一瞬のうちに分厚いコンクリートと鉄筋の頑丈な建屋を吹き飛ばした水素爆発は、どんな仕組みで起きたのか。
吉川栄和・京都大名誉教授(原子炉安全工学)によると、燃料棒に使用するジルコニウムは、高温になるほど水と反応しやすく、特に1100度を超えるとより反応性が高まる。
原子炉内でまず、高熱になったジルコニウムと水が反応して水素が発生。水素は配管などを通じて格納容器の外に漏れだし、建屋内にたまっていったとみられる。
水素は、空間内の体積の14%以上を占めると、酸素と反応し、爆発する性質がある。これが水素爆発だ。12日午後3時36分に起きた激しい爆発は、建屋内にたまった水素が限界量を超え、空気中の酸素と一気に反応したと考えられる。
吉川名誉教授は「そもそも地震後に非常用電源が作動して冷却水が十分に循環していれば、炉心溶融やその後の水素爆発には至らなかった。電源確保ができなかったことがすべての始まりだ」と指摘する。【須田桃子】
毎日新聞 2011年3月13日 東京朝刊