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東日本大震災:地震、大津波、原発で事故 国際社会に衝撃 「日本最悪の日」

事故を起こしたチェルノブイリ原発の4号炉=2011年1月14日、田中洋之撮影
事故を起こしたチェルノブイリ原発の4号炉=2011年1月14日、田中洋之撮影

 ◇「チェルノブイリ」想起、重大な関心 「世界が学ぶべき教訓」

 東日本大震災から一夜明けた12日、大津波による惨状が次第に明らかになり、さらに被災した福島では原発から放射性物質が漏れ出る事故が発生、各国メディアは「日本最悪の日」などと、驚きを持って大々的に報じた。各国政府は日本への震災支援に動く一方、旧ソ連の「チェルノブイリ原発」を想起させるような事故に、重大な関心を持って成り行きを注視している。

 ■ロシア

 【モスクワ田中洋之】12日付のロシア大衆紙「コムソモリスカヤ・プラウダ」は、東日本大震災で福島第1原発が被災したことについて「日本のチェルノブイリはロシアを脅かすか」と1面トップで報じた。ロシアやウクライナなどでは25年前に起きたチェルノブイリ原発事故の記憶が鮮明に残っている。

 ロシア当局は、日本に近い極東の沿海地方やサハリン州、ハバロフスク地方、カムチャツカ地方などで放射線の監視態勢を強化するなど、万一の事態に備えている。

 チェルノブイリ原発の元技師で、現在は被災者の救援活動に携わっているウクライナ在住のニコライ・イサエフさんは毎日新聞の取材に、「もし原子炉から漏れた放射能が雲の高さに達し、風で急速に広がればチェルノブイリと類似した事態となる」と警告した。

 ロシアの核関連企業「ロスエネルゴアトム」のアスモロフ第1副社長はタス通信に、「今回の出来事は全世界の原子力発電所が学ぶべき教訓だ」と指摘した。

 ウクライナ北部にあるチェルノブイリ原発から半径約30キロ以内は、今も放射能汚染で立ち入りが制限されている。爆発直後に4号炉を覆う形で造られたコンクリート製の「石棺」は老朽化が進み、新たな鋼鉄製のシェルターを建設する計画が進んでいるが、資金不足で目標とする15年までの完成は疑問視されている。ウクライナは今年から原発周辺への観光客受け入れを始めたが、地元では「まだ危険は残っている」と観光地化に反対する声が根強い。

 ■中国

 ◇「増設計画変更ない」

 【北京・成沢健一】中国環境保護省の張力軍次官は12日、北京で記者会見し、東日本大震災により福島原発で放射性物質が漏れたことについて「沿海都市の核安全観測装置を起動し、中国に影響を及ぼさないか監視している」と明らかにした。一方で、電力需要の急増に対応するために進めている原発増設計画に関しては変更がないことを強調した。

 張次官は「(中国)国家核安全局は日本の原子力安全・保安院と連絡を取り、状況を把握している」と説明、「現在のところ影響はなく、中国で稼働している13基の原発も正常だ」と述べた。また、張次官は「日本の原発施設が受けた地震の影響や事態の進展を注視しており、今後の計画に教訓として生かしたい」と強調しつつ、「原発を増設する決意と計画が変わることはない」と語った。

 ■韓国

 ◇大気の監視強める

 【ソウル西脇真一】福島第1原発1号機で発生した爆発事故は、韓国でも速報された。国内で約20基の原発が稼働して震災対策に関心があることに加え、自国への放射能の拡散を懸念している。聯合ニュースによると、韓国教育科学技術省や原子力安全技術院などは、福島原発にトラブルが発生した11日から対策チームを発足させ、大気の監視を強めてきた。

 聯合ニュースは12日、「国内原発は地震に対し安全か」との記事を配信。韓国の原発はマグニチュード6・5の地震が直下で発生しても耐えられるように設計され、さらに冷却装置が停止しても対処可能なシステムを備えているとの当局の説明を伝えた。

 ■米国

 ◇建設再開に冷や水

 【北米総局】米国は1979年、ペンシルベニア州で原発の燃料棒が溶けて放射能が漏れ出る「スリーマイル島原発事故」が発生したことを受け、国内での原発建設を全面的に停止。「クリーンエネルギー政策」を掲げるオバマ政権になり、原発建設を約30年ぶりに再開させたばかりだった。

 今回の事故が米国の原発政策に影響を及ぼすのは必至で、米ワシントン・ポスト紙(電子版)は、福島原発での爆発を速報。「チェルノブイリ原発事故以来の最も深刻な原発危機となる可能性」と伝えた。また「(今回の)地震が、放射性物質の放出に敏感だった日本の原子力発電の信頼性を揺るがせるのは間違いない」と指摘。その上で「米国においても、事故は(原発建設を推し進める)『原発ルネサンス』の支持者たちにとって打撃となるだろう」と米国への影響に言及した。

毎日新聞 2011年3月13日 東京朝刊

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