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障害者郵便割引不正:証拠改ざん 前田元検事に実刑判決、1年6月--大阪地裁

 ◇「司法の根幹破壊」

 郵便不正事件の証拠品だったフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして、証拠隠滅罪に問われた大阪地検特捜部の元主任検事、前田恒彦被告(43)に対し、大阪地裁は12日、懲役1年6月(求刑・懲役2年)の実刑判決を言い渡した。中川博之裁判長は「真相解明を目的とする刑事司法の根幹を破壊しかねない所業で、極めて強い非難に値する」と実刑の理由を述べた。

 判決によると、前田元検事は、厚生労働省の公的証明書が不正に発行された郵便不正事件の捜査で、09年7月13日、地検庁舎内で、同省元係長、上村(かみむら)勉被告(41)の自宅から押収したFDのデータを改ざんした。中川裁判長は「検察官は有罪立証の妨げになる消極証拠とも誠実に向き合う態度が求められている」と指摘。前田元検事が、裁判が紛糾することや、上司から叱責されるのを恐れてデータを改変したことについて「主任検事の重圧があったにせよ極めて短絡的。検察官の行為として常軌を逸している」と批判した。

 弁護側は、改ざんされたFDデータは、厚労省元局長、村木厚子さん(55)=無罪確定=の有罪、無罪を決定付ける証拠とは言えないと主張していた。中川裁判長は「FDは重要な客観証拠。改変前のFDデータを記載した捜査報告書が作成されていなければ、村木さんに重大な不利益が生じるおそれがあった」と判断した。

 前田元検事の裁判では、検察、弁護側双方が、前田元検事の証拠改ざんを知りながら、元特捜部長、大坪弘道被告(57)と元特捜部副部長、佐賀元明被告(50)=ともに犯人隠避罪で起訴=が隠蔽(いんぺい)したと主張したが、判決は上司2人の対応については言及しなかった。

 大坪元部長と佐賀元副部長は、裁判前に争点を整理する公判前整理手続き中。2人は、起訴内容を全面否認している。前田元検事の裁判とは別の裁判官3人が担当し、異なる証拠や証人に基づいて審理される。【苅田伸宏】

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 ■ことば

 ◇証拠改ざん・隠蔽事件

 大阪地検特捜部は09年、公的証明書を不正に発行したとして、厚生労働省の現職局長だった村木厚子さん(55)を逮捕、起訴した。裁判で特捜部のずさんで強引な捜査が明らかになり、10年9月、村木さんは無罪になった。その後まもなく、特捜部に押収されたフロッピーディスク(FD)が、記録を書き換えられて還付されたことが報道で発覚。最高検は主任検事だった前田恒彦被告(43)を証拠隠滅容疑で逮捕した。前田元検事はFDデータが立証方針と合致しないのが疎ましく、村木さんを起訴した後、都合のいい内容に改ざん。改ざん前のデータが印刷されて捜査報告書に添付されているのを失念しており、二つの記録があることから改ざんが明白になった。最高検の捜査で10年1月末ごろ、証拠改ざんが地検内部で広まったが、過失の事案として処理されていたことも判明。当時の特捜部長、大坪弘道被告(57)と特捜部副部長、佐賀元明被告(50)が犯人隠避容疑で逮捕され、起訴された。大坪元部長ら2人は裁判で検察側と徹底抗戦する意向を表明している。

毎日新聞 2011年4月12日 西部夕刊

 
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