スピード審理に過ぎたのではないだろうか。検察改革の「出発点」となった大阪地検特捜部による捜査資料改ざん事件の裁判は、わずか2回の審理が行われただけで、初公判から1カ月で幕引きとなった。
事件は検察の看板である特捜部の捜査過程で起きた。主任検事だった前田恒彦被告が、郵便料金不正事件に村木厚子・元厚生労働省局長=無罪確定=が関与しているとの筋書きに合うよう、押収したフロッピーディスクの日付を書き換え、証拠隠滅罪に問われた。
法と証拠にしたがい刑事責任を追及する検察官が証拠物に手を加える。大阪地裁の判決が指摘した通り、まさに「我が国の刑事裁判史上例を見ない犯罪」「刑事司法の根幹をも破壊しかねない所業」というほかない。懲役1年6月という実刑判決は当然のことだろう。
だが、改ざんの動機については「上司から叱責を受けて信頼を失うことを恐れた」とするなど、前代未聞のこの事件が、判決では前田元検事の個人的問題に矮小(わいしょう)化されてしまった印象が否めない。
前田元検事の改ざんをもみ消したとして逮捕、起訴された当時の特捜部長、大坪弘道被告と同副部長、佐賀元明被告の関与についてはまったく触れられていない。「自分たちが描いたストーリーに沿って強引に供述調書を作り上げる」と批判されている特捜部の捜査の実態などにも言及しなかった。
前田元検事らの事件を受けて法務省に設けた「検察の在り方検討会議」は先月末、倫理規定の明文化や捜査・公判のチェック体制の確立、監察制度の構築などを提言した。
江田五月法相も笠間治雄検事総長に対して改革の徹底を指示し、調べられる側の人権保護に効果的とされる取り調べの録音・録画(可視化)を全過程で試行するよう強く求めた。検察はこれを真摯に受け止め、速やかに実行すべきだ。
検察の信頼は一連の事件で大きく傷付いたままである。大阪地裁の判決は特捜部が抱える構造的な問題までは切り込まなかったが、検察は事件の重大性をいま一度かみしめ、改革に向けた取り組みを加速しなければならない。
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