この前、ある人と話していて「プロ市民」の話になりました。私が「プロ市民って元々は良い意味の言葉だった」と言ったら、その人は知らなくて驚いていました。その人に限らず、プロ市民という用語は悪い意味にしか使ってない人が普通だと思います。
プロ市民という用語はネット上の政治評論系ページで広く定着しています。正確な定義はされていませんが、大体、以下のような人達の事を指します。
というように「プロ市民」という用語は、職業的市民活動家を非難するニュアンスが含まれるのですが、実はその用法は最近の事です。元々、プロ市民の"市民"は、○○市の市民という意味で、「自覚・責任感のあるしっかりとした市民」というようなものです。
「プロ市民」をネット検索すると、ある人物の名が浮かび上がってきます。桑原允彦という人で、推測するに「プロ市民」という用語を作り出したのは、この人ではないでしょうか。
桑原氏は、佐賀県鹿島市の市長です。鹿島市は佐賀市よりもう少し奥、長崎本線の肥前鹿島駅が市の代表駅です。
桑原氏がどんな人かは、松下政経塾の以下のページを参照。
頑張る首長 「佐賀県・鹿島市長 桑原 允彦 46歳これを読む限り、特に変なところのないまともな人です。ただ鹿島青年会議所理事長だったというから、まあ何という言うか、(教条主義的左翼ではない)ごく普通のおとなしい市民活動をしてきた人な訳です。桑原氏は様々なつながり(特に青年会議所つながり)で「プロ市民」という用語を広めていきます。以下に「プロ市民」が本来の意味で使われた例を列挙していきますが、桑原市長の名前が出てくる事が多いです。
鹿島市ページより
第5節 プロ市民が育つ参加と連携のまちづくり(計画実現のために) 地域社会の主体者である市民はプロ市民としての意識を持ち、行政に携わる者は行政事務の専門家として、それぞれの役割を分担しながら一緒になってまちづくりを進めていかなければならない時代を迎えています。それも地球的視点に立ち広域的に手を携えながら進めていく必要があります。 更に、行政は自らの進み方としての行政改革を推し進めていきます。それらを実現し21世紀の鹿島市づくりのために、体制づくりやシステムづくり、意識改革を推進する「プロ市民が育つ参加と連携のまちづくり」を進めます。 |
日時 平成11年2月14日(日)午後1時30分〜5時
■基調講演 「プロ市民が、まちの力」 講師:佐賀県鹿島市 市長 桑原 允彦
氏 |
まちづくり戦略集団フォーラム鹿島(しずおかまちづくりソフトステーションより) 〜プロ市民がドロンコ遊びでまちを変えた! 調査年月 平成10年7月 鹿島ガタンリピックはF鹿島が主催、今年で14回継続。干潟で泥だらけに成って潟スキーや綱引き競技を楽しむスポーツイベント。F鹿島の目的である地域活性化の手段として戦略的に企画運営され、人口3万5千人のまちに一日で外国人留学生も含め約五万人を超える交流人口を集める一方で、実行委員会方式によるプロセスによってプロ市民の養成機関として位置づけられ、市民主導のメインイベントとして、また、市民の誇りの醸成に大きく貢献している様子がうかがわれました。 |
鹿児島青年会議所より「コミュニティ」
「プロ市民」を育てることがコミュニティの役割 市民主導社会において、行政がまちづくりのプロだとするならば、その一方で行政と一体となってまちづくりを行う市民もプロでなければならないと思います。佐賀県鹿島市の桑原充彦市長はこのような市民を「プロ市民」と呼びました。 |
JCはプロ市民という意識を持つことが必要で、足らないものを補う組織として色々な事に対処する役割 |
穂の国まちづくりネットワークより「設立総会パネルディスカッション」 佐賀県の鹿島市の桑原市長が“プロ市民(市民としてのプロ)”といっています。同時に行政も本来やらなくてはいけないところでプロにならなければならないのです。そして、市民のプロと行政のプロとの責任をはっきりしてゆくことが大事になります。そのためにこのネットワークのなかに行政の人をいれることです。 |
市民は地方政府である市役所に情報公開を求め、自分たちで出来ることは自分で処理する、市行政に頼むのはどの分野かの選択ができるアマチュア「住民」からプロ「市民」への発想の転換を図ること。 |
富士宮青年会議所より 21の提言 2.ひとりひとりが主役となるしくみ(地域交流型ネットワーキング)
このようなシステムを持つ社会では、積極的な市民参加無くしては社会は成立しません。文化基盤、生活基盤、経済基盤の整備は必修ですが、あわせてひとりひとりが主役として行動できる「プロ市民」の育成を含んだ人財基盤の整備も不可欠となります。 |
以上の文章は今読むと大変に違和感を感じますが(特に「プロ市民の育成」というくだり)、職業的活動家という意味を取り払ってしまえば、どうって事の無い内容です。そして、インターネットが普及する遥か前からこの用語があった事も分かります。
それでは、職業的活動家の意味の「プロ市民」の初出はいつか。これは良く分かりません。よく考えれば、私が2ちゃんを始めた去年の3月頃は、そんな言葉は無かったように思います。
そこでマスコミ板の「朝日の基地外投稿」というシリーズスレッドをサンプルに挙げ、悪い意味での「プロ市民」という用語がいつ頃からあったのか調べてみましょう。このスレッドは2000年6月24日にパート1が立ってから、パート30になった現在でも書き込みが続いているという、マスコミ板No1の人気スレッドです。このスレッド、最初の頃はプロ市民なんて用語は全く現れませんでした。part6(2001年7月)で、投稿者の名前を検索して市民活動家としての素性を暴くという事が始まっても、「プロ市民」という用語は使われませんでした。
このスレッドでの「プロ市民」の初出は、以下のレスです。
朝日の基地外投稿 第9面
|
これ以降、このスレッドでは「プロ市民」が頻発するようになります。だから2ちゃんでの発祥は昨年の10月頃だと思って良いでしょう。これより古い用例がなかなか検出出来ないので、もしかしたら、これが発祥なのかも知れません。ただ>>912は何の説明もなく、いきなりプロ市民と切り出しているので、もしかしたらもっと前から使われていたのか、それとも、>>912の脳内では「プロ市民」なんて当たり前の用語だったのか・・・。
ちなみに政治思想板の以下のスレッドで、私もプロ市民にされていました。
http://tmp.2ch.net/test/read.cgi/sisou/1021552014/
追加
・・・とここまで書いて昨日は寝たら、知り合いのmatsuさんから、悪い意味での「プロ市民」の初出を教えてもらいました。以下のスレッドです。
市民団体にふさわしい名前を・・
プロの市民 157 名前: 文責:名無しさん 投稿日: 2001/08/20(月) 08:04 >>45 170 名前: 文責:名無しさん 投稿日: 2001/08/20(月) 14:03 >>45 321 名前: 文責:名無しさん 投稿日: 01/08/31 00:07 ID:IY8cjzhA プロ市民 439 名前: 文責:名無しさん 投稿日: 01/09/09 18:33 ID:S04reJLQ 45、最高! 440 名前: 285じゃなく45だった 投稿日: 01/09/09 18:52 ID:xv3oa2bw >439 441 名前: 外交寒 投稿日: 01/09/09 18:59 ID:0wee2G8E 〔プロの市民〕に決まりかな 451 名前: 文責:名無しさん 投稿日: 01/09/10 06:47 ID:jVpEESEg プロ市民に一票 526 名前: 文責:名無しさん 投稿日: 01/09/23 02:01 ID:NSj8e6VA >>45 |
・・・そう言えば、私もこのスレッドリアルタイムで眺めていたような気がする。すると、「プロ市民」は別の人物によって、別の定義が与えられた事になります。桑原市長には気の毒ですが、「プロ市民」が2ちゃん語として定着してしまった以上、元の良い意味で使うのは最早不可能です。
ちなみに「○○に新しい名前をつけよう」という系統のスレッドは結構前からありますが、その中の大御所はやっぱり「珍走団」でしょう。