巨大地震に見舞われ、復旧に手間取っていた福島第1原発1号機について東京電力は、原子炉内の圧力を抑えるため、弁を開いて放射性物質を大気中へ放出したほか、炉心溶融を止めるために原子炉内に海水を注入して冷却するという「荒業」を重ね、事態の収拾を図ることになった。
長沢啓行・大阪府立大名誉教授(生産管理システム学)は「今回のトラブルは、原発の耐震性への備えがすべて役立たず、かなり深刻な状態だったといえるだろう。海水を炉内へ入れるのは、炉を二度と使わない覚悟が必要だ。もし燃料棒が溶融していれば、使えなくなる可能性が高くなる。1号機は運転開始から40年になる。とうとう役割を終える時期がきたということではないか」と話す。
京都大原子炉実験所の小出裕章助教(原子核工学)によると、ホウ酸は、ウランが吸収する中性子をより多く吸収してしまうため、ホウ酸入りの海水で炉心を冷やすことは効果があるという。一方、「海水を入れるためのポンプを動かす電源が確保できず、今までやらなかったようだが、できるのならすぐ実行すべきだった」と対応の遅さを指摘する。
また、今回は「地震の規模が想定以上で、発電施設に不具合が生じた」と東電などが説明していることについて、「日本は世界一の地震国で、原子力発電をやるなら『想定していない地震』なんてそもそもあってはならない」と指摘した。【永山悦子、藤野基文】
毎日新聞 2011年3月13日 東京朝刊