2011年4月12日21時43分
観光庁の溝畑宏長官は12日、東日本大震災の影響で東北・関東地方のホテル・旅館で約39万人分の宿泊キャンセルが生じたことを明らかにした。旅行の自粛ムードが広がり、被災地だけではなく、各地で旅行客が激減している。
この日の参院国土交通委員会で、長沢広明議員(公明)の質問に答えた。溝畑氏は「東北・関東以外の地域でも約17万人分の宿泊がキャンセルされている」と述べ、「極めて深刻な影響だ」との認識を示した。原発事故による放射性物質の拡散への心配が旅行者に広がっているほか、全国的にも各種のイベントが中止され、旅行需要が急減。諸外国が日本への渡航自粛を打ち出していることも響いているとみられる。
キャンセル数は、業界団体の調査に基づいて算出した。対象は震災翌日の3月12日から4月8日までで、データが集まらなかった岩手と千葉を除く東北5県と関東の1都5県。業界団体によると、キャンセル数が宿泊予定者の3〜4割にのぼった地域も複数あるという。
国内旅行の契約件数について、業界団体が加盟社に聞いたところ、震災1週間前と3月末で比べると、20〜40%減った。4〜5月分も前年同期より20〜45%落ち込むという。
こうした事態が続けば、ホテルや旅館などが経営難に陥る心配もある。このため、観光庁と中小企業庁は事業主への運転資金、設備資金などの支援策を検討する。さらに、観光庁は12日付で自治体や旅行業界などに対し、「被災を免れた地域から観光面で積極的に発信することは被災地の応援につながる」とする異例の通知を出し、観光に積極的に取り組むよう求めた。(橋田正城)