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東日本大震災:原発、事故の連鎖 冷却作業、さらに困難に 識者の話

 ◇吉川栄和・京都大名誉教授(原子炉工学)の話

 原子炉圧力容器内の圧力を下げるため、蒸気逃し弁を開けた結果、容器内で発生した水素が格納容器にある圧力抑制プールに導かれてたまり、そこの酸素と反応して水素爆発を起こしたのではないかと考えられる。圧力抑制プールが損傷を受けたことで、外界により多くの放射性物質が漏れ出る危険性が増した。

 圧力容器に海水を入れ続けないと、最悪の場合、高温の燃料が圧力容器の底を破って落下し、格納容器内に達する恐れがある。そうなると、さらにより多くの放射性物質が外に漏れる危険性がある。それを防ぐには圧力容器に海水を入れ続けなければならないが、今回の爆発で、格納容器内の放射線のレベルが高まるため、作業がより困難になるだろう。

 ◇有冨正憲・東京工業大原子炉工学研究所長(原子力熱工学)の話

 周辺の放射線量の値が下がらずに今後も高い値で推移するようなら、圧力抑制プールが破れて放射性物質が放出し続けている可能性がある。放射性物質の推移を注視する必要がある。

 ◇小林圭二・元京都大原子炉実験所講師(原子炉物理)の話

 格納容器を持つ原発の史上最悪の事態になった可能性がある。最後の砦(とりで)ともいえる封じ込め機能が失われたと考えられるからだ。格納容器につながる圧力抑制プール付近での爆発のような音は、(1)核燃料溶融で圧力容器をつき抜けて、落下して水蒸気爆発を起こした(2)何らかの構造物が落下した(3)水素爆発が起きた--などが考えられる。

 放射線の観測データではチェルノブイリ原発事故のレベルではないと思うが、被ばくという観点でも極めて重大な事態だ。今まで住民避難では後手後手になってきたが、制御できない状態なのだから、早めに広範囲の避難を指示すべきだ。

 ◇住田健二・大阪大名誉教授(原子炉工学)の話

 日本で経験したことのない事が次々と起きている。東京電力も原発内部で何が起きているか分からず、手探りで対応するうちに事態が進行しているのではないか。

 1、3号機では原子炉格納容器の閉じこめ機能がある程度、機能しているように見えた。2号機で何時間も燃料棒が完全に露出し、周辺で放射線量が上昇しているのなら、1、3号機での経験が生かされず、さらにエスカレートした段階に入ったと考えざるを得ない。

 ◇安斎育郎・立命館大名誉教授(放射線防護学)の話

 1時間当たり8217マイクロシーベルトという放射線量はこれまでよりも1桁近く高く、異常というほかない。現状の半径20キロ以内退避という方法は非現実的で、風向きなどを素早く情報提供し、機動的な退避計画を考えるべきだ。また重要なのは放射性物質の分析だ。ヨウ素131やセシウム137などが出ていれば、体内被ばくに対する備えも考えた方がいいだろう。

毎日新聞 2011年3月15日 東京夕刊

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