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日本人の「思いやり」につけこむ悪党ども
 

 今後、被害総額や彼女のディテールも明らかになっていくだろうが、それは彼女個人およびこの事件の問題に過ぎない。大切なのは、こうした相手にだまされないようにしなくてはいけないというところにある。

 会社との取引は、本質的に会社同士の契約行為である。実際には担当者が行うわけだが、その背後には会社があることを了解していることになる。彼女のように、秘書という立場を悪用した場合、だまされた側は彼女を信用したのではなく、彼女が所属している企業を信用したのである。

 では、だまされても仕方ない、となるのだろうか。そうではない。なぜかといえば、確認作業を怠っているからだ。秘書が行う業務に比べ、取引総額が逸脱していることも問題になる。仮に決済が行われていたとしても、相手側に確認を取る必要がある。

 詐欺師にだまされる人を調べると、この「確認行為を怠る」という例が多い。目の前にいる人間の雰囲気や肩書きを信じるあまり、「疑ったりしたら失礼になるのでは」と思ってしまうのだ。

 日本人は、世界でもっとも「思いやり」のある民族である。相手がどう思うかを気にして行動発言することが多い。自分がこうしたいから、自分がこう思うから、ではなく、相手がどう受け取るかどう思うかを気にするわけだ。

 余談だが、「思いやり」というのは外国語に訳しにくい言葉のひとつだという。まさに文化である。そしてそこを詐欺師が悪用することになる。

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