車についてたら怖いものシリーズ『スギ花粉』


<オープニング>


 春先から初夏にかけて人類を襲う凶悪なる存在。
 呪われし樹木から放たれた悪しき妖精達は今日も人々を無差別に襲っていた。
 その名も……『花粉』!
 
「ほーらほら、黄色い粉が舞いますよー」
「やめろおおおおお! やめてくれええええええ!!」
 黒板消しをぽふぽふするまおまおを見て、一部生徒が悲鳴をあげていた。
 分かる人は分かるだろう。この時期に見る黄色い粉(主に杉から出る)の凶悪さを!
「コホン、実は『さまよえる舵輪』のメガリスゴーストが現れてしまったんです。略してメガダーリン」
「略さなくてよろしい」
 静かに突っ込む一同。
 まおまおは黒板消しを一旦置いて説明を始めた。
 黒板にはメガリスゴーストが現れる時間と場所が書かれており、どうやらその場所で待ち伏せすれば戦闘に持ち込めるらしい。
 が、そんなのただのお膳立てなんですよって勢いでまおまおは机を叩いた。
「皆さんも知っているでしょう。凶悪なあの粉……くしゃみ鼻水そして涙!」
 くわっと朝っての方向を見上げるまおまお。
「今回のメガダーリンは、そんな『スギ花粉』を武器にしているのです!」
「うわああああああああああああ!!」
「それはもう、全体に散布しまくりです!」
「嫌だああああああああああああああああああ!!」
 マスクを着用していた能力者数名がダッシュで逃げた。
 筆者的にも是非逃げたい。
 軽自動車の天井に散布マッシーンがくっついてるだけとは言えダッシュで逃げたい。
 そんな中、日頃そんな悩みを抱えていない健康な生徒数名が手を上げた。
「俺達、別に花粉症じゃないんだけど」
「大丈夫です……」
 ふっと優しい笑みを浮かべ、まおまおは言う。
「問答無用で症状が出ます!」
「嫌だああああああああああああああああああ!!」
 頭を抱える能力者一同。
 そんな中で、まおまおは(さりげなくマスクを着用して)にっこり笑った。
「それでは皆さん、必ず、絶対、なんとしても倒して来て下さ――っくしょい!」

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参加者
蒼穹・克(碧羅蒼天・b05986)
東野・桜(暁に舞え煌きの散華・b07659)
錘江田・水歌(鬼火・b23273)
十六夜・蒼夜(インフィニティゼロ・b44935)
涼風・ユエル(高校生真貴種ヴァンパイア・b47845)
栢沼・さとる(メテオリックハイウィザード・b53827)
キリーズ・ヴェルガグズ(気まぐれ過ぎる野良猫・b56856)
遠野・英史(魔術師・b77804)



<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

蒼穹・克(碧羅蒼天・b05986)
○心情
これは…恐ろしいゴーストですね
極度の花粉アレルギーでもない限り命の危険はありませんが
周りに与える不快指数は
これまで戦ってきた相手の中でも有数ですよ

カレーの具にもできませんしねぇ
杉カレーとか花粉カレーなんて食べたくない以前に作りたくないです

何にせよ、やることはいつも通り
カレーに敵を打ち倒すのみです

○花粉
私自身は花粉症というわけじゃないんですけど
知り合いの方がものすごくひどかったのを覚えています
なんとしても阻止しておきたいですね

防塵マスクにガスマスクを装備し
さらに私のソウルフードカレーを持ち込むことで精神力強化
カレーを食べれば勇気100倍です
浴びても気力が回復する(気がするだけ
私にとってのギンギンカイザーみたいなもんです

あ、でも…カレーを食べるためにはマスクを外さないと…じょ、冗談じゃ…

○戦闘
初手はクルセイドモードで自己強化
後はフロストファングから龍尾脚のコンボを叩き込みます
動いているところが狙いにくいなら
ターンする所やとまった所を狙っておきます

植物なら激しい寒暖には弱いはずです
味方の炎系のアビリティに魔氷を組み合わせ
凍える中にもスパイシーな一撃で打ち倒すとしましょう

にしてもこの杉、どうにかしてカレーに使えませんかね?
お皿やフォーク、スプーンなどの食器にするとか
カレーの香りを引き立てる何かに利用するとか

どちらにしろ、花粉カレーはなしの方向で行きますか…

東野・桜(暁に舞え煌きの散華・b07659)
『今年のワインはいい出来である』
『今年の花粉orインフルエンザは特に厳しい』
……毎年のように出てくるこれらに関しての情報はアテにしないようにしている。
まあ俺は花粉症ではないのでそもそも無縁だったが、
無理矢理症状を引き出されるとは恐ろしいものだな。
未経験の事態にうろたえないようにしなくては……
(ポケットに忍ばせたハンカチとティッシュを確認しつつ)

戦闘は、黒燐奏甲の強化を自分に施した後、さよならの指先で接近して攻撃。
超マヒ等のバッドステータスを与えて動きを封じるのを狙う。
「面倒な敵だ……直ぐに終わらせてやるっくしゅん」

錘江田らが何か試すらしいので、その様子を鼻をかみながら眺める。
それらがやり終わったら一応黒燐奏甲をかけて回復しておいてやろう。
「……うまく行くかどうかは兎も角、やってみようとするその心意気は(ずびー」
「……お疲れ。」(かなり投げやりに奏甲)

時間経過と共に酷くなる症状に段々苛立ちと怒りが募る。
「っくしゅん、全く、どんな嫌がらせに特化したゴーストだ……へくしょっ!」
「人をこんな目に合わせるとはゲホゲホッ……絶対に許さゴホッガハァ!」

トドメには渾身のさよならの指先を、
必ずクリティカルを叩き出すくらいの心意気で。
「げほがはっ……、滅びろぉぉぉオぉぉぉ!!!」

終戦後は冷静さを取り戻し、戦いを振り返りながらもう一度鼻をかむ
「憎しみを露にしていた過去の自分を垣間見たようだ……、」
ずびー。

錘江田・水歌(鬼火・b23273)
◆心境
花粉は知り合いの様子から酷さは理解しているけど
自分は無いので花粉に対する恨みが少ないのよね

しかも美しさも無ければ地獄は何時も覚悟中という
…まぁ何時も通り尽力を尽くすだけよ
うん、何か悪いと思うわ

◆個人行動
終始第二口調
会話は必要最低限

戦闘前に事前にホームセンターでまきびし代わりの釘等を大量購入
戦場の両端に満遍なく散布しパンクさせ足止めを試みる
必要ならランプを点ける

成功したら花粉発生地が固定出来たので
あまり酷い症状の人はそこから範囲外に一時避難するよう指示
成功しなければ相手を石化や追い込みで足止めし
極力花粉を分散させないよう努める

自分は詠唱銀製のゴーグル付き完全防塵マスクに
塗るマスクや花粉症用の医薬品を服用し完全防備
無駄?無駄でも諦めて何もやらないよりましでしょう?
でもあまりにも花粉が酷い人が居ればマスクは譲るわ

最初に幻楼七星光等で足止めをした後
足止め中にギリギリ相手に攻撃が届かない位置へ移動
その後花粉が酷い人と状態異常者が3人以上で慈愛の舞を
花粉避けの移動の必要が無ければ射撃攻撃で撃破
「さて、動かないで頂戴」
「癒せ」
「穿て」

…気のせいでありたいけど
石化しても浄化しても花粉が減らないのは何故…

「…………クチュン」
(見目に反した可愛らしいくしゃみ)

(硬直)

「…確実に止めるわ」
(何時も通りの無表情ながら九尾が禍々しくうねってます。何か恥ずかしかった模様)


戦闘終了後は釘回収等の事後処理を

十六夜・蒼夜(インフィニティゼロ・b44935)
花粉かぁ…きっついんだよなぁ…ってなんで舵輪なのに花粉?
きっと気にしたら負けなんだろうね

「はっはっは、万年鼻炎のボクに花粉症なんて
関係な…っくしょん!」(ずびーっと鼻かみ
やっぱり効いたようです。

こうなったら次の手だ!
鼻炎スプレー!
これをこうぷしっとすれば…鼻すっきり!
よしこれで解決…っくしゅん!
だめだったようです。

むぅ、やっぱり根本から潰さなきゃだめなのね
蒼の魔弾で一気に決着をつけるよっ!
…花粉が大量に舞ってる所に火花…って
まさかとは思うけど爆発したりはしないよね?
狙えそうならタイヤを狙って動けなくならないか
試してみるんだよー

【戦闘後】
ふぅ、嫌な敵だった…
これで花粉症も解決!鼻もすっきり!!
…ってよく考えたら鼻炎だから関係ないじゃん!?

【呼び方】
同学年以下:名前+くん(ちゃん)
年上:名前+お兄ちゃん(お姉ちゃん)

涼風・ユエル(高校生真貴種ヴァンパイア・b47845)
っくしゅん!
ぅー…おっかしいなあ。ボクは花粉症じゃないのに…風邪引いたのかな…?(ぐす
花粉症ってこの数倍きついのかな…。(ずず…
だとしたら、この車は絶対放って置けないよねっくしゅん!うー…

メガダーリン(命名:まおまお)を見つけたら、駆け寄って指を突きつけ決めポーズ!
「見つけたよメガダーリン!
スギ花粉を撒き散らして花粉症を引き起こすなんて許せない!
魔法少女ドリーム☆ゆえるん、ただいま参上!
みんなの夢とお鼻はボクが守るっくしゅん!」
全然締まらない。

みんなが言う、無謀だと。
あるいは自爆行為だと。
でも、そんなの構うもんか。
ボクは…一番弱いところを、確実に狙う!
サンシャインドライブで極限まで高めたこの、頭突きで!!
「喰らえっ、ドリーム☆ヘッドバットっ!」
狙うのは…杉の木型の散布マシーン!
これさえ壊せb(噴出した花粉に包まれる
わっぷっ、げほっ、えほっ・・・っくしゅんっ!くしゅんっ、ひぐしゅんっ!(立て続けにくしゃみ連発)
こんなのにっくしゅん!ボクがっくしゅん!負けるかって・・・っくしゅんっ!

力の続く限り、ライジングヘッドバッドを打ち込みます。
最終的には精根尽き果てて花粉まみれになって転がってるかと。

ひぐ・・・くしゃみしすぎ、て、腹筋、いたい・・・っくしゅん!


ネタ重傷希望です。
スギ花粉で重傷負うって、凄くオイシイですよね!

栢沼・さとる(メテオリックハイウィザード・b53827)
【心情】
えっ…、花粉無差別散布とか、普通にテロの域じゃないですか…。
まあ、私は幸いにして花粉症ではないんですけれどね!
スギ花粉だって、人間の鼻じゃなくて雌しべに付きたかったでしょうに。
まあ、私は幸いにして花粉症ではないんですけれどね!!

【戦闘】
動物変身や黒燐憑依など、色々試される方も居そうな中で
私は敢えて生身で勝負に挑みますよ!
お友達がプレゼントしてくれた「ねこねこ救急セット」の中には
勿論花粉症対策グッズも入ってるもんねー!
とりあえず鼻につかなければいいんでしょと言わんばかりに
鼻腔内に塗布するタイプのお薬を事前に塗っておきます。

メガダーリンが動き回っているかどうか、
射撃アビリティで狙いをつける余裕があるかどうかで
攻撃方法を決めますね。
まずはどちらの場合でも一応お約束の魔弾の射手で自己強化、
それから狙えるようであれば距離を置いて蒼の魔弾奥義で攻撃です。
駄目そうならこちらから接近して術式通常攻撃。

!どちらの場合でも、鼻水とくしゃみ、目の痒さで大変なことに
なりながら涙目で戦います!

「み、皆さん大丈夫ですかー!?」
「うわあん、聞いてないここまで酷いなんて聞いてないですよう!」
「メディーック! いや、マジで、メディーック!!!」

メガネっ娘の誇りにかけて、目をこする時でも外さずに。

【事後】
…ぶへっくしょい!! ああ、まだムズムズします…。
え、これってまさか、花粉症デビュー…ですか!?

やだー!!

キリーズ・ヴェルガグズ(気まぐれ過ぎる野良猫・b56856)
・考えていることが表情に出る猫なのです
花粉症ではない俺。猫のまま近づく。
これってくしゃみして変身解除されたら凄いくしゃみになrプシッ!
◆if解除
「・・・凄いくしゃみだ」(鼻水垂らしながら)

◆ifnot解除
おお、ダメージは受けnプシップシィッ!
くしゃmプシッ!止まrヘプシュッ!
ヘシュッ!プシュッ!くしゃみっ!くるぶしソックス!
……全部くしゃみの音だzプシィッ!

・くーる(笑)
「折角だから、俺はこのクールキャラで行くぜっくしょぉぉい!」(そしてこの顔である)
まずは魔弾の射手。(キリッ(※本人視点)
「太古より続く魔よ、その力今こそ我に分け与え我を邪魔せんとする敵を打ち倒す力の糧となれ」
とか魔法陣を描きながらクールぶって言ってみるぜ!え?それは厨二?こまけぇこたぁいいんだよ!
詠唱中はくしゃみに邪魔されないとイイナー。

……いいやっ、もう限界だ!キャラ崩壊するね!
「ヒャッハァー!杉の木は消毒だー!」
炎の魔弾撃ちまくって、瞬断撃で伐採しかないだろjk。
「君がっ!ヘクシッ!するまでっ!斬るのをっ!ハクションッ!くしょいこんちくしょうがあああ!」
後スッゴイ涙出るんだなこれ、大人も子供もおねーさんもなRPGだったら絶対命中率下がるぐらいに出てる。

・あれ、ところで本体車じゃないっけ?
やっと倒せた、死ぬかと思った。主に鼻が。
花粉症の症状良く分かったけど、これが原因で俺も花粉症発症したりしないよな?ックション!

ヤダー!

遠野・英史(魔術師・b77804)
■心情
杉の木絶滅しろ…。
こんなのと運命の糸が繋がるなんて…ああ…(テンション極低)

■主な症状
くしゃみ、鼻水、鼻づまり。
目に皮膚の痒み。割と重症。
花粉症とは小学生からの付き合い。
この時期は薬が手放せない。

■対策
事前に花粉症の薬を飲んでおく。
マスク(沢山)
ポケットティッシュ(大量)
ビニール袋

マスクの良いところは、鼻水でても人にわからない事だよなあ。
一旦発症したら、後はマスクがあろうが…(遠い目)
発症自体は仕方ないけど、気持ち悪いんで鼻をかんだり、マスク変えたりするよ。
ゴミはきちんとビニール袋へ。

■作戦(予定)
冷静に状況を確認し、仲間と連携を取りながら行動。
なるべく花粉の薄そうな射程ギリギリのところに位置取る。
魔弾の射手で強化後、雷の魔弾で攻撃。
車を止めるため、パンク狙いでタイヤを攻撃。
HPが防具HPを割るようならリフレクトコアで回復。

■戦闘(実際)
何だよこれ……どこの悪夢の産物だよ……。
やめろ! 今すぐやめろよッ!

花粉で視界が黄色っぽくなると、予定していた作戦と冷静な判断が吹っ飛ぶ。
メンタルは弱い。

魔弾の射手を使用した後、雷の魔弾を撃ちまくる。
精神的にも肉体的にも狙いを付けるだけの余裕がないので、とにかく撃つ。
回復とかそういうのも考えない。連携って何ですか?
撃って撃って撃ちまくる。
作戦!? そんな余裕なんてないよ!
いいから早く壊れろ!

■戦闘後
もうやだ…(くしゃみと鼻水と涙でかなりぼろぼろ)




<リプレイ>

●家の前に杉並木作った奴出て来い!
 晴天!
 正午!
 アスファルト上!
 東野・桜(暁に舞え煌きの散華・b07659)はひたすら遠い目をして呟いた。
「今年のワインは良い出来だとか、今年の花粉とインフルは厳しいとか……そういう話はアテにしないようにしている」
 毎年記録的な花粉ってそれただの年表じゃねえか。毎年ひたすら危機感を煽りやがってからに畜生め。
 ……そこまで言ってはいないが、桜は口元にそっとハンカチを当てた。
 今回のメガリスゴーストのことを考える。
「無理矢理症状を引き出されるとは恐ろしいものだな。うろたえないようにしなくては」
「ええ、周りに与える不快指数はこれまでのゴーストで屈指ですよ」
 額に指を立てる蒼穹・克(碧羅蒼天・b05986)。
「……花粉はカレーの具にもできませんしねえ」
 おい何考えてるやめろ!
「花粉かぁ、きっついんだよなあ……でもなんでダリンなのに花粉?」
 十六夜・蒼夜(インフィニティゼロ・b44935)はふと振り向いてみたが、気にしたら負けだと察して前に向き直る。
 代わりと言ってはなんだが錘江田・水歌(鬼火・b23273)が口元に手を当てる。
「まあ、いつも通り尽力するだけよ……何か、悪いとは思うわ」
 自分達の後方でひたすらくしゃみする連中を見やりつつ、水歌は呟くのだった。

 一方。
「へっくし」
 遠野・英史(魔術師・b77804)は食パンみたいな立体マスクをつけて背中を丸めていた。
「こんなのと運命の糸が繋がるなんて……ああ」
「まあまあっくしゅん!」
 慰めようとした涼風・ユエル(高校生真貴種ヴァンパイア・b47845)がそのままくしゃみ。
「おっかしいなあ。ボクは花粉症じゃないのに……風邪ひいたかな。花粉症はこの数倍キツイらしいよね」
「え? ええそうですね。私は幸いにして花粉症ではないんですけどね!」
 栢沼・さとる(メテオリックハイウィザード・b53827)が謎の気迫を見せながら振返る。
 鼻内部に薬を塗ったのか少々呼吸が面倒そうである。
「花粉無差別テロとか、普通にテロの域じゃないですか……まあ私は幸いにして花粉症ではないんですけどね!」
 何故か二回言うさとるである。
 ……花粉症予備軍なんだろうか。
 そんな中、キリーズ・ヴェルガグズ(気まぐれ過ぎる野良猫・b56856)がクールな顔をして振り向いて見せた。
「大丈夫だ。俺は今回秘策を用意して来た」
「へえ、秘策ですか」
 錠剤飲みつつ相槌を打つ英史。
「ああ、とっておきだぜ」
 キリーズはニヤリと笑って、彼方の戦場へ目をやったのだった。

●鼻に蛇口つける手術っていくらかかるんだろう……。
「ぶえっくしょい!」
 キリーズは鼻水を流しながら仰向けに倒れていた。
「……凄いくしゃみだ」
 別に自分のくしゃみで倒れたわけではない。
 花粉カーに猫変身状態で突っ込んだからである。
 そりゃ解けますよ。
「まあ、ダメージはダメージ……だから」
 名指し難い目で見下ろす水歌。
 そんな彼女達の目の前には、世にも恐ろしきスギ花粉発生マッスィーン搭載メガリスゴーストが悠然と佇んでいた。
 水歌が予め撒いておいたまきびし的なものをめりめり踏み潰しながらこちらせ(あえてゆっくり)迫ってくる。
 対して優雅に身構える水歌。
「まあそういうものよねゴーストは…………ックシュン」
「…………」
「…………」
 ユエルと克が名指し難い目で水歌を見た。
 意外に可愛い声が出たとか、くしゃみは本性が出るものとか、そんなことは言わない。
 くしゃみの語尾にマモノとかつかない。
「確実に止めるわ……」
 無表情で何か怖いオーラを放つ水歌。
 むっくりと起き上がったキリーズが普通に身構える。
 クールキャラで始めた分、いきなりキャラを捨てるわけにはいかないのだろう。
「折角だから俺はこのクールキャラでいくぜっくしょい!」
 鼻水を飛ばすキリーズ。
 目を反らす克達。
「太古より続く魔よその力今こそ我にわっくしょえ邪魔せんとずる敵を打ち倒す糧とな……な……なぁっく……ふう」
 ぜーぜー息をしながら魔弾の射手を展開するキリーズ。
 目を反らす克。
 でもガスマスクを装備しているのでイマイチ表情の読めなかったりする。
 それだけでなく、防塵マスクやカレーライスもしっかり装備済みだ。
「……何故カレー」
「カレーは私にとってのギンギンカイザーみたいなものです。これを食べれば勇気百倍。浴びても気力が回復します」
「浴びても!?」
 人間の常識を多少超えることを言う克に、ユエルは珍獣を見――間違えた、尊敬の眼差しを向けた。
「あ、でもカレーを食べるにはマスク外さないといけませんね」
「…………」
「…………」
 顔を見合わせる克とユエル。
 何かを察したユエルは話を打ち切ってメガダーリンへと向き直る。
 (メガダーリンとは、メガリスゴーストさまよえる舵輪タイプの略である)
「見つけたわよメガダーリン!」
 これまでの900字に渡るやり取りなど初めから無かったかの如く、ユエルはメガダーリンににじり寄った。
「スギ花粉を撒き散らして花粉症を引き起こすなんて許せない! 魔法少女ドリーム☆ゆえるん、只今参上!」
 お前は別のメガリスゴースト戦に来い。
 そんな外野声を跳ね除けサンシャインドライブ発動。
「みんなの夢とお鼻はボクが守っくしゅん!」
 ユエルは、盛大に決まり文句を外すのだった。

 で、他のメンバーはと言うと。
「うわあああああん聞いてない! ここまで酷いなんて聞いてないですよう!」
「なんだよこれ、どこの悪夢の産物だよ!」
 さとると英史が口元を押さえながら涙を流していた。
 いや別に誰かと感動の再会を果たしたとかじゃなくて。
 メガダーリンがひたすら黄色い粉を散布しまくっているのである。
 必死に蒼の魔弾やら雷の魔弾を叩き込むさとると英史。
「やめろ! 今すぐやめろー!」
「メディーック! いやまじでメディーック!」
 そんな中、蒼夜は堂々と胸を張ってみせる。
「はっはっは。万年鼻炎のボクにとって花粉症なんて関係な……っくしょん!」
「効いてるな……」
 ずびーっと鼻をかみながら呟く桜。
「い、いや、今日はもう一つ手を用意してるんだ」
「上手くいくかは兎も角やってみろ」
 ずびーっと鼻をかむ蒼夜と桜。
「はい、鼻炎スプレー!」
 ぱらぱらっぱぱー!
 蒼夜は効果音つきで取り出したスプレーを鼻に当て、しゅっと鼻の奥へと吹きかけた。
「よし、これで解――っくしゅん!」
「…………お疲れ」
 諸行無常。
 桜は小さく呟いて結晶輪を振り上げた。
「面倒な敵だ。すぐに終わらせてやっくしょん!」
 斜め下を向いてくしゃみする桜。
「全く、嫌がらせに特化したゴーストっくしょい!」
 身体をがくんと傾ける桜。
「人をこんな目に合わせるとはっく……ごほっ! ゲホッゴホガハァ!」
 仰向けになった直後にびくびく痙攣する桜。
 今の彼と同じ気持ちを味わいたい人は。仰向けの状態で鼻に粉末コショウを小さじ一杯づつ詰め込んでみよう。その所為でどんな地獄を見ても責任は持たないぞ!
「みなさん大丈夫でっくしゅ! うえ、うえっほふ!」
「前が、前が見えな……ぶぇっきしゅ!」
 そんな地獄の中、彼らは必死にもがくのだった。

●杉よ燃えろ
「……………………………………」
 無表情の水歌が、メガダーリン目掛けてひたすら幻楼七星光を撃ちまくっていた。
 鬼気迫るものがあり過ぎて誰も声をかけられない。
 その脇で泣きながら魔弾を連射するさとると英史。
「み、皆さん大丈夫ですか! ええと作戦何でしたっけ!?」
「そんな余裕なんてないよ! いいから早く壊れろ!」
 無数の魔弾が命中し、杉の木型花粉発生マッシーンがぐわんと揺れる。
 舞散る黄色い粉。
「うわあああああああああああ!」
「ぎゃあああああああああああ!」
「………………!」
 幻楼七星光を切らしたのかダッシュで射程圏外に逃げる水歌。
「だ、大丈夫ですか?」
「気のせいでありたいけど……石化しても花粉が減らないのは何故かしら」
「いや、それはちょっと……」
 色々答え辛い克。
 彼はガスマスクをつけたままメガダーリンへと突撃を始める。
 ちなみに花粉症は今回BS扱いなのでマスクをしてても意味が無い。
 マスクの下は大変なことになっている筈だが、あえて平然と振舞う克である。
「凍える中にもスパイシーな一撃で、打ち倒すとしましょう」
 メガダーリンにフロストファングを叩き込む。
 そこから更に龍尾脚。
 ぐわんと揺られたメガダーリン。
 舞散る黄色い粉。
「ぎゃああああああああああ!」
「ひゃああああああああああ!」
 悲鳴をあげるさとる達。
 蒼夜は口元を覆いながら魔道書を構える。
「……所で、粉が大量に舞ってる中に火花散らしても爆発しないよね」
「いいから撃て!」
「わ、分かった!」
 蒼夜、蒼の魔弾発射。
 メガダーリンの動きが少しだけ止まる。
「今だー!」
 その隙を狙っていた。
 ユエルはクラウチングスタートの態勢から猛然とダッシュする。
 今までかけられた言葉を思い出しながら、ユエルはぐっと拳を握った。
 無謀だと。
 自爆行為だと。
 皆から言われたが構わない。
「ボクは一番弱い所を狙う。極限まで高めた……この頭突きで!」
「頭突きで!?」
 身を乗り出す蒼夜と桜。
「やめろ、杉に頭から突っ込むなんて!」
「食らえドリーム☆ヘッドバット!」
「ユエルーーーーーーーーー!!」
 ライジングヘッドバットで突っ込んでいくユエル。
 大きくしなる杉の木マシーン。
 ばさばさ落ちる黄色い粉。
「わっぷ! げほっえっほえほ、こんなのにボクが負けっしゅ! げひゅ! わふゆふっ!」
「ユエルさーーーーーーーーん!!」
「駄目だ、あいつはもう助からない!」
 黄色くなって転がるユエル。その姿から桜は咄嗟に目をそむけた。
 キリーズがしゅばっとレイピアを振り上げる。
「ヒャッハァー! 杉の木は消毒だー!」
 炎の魔弾乱射。
 クールキャラの壊れた瞬間である。
 炎の上がった杉の木目掛けて桜とキリーズが突っ込んでいく。
「君がっックシ! するまでっ! 斬るのを! やめックション! こんちくしょうがあああああ!」
「うおおおお滅びろおおおおおおおおおお!!」
 瞬断撃とさよならの指先が打ち込まれる。
 そして。
 ある意味今年最強のメガリスゴースト杉花粉は、ただのスクラップへと姿を変えたのであった。

●ニドトコナイデッ!
「憎しみを露にしていた過去の自分を垣間見たようだ」
「……………………」
 一緒に鼻をかむ桜と水歌。
 その横で、蒼夜は額の汗を拭って微笑んだ。
「これで花粉症も解決。鼻もすっきり!」
「元から鼻炎だったんじゃ?」
「ハッ……意味無いじゃん!」
 頭を抱えて蹲る蒼夜。
「恐ろしい敵でしたね。にしてもこの杉、どうにかしてカレーに使えませんかねぇ……」
 涼しい顔(ガスマスク)で呟く克。
 桜達が一瞬で振返った。
「おいまじでやめろ」
「皿やスプーンにするとか香りを引き立てる何かに利用するとか」
「本気でやめて!」
「そうだ。もう花粉はやだ……」
 鼻をつまんで、涙声で呟く英史。
 その後ろでは、ユエルがうつ伏せのままひたすら痙攣していた。
 彼女と同じ気持ちを味わいたい人は洗面器にタバスコと水を1対1で満たし顔を突っ込んでみよう。そして鼻から全部吸え。
「…………」
「…………」
 何故やった。とは聞かないキリーズとさとる。
「それにしても、大変な敵でしたね。まだむずむずします」
「ああ、これが切欠で花粉症デビューしたりしないよな?」
 顔を見合わせる二人。
 そしてほぼ同時に……。
「「クシュン!」」

 その日。
 果てしなく青い空に何人かの絶叫が響き渡ったと言う。


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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/04/07
得票数:楽しい4  笑える8 
冒険結果:成功!
重傷者:涼風・ユエル(高校生真貴種ヴァンパイア・b47845) 
死亡者:なし
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