この日も試合中に地震が発生し、2分間の中断。だが気持ちは切れなかった。「やるからには野球に集中する」。それも、被災地で学んだことだ。
気象庁はこの日、仙台市に桜が開花したと発表した。ようやく感じられた、春の息吹。厳しい生活が続くが、被災地にもやがて夏が来て、秋が訪れる。「あと143試合あります。一緒に戦っていきましょう!」。その秋に、最高の報告を‐。底力のシーズンが始まる。
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