2011年4月12日8時0分
東日本大震災からちょうど1カ月たった11日夕、また被災地を強い地震が襲った。震度6弱を観測した福島県いわき市では土砂崩れが発生。倒壊した家屋から住民を救い出そうと、消防隊員らが必死に作業を続けた。茨城県沿岸部では、高台の避難所に逃げ込んだ市民から「もう嫌だ」とため息が漏れた。
■福島県
「下から突き上げるような縦揺れがいきなり来た。自宅を飛び出して山の方向を見上げると、中腹付近の木がユサユサ揺れ、ドーンという音がした。土砂が崩れてきたと思い、東側の尾根方向に向かって一目散に逃げた」
地震による土砂崩れで家屋3棟が倒壊した、福島県いわき市田人町石住の現場。すぐそばに住む大工の鈴木良一さん(47)が、その瞬間を振り返った。
消防のレスキュー隊は市中心部からの道路を土砂崩れで塞がれ、迂回(うかい)路を探して現場にたどり着いた。小雨が降り、ときどき余震が来る中、消防隊員と警察官約50人が重機3台を使って土砂の除去作業を続けた。
現場は山あいの集落。土砂崩れが起きた斜面はすり鉢状になっており、3年ほど前に杉の木が伐採されてからは、地面が見える状態だった。伐採前から付近一帯は危険区域に指定されていたという。
3月11日の地震の際には大きな横揺れに襲われたが異常はなかった、という。
福島県警いわき南署によると、倒壊した1軒の世帯主は高橋貞夫さん(71)で、亡くなった女子高生は孫の愛さん(16)という。
近くに住む中山京子さん(56)は「激しい縦揺れが繰り返される状態が、もう2時間以上続いている。どうしていいかわからない。生きた心地がしません」と震えた声で話した。
大きな揺れがあった後に停電になり、周囲は真っ暗という。台所の食器が激しい揺れで落ちて割れ、足の踏み場がない。「すぐに逃げ出せるよう、玄関先に布団を敷いて寝たきりの父を寝かせています」と中山さんは話した。
原発事故のニュースは、世界中をかけ回り、原発反対のうねりを呼び起こしつつある。選挙では、原子力政策にブレーキをかける動きもある。福島ショックは、どこまで波紋を広げるのだろうか。