政府は、東日本大震災の復旧・復興計画の青写真を描く「復興構想会議」(議長・五百旗頭真防衛大学校長)を設置し、14日に初会合を開く。会議のビジョンをもとに政府が具体的な復興計画を策定し、実行に移すというが、未曾有の大災害を前に、菅直人首相率いる日本政府は次々と本部や会議ばかり乱立させている。対策の遅れも指摘されているが、これで大丈夫なのか。
「会議は踊る、されど進まず」−。
欧州諸国が1814年、フランス革命とナポレオン戦争終結後の秩序を再構築するために開いたウィーン会議が、利害対立により遅々として進まなかったことを皮肉った世界史上の有名な言葉だ。最近の政府を見ていると、こうした歴史を学んでいないように思えてならない。
枝野幸男官房長官は11日の記者会見で、復興構想会議について、「オールジャパンの専門家、有識者を網羅した」と人選に胸を張った。
しかし、構想会議には、達増拓也・岩手県知事を除くと官僚OBがいない。復興会議のモデルとなった「阪神・淡路復興委員会」では下河辺淳・元国交事務次官、後藤田正晴元官房長官といった大物官僚OBを要所に配置した。今回の人選を見る限り、各省庁の連携に気を配り、官僚を使いこなせるかは疑問だ。
そもそも、政府・与党は3月の震災発生後、雨後の竹の子のように「本部」や「会議」を設置した。組織の構成や仕事の内容を整理するために政府が作った内部資料だけで十数ページに上る。各会議間の調整はできていない一方、各省庁スタッフは会議の資料作りに追われている。
これにより、「指揮系統や役割分担がハッキリしない」(民主党中堅議員)、「被災者が求めている課題への政府対応は遅くなるばかり」(民主党閣僚経験者)、「責任の所在がわかりにくくなり、かえって非効率だ」(政府筋)などの弊害が指摘されている。
この状況を西岡武夫参院議長は「会議が踊っている」と喝破した。
冒頭のウィーン会議は、招集半年後にナポレオンが幽閉されていたエルバ島を脱出し、これに危機感を抱いた参加各国が電光石火で妥協して、ウィーン体制が構築された。日本政府もさらなる危機に見舞われないと、迅速に動き出さないのか。