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東日本大震災:福島第1原発爆発 放射能、最悪事態 専門家、憂慮の声

 ◇プラントのもろさ露呈

 15日早朝に発生した福島第1原発2号機の圧力抑制プールの爆発。外部により多くの放射性物質が漏れ出ているとみられる。前日には同じ号機で原子炉圧力容器が「空だき状態」となり、燃料棒の一部が溶け出したばかり。圧力抑制プール内であってはならない水素爆発発生の可能性が原因として指摘されるなど、専門家からは事態を憂慮する声が相次いだ。

 東日本大震災で被災した福島第1原発で相次ぐ爆発などの深刻な事故は、命綱の電源を失った原発プラントのもろさを露呈した。15日午前にも2号機の原子炉格納容器の一部である圧力抑制プールが損傷した恐れもある爆発を起こしたのに続き、安全に停止していたはずの4号機でも使用済み核燃料プールで爆発・火災が発生した。高い放射線量が観測されるなど事態は悪化し、収拾のめどは立っていない。

 4号機の爆発は、水の入ったプールに保管されていた使用済み核燃料が何らかの原因で熱を持ち、発生した水素が爆発した。原因は、プールの水が減ったことなどが考えられ、その場合は高レベルの放射線を出す使用済み燃料がむき出しになった可能性もある。

 一方、2号機の圧力抑制プールは、原子炉本体の圧力容器が入っている原子炉格納容器の一部で、圧力容器内の圧力を下げる際に重要な役割を果たす。通常は水が張ってあり、炉内から出る放射線を遮蔽(しゃへい)する。ここが損傷すると、炉心の冷却が一層困難になるのみならず、周辺の放射線量が上昇したり、炉内の放射性物質が漏れる危険性が高まる。

 原子力事故の際、炉内の放射性物質の封じ込めが最重要だが、2号機では燃料棒は破損し炉内に溶け始めているとみられている。格納容器まで破損したとすると、圧力容器が「最後の砦(とりで)」となる。

 86年のチェルノブイリ原発事故(旧ソ連)では炉内の過熱を止めることができず、核燃料が破損。最終的には原子炉や建物を吹き飛ばす大事故を起こした。東電は、今のところ炉内の圧力が保たれていることなどから、「2号機の圧力容器の健全性は保たれている」としているが、地震発生から5日目を迎えても炉内を制御できていない。今回の地震は想定外の規模とはいえ、日本にとって原発利用のあり方も問われている。【西川拓】

 ◇「五重の壁」でカバー

 原発ではウラン燃料を核分裂させ、生み出した熱で発電している。その時に発生する放射性物質を外界に出さず閉じこめるため、原発は核燃料を「五重の壁」で覆う構造になっている。第1が、ウラン燃料を焼き固めたペレット▽第2が丈夫な金属の被覆管▽第3が厚さ約15センチの金属製の原子炉圧力容器▽第4が厚さ約3センチの鋼鉄製の原子炉格納容器▽そして最後の第5の壁が、厚さ1メートル以上の鉄筋コンクリート製の原子炉建屋(たてや)だ。

 2号機の爆発では、第4の壁の格納容器の一部が損傷した恐れがある。また、すでに炉心溶融が起きていることから、第1、第2の壁も損傷している。

 ◇福島第1原発2号機をめぐる動き

 <14日>

13:25 水を循環させて炉内の温度を下げる機能を喪失

18:22 燃料棒が完全に露出し「空だき」状態に

20時ごろ 注水を開始

21:34 燃料棒の半分程度まで水位が回復

23:20 再び燃料棒が完全に露出

 <15日>

1:10 原子炉圧力容器の弁を開け、海水の注入作業を再開

6:14 圧力抑制プール付近で爆発音がしてプール内の圧力が低下、東京電力の一部職員らが避難

6:28 燃料棒の露出は2.7メートル

8:31 福島第1原発正門付近で毎時8217マイクロシーベルトの放射線量を計測

毎日新聞 2011年3月15日 東京夕刊

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