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2006年1月24日
電気事業連合会
題記については、下記をはじめとした事実誤認の記述が見受けられます。事実関係は次のとおりです。
1. 「様々な対策をしなければ運転をすることができません。」〔上部〕
<事実関係>
原子力安全委員会は1995年に報告書をまとめ、MOX燃料が原子炉に使われる燃料の3分の1程度、核分裂性プルトニウム富化度※1がペレット最大で約8%(プルトニウム含有率※2で約13%)、MOX燃料集合体の最高燃焼度45,000MWd/tまでなら、原子炉の中ではMOX燃料の特性、挙動はウラン燃料と大差がなく、現在と同じ安全設計、評価手法を使うことができるとしています。玄海3号機で想定しているMOX燃料はこの報告書の検討範囲内であり、燃料取替用水タンクのほう素濃度を変更する等の対策はとりますが,現在の設備を変えることなく,これまでと同等の安全性を確保できることが国の安全審査によって確認されています。
※1 核分裂性プルトニウム富化度: | MOX燃料中に含まれる核分裂しやすいプルトニウムの割合 |
※2 プルトニウム含有率: | MOX燃料に含まれる総プルトニウム(核分裂しやすいプルトニウムと核分裂しにくいプルトニウムの和)の割合 |
2.
「この『国策の失敗』(もんじゅ事故など)を認めぬまま溜まったプルトニウムの在庫処理として、普通の原発で安全の余裕を削って燃やすプルサーマルが選択されたのです。」〔左上〕
<事実関係>
国の原子力長期計画(長計)では、昭和36年の長計からプルトニウムの軽水炉利用(プルサーマル)が明記されており、もんじゅ事故によってプルサーマル計画が始まったわけではありません。しかも、1995年にもんじゅの事故は発生しましたが、わが国では、1986~1990年、1988~1991年に、それぞれ日本原電・敦賀1号機、関西電力・美浜1号でMOX燃料の少数体実証が既に行われており、プルサーマルの実証は、もんじゅ事故が発生する約10年も前から行われています。なお、海外ではプルサーマルについて四十年以上にわたる長年の実績があります。
また、1995年に原子力安全委員会がまとめた報告書では、現行のウラン炉心に使用される安全上の判断基準並びにMOX燃料の特性を適切に取り込んだ安全設計手法,安全評価手法を適用することは差し支えないものと判断されています。しかも、安全上の判断基準は十分な安全余裕を持って設定されております。
3. 「(六ヶ所再処理工場で)取り出されたプルトニウムはすべてプルサーマルに使用する予定なのです。」〔左上〕
<事実関係>
六ヶ所再処理工場で回収されるプルトニウムについては、将来的にもんじゅなど研究開発用として年間数百キログラム程度の需要が見込まれており、プルサーマル以外の研究用途にも供されることになります。
4. 「日本の核分裂性プルトニウム富化度平均は6.1%。フランス・ドイツの約1.5~2倍。」〔左下〕
<事実関係>
玄海3号機で使用されるMOX燃料集合体の平均プルトニウム含有率は約9%です。
フランスにおけるMOX燃料集合体の平均プルトニウム含有率は約7%であり,玄海3号機の方が高くなっています。(玄海3号機のMOX燃料のプルトニウム含有率がフランスよりも高い理由は,燃料を装荷し、運転して取り出すまでの期間がフランスに比べ長いことなどによるため)
玄海3号機で使用予定のMOX燃料は,下表の通り原子力安全委員会が現在の原子力発電所でMOX燃料を安全に使用できるとした報告書の範囲内であり,国により安全性が確認されているものです。
また,実際にMOX燃料を使用する際には,ウラン燃料と同様に,燃料から放射性物質が漏れ出していないか,燃料がきちんと燃えているか、などを監視しながら運転しますので問題はありません。
項目 | 報告書 | 玄海での計画 |
---|---|---|
MOX燃料の核分裂性プルトニウム富化度 | ペレット最大で約8% | ペレット最大で8% |
MOX燃料のプルトニウム含有率 | ペレット最大で約13% | ペレット最大で13% |
MOX燃料の炉心装荷率 | 1/3程度まで | 1/4以下 |
MOX燃料の燃料集合体最高燃焼度 | 45,000MWd/t | 45,000MWd/t |
5.
「(日本は)ペレットからのガス放出率急増域まで燃やす。フランスはガスの急増前に燃料を取り出す。プルトニウムの濃度が高くなると核分裂が激しく発熱も高いプルトニウムのかたまり(スポット)が多くなり、制御棒の効きがさらに低下、ガスの放出率も高くなります。」〔左下〕
<事実関係>
海外(ドイツ、スイス、ベルギーなど)では玄海3号機のMOX燃料の最高燃焼度45,000MWd/t以上の実績(それだけ、燃料を装荷し運転して取り出すまでの期間が長い)をもつ発電所があり、問題なく運転されています。また、玄海3号機では、燃焼が進んでも燃料被覆管が内圧増加によって破損しないことが国によっても確認されています。
MOX燃料を使うと、ウラン燃料だけで発電する場合と比べてプルトニウムの量がやや多くなり、プルトニウムはウランよりも中性子を吸収しやすいので、制御棒の効きにわずかな変化が生じます。しかし原子炉に入れるMOX燃料の数を制限したり、炉心配置上の配慮を行うことによって、制御棒が原子炉を停止させる能力について、必要とされる余裕分も含めて十分に確保できます。また、運転開始前には実際に制御棒の効き具合を測定し、十分余裕があることを確認する国の検査を受けた上で運転に入ることになります。
6. 「プルトニウムは超猛毒物質。1gで年摂取限度値の1.4億人分!」〔上部中央〕
<事実関係>
プルトニウムの吸入による年摂取限度は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づいて定められており、プルトニウム-239(酸化物)の吸入に関する年摂取限度は約0.3μgです。これをもとにして、単純に計算すると、1gのプルトニウムは約300万人強分の年摂取限度に相当します。ただ、プルトニウムから発せられる放射線であるアルファ線は、紙1枚でもさえぎることができ、プルトニウムが体外にある時には皮膚の表面で完全に止まってしまうことから身体的な影響が問題となることはありません。
また,原子力発電所においては、MOX燃料に含まれるプルトニウムはウランと混ぜて陶器のように円柱型に焼き固めたうえ、金属のさや(燃料棒)に密封し、その燃料棒を燃料集合体として組み立てた状態で取り扱いますので、プルトニウムが容易に外部に露出するような構造とはなっておりません。
電気事業者としては、プルトニウムの取扱いについては、国内にあっても既に原子力機構において取扱いの経験が十分積まれており、安全に配慮した設備と的確な管理により問題なく取り扱うことができると考えています。
7. 「95%再利用可能です、と宣伝しても、実際に使用するのは1%のプルトニウムだけ。」〔右中央〕
<事実関係>
当面、プルトニウムの利用が中心になりますが、ウランの需給が中長期的に逼迫することが予想され、また、原油価格が極めて高い水準を続けている中で、回収ウランが将来的にわたって重要なエネルギー資源であるという事実は変わりません。
再処理により発生する回収ウランに関しては,ウラン資源の有効利用を一層進める観点から,リサイクルを行っていくことが重要であると認識しています。これまでにも国内外で回収ウランをウラン燃料として再利用した実績があります。
8. 「MOX燃料を再処理する国はゼロ。〔MOX燃料は〕フランスでわずか約12トン試験的に再処理しただけで今後の計画はまったくありません。」〔右中央〕
<事実関係>
フランスのラアーグ再処理工場等では、既に使用済MOX燃料について1998年までで約12tの再処理実績があり、今後、改めて使用済MOX燃料の再処理を行う計画を策定中という情報を得ています。具体化しているわけではありませんが、今後の計画が全くない、というのは正確ではありません。
なお,日本でも新型転換炉ふげんの使用済MOX燃料を東海再処理工場で再処理した実績があります(約20t)。
9.
「大事故が起きた場合、放射能による被害はウラン燃料と比べて、距離で2倍、広さで4倍にも達するとの指摘もあり、被曝の影響を受ける人は大幅に増えることが予想されます。」〔右下〕
<事実関係>
原子力発電所において、MOX燃料として利用する場合、プルトニウムはウランと混ぜて陶器のように円柱型に焼き固めたうえ、金属のさや(燃料棒)に密封し、その燃料棒を燃料集合体として組み立てた状態で取り扱いますので、プルトニウムが容易に外部に露出する構造とはなっておりません。
万一、炉心(燃料)が損傷するような事故があったとしても、そもそも酸化プルトニウム(PuO2)は沸点が高く(約3230℃)、気体となって放出される可能性は極めて少ないと考えられます。また、プルトニウムが圧力容器から格納容器内に放出されたとしても
・格納容器スプレイにより急速に除去される
・格納容器は気密性が高く、ほとんど漏えいしない
・格納容器から建屋内に出ても、環境に放出される前にフィルタによってほとんどすべて除去される
等、環境へ放出されにくい設計となっています。
このような原子炉の特性,安全防護施設等から考えて,事故時の周辺環境への放射線の影響はウラン燃料の場合と比べて差はありません。
10. 「六ヶ所再処理工場ではプルサーマルの使用済みMOX燃料の再処理はできません。」〔右下〕
<事実関係>
許認可上六ヶ所再処理工場では使用済MOX燃料の再処理は認められていません。ただし、使用済MOX燃料の再処理は国内外で実績があり、技術的には、六ヶ所再処理工場で使用済MOX燃料を再処理することは可能です。
以上