2011年3月31日8時26分
東日本大震災で、ビール大手の主力工場が稼働停止や生産減を余儀なくされている。復旧のめどがたたない工場も多く、今夏の供給不足が懸念されている。
「商品の受注や出荷を一部停止し、ご迷惑をかけた」
30日、東京都内で開かれたサッポロホールディングスの株主総会で、村上隆男会長は株主にこう陳謝した。
子会社サッポロビールは、東日本のほぼ全域に行き渡るビール、発泡酒、第3のビールを生産する宮城と千葉の2工場が被災した。北海道が発祥の同社はもともと東北地方に強い営業基盤をもっている。だが、仙台工場は復旧のめどがまったくたたないうえ、28日に再開した千葉工場も缶詰め作業のみで、ビールの生産はまだ先だ。
国内首位のアサヒビールも福島と茨城両県の2工場が被災した。同社国内最大の茨城工場は、22日から主力の「スーパードライ」の仕込みを再開したものの、六つある生産ラインのうち一部しか動かせていない。このままではビール系飲料の生産能力が最大約3割減になる恐れもある。
キリンビールも2工場が被災して、生産能力は最大約2割減となる見通しだ。
太平洋に面する宮城、福島、茨城の3県は東京からの交通の便の良さから、大手各社が古くから生産拠点を構えてきた。集中して立地していたことが、被害の拡大につながった形だ。
各社は被害のなかった西日本の工場をフル稼働させて、東北や関東の品不足の解消に努めている。しかし、ガソリン不足や交通網の混乱もあり、「商品を届けるだけでひと苦労」というのが実情で、スーパーや飲食店の発注にこたえきれていないという。
夏までに復旧しなければ、東日本のみならず、全国でビールの供給能力が不足しかねない。各社の経営に与える影響も大きいとみられる。(南日慶子、内藤尚志)