東京電力は14日、東日本大震災で被災した福島第1原発2号機で原子炉の水位が低下し、長さが約4メートルある燃料棒が2時間以上にわたり、水面から完全に露出する「空だき状態」になったと発表した。その後、燃料棒は海水が注入され半分まで水中に入ったが、炉内の圧力が高くなるなどの影響で水が入らず、午後11時過ぎに再び完全露出した。15日午前0時すぎ、弁を開けて圧力を下げる対策を取った。相次ぐ重大トラブルに、東電や経済産業省原子力安全・保安院は対応に追われている。
東電によると、最初の「空だき状態」になったのは午後6時22分。午後8時ごろ注水が始まったが、午後8時50分まで空だき状態が続いた。燃料棒が長時間、完全に露出すると、燃料が損傷し炉内で固まって再臨界し圧力容器を破損。放射性物質が外部に漏れる。
保安院によると、同日午後1時25分、同発電所2号機で原子炉内の圧力を利用して水を循環させて炉内の温度を下げる機能が失われた。東電は、原子力災害対策特別措置法に基づき国に原子力緊急事態宣言を求めた。原子炉隔離時冷却系(RCIC)の機能が停止、注水できなくなったのが原因という。
東電は冷却機能を失った午後1時25分以降、給水する必要があったが、ポンプの数が不足した上、東電は給水のために炉内圧力を下げる弁の点検作業に手間取り、海水の注入準備に入ったのは同日午後4時34分。職員が他の作業に追われポンプの燃料が切れて停止、その後注水を再開して同日午後9時34分に半分に回復した。
保安院によると、最初の空だき状態を招いたのは、(1)冷却機能が喪失し(2)1~3号機の注水に使う消防車5台のポンプが同日午前に3号機で発生した水素爆発のため使用できなかった(3)ポンプの状態確認に追われ、2号機の圧力を抜く作業に手間取った--ことが響いた。9台のポンプ車を手配するなど対応を強化している。
保安院は「チェルノブイリ事故は高圧の条件で爆発的に圧力容器が破壊された。今回はかなり圧力を抜いており、同様な事故にならない」と説明した。
このほか、建屋内にたまった水素が爆発する可能性がある。東電は「3号機の爆発の影響で壁がはがれ、水素が出ている」として爆発の危険性が少ないとしている。3号機の水素爆発で発生した負傷者は11人でうち6人が被ばくした。
毎日新聞 2011年3月15日 東京朝刊