原発事故による住民被ばくが現実になった。どの程度心配したらいいのか。最小限に抑えるには何が必要か。専門家などへの取材をもとにまとめた。【根本毅】
Q 東北地方に住んでいる人は被ばくした可能性があるの?
A 今のところ地上に降り積もって大量の放射線を出す状況ではなさそうです。気になる人は、外出した後、顔や手、髪など露出している部分をよく洗い流してください。
Q 被ばくしたかどうか知りたい場合は?
A 原発がある自治体や大きな病院には「ガイガーカウンター」という測定装置があり、体に放射性物質が付着していないか調べることができます。今のところ、福島第1原発周辺の住民は避難しているので、強く汚染していることは考えにくいです。
Q 避難指示を受けたり、被ばくする可能性が高くなったら?
A 屋内退避指示が出たら、窓をしっかり閉め、エアコンや換気扇を使わないようにして、換気を最小限にします。やむをえず外出する場合は、マスクやぬれタオルなどで口・鼻を覆えば、放射性物質を体内に取り込む「体内被ばく」を最小限に抑えることができます。帰宅したら服を脱いで、ビニール袋に入れて口を縛り、すぐシャワーを浴びてください。それでも放射線が測定されるようなら、体内被ばくの可能性があるので、医師の診断を受けてください。
Q 「シーベルト」ってよく聞くけど。
A 被ばく量の単位です。放射線は病気の発見や治療のために使うこともあり、集団検診の胸部エックス線撮影では0・05ミリシーベルト、胸部CTスキャンはその100倍以上の数~20ミリシーベルト(ミリは1000分の1)程度の被ばくと考えたらいいでしょう。許容限度を超えてもすぐに健康に影響があるわけではありません。原発作業員の被ばく限度は年間50ミリシーベルト。白血球の一時的減少が見られるのが、250ミリシーベルト程度です。
Q ネットで見たけど、昆布を食べたら放射能が除去できるって本当?
A 重大事故の際に出る放射性ヨウ素は、体に取り込まれると甲状腺に集まる性質があります。これが甲状腺がんなどの原因になるため、予防策としてあらかじめ高濃度のヨウ素剤を服用するケースはあります。しかし、昆布に含まれるヨウ素は微量ですから、放射能を「除去」するような働きはありません。
毎日新聞 2011年3月14日 東京朝刊