2011-01-13 22:28:28
ベライゾン版iPhone登場でau・ドコモから発売の可能性はあるか?
テーマ:iPhone
米最大手の携帯電話事業者、ベライゾン・ワイヤレス版iPhoneが発表されたことは記憶に新しい。
このことが日本にも波紋を呼んでいるらしく、au版iPhoneやドコモ版iPhoneが発売される可能性まで取りざたされているようだが、実に馬鹿馬鹿しい話である。
ある程度、通信業界に知識のある人なら、ベライゾン版が発表される前から、iPhoneの独占販売は国によっては行われていなかったことは言うまでもない。
つまり、確かにAppleはアメリカでは独占販売をやめたわけだが、それは個別のケースであり、Appleが独占販売をやめる方向に舵を切ったみたいな話ではないのだ。
とは言っても、ベライゾン版の件は別にして、ドコモやau版のiPhoneが出る蓋然性が100%ないとは、言い切れない。
また、ベライゾン版iPhoneは世界初のCDMA方式のiPhoneであることが、今まで通信方式の違いから絶対にiPhoneは出ないと言われていたCDMA方式のauも、噂の舞台に立てたわけである。
それでも、auからiPhoneが出るわけがない、否、auから出る蓋然性は低いと私は思う。
CNETに「KDDIが調達する可能性はかなり低い」と詳しく分析している記事があったので紹介しておく。
■iPhoneがNTTドコモとKDDIから発売される可能性を考察--米国は複数事業者からの販売が現実に - CNET Japan
この記事に基本的に同感ながら、私は周波数の問題よりも、やっと落ち着いてきたKCP+を捨てて、「Android au」と声高に叫ぶ(再びユーザーを実験台にするとも言える)、Android重視の姿勢の方が、iPhoneを扱う上で支障になると思われる。
さらに、この記事にはないが、私がauからiPhoneが出る蓋然性が低いと思う最大の理由は、「コンテンツ」や「権利関係」だ。
つまり、LISMOとiTunesは競合している。
そして、KDDIやLISMOと関係が深いソニーにとって、Appleは仇敵である。
ついでに、LISMOはMac非対応である。
フィジカルな理由よりも、こうした「大人の事情」の方が、動かし難い支障になるのではと私は思うのだ。
次に、NTTドコモからiPhoneが出る蓋然性はどうだろうか?
その前に、ベライゾン版iPhone 4について検証したい。
まず、ベライゾン版が発売される経緯だが、アメリカではAT&Tという通信会社がiPhoneを独占販売していた。
しかし、AT&Tは通信品質が不評であり、かねてよりベライゾン版iPhoneの要望が消費者から多かった。
これは、日本でも、ソフトバンクが独占販売しているが、通信品質が不評で、ドコモ版を期待する声も少なくないことに似ている。
おそらく、こうした連想から「日本でも、そろそろドコモからiPhoneが出るのでは」という噂が出てくるのだろう。
だが、日本とアメリカは異なる。
日本でiPhoneは圧倒的に売れており、アメリカほどAndroidがiPhoneを脅かす状態にはなっていないと思われる。
確かに、最近は日本でもAndroidは盛り上がっており、例えばITmediaの販売ランキング(2010年12月27日~2011年1月2日)では、
1位:GALAXY S
2位:iPhone 4(32Gバイト)
3位:iPhone 4(16Gバイト)
4位:LYNX 3D SH-03C
5位:IS03
となっていて、あたかもGALAXY SがiPhoneを押さえ、Android端末がiPhone天下に食い込んでいるように見えるが、よく見ると、iPhoneは16GB版と32GB版を別の機種として分けて集計されているのである。
しかも、iPhoneは約半年前の機種である。前後のAndroid端末が、半年後に同じポジションにいるとは思えない。
そして、もう一つ大事なことは、アメリカ(日本以外の世界)では、つい最近まで、通話とSMSだけの携帯が主流だったことだ。
アメリカでは、既にガラケーでネットアクセスが実現している日本よりも、乾いた布に水がしみ込むように急速にAndroidスマートフォンが普及していて、この流れの発起人であったAppleのiPhoneも、今やAndroidの勢いに押され気味で、ベライゾン版を出したのは、この対抗上の意図もあったのではと、私は思うのだ。
そう思う理由の一つに、ベライゾン版のiPhone 4には、欠点があるのだ。
それは、CDMAとGSMのデュアルでなく、CDMAのシングルであることだ。
簡単に言えば、GSMに対応していないため、CDMA2000を使っていないヨーロッパをはじめ、ほとんどの国で国際ローミングに対応しない。
具体的に、ベライゾン版のiPhone4の国際ローミングの対応国数は、音声40の国、データ20の国である。
W-CDMAとGSMのデュアルである、ソフトバンク版は音声209の国、データ149の国とケタ違いであり、通信方式が同じAT&T版も大体同じだろう。
特にベライゾン版iPhoneでは、ヨーロッパで使えないため、アメリカの国際的なビジネスマンにとっては、致命的だろう。
しかも、ベライゾン版iPhoneはSIMカードがないため、GSM携帯に差し替えることもできない。
つまり、言葉は悪いが、iPhoneにとってAT&T版が正妻であり、ベライゾン版は、「iPhoneは良いけどAT&Tの電波が…」という不満を回避するための、都合の良い愛人として用意されたのではないか。
そして、遠回りだったが、ここからが大詰めである。
先日のCES2011でAT&Tから発表された、新型GALAXY S「Infuse 4G」はHSPA+に対応している。
ソフトバンクも、このHSPA+とDC-HSDPAに準拠した下り最大42Mbpsの「ULTRA SPEED(ウルトラスピード)」を2011年2月下旬以降開始する。
AT&T、ソフトバンクがHSPA+を推進していることから、次期iPhone(仮にiPhone 5)が、W-CDMAの拡張であるHSPA+対応機になる事は十分考えられる。
CES2011の端末を見れば、もはや今年の携帯端末は、HSPA+やLTE、WiMAXなど次世代通信規格が常識であることが分かる。
また、ベライゾンがやっているとはいえ、世界的にはまだ普及していないLTE対応iPhoneを出すのは、総合的な使いやすさを重んじるiPhoneには時期尚早と思われる。
ドコモは今のところHSPA+等の現行3Gの拡張は計画しておらず、一気に4G(日本では3.9Gと呼ぶ)のLTE(Xi)を進めている。
従って、iPhone 5(仮)がHSPA+対応だとしたら、ドコモ版iPhoneは厳しくなるだろう。
また、ソフトバンクのULTRA SPEEDは1.5GHz帯を利用するようなので、現行の2GHz帯より電波が浸透しやすく、iPhone 5がこの通信方式と周波数に対応するなら、一気に電波改善が起こるかもしれない。
そして、米国ベライゾン・ワイヤレスは、ソフトバンクが中国チャイナモバイル・英国ボーダフォンと設立した「JIL」の参加企業である。
また、ベライゾン・ワイヤレスの株は、英ボーダフォンが45%保有している。
AT&Tはむしろ、ドコモとハワイの3Gネットワークの共同構築をしたり、関係が深いように思われる。
そういう意味では、ベライゾン版iPhoneの登場は、ソフトバンクにネガティブな材料と思われがちだが、私は全く逆で、ポジティブなニュースだと思った。
まず単純に、ベライゾン版iPhoneにより、iPhoneユーザーがますます増え、IT中心地アメリカでの地位がさらに高まることで、コンテンツが充実し、日本でiPhoneを独占するソフトバンクを利する。
そして、ベライゾンがiPhoneを取り扱うことで、JILの世界的な影響力はますます強まり、すなわちソフトバンクの影響力が強まる。
思うに、日本の第二位キャリア向けのiPhoneが出るより、契約者が五億人を越えるチャイナモバイル向けのTD-SCDMA版iPhoneが出る方が、まだ蓋然性は高いのではないだろうか。
このことが日本にも波紋を呼んでいるらしく、au版iPhoneやドコモ版iPhoneが発売される可能性まで取りざたされているようだが、実に馬鹿馬鹿しい話である。
ある程度、通信業界に知識のある人なら、ベライゾン版が発表される前から、iPhoneの独占販売は国によっては行われていなかったことは言うまでもない。
つまり、確かにAppleはアメリカでは独占販売をやめたわけだが、それは個別のケースであり、Appleが独占販売をやめる方向に舵を切ったみたいな話ではないのだ。
とは言っても、ベライゾン版の件は別にして、ドコモやau版のiPhoneが出る蓋然性が100%ないとは、言い切れない。
また、ベライゾン版iPhoneは世界初のCDMA方式のiPhoneであることが、今まで通信方式の違いから絶対にiPhoneは出ないと言われていたCDMA方式のauも、噂の舞台に立てたわけである。
それでも、auからiPhoneが出るわけがない、否、auから出る蓋然性は低いと私は思う。
CNETに「KDDIが調達する可能性はかなり低い」と詳しく分析している記事があったので紹介しておく。
■iPhoneがNTTドコモとKDDIから発売される可能性を考察--米国は複数事業者からの販売が現実に - CNET Japan
この記事に基本的に同感ながら、私は周波数の問題よりも、やっと落ち着いてきたKCP+を捨てて、「Android au」と声高に叫ぶ(再びユーザーを実験台にするとも言える)、Android重視の姿勢の方が、iPhoneを扱う上で支障になると思われる。
さらに、この記事にはないが、私がauからiPhoneが出る蓋然性が低いと思う最大の理由は、「コンテンツ」や「権利関係」だ。
つまり、LISMOとiTunesは競合している。
そして、KDDIやLISMOと関係が深いソニーにとって、Appleは仇敵である。
ついでに、LISMOはMac非対応である。
フィジカルな理由よりも、こうした「大人の事情」の方が、動かし難い支障になるのではと私は思うのだ。
次に、NTTドコモからiPhoneが出る蓋然性はどうだろうか?
その前に、ベライゾン版iPhone 4について検証したい。
まず、ベライゾン版が発売される経緯だが、アメリカではAT&Tという通信会社がiPhoneを独占販売していた。
しかし、AT&Tは通信品質が不評であり、かねてよりベライゾン版iPhoneの要望が消費者から多かった。
これは、日本でも、ソフトバンクが独占販売しているが、通信品質が不評で、ドコモ版を期待する声も少なくないことに似ている。
おそらく、こうした連想から「日本でも、そろそろドコモからiPhoneが出るのでは」という噂が出てくるのだろう。
だが、日本とアメリカは異なる。
日本でiPhoneは圧倒的に売れており、アメリカほどAndroidがiPhoneを脅かす状態にはなっていないと思われる。
確かに、最近は日本でもAndroidは盛り上がっており、例えばITmediaの販売ランキング(2010年12月27日~2011年1月2日)では、
1位:GALAXY S
2位:iPhone 4(32Gバイト)
3位:iPhone 4(16Gバイト)
4位:LYNX 3D SH-03C
5位:IS03
となっていて、あたかもGALAXY SがiPhoneを押さえ、Android端末がiPhone天下に食い込んでいるように見えるが、よく見ると、iPhoneは16GB版と32GB版を別の機種として分けて集計されているのである。
しかも、iPhoneは約半年前の機種である。前後のAndroid端末が、半年後に同じポジションにいるとは思えない。
そして、もう一つ大事なことは、アメリカ(日本以外の世界)では、つい最近まで、通話とSMSだけの携帯が主流だったことだ。
アメリカでは、既にガラケーでネットアクセスが実現している日本よりも、乾いた布に水がしみ込むように急速にAndroidスマートフォンが普及していて、この流れの発起人であったAppleのiPhoneも、今やAndroidの勢いに押され気味で、ベライゾン版を出したのは、この対抗上の意図もあったのではと、私は思うのだ。
そう思う理由の一つに、ベライゾン版のiPhone 4には、欠点があるのだ。
それは、CDMAとGSMのデュアルでなく、CDMAのシングルであることだ。
簡単に言えば、GSMに対応していないため、CDMA2000を使っていないヨーロッパをはじめ、ほとんどの国で国際ローミングに対応しない。
具体的に、ベライゾン版のiPhone4の国際ローミングの対応国数は、音声40の国、データ20の国である。
W-CDMAとGSMのデュアルである、ソフトバンク版は音声209の国、データ149の国とケタ違いであり、通信方式が同じAT&T版も大体同じだろう。
特にベライゾン版iPhoneでは、ヨーロッパで使えないため、アメリカの国際的なビジネスマンにとっては、致命的だろう。
しかも、ベライゾン版iPhoneはSIMカードがないため、GSM携帯に差し替えることもできない。
つまり、言葉は悪いが、iPhoneにとってAT&T版が正妻であり、ベライゾン版は、「iPhoneは良いけどAT&Tの電波が…」という不満を回避するための、都合の良い愛人として用意されたのではないか。
そして、遠回りだったが、ここからが大詰めである。
先日のCES2011でAT&Tから発表された、新型GALAXY S「Infuse 4G」はHSPA+に対応している。
ソフトバンクも、このHSPA+とDC-HSDPAに準拠した下り最大42Mbpsの「ULTRA SPEED(ウルトラスピード)」を2011年2月下旬以降開始する。
AT&T、ソフトバンクがHSPA+を推進していることから、次期iPhone(仮にiPhone 5)が、W-CDMAの拡張であるHSPA+対応機になる事は十分考えられる。
CES2011の端末を見れば、もはや今年の携帯端末は、HSPA+やLTE、WiMAXなど次世代通信規格が常識であることが分かる。
また、ベライゾンがやっているとはいえ、世界的にはまだ普及していないLTE対応iPhoneを出すのは、総合的な使いやすさを重んじるiPhoneには時期尚早と思われる。
ドコモは今のところHSPA+等の現行3Gの拡張は計画しておらず、一気に4G(日本では3.9Gと呼ぶ)のLTE(Xi)を進めている。
従って、iPhone 5(仮)がHSPA+対応だとしたら、ドコモ版iPhoneは厳しくなるだろう。
また、ソフトバンクのULTRA SPEEDは1.5GHz帯を利用するようなので、現行の2GHz帯より電波が浸透しやすく、iPhone 5がこの通信方式と周波数に対応するなら、一気に電波改善が起こるかもしれない。
そして、米国ベライゾン・ワイヤレスは、ソフトバンクが中国チャイナモバイル・英国ボーダフォンと設立した「JIL」の参加企業である。
また、ベライゾン・ワイヤレスの株は、英ボーダフォンが45%保有している。
AT&Tはむしろ、ドコモとハワイの3Gネットワークの共同構築をしたり、関係が深いように思われる。
そういう意味では、ベライゾン版iPhoneの登場は、ソフトバンクにネガティブな材料と思われがちだが、私は全く逆で、ポジティブなニュースだと思った。
まず単純に、ベライゾン版iPhoneにより、iPhoneユーザーがますます増え、IT中心地アメリカでの地位がさらに高まることで、コンテンツが充実し、日本でiPhoneを独占するソフトバンクを利する。
そして、ベライゾンがiPhoneを取り扱うことで、JILの世界的な影響力はますます強まり、すなわちソフトバンクの影響力が強まる。
思うに、日本の第二位キャリア向けのiPhoneが出るより、契約者が五億人を越えるチャイナモバイル向けのTD-SCDMA版iPhoneが出る方が、まだ蓋然性は高いのではないだろうか。