きょうの社説 2011年4月13日

◎福島原発レベル7 「最悪」招いた評価の甘さ
 福島第1原発の事故評価が「レベル5」から「レベル7」に引き上げられ、国際評価尺 度では1986年のチェルノブイリ事故と並ぶ「最悪」の事態となった。

 チェルノブイリと比べ、放射性物質の放出量は1割前後で、原子炉格納容器なども原型 をとどめて働いている。原子力・安全保安院を担当する経済産業省幹部は二つの事故の違いをこう強調したが、世界共通の物差しがある以上、その評価は深刻に受け止めざるを得ない。

 見過ごせないのは、海外の専門機関が事故早期からレベル6やレベル7の可能性を指摘 したのに対し、日本の評価は常に甘く、それによって対応も後手に回った印象が強いことである。避難指示の出し方についても、事故のレベル評価が適切であれば、今のような混乱の拡大は防げたのではないか。

 対策を立てるにしても出発点は正確な現状認識からである。レベル7に至ったからには 、その厳しい現実を直視し、放射性物質の観測体制から住民避難、食品の出荷制限・解除の在り方などを臨機応変に見直し、長期化に備えた対策に切り替える必要がある。

 「チェルノブイリ並み」という表面的なイメージだけが世界に広がれば、被災地復興や 日本経済に大きなマイナスとなる。実際、外国メディアは即座に反応し、一部で過剰な報道も出ている。風評の世界的な拡散防止もこれからが正念場である。

 チェルノブイリのような犠牲者、健康被害は生じていないとしても、原発4基が同時に 事故を起こし、放射性物質の漏出がこれだけ長期にわたって続く事態は世界で例がない。ましてや原発では世界トップ水準の技術力を誇っていた日本での事故である。旧ソ連時代のチェルノブイリとは違った意味で世界に与えた衝撃は大きく、政府の対応能力もさらに厳しい視線が注がれるだろう。

 東京電力幹部からは「チェルノブイリを超えるかもしれない」との発言もあったが、そ うした可能性を示すなら根拠も丁寧に示さないと不安をあおるだけである。政府も東電も、情報開示の在り方がこれまで以上に問われることを認識してほしい。

◎北陸経済下方修正 部品調達難の影響じわり
 東日本大震災による生産設備の被災で、広い分野の部品供給が滞り、北陸の経済活動に も大きな打撃を及ぼしている。特に主力の電気機械や自動車関連の部材調達難は深刻で、住宅資材の不足も目に付く。生産の減少は自動車や住宅販売など消費部門に影を落とし、買い控えの影響もあって、日銀の地域経済報告「さくらレポート」は全国9地区のうち北陸はじめ7地区の景気判断を下方修正した。

 部材調達難に加えて、原油や原材料高の影響もあり、長期化すれば企業や家計の所得の 減少は避けられない。せめて企業の景況感や消費者心理がこれ以上冷え込まないよう、過度な消費自粛ムードを払しょくしたい。

 日銀金沢支店の4月の金融経済月報を見ると、輸出はスマートフォン関連や液晶テレビ 、パソコンなどのアジア向けが拡大し、一般機械の受注も高水準ながら、電子部品や自動車部品関連で部材の不足が響き、一部で生産調整の動きがある。繊維も自動車内装材などの非衣料品向けが減っている。現在の供給難が解消されれば、輸出増加の後押しを受けて生産活動は回復していくとの見方も強いだけに、部材不足というボトルネックの解消が急務になる。

 北陸の個人消費については、震災後の生産調整の影響で納車が遅れている自動車販売が 大きく落ち込み、家電もパソコンやデジタルカメラなどで買い控えの動きが広がっている。2月の売り上げが好調だった百貨店・スーパーは震災後、高級雑貨や衣料品、贈答用の食品などが低調で、足元が怪しくなってきた。同じように下げ止まり傾向にあった温泉地の宿泊予約や旅行もキャンセルが多発し、新規予約も減っている。

 有効求人倍率は一昨年夏を底に上昇基調に転じ、所得も低水準ながら持ち直しの動きが みられるなか、生産調整が長引き、消費の低迷が続けば、いずれ雇用・所得に影響が及ぶ。福島第1原発事故や東電管内での電力不安の影響は当面続くだろうが、北陸を含めた西日本が元気を出して被災地を支えていく気概を持ちたい。